2023年4月30日、東京・コナミクリエイティブセンター銀座2階にて開催されたインディーゲーム展示・即売会Indie Games Connect 2023。コナミデジタルエンタテインメントが主催する本イベントは、出展エリア60ブース、サポーターエリア8ブースがひしめく活気に溢れるイベントとなった。プレイアブル出展された約90タイトルの中から、取材陣が見つけた気になるタイトルをピックアップ。

『BearRunner Any% RTA』“最速クリアー”のためならゲームカセットを叩くことも辞さず!?【Indie Games Connect 2023】

 月1回ペースで開催されているインディーゲーム開発者専用の創作活動会“銀座インディゲームもくもく会”。そのブース(サポーターエリア)で出展されていた作品のひとつ『BearRunner Any% RTA』は、世界的に盛り上がりをみせるゲームプレイスタイルのひとつ、RTA(Real Time Attack)を強く意識した“体感型アクションゲーム”だ。

 ゲーム内容は、架空のレトロ2Dプラットフォームゲーム『BearRunner』のステージ1のクリアータイムを競い合う……というシンプルなもの。ただし、プレイヤーキャラの操作はオートかつ、かなり慎重に行動するので、ただ見守っているだけでは平凡なクリアータイムで終わってしまう。というか、このままではゲームプレイとは言えない(笑)。

『BearRunner Any% RTA』“最速クリアー”のためならゲームカセットを叩くことも辞さず!?【Indie Games Connect 2023】
一見ふつうのレトロ風ゲームだが、画面左端のRTA配信番組風情報スペースも含めて、本作のゲーム画面。

 そこで必須となるのが“ゲームをバグらせる操作”。出展イベント専用のコントローラー……レトロ家庭用ゲーム機本体の上部スロットに挿し込まれたゲームカセットを“ペシッ”と小突くことで、『BearRunner』の画面が一瞬乱れ、プレイヤーキャラが地形を突き抜けて進行方向に“瞬間移動”するのだ。さらに、バグ発動中は、足場の落下ミスを無効化できる利点もある(プレイヤーキャラが画面上部から降ってきて復帰)。ここぞというタイミングを見極め、積極的にバグらせることが、最良にして唯一のクリアータイム短縮手段というわけだ。

『BearRunner Any% RTA』“最速クリアー”のためならゲームカセットを叩くことも辞さず!?【Indie Games Connect 2023】
バグっている最中のゲーム画面。ブロックノイズ風の画面演出が心臓に悪い。バグらせるごとに画面下部の“バグゲージ”が上昇し、ゲージがいっぱいになるとフリーズしてしまうので、やり過ぎもよくない。
『BearRunner Any% RTA』“最速クリアー”のためならゲームカセットを叩くことも辞さず!?【Indie Games Connect 2023】
『BearRunner Any% RTA』“最速クリアー”のためならゲームカセットを叩くことも辞さず!?【Indie Games Connect 2023】
バグは、ダミーのゲームカセットに取りつけられたセンサーで、一定以上の振動を感知した時に発動する。これが、チョンと触っただけでは反応してくれない。若い世代のプレイヤーは心得たりと思いきりよくヒットしていたが、記者のようなおっさんゲーマーにとっては“踏み絵”のような覚悟がいる操作感覚だった。ダミーのゲームカセットラベルがかわいらしかったことが、唯一の良心?

 作者のしゅんて氏いわく「グリッチ(バグ・不具合を利用して正規とは異なる手順でゲームを進める行為)を使ってRTAするのであれば、最初からグリッチを前提としたゲームにしてやろうじゃないか、と思って作りました」とのこと。これ以外にも、ゲーム開始直後に長々と表示されるストーリーデモなど“制作者が本来見てほしいであろう情報・体験してほしいであろうテンポ感”をすべてスッ飛ばすことを最適解としているなど、風刺が効きまくった作りが印象的だった。

『BearRunner Any% RTA』“最速クリアー”のためならゲームカセットを叩くことも辞さず!?【Indie Games Connect 2023】
プレイをする上でまったく必要のない壮大な情報満載のオープニングストーリーデモ。多くのプレイヤーに無情にスキップされるさまを見て、しゅんて氏は「一生懸命書いたんですけどね……」と苦笑い。せっかくなので記者はすべて読みました。

 『BearRunner Any% RTA』のブラウザゲーム版『Any% Glitched』は、しゅんて氏のUnityroomページで、2021年より公開中。操作方法が若干異なるものの、基本的なゲーム性は同じだ。暇人、もといアスリートタイプのゲーマーは、最短クリアータイムの理論値に挑み続けてみては。

Unityroom内しゅんて氏のページ