クロスレビュー

平均

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パソコンで好評を博したアドベンチャーゲームの移植版。いちどクリアーすると、もうひとりの主人公の視点でプレーすることができるのだ。18歳以上推奨。
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デザイア(セガサターン)のレビュー・評価・感想情報

ハイルナー
セガサターン 2015-01-11 21:14:53投稿
8

良かった点
 一番魅力的だったのは「EVE burst error」に同じく搭載されたマルチサイトシステムの存在。シナリオは孤島の極秘研究所『DESIRE』の謎をアルバート・マクドガル、マコト・イズミの二人と、もう一人の視点によって観測しながら、「DESIREとは何を目的としたものなのか?」「なぜDESIREを開発しているのか?」といった謎に触込んでいくというもので、ジャンルとしてはSFサスペンスに位置する。

 先に発売された「EVE burst error」と違い、こちらは同じマルチサイトシステムながら、それぞれのキャラクターは独立したシナリオを持っており、相関しあっているものの、それぞれのゲームプレイに直接干渉することはなく、それぞれのシナリオを通しで進めていくことになる。これによってゲームプレイはより古典的なコマンド式アドベンチャーに寄ったものとなっており、シナリオが干渉しあわない分、プレイは分かりやすくテンポのいいものになっている。シナリオそのものもそれに準拠した内容になっており、同じ極秘研究所のなかにいながら、それぞれの視点、それぞれの解釈で物語が展開していくようになっており、それぞれのパートは世界観の反復ではなく、それぞれのキャラクターのドラマと、DESIREへの新しい視点を提起する内容になっている。

 シナリオでの魅力としては、やはりその大胆さと、ラストシーンの見せ方だろうか。発想自体は80年台からSFのいちジャンルとしてアニメーションや漫画などであったものだったが、当時商業ベースでこの手のゲームは見られなかった。現在ではアドベンチャーゲームでは人気ジャンルとなっているが、その源流となったのは、この「DESIRE」と「YU-NO」の二作品だろうと思う。エンディングそのものに突飛さ、大胆さがあるのはもちろんのこと、またそれを強烈に魅せる要素として、このマルチサイトシステムが非常に上手く機能しており、アルバート編、マコト編を終えての第三のシナリオによって、真相があきらかになると同時に、本当に物語の核を成していたのは誰だったのかが明らかになるようになっている。これは主人公という形に縛られず、物語の芯を観測させるような形でゲームを展開できるマルチサイトシステムならでは。
他に挙げるならば、「EVE burst error(SS版)」が性描写ありのハードボイルド・デテクティヴサスペンスという形に収まり、直接的な性描写はそれほどないのに対して、このデザイアは、異性キャラクターとの性描写が多分に含まれている点も悪くない。もちろんR18とはいえコンシューマ機なので性交渉の描写はないが、キスシーンや抱き合うシーン、台詞などで性描写を匂わせるシーンが多くある。無論、シナリオの重点はそこではないが、せっかくの年齢制限つきのゲームなのだから、こういう全年齢対象では出来な描写を仕込んでくれるのは嬉しい。

 それから、音楽やグラフィックも見どころ。特にアニメーションは、これまで動画再生機能ではPlayStationなどに劣っており、とくにCGムービーはノイズが激しかったが、今作で挿入されているアニメーションは、まさに美麗と形容するに相応しいもので、ノイズが全くなく、解像度の粗さを除けば、現在でも非常に見応えのあるものに仕上がっている。また先に移植された「EVE burst error」にはなかった口元のアニメーションが今作では追加されており、ちゃんと喋っているように見えるのもいい。このあたりも違和感なく出来ており、動きの多さでは負けるが、同時期のアドベンチャー「御神楽少女探偵団」などのアニメーションよりもノイズや破綻がなく洗練されている印象を受ける。
 そして音楽は、菅野ひろゆき氏と同年に亡くなった故梅本竜氏が担当しており、「EVE burst error」に同じく派手さはないがムーディ且つシリアスな雰囲気をうまく醸しており、とても聴き心地が良い。サントラが廃盤で入手困難なのが悔やまれる。

悪かった点
 セガサターン版プレイヤーの間でも真っ先に論点となる部分だが、マコト・イズミを主役としたマコト編のシナリオがどうも粗末な仕上がりになってしまっている。
 有り体に言えばアルバートの恋人という立ち位置を無視して共感しづらい悪漢キャラと懇ろになり、アルバートと訣別しはじめる、というものなのだが、マコト・イズミやその相手キャラクターの背景がうまく見えてこない上、その繋がり方も極めて陳腐で、正直理解できなかった。シナリオの筋自体は、本当に物語の核を成しているのは誰なのか?という点を強調するためにはいいやり口だと思ったのだが、肝心の描き方が雑すぎる。また、極秘研究所DESIREの技術主任という立場で、プレイキャラにも関わらず、「物語の真相を突き止めたい」というプレイヤーの欲求、思惑を無視して、色恋沙汰やら浮ついた調子でセンチメンタルな気分に浸ったりと問題が多い。
ただ、これはセガサターン版の開発にシナリオの菅野ひろゆき氏が関与していなかったことが原因らしく、移植元であるPC9801版ではこうした粗は無い、という話なので、セガサターン版限定の難点のよう。

 それから、個人的に残念だったのは、全体的に探索要素が少なく、ポンポンと進んでしまい、今ひとつ歯ごたえがないこと。先に発売された「EVE burst error」がそれぞれのキャラクターがシナリオに干渉し合いながら進めていくという探索要素、ゲーム性ともにと濃い内容に仕上がっていたのに比べると、どうしても痩せてしまっているように感じられる。
プレイ進行に難儀することがないので、時間も短く、アドベンチャーゲームとしては平均的だが、大体10時間ほどで終わってしまう。PC98では先に開発されたタイトルなので当然といえば当然なのだが、「EVE burst error」のような、アドベンチャーゲームとしてのプレイの面白さに比べると、ややシナリオ偏重的ではある。


 そして、これは欠点というよりは個人的なわがままなのだけれども、「EVE burst error」のように、クリア後のおまけ要素が欲しかった。
「EVE burst error」では、シナリオクリア後、Disc3の新たな要素が解禁され、サウンドテスト、開発日誌テキスト、出演声優へのインタビュー映像などが見られるようになっていたのだが、今作ではそうしたおまけ要素は全くない。「EVE burst error」よりも定価が1000円安いので致し方ないのかもしれないが、EVE burst errorのインタビュー映像では、故野沢那智氏の貴重な映像なども残っていたので、今作でもインタビュー映像などがあれば、故川上とも子氏の映像が収録されていたのかなあ……なんて期待をしてしまった。

総評
 時間SFアドベンチャーというジャンルが未成立の時代の作品ということで、シナリオの粗も多く、更にセガサターン移植に際してのシナリオの不手際もあるが、そのシナリオと発想を時間SFアドベンチャーをゲームに持ち込んだという功績は計り知れず、アドベンチャーゲーム史においても重要な作品だと言える。

 セガサターンというハードの上年齢制限のついた作品ということだが、幸いにもPS2で追加シナリオを搭載したリメイク版があり、EVEシリーズと違いイラストも変更されておらず、評判も上々と来ているので、今からプレイするならこちらがいいだろう。

クロスレビュー

平均

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パソコンで好評を博したアドベンチャーゲームの移植版。いちどクリアーすると、もうひとりの主人公の視点でプレーすることができるのだ。18歳以上推奨。
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