奇怪な連続誘拐殺人事件を題材にした新作サスペンスアドベンチャーゲーム『ヘビーレイン』。本作は、事件の真相を追う4人の主人公の視点によって物語が展開される。今回の特集では、全4回にわたって本作の魅力を紹介!
第2回の記事ではゲーム序盤をプレイさせていただいたが、今回は製品版と同等の開発ロムで物語の最後までプレイすることができた。 初プレイでは、運がよかったのか4人の主人公全員が生き残った状態で最後のチャプターまでたどり着き、誘拐されたショーンの救出に成功した。ひと通りのプレイを終えた筆者は、『SAW(ソウ)』や『Seven(セブン)』といった映画が好きな人はストーリーを追うだけでも十分楽しめるし、実際に子供がいる人なら感情移入でき、よりゲームに没入できるのだろう、と感じた。
これだけでは、ストーリーや演出がよくできたアドベンチャーゲームなのだが、本作はそれだけではない。それに気づかせてくれたのは、同じく本作を最後までプレイしたライターMとのこんな会話だ。筆者が「制限時間内に指を切断する試練はすごかったですよね。僕はちゃんと鉈を使ってぶった切りましたよ」と得意気に話すと……、ライターMは「あれ? 指は消毒しなかったの? オレはちゃんと指を消毒してから切ったよ」と言うではないか。複数ある道具から、確実に切断できそうなものを選んだから指の切断に成功し、試練をクリアーできた。と思っていたのだが、どうやら試練のクリアー方法は複数パターンあることがわかった。さらに、ライターMは途中で主人公のひとりが死んでしまったにもかかわらず、ショーンを救出したのだという。つまり、“ショーンを救出できた”という結果が同じだとしても、そこにたどり着くまでに体験するドラマは、各プレイヤーごとに大きく異なっているのだ。筆者はその事実に驚き、夜も明けようかという時間にも関わらず、あのシーンはどうだった、あの選択肢はどれを選んだ……といった具合にライターMと眠気も忘れて話し込んでしまった(笑)。その後、シーンの多様さに気づいた筆者が「もしあそこで、あの行動を起こしていたら?」と気になったチャプターを何度もやり直しているのは言うまでもない。
本作は、通常のアドベンチャーゲームならばゲームオーバーになってやり直させられるような選択でもストーリーは進行していく。どんな選択をしても物語に矛盾を生じさせない、シナリオの作り込みには関心させられる。さらに、ゲームのプレイ内容に応じて、“トロフィー”が獲得できるというおまけ要素もあるので、ぜひくり返しプレイしてドラマの多様さを堪能してほしい。
インプレッションでも述べたとおり、プレイヤーの選択によってシーンが多様に変化するぞ。ここでは、息子を折り紙殺人鬼に殺害されたローレンを例にあげてシーンの違いを紹介しよう。事件の手がかりを得るためにローレンのもとを訪れたシェルビーは、彼女が男に暴行を受けている場面に遭遇する。ここで男から助けるかどうかにより、後日シェルビーの探偵事務所にローレンが訪れるシーンに変化が生じるのだ。