鬼才ヴィクトル・アントノフが手掛ける新たな世界
本作の舞台となるダンウォール本作の舞台となる都市。“ジ・アイルズ”と呼ばれる諸島の中で最大のグリストル島にあり、政府が置かれている。女王殺害により混乱が続き、ネズミの媒介による疫病も蔓延。市街は深刻な状況に陥っている。を手掛けたのは、『ハーフライフ2』などの仕事で名高いヴィクトル・アントノフ。あの東欧のどこかにありそうな不穏な近未来都市City17のほとんどは、彼のアイデアによるものだと言われている。ブルガリア生まれで、パリ、モントルー(スイス)、ロサンゼルス、シアトルと移り住んだことで、ヨーロッパとアメリカのエッセンスを併せ持つアントノフは、コンセプトデザイナーとしてオリジナルな世界を生み出せる、業界でも数少ない存在だ。
本作では、ゲームでは直接描かれない部分も含めて世界構築が行われている。この世界にはどんな人々がおり、どんな宗教が信仰されているのか? ダンウォール本作の舞台となる都市。“ジ・アイルズ”と呼ばれる諸島の中で最大のグリストル島にあり、政府が置かれている。女王殺害により混乱が続き、ネズミの媒介による疫病も蔓延。市街は深刻な状況に陥っている。の地政学的な意味合いは何で、ほかにどんな場所があるのか? どんな動力源が使われていて、工業はどう発達しているのか……といったことまで緻密に設定されており、こうした膨大な“裏設定”により、深みと信ぴょう性のある場所としてダンウォールが浮かび上がってくるのだ。
ダンウォール本作の舞台となる都市。“ジ・アイルズ”と呼ばれる諸島の中で最大のグリストル島にあり、政府が置かれている。女王殺害により混乱が続き、ネズミの媒介による疫病も蔓延。市街は深刻な状況に陥っている。は、パンディシアン大陸から離れたジ・アイルズと呼ばれる諸島の中で最大のグリストル島、その南端に位置する。グリストルは緑の森や草地に囲まれた涼しい気候を特徴としており、産業としては工業が盛ん。また、ダンウォールはジ・アイルズの政府がある首都でもある。グリストルの北には、非常に寒冷なタイビア島とゴツゴツとした黒い岩が至る所に転がっている険しい土地モーレイ島があり、南には温暖で穏やかなセルコノス島が浮かんでいる。
もっとも信仰されている宗教は“The High Overseer of the Abbey of the Everyman”。この宗教は暦にも影響しており、28日間で構成される月が13ヶ月経過した後、天文時計をリセットする前に特殊な“存在しない時間”が設けられる。この期間は人が利己的な行動を取ることを許され、ライバルを殺したり、他人の妻と寝たり、さらに人に言えないようなことすらもすべて不問にされるという。
工業的には、この世界の“クジラ”この世界の巨大な海洋生物。クトゥルー風に触手が生えており、我々が知るクジラとは異なる。採取できる揮発性の油は、現代世界の石油と同様、非常に重要なエネルギーとしてさまざまな用途に用いられている。から取れる鯨油がエネルギーとして使われており、海洋資源と工業が結びついた独特なスチームパンク風文明が築かれている。グリストルの自然哲学学院が最高の研究機関として優秀な研究者を集め、日夜新たな研究に励んでいる。ここの学院長アントン・ソコロフは、体力の回復や、ネズミが媒介する伝染病に効くエリクサーを発明した人物でもある。
ダンウォールの神経質な人々
こういった緻密な世界構築へのこだわりは、入念な取材や経験によって裏付けされている。例えば、巨大な捕鯨船から特殊な弾丸に至るまで、工業製品のデザインにあたってはアントノフが実際に工業デザイナーとして働いた経験が役に立っているとのこと。また、ダンウォールはヴィクトリア朝のイギリスのイメージを下敷きに、よりモダンな要素やSFテイストを加えて出来上がっているのだが、写真や昔の絵画を参考にしつつ、実際にロンドンやアイルランド、スコットランド、パリ、デトロイトなど、さまざまな街を訪れて取材を行なっている。取材先で撮影した写真などからは、街の雰囲気や建物のの建築様式のほかにも、日中の光の雰囲気なども参考にしているという。 こういった取材は人物についても同様で、各地での取材時には隠し撮りさえも敢行。さらに当時の風刺画をはじめとする歴史的資料にもあたって、伝染病が蔓延するダンウォールの、神経質そうな人々の顔を描き出している。丹念に取材や調査を実施し、その上に一流の想像力を重ねることで、もし歴史が違えばどこかに存在したかのように思える架空都市が誕生するのだ。
ダンウォール本作の舞台となる都市。“ジ・アイルズ”と呼ばれる諸島の中で最大のグリストル島にあり、政府が置かれている。女王殺害により混乱が続き、ネズミの媒介による疫病も蔓延。市街は深刻な状況に陥っている。という環境は、ゲームプレイの上でも興味深い機能を持つ。ゲーム中の行動がゲームの展開を変えていくだけでなく、プレイヤーの行う善悪ともなった行動が、世界そのものにも影響をあたえ、変化させていくのだ。
世界で最も危険な暗殺者であるコルヴォコルヴォ・アッターノ。本作の主人公。女王暗殺の濡れ衣を着せられ、極刑を宣告されるも、牢獄から脱出することに成功。謎の存在“アウトサイダー”により超常能力を与えられ、仮面の暗殺者となる。として多様な選択肢を与えられ、どんな決断を行い、何をするのか? 倫理観と自由意志を問うことによって、プレイヤーもまた、このダンウォール本作の舞台となる都市。“ジ・アイルズ”と呼ばれる諸島の中で最大のグリストル島にあり、政府が置かれている。女王殺害により混乱が続き、ネズミの媒介による疫病も蔓延。市街は深刻な状況に陥っている。という街の一部となっていくのである。
このように、本作はほかにはないオリジナルな世界と体験を作りだすために、ゲームプレイとデザインの両面で哲学をもって取り組んでいる。次項では、本作を開発しているArkane Studiosと本作の開発思想についてご紹介する。