スクエニの海外タイトルレーベル“エクストリームエッジ”がDLタイトルを本格的に展開する狙いとは!?

公開日時:2014-08-08 00:00:00

 『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』や『コール オブ デューティ』シリーズを始めとする海外産の良質なタイトルを、日本のゲームファンに向けてローカライズしている、スクウェア・エニックスの“エクストリームエッジ”レーベル。そのエクストリームエッジでダウンロードタイトルが本格的に展開される。その第1弾が『ステルスインク クローン イン ザ ダーク アルティメット エディション』と『ダイブキック アディション エディション』。ここでは、“エクストリームエッジ”レーベルでダウンロードタイトルを展開することになった経緯や狙いをスクウェア・エニックス エクストリームエッジのプロデューサー塩見卓也氏とアソシエイトプロデューサー赤石沢賢氏に話を訊いた。

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▲スクウェア・エニックス エクストリームエッジのプロデューサー塩見卓也氏(右)とアソシエイトプロデューサー赤石沢賢氏(左)。

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■エクストリームエッジにはなかった、より挑戦的な作品にチャレンジ

――塩見さんは、『コール オブ デューティ』シリーズのローカライズプロデューサーとしてユーザーのあいだで知られていますが、今回の“スクウェア・エニックス エクストリームエッジ”のダウンロードタイトル(以下、本稿ではロゴの色から“グリーンレーベル”と略します)では、どのような役回りを?



塩見 現在、エクストリームエッジのタイトルに関しては、スタッフが揃ってきたということもあり、そのスタッフをどう配置するかを決めたり、契約書やコスト面などお金のまわりをチェックしたりと、プロデューサー、もしくはマネージャーのような役割を担っています。優秀なスタッフが育ってきて、各スタッフに1本まるまる任せることも増えてきました。最近だと、『MURDERED(マーダード) 魂の呼ぶ声』や『WRC 4 FIA ワールドラリーチャンピオンシップ』は、赤石沢に任せて、私は現場作業はせず、相談に乗る程度でした。ただ、『コール オブ デューティ』シリーズに関しては、ロサンゼルスに行って、全体のプロジェクトをActivisionと相談しつつ、ローカライズ作業も行う必要があるのですが、『ブラックオプスII』や『ゴースト』で培ったこのノウハウを持っているのが自分だけになるので、『コール オブ デューティ』シリーズに関しては、私が現場に足を突っ込んで作業をしつつ、スタッフにも経験を積ませている、といった感じです。



――では、グリーンレーベルではプロデューサー的な役回りをされていると。



塩見 そうですね。



――グリーンという色には何か理由があるのですか?



塩見 なんだったかなぁ(笑)。最初はパッケージ版の赤の反対色を考えていて、緑がしっくりきた、というのと“グリーンライト”という意味もあります。青信号だったり、許可や承認という意味もあったりして、開発期間中は“グリーンライトミーティング”というものが定期的にあるのですが、これはそのミーティングで経営陣から承認を得られれば、つぎのステップに進める、というものなので、どんどん承認されるように、という願いも込めて(笑)。



――そもそも、どういった経緯でダウンロードタイトルを本格的に展開することに?



塩見 これまでのエクストリームエッジでは、スクウェア・エニックスグループのEidosタイトル(『トゥームレイダー』や、『デウスエクス』など)や、スクウェア・エニックス ヨーロッパが手掛けたタイトル(『ヒットマン』など)、それに加えてActivisionからライセンスアウトされた『コール オブ デューティ』シリーズなど比較的大作タイトルのローカライズが主流でした。今回は、我々の新たなチャレンジとして、日本ではまだ多くの人に知られていない良質なゲームを自ら探して、それをローカライズし、日本のユーザーへ届けようという目的で、始めることになりました。



赤石沢 私は以前から海外ゲームが好きで、過激で尖ったおもしろさを持つダウンロードタイトルこそエクストリームエッジで展開したいと思っていましたので、そういった話を塩見に相談したのもきっかとなっています。



――松田社長もPCゲーム、しかもマニアックなものまでプレイされているとうかがいました。社長からの後押しなどもあったりしましたか?



赤石沢 私は昨年9月にスクウェア・エニックスに入社したのですが、そこで初めて松田と話して驚いたのは、非常にゲームがお好きな方、しかもどちらかと言うと海外ゲームがお好きな方だとわかり、勝手に親近感を抱きました。今回のプロジェクトに関しても非常にポジティブなリアクションをもらいました。



塩見 「いろいろやってみよう」という松田社長の後押しもあり、会社の承認もすぐ通ったので、すごくありがたかったですね。

■小粒だけれど、おもしろくて尖っているタイトルを日本のユーザーに紹介したい

――タイトルラインアップはどのように決めているのですか?



