2023年11月30日(木)に発売が決定した対戦格闘ゲーム『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』(以下、『GBVSR』)。本作は、王道ファンタジーRPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)を題材にした対戦格闘ゲームで、前作『グランブルーファンタジー ヴァーサス』(以下、『GBVS』)の続編となっている。開発は引き続き、『ギルティギア』シリーズなどで知られるアークシステムワークスが担当している。

 2023年8月初旬に同作にまつわるプレスイベントが開催。クリエイティブディレクターを務める福原哲也氏が本作の開発状況や、オープンβテスト後のユーザーの反応などについてたっぷりと語ってくれた。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

福原哲也氏(ふくはらてつや)

『GBVS』シリーズ・クリエイティブディレクター。対戦格闘ゲームとしての根幹にあるシステムはもちろん、シナリオ、ビジュアル、サウンドなど全体を監修。ほかのスタッフと連携しつつ、本作に落とし込まれている『グラブル』の世界観が損なわれないように細部の調整も行っている。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

――『グラブル』の人気キャラクターたちが登場する本作ですが、今後『グラブル』のことをよく知らないというユーザーもプレイする機会があるかと思います。予備知識なく遊ぶことができるような施策は考えていますか?

福原前作『GBVS』の時点から、『グラブル』のことを知らない方にも楽しんでもらえるように意識してきました。

 とはいえ、キャラクターやシナリオのボリュームが膨大なタイトルでもありますし、『グラブル』を知っている人はより楽しめるという部分がどうあっても出てきてしまいます。なので、ひとつ“ここだけは”というポイントを挙げるならば、まだ『グラブル』をよく知らないという方も、主人公とルリアの関係性と、旅に出た経緯だけは知っておいてもらえるといろいろな理解が早いし深まるかと思います。

 個人的には『GRANBLUE FANTASY The Animation』の第1話と第2話の視聴をオススメしていまして、合わせて40分ぐらいで観られますし、そこが押さえられていれば各キャラクターの目的や人物像みたいなものは、『GBVS』のバトル中などのさまざまなセリフからでも汲み取れるように調整しているつもりです。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

――『GBVSR』では、前作から登場している24名のキャラクターに加えて、新たに4キャラクターが初期参戦となります。キャラクターの選出基準へのこだわりがあれば教えてください。

福原格闘ゲームとして全員が並び立ったときのシルエットやバトルスタイルのバランスもありつつ、原作『グラブル』での人気や立ち位置など、考慮する部分が多いので毎回悩みますね……。『GBVSR』からは原作での人気を、より重視して選出しています。

――新たに登場するキャラクターのバトルスタイルも個性的に映ります。

福原たとえば、アニラだったら特殊なジャンプの挙動を加えつつも、ふわふわしたかわいらしい見た目通りに初心者でも触れるシンプルな操作感になるよう心がけていますし、ジークフリートだったら見た目どおりの長いリーチを活かして剣をぶんぶん振り回しているだけでも豪快に戦えて気持ちいい……といった大方針的なコンセプトですね。ニーアはデスとともに戦うキャラクターです。ギミックと連携して複数人がかりで攻撃するタイプのキャラクターは、格闘ゲームで登場するバトルスタイルのひとつのフォーマットですが、ニーアもそこに分類されます。ある程度簡単な操作で波状攻撃をくり出す楽しさを感じてもらえるようになっています。

――発表されたばかりのグリームニルのバトルスタイルはどのようなコンセプトでデザインされているのでしょうか?

福原風の星晶獣ということで、風を操って戦うというのが大きなコンセプトです。具体的には飛び道具として放った竜巻を何パターンかの軌道に派生させたり、風の力を使って特殊なダッシュやジャンプをしたり。

 ランスロットなどとはまたひと味違った機動力の高さで画面内を動き回れるキャラクターで、中距離をメインに立ち回りつつ、隙あらばその機動力で相手を制圧するような戦いかたを得意としています。

――まさに新たな風を吹かせてくれそうな性能ですね! 今後の新たなキャラクターの追加も気になります。

福原デラックスエディションの特典である「デラックスキャラクターパス Part.1」の項目をご覧になった方はお気づきかもしれませんが、こちらでは新たに6キャラクターの追加を予定しています。順次公開していきますので、ぜひご期待ください。

――前作のユーザーに対してはコラボキャラクターに関するアンケートも実施されていました。『グラブル』以外のタイトルからコラボキャラクターが参戦する可能性はありますか?

