9人の男女が閉じ込められたのは謎の巨大船。理由もわからず、うろたえる9人の耳に、突如謎の人物からのメッセージが届く。それは生死を賭けたゲームの始まりを告げる合図。いま連鎖する密室を舞台に、謎のゲームが始まる! 『かまいたちの夜』、『428 〜封鎖された渋谷で〜』などのサウンドノベルを生み出したチュンソフト。そして、驚愕のラストで話題を呼んだアドベンチャーゲーム『Ever17 -the out of infinity-(エヴァー17 -ジ アウト オブ インフィニティ)』の打越鋼太郎氏。この両者がタッグを組んで送り出す、新作アドベンチャー『極限脱出 9時間9人9の扉』。アドベンチャーファン必見の本作に迫ります! 本作の序盤が遊べる体験版も要チェック!!
主人公は大学に通う青年、名前は淳平。
平凡な毎日を過ごしていた彼だったが、本人すら予期しない大いなる陰謀に巻き込まれることになった。
ある日、目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋。辺りを見回しても、見慣れた光景は何処にもない。
そして、もっとも気になったのは、扉に真っ赤な塗料で描かれた“5”の文字だった。
閉じ込められた密室で呆然としながらも、頭の中では、
この場所から脱出するための手段について、思考が始まっていた。
目覚めるまえの最後の記憶をたどると、そこにガスマスクをつけた謎の人物の顔が浮かび上がった。自宅に戻った淳平を襲い、この場所まで連れてきたであろう人物だ。記憶をなくすまえ、その人物はこう言った。
これからおまえにはゲームをしてもらう。
“ノナリーゲーム”――。
生死を賭けた運命の……ゲームだ。
突如投げかけられた謎のゲーム。その参加者は年齢も性別もバラバラの9人。
9人はゼロの監視を恐れ、お互いをコードネームで呼び合うことにする。
腕につけられた謎のナンバーに絡めた、それぞれのコードネーム。
その番号の意味すらわからないまま、9人は運命のゲームに巻き込まれていく――。
ノナリーゲームは、ゼロの仕掛けたゲーム。9人につけられた鋼鉄製の“バングルナンバー”を組み合わせて、いくつもの扉を解錠しながら進んでいかなくてはならない。最後にある9の扉を開けば船から脱出でき、ゲームクリアーとなるが、その扉をくぐるためには、右にあるいくつものルールを踏まえなくてはならない。
勝利条件は、3〜5人で複数存在するナンバリングドアを開けて9の扉へ辿り着き、さらに条件を満たして最後となる9の扉をくぐることである
バングルナンバーは9人の人物につけられた鋼鉄製の腕輪。それぞれに1〜9の番号が割り振られており、その数字を組み合わせてナンバリングドアを開いていく。バングルには起爆装置が仕掛けられており、ルールを守らなかった場合は、体内に仕掛けられた爆弾が爆発するようになっている。
数字根とは9人が持つバングルナンバーを合計し、さらに十の位と一の位を足した数。右にある例のとおり、複数人の数字を足してできた数字根と同じナンバリングドアに入ることができる。ただし、ドアを通るためには数字根を3〜5人の組み合わせで作る必要があり、それ以下、もしくはそれ以上ではドアは通り抜けられないのだ。なお、ゲーム中には数字根を計算するツールが存在するため、面倒な計算をたびたびする必要はない。
すなわち3人は8番のドアに入れる
だが、「だったら私もいっしょに行く!」「俺は“7”を選ぶよ」9人の思惑が、進む道を狂わせる――
本作は、ふたつのパートをくり返しながら進んでいく構成になっている。ひとつは、閉じ込められた密室の中でさまざまなヒントを見つけて脱出を図る“脱出パート”。もうひとつは、仲間との会話から彼らの思惑を推理し、その中で自身が進むためのドアを選んでいく“ノベルパート”。このふたつをくり返しつつエンディングを目指すことが、本作最大の目的である。
脱出パートは、各密室で行われる思考型パズルゲームになっている。密室の中にはいくつも調べられる場所があり、調べていく中でアイテムなどを入手することがあるのだ。手に入れたアイテムを調べたり、組み合わせたり、はたまた同じ密室内の別の場所で使ったりすることで密室の謎が解け、新たな道が開かれていく。ここでは、その脱出パートの流れを一部だけ紹介しよう。
密室をさまざまな角度から見渡し、気になる場所をタッチしていく。タッチした物によっては、同行している仲間が感想を述べたり、ヒントをくれたりする。
探索の中で入手したアイテムは、メニュー画面で調べたり、組み合わせたりすることができる。それらのアイテムを密室の中で使うことで、新たな道へ進めるのだ。
脱出パートに登場する密室は、複数の密室が連なっている場合がある。場所によっては、複数の部屋を移動しながらひとつの大きな謎を解く場面も登場するのだ。