塩見 いろいろなところにアンテナを立てて、評判がよかったり、話題になったものや、誰かがオススメしてくれたものをかたっぱしからプレイします。また、赤石沢はもともと海外ゲームが大好きで、Steamで配信されている海外系の小規模スタジオの作品をよく知っているんです。そういったところから、赤石沢が日本の市場によさそう、と提案してくるタイトルを自分もプレイして、話し合います。それで「いける!」と確信できたら、私がそのゲームの開発会社に突撃します(笑)。



赤石沢 ただ、私は自他ともに認める“洋ゲーかぶれ”で、趣味趣向が少し偏っている(笑)。



塩見 赤石沢は日本にいながらアメリカに住んでいるようなタイプで、日本のゲームをあまり知らない。ある有名なシリーズタイトルを自社の作品と知らなかったくらいで(笑)。私はいまでこそ海外ゲームに触れていますが、どちらかと言うと国産ゲームで育ってきた人間ですから、赤石沢とはいい具合に意見が割れるんです。



赤石沢 私は自分が“洋ゲーかぶれ”という自覚はあるので、ある意味、自分の判断基準や価値観は半分くらいしか信用していません(笑)。



塩見 私も赤石沢がやりたい、というのは基本的にダメだと疑ってかかります(笑)。また、海外でウケても日本ではどうか、ということも考慮します。それでも最終的に、私たちが「おもしろい!」と思うものをセレクトしていく感じですね。



――基本は遊んで納得してから、ということですか?



赤石沢 場合によっては、トレーラーだけでノックアウトされるってこともあるじゃないですか。そういった場合は、プレイできない状態でもアタックします。



――エクストリームエッジで展開するからには、こういったタイトルを、といった指針のようなものはありますか?



赤石沢 そうですね……。おもしろければいい、いや、おもろくなきゃダメ! ということでしょうか。



塩見 どこかが尖ってればいい。究極にヘンな尖りかたでもアリです。



――今後はどれくらいのペースで発売していくつもりですか?



塩見 切れ目なくリリースできればいいのですが、いろいろ調整しながらやっています。独立系の小規模の開発スタジオは、人数が少ない分、対応機種が多くなると、どうしてもその分時間がかかってしまい、想定していた発売日からズレることがあるんです。



――大手開発と勝手が違うところもあるんですね。



赤石沢 そうですね。あと、これは大手も独立系も変わらず、作りかたの問題なのですが、とくにリージョン展開を想定していない、個人で作ったような作品では、テキストが自己流の管理になっていて、データがグチャグチャでどこから手をつけたらいいかわからない、といった作品も中にはあります。リージョン展開を想定しているものは、 ローカライズしやすいようにテキストアセットや音声が別途管理され、それらを紐付けるデータベースがあって、作業もスムースに進むのですが……。



――訳す文量だけではなく、ゲームプログラムの構造的にローカライズしやすいしにくい、というのもあるんですね。



赤石沢 はい。ローカライズを想定していないタイトルだと、プログラムのコードのなかにテキストが埋まっていて、一旦、コードをアウトトップし、言語テキストを日本語に差し替えて、またコードを戻す、といった作業が必要になるものもありました。



塩見 デザイン重視のユーザーインターフェースを採用している作品で、なお且つローカライズを想定してないものを日本語化するときも、けっこう困ることが多いですね。日本語にすると文字が入らないとか(笑)。そういったこともあって、想定より完成が遅れることもあります。今回、アナウンスさせていただいた『ダイブキック』と『ステルスインク』のほかにも、ローカライズが進行中のものもいくつかあります。これらのタイトルも年内に発売できるよう、調整を進めているところです。



――今年、エクストリームエッジ全体のラインアップも多いですよね。



塩見 そうなんですよ! 私がスクウェア・エニックスに入社した2年前は、正直、ローカライズの体制もいまほど整っておらず、皆様にはご迷惑をお掛けしました……。ですが、いまは、スタッフや体制が整い、高いクオリティーで回せる体制が整い、だからこそ新しいことに挑戦したい、という思いが今回のプロジェクトにもつながっています。

■『ダイブキック』はひと目惚れ

――グリーンレーベル立ち上げのスタートとなる『ステルスインク』と『ダイブキック』は、どのような経緯でラインアップされることに?