福原今年の7月に“AX 2023 -Anime Expo- Los Angeles”でも同じ質問をいただきまして、逆に誰を追加してほしいのか会場の皆さんに尋ねたところ、その場でたくさんのリクエストの声を一斉にいただきました。

 コラボキャラクターを実装してほしいという声があるのは承知していますし、つねに検討を重ねています。なので、確約はできませんが将来的には期待していただければと思います。本作でも『ぐらぶるレジェンドばとるっ!』に登場する渋谷を模したフィールドに『ウマ娘』が登場する看板などもあったりするので、まずはそちらの景観などを楽しんでいただけるとうれしいです。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

――7月末にはユーザーに向けてβテストが開催されました。こちらの反響はいかがでしたか?

福原アンケートなどでたくさんのご意見をいただきまして、現時点では締め切っていないのでまだすべての集計はできていないのですが、来ている分だけ見ても皆さんの意見はだいたい同じ方向を向かれているので、開発のアークシステムワークスさんとも、どうフィードバックするのか話し合っていこうと思います。

 このインタビューが出る前に、“Evolution Championship Series 2023(EVO 2023)”で第2回βテストを秋ごろに実施するという発表があったかと思いますが、そちらではなんらかのフィードバックは反映したいとはかんがえています。前作以上に楽しいゲームだとより多くの方に思っていただきたいというのが根幹にあるのでそこを突き詰めつつ、また皆さんからご意見をいただけたらありがたいです。

――前作をプレイしたユーザーからもさまざまな反響があったかと思います。『GBVSR』で、そういった意見について強くフィードバックしながら調整した部分はありますか?

福原前作から「お互いに守りが強くて膠着しやすい」という意見をたくさんいただいていました。

 よりアグレッシブに攻められるよう、プレイヤーが何かアクションを起こしたら試合も動くように調整するという方向性は、うちもアークシステムワークスさんも共通で考えていました。その流れでわかりやすい崩しの手段としてレイジングストライクを実装したのですが、こちらに関しては「強くてわかりやすい」という方もいれば、「強すぎる」といった意見の方もいました。

 また、猶予時間を増やした投げ抜けに関しては意見が真っ二つに分かれていて、格闘ゲームでいう、いわゆる“柔道”が苦手な人には「ありがたい!」と受け入れてもらえる一方で、「崩しの選択肢として投げが弱くなりすぎた」という意見もあって。

――たしかに大きな変更には戸惑いました。

福原投げ抜けに関しては、そもそも投げ技自体の発生が早くなっているので、本作からは相手の連続攻撃に割り込むことができるようになっているなど、防御面での強みがかなり増したんです。なので、投げ技の用途も変化していますし、攻防のセオリー自体もだいぶ変化しているんですよ。ただ、それがわからない状態だと単純に「猶予が長くなった」という視覚的にわかりやすい変更部分だけが目立ち、「こんなの使えない!」とネガティブな印象を持たれてしまうのは当然ですし、事前に説明できなかった点は反省しています……。チューニングを加えた部分に関しては、しっかり意図を説明する必要がありました。

 しっかり適切なタイミングで使用すると、相手は投げ抜けできないうえにダメージは高めですし、演出もスピーディーで気持ちいいんですよ。

――セオリー自体も変化しているわけですね。自分も実際にβテストで対戦を重ねていましたが、投げ技や中段技、下段技などでの崩しが搦め手の渋い行動になってしまったなぁと。代わりに存在感を増したレイジングストライクを使って「とにかくこれで崩していこうぜ!」みたいな流れが主流になっていた気がします。

福原たしかにレイジングストライクをメインに持っていきたかったというのはあります。崩しの手段として、「上級者も初心者もレイジングストライクを使ってね!」というコンセプトだったのですが、説明なしで誰も慣れていない環境で、強み部分だけが強調されすぎてしまっていたかもしれません。

――前作において、いわゆる“待ち”の戦法が強かったがゆえにアグレッシブな調整を目指しているという話が先ほどありました。一方でクイック入力のデメリットがなくなったことにより、前作以上に待ちが強くなってしまったという印象も受けます。それこそ、相手のレイジングストライクに対抗するために奥義ゲージが50%たまらないと動けないような展開もあるというか……。