脱出パートを抜けると、その先に待っているのはナンバリングドア。たいていのナンバリングドアは、いくつもの種類が並んでいるため、その中から誰と誰の組み合わせで、どの扉に進むかを選ぶことになる。だが、仲間はそれぞれの思惑のもとに扉を選び、淳平自身も幼なじみの紫とともに行動したいと考えているため、扉の選択はすんなりとは決まらない……。ここでは、そんな扉を巡る心理戦の一部を紹介しよう。
まあ、素直に終わるなんて、これっぽっちも思っていなかったわけで。なにせチュンソフトだ。『かまいたちの夜』で何度も真理に主人公を殺させ、『街』で何度も渋谷を爆発させ、『428』で再度渋谷を爆発させるような会社である。さらに今回は、『Ever17』でとんでもないトリックを仕掛ける打越鋼太郎氏まで加わっている。しかも本作は、打越氏がチュンソフトに入社してから初の作品でもあるのだ。そんな鬼才どうしのタッグで素直に終わるわけがない。なのに、なぜ最初のエンディングでこんなに衝撃を受けたのか。もしかしたら、油断でもしていたのだろうか。
発売日よりまえに『極限脱出 9時間9人9の扉』をお借りしてプレイさせていただいた。つぎつぎと出てくる脱出パートは、多少詰まることはあっても、ちょっとした閃きをきっかけに、いい塩梅で解いていくことができたのである。この閃きが「うわ、自分すげえ!」と思わせてくれるため、なんとも気持ちいいのだが、このときすでにチュン&打越タッグの術中にハマっていたのかもしれない。そうこうするうちに物語は進み、エンディングらしい雰囲気へ……。チュンソフトファンや、打越氏のファンの方、はたまたアドベンチャーゲーム好きな人ならば、本作がマルチエンディングという時点で、よくないエンディングがあることは容易に想像がつくだろう。いつもならば自分も想像がついていたのかもしれない。だが、テンポよく進む脱出パートに夢中になっていた自分には、最初のエンディングはあまりに衝撃的すぎた。「あれ、まさか、この展開は……?」と思いながら迎えたエンディングは、いわゆるあまりよくないエンディングだったのだ。展開の流れから薄々感づいてはいたのだが、想像しなかった展開に1度は茫然自失。しかし、1度エンディングを迎えたことで、気づくことがある。「ゼロはこの中にいる!」。
まるで名探偵気取りだが、1度エンディングを迎え、このゲームの様相はガラッと変わった。1回目のプレイが脱出ゲームの解法を楽しむパズルゲームのような楽しみだったのに対し、2回目以降はいわゆるサウンドノベル。それまでには気にしなかったキャラクターどうしの会話や動向がとくに気になり始め、気づけば怪しい点をメモするくらいのハマリよう。だが、これはこれでチュン&打越タッグの思うツボなのだろう……。ゼロにあざ笑われ、チュン&打越タッグにしてやられ、そんな悔しい想いのなか、さきが気になって気になって熱中してプレイしていれば、日をまたいで正午近い時間まで遊んでいる始末。 これまでいくつものチュンソフトのサウンドノベルを遊んできたが、打越氏が加わった本作は、これまでのサウンドノベルとは文章の表現などが変わっている。当然である。サウンドノベルでも作家によって表現方法は大きく違っていた。だが、これだけハマって思ったことがある。クリエーターが変わったのに、なぜこうもチュンソフトらしいゲームに仕上がっているのか。絶妙なバランスでユーザーを取り込み、ふと気づけば取り返しがつかないほどハマっている。しかも、写真や映像はもちろん、文章でも伝え辛い、遊んでみて初めてわかる魅力。誤解を恐れずに言えば、これがいちばんチュンソフトらしい。……そんなところまでチュンソフトらしくならなくてもいいだろうに(失礼)。
本作を楽しみにしている方、または買おうか悩んでいる方、まずは下にある体験版を遊んで、脱出パートの楽しさを味わっていただきたい。だが! それがすべてだと思うことなかれ。そこで油断すれば、冒頭の自分のようにエンディングで衝撃を受け、さらには別のエンディングでそれ以上の衝撃を受けることになるはずだ。なんともハードルを上げてしまった気はするが、大げさではなく、本当にその衝撃を受けた身としては、同じ体験をする人が、ひとりでも増えることを願ってやまない。ゲームを紹介する身として、こんなことを言うのもどうかと思うが、このゲームを楽しみにしている方、そして買おうか迷っている方、あらゆる本作の情報をシャットアウトして、ネタバレ一切なしで楽しめる環境を作って挑んでほしい。そうすれば、そうそう味わえない衝撃が味わえるのは確実である。
text by 世界三大三代川
ここで遊べる体験版は、ゲームの序盤に体験版用の仕様を加えた特別版。脱出パートの魅力がわかるものになっている。だが、前述のとおり、本作は脱出パートとノベルパートのふたつで構成されたゲーム。両方が合わさってこそ真骨頂となるため、体験版を遊んだ人は本編の発売を楽しみにしていただきたい。