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塩見 『ステルスインク』は、スクウェア・エニックス ヨーロッパのスタッフが開発会社の人間を知っていたので紹介してもらいました。『ダイブキック』は、ひと目惚れです。私は格闘ゲームが好きなのですが、初めて遊んだ数分くらいは「なんじゃこりゃあ!?」という感想でした。ですが、プレイしていくうちに間合いの取りかたが本当によく考えられていることがわかり、しかも操作はふたつのボタンだけで誰でもプレイできる。操作は簡単だけど、単純なゲームではない。さらに、いわゆる強キャラもいるのですが、それに対抗できるキャラが必ずいるといったバランス調整もすごい。30分後には「神ゲー」と印象がガラッと変わりました。そこで、開発会社のIron Galaxyにアプローチしてみたのですが……、すでにほかのメーカーと組んで日本で展開することが決まっていました。一度は諦めたんですが、Iron Galaxyから決まっていた話がダメになった、という連絡がきて、「じゃあぜひ」と。



――縁があったんですね。最近はインディーゲームが注目を集めてきており、ソニー・コンピュータエンタテインメントやマイクロソフトを始め、スパイク・チュンソフトなどソフトメーカーも小規模開発のダウンロードタイトルをリリースしていますが、そういったタイトルは争奪戦のような形になっているのでしょうか。



塩見 小規模開発のダウンロードタイトルはあまりに数が多いので、ほかのメーカーとバッティングしたのは『ダイブキック』くらいですね。



赤石沢 いいコンテンツというのは、誰から見ても魅力的に映るでしょうから、もしかしたら、今後はそういったこともあるかもしれませんね。



――今年のE3でインディー系のゲームを取材したとき、日本での展開は決まっていないという作品が多く、どうしたら日本で発売できるか知りたがっている開発会社が多い、というのが印象的だったのですが。



赤石沢 海外を主軸に展開している独立系の開発会社さんは、日本とのコネクションがないんですよね。日本地域でもリリースしたい、と思っても日本語がわかるスタッフもいなければ、CEROレーティングの取得方法であるとか、日本のファーストパーティへのアプローチをどうしていいかわからない。我々があいだに入ることで、そのお手伝いができれば、という思いもあります。



塩見 我々が声をかけている会社の中には、自社でパブリッシングをしているところもあるのですけど、そういった会社でも我々にパブリッシングを任せてくれます。その理由を聞くと、日本語へのローカライズの難しさや、CEROなどの問題もあるのですが、それ以上に「日本の市場のことが一切わからない」ということが大きい。スクウェア・エニックスがパブリッシングしてくれるなら、そっちのほうがいい、と。スクウェア・エニックスという会社のネームバリューに感謝しつつ(笑)、だからこそ、その期待に応えられるよう、日本でもしっかり展開していければと思っています。彼らのゲームを日本のユーザーにどうアピールするか、というのも我々の課題です。



――『ダイブキック』と『ステルスインク』とも、もともとはPC版ですが、家庭用ゲーム機へのポーティング(移植)作業はどちらが手掛けているんですか?



塩見 両作に関しては、それぞれの開発会社で進めており、我々は日本語のローカライズ作業のみを手掛けています。開発会社によってはコンシューマーゲーム機での経験がないところもあるでしょうから、弊社でポーティングするケースもあるでしょうね。



――たとえば、「ここをこうすれば日本市場によりマッチするのに」といった場合、日本向けに少しアレンジしてもらう、なんてことは?



塩見 独立系の開発会社の方々は、自分たちの好きなものを作りたいという気持ちが強いですし、作っているものにとてもプライドを持っています。ですので、こちらからどうこう、というのはないですね。ただ、日本のユーザーの皆さんから出た意見をフィードバックする形で「次はこういうキャラで作ってよ」とか「次はこうしてよ」と言えるような、いい関係性が築ければ、そういったこともお願いするかもしれないですね。



――では、グリーンレーベルの今後への意気込みをお願いします。



塩見 今後も継続的にいいタイトルをどんどん紹介したいと思いますので、期待してください。また、逆にこのゲームを日本でも出してほしい、というご要望等があれば、公式Twitter公式Facebookなどを通じて、リクエストしていただけたらありがたいですね。私たちの網から漏れている情報を皆さんはお持ちだと思うので。とにかくおもしろいゲームを皆さんに紹介したい。「エクストリームエッジのダウンロードタイトルはおもしろいものばかり」と信頼してもらえるようになることが、今後のひとつの目標です。



赤石沢 小粒だけどおもしろいもの、というのが、いまのスクウェア・エニックス エクストリームエッジに欠けていると思っていたので、このプロジェクトを軌道に乗せたいです。ただ、グリーンレーベルでは、小粒なものだけをやる、と決まっているわけではありません。おもしろいゲームであれば、何でもやります。それは忘れないようにしたいですね。

※ティザーサイト

Divekick Software (C) 2013 Iron Galaxy Studios, LLC. DIVEKICK and IRON GALAXY are trademarks of Iron Galaxy Studios, LLC. All rights reserved.
(C)Curve Digital

※画面は開発中のものです。

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