福原クイック入力とテクニカル入力での性能差はありましたが、前作の時点でもほとんどの状況でそこまで大きな差はなかったと認識しています。上級者のプレイヤーもとっさで出すときはクイック入力を活用されていたと思いますし。もともと「テクニカル入力のほうにわずかにメリットを」という意図で差をつけていたところが、相対的に「クイック入力にデメリットがある」と認識されてしまうなど、そういった受け取られかたのギャップも前作であったため、今回思い切って廃止しました。

 レイジングストライクに関しては強力なのは事実で、アルティメットアビリティとも比較すると使いかたも明確なぶん、それだけを狙いすぎることで逆に試合が動かなくなる状況があったのだと思います。

――アルティメットアビリティはユーザーのあいだでもまだまだ研究段階かと思います。

福原こちらも、無敵技以外は使いかたがわかりづらいという意見をいただいており、事実なので調整できればと考えています。研究が進んでいないからという側面もあるにはありますが、とはいえ目玉として用意したはずの必殺技が「強そうにみえないし使いかたもわからない」となってしまうのは問題だと思っているので。今後、どのように調整していくのかはバトル班のメンバーと話し合って決めたいと思います。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

――アルティメットアビリティの派手な必殺技というコンセプトに関しては、気に入っているユーザーもいるのではないかと感じます。

福原本作ではクイック入力の関係で必殺技を増やすのが難しい部分もありますが、昔の格闘ゲームは持ちキャラに新たなモーションや必殺技が増えただけでめちゃめちゃうれしかったりしましたよね。そういう感覚を本作でも提供したいというのはありました。

 そういった側面からアルティメットアビリティやレイジングストライク、ダッシュ攻撃が企画されています。共通システムで攻めの択自体は増えているので、プレイヤーごとに戦いかたの幅が出るようにしたいなと思いつつ模索しています。操作やルールはシンプルにまとめたいとは思いつつ、ゲームとしてやっぱり派手にも見せたいので。

などにはちょっとした突進技みたいな性質を持たせたり。すべてのアクションを駆使する必要はあるけれど、幅は持たせたいなと思いつつ模索しています。シンプルにまとめたいとは思いつつ、ゲームとしてやっぱり派手には見せたいので。

――派手といえば奥義ですが、現状では奥義ゲージの使い道が多彩ということもあって、なかなかそちらに投入できない印象もあります。

福原これもゲージの優先度がレイジングストライクとブレイブカウンターに寄りすぎている話とつながりますよね。奥義はグラブルの華でもあるので、ここもなんらかの調整をしていきたいと考えています。

――“EVO 2023”ではβ版を使用した大会も開催されました。こちらについてはどのような狙いがあったのでしょうか?

福原『GBVSR』を2023年後半に発売するというスケジュールで、今年1月に実施した前作の最終アップデートから凪の期間が続いてしまっていました。βテスト以外でも遊んでいただける機会を増やしたいと考えていたところ、“EVO”では過去に『マルチバーサス(MultiVersus)』というタイトルがβ版を使った大会を開いた例があったので、同じことができないかと調整してみまして。“EVO”運営サイドのご協力もいただき、実現することができました。

――本作ではオンラインロビーのビジュアルやシステムも大幅にパワーアップしています。

福原『GBVS』のオンラインロビーのビジュアルやアバターが好評だったので、純粋にそこをパワーアップさせたいなと。アバターもロビーを歩くだけでなく、何か特別なことをやらせたいよね……ということで、今回のように充実させることになりました。対戦で勝っても負けてもとりあえずジャンプしておけば無言のコミュニケーションになりますし、気分よく楽しんでもらえたらうれしいです。

――本作では格闘ゲームとは別の対戦ゲーム『ぐらぶるレジェンドばとるっ!』も遊べます。こちらも非常に関心を集めているかと思いますが、どのような意図で実装されたんでしょうか?

福原ロビーの機能拡充に合わせて、極端な話、格闘ゲームで対戦しなくてもアバターを使って直接遊べるモードも作れるんじゃないかとなりました。そこから1対1の真剣勝負の息抜き的に、大勢でラフに楽しめるゲームを……という流れで企画が進みました。いろいろなルールで楽しめる、 縦にも横にも広がるようなゲームを取り揃えています。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

――『ぐらぶるレジェンドばとるっ!』をやり込んだプレイヤーに対する報酬などは用意されているんでしょうか?

