2022年9月15日(木)~2022年9月18日(日)に開催される“東京ゲームショウ2022”(TGS2022)。その1日目、GRAPHTブースにて新作FPS『Project F』の開発進捗の発表会が開催された。
『Project F』はプロゲーミングストリーマー集団“父ノ背中”のけんき氏が中心となって開発中のタイトル。多くのプロゲーマーやストリーマーが「自分たちが“