福原『ぐらぶるレジェンドばとるっ!』はくり返しプレイすることで順位に応じた経験値を得られるシステムになっていて、一定まで貯まることで称号やゲーム内通貨、新しいロビーアバターなどの報酬がもらえます。また、同じように格闘ゲームのほうでもキャラクターごとのレベルを用意していて、対戦で勝ったり負けたりするごとに経験値がたまって、こちらも一定まで貯まると新たな武器スキンやキャラクターのEXカラーなどをゲットできます。

――前作『GBVS』をやり込んだユーザーも多いかと思います。こういったユーザーへの引き継ぎ要素はありますか?

福原タイトル自体が別なので、ランクマッチの段位などはリセットされます。一方で、“EVO Japan”の大会入賞者に送られた称号や、“GBVS Cygames Cup”の参加者が手に入れたキャラクターのEXカラー、バトルパスで手に入れたカラーやスキンなどは引き継げるのでご安心ください。

 ストーリーモードには前作のストーリーも含まれているので、前作の進行度を引き継ぐこともできます。ただ前作時点でけっこうなボリュームがありますので、前作未プレイの方でも「なんとなく知ってるから見なくていい」という方向けに、前作分のストーリーをスキップできる仕様も入っています。

――すべてのユーザーの段位がリセットされるとなると、まっさらな初心者が前作をやり込んだプレイヤーとマッチングしてしまう可能性もあるかと思いますが……。

福原ゲームを始めるにあたっていくつか設問を用意していて、それによって初期段位が変わるようになっています。なので、どうか正直に答えてほしいなと思っています(笑)。ランクマッチの仕組みも若干アレンジが入る予定なので、前作で言われていた息苦しさなんかは緩和できるのではないかなと。

――──PS5、PS4、Steamに対応している本作。今後、対応機種が新たに増えることはあるでしょうか?

福原より多くの人に遊んでもらうとなるともっと多くのハードに対応すべきだとは思いますし、昨今は全ハードマルチプラットフォーム対応のコンテンツも増えてきています。そこはつねに考えるべきところではありますが、まずは現行の対応機種についてしっかり調整していければと思っています。

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?

――最後にファンの方に向けてひと言メッセージをお願いします。

福原前作はサイゲームスとしても新たな挑戦だったというのもあり、内々の話にはなりますが運用面で実現できなかったことがあるなど、いくつかの反省点がありました。

 今回はより長期の運用を想定した設計を加えて開発を進めています。今後発売が近づくにつれてプロモーションも仕掛けていくつもりですが、まずは価格無料のフリーエディションのリリースが大きな試みのひとつとなります。フリーエディションのユーザーでもスタンダードエディションやデラックスエディションのユーザーといっしょに遊べるので、いろいろな方に触っていただくきっかけになるんじゃないかなと思っています。

 その後も大会だったり、コミュニティ向けのイベントだったり、いろいろなアプローチをしていきたいなと! 『GBVS』はグラフィックも好評いただいているので、本作から実装となるコスチュームスキンも原作ファンの方も含めて多くの方に喜んでいただけると思います。

 そして、発売日もついに決まりました。前作から同じメンバーで制作しているので再出発という感じではありますが、ふつうのアップデートでは追加できないような内容とボリュームを盛り込んだ新作となっております。前作を遊んでくれた方は、より満足していただけるものにしたいと思ってギリギリまで調整しますし、さらに多くの方に遊んでいただきたいなと……。前作以上に格闘ゲームシーンを盛り上げつつ、長期にわたって愛されるタイトルにしていきたいと思っているので、どうかご期待ください。

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グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-

ジャンル:対戦アクション&パーティー
プレイ人数:1~30人
オンライン:対応
価格:「スタンダードエディション」 6600円[税込]
   「デラックスエディション」 9680円[税込]
   「フリーエディション」 無料
発売日;2023年11月30日
プラットフォーム:PS5/PS4/Steam
レーティング:IARC 12+
企画・制作:株式会社Cygames
開発:アークシステムワークス株式会社

『グラブル』新作格ゲー『GBVSR』クリエイティブディレクター・福原哲也氏が語る開発意図や今後の展望。オープンβテストを遊んだユーザーの反応に対する印象は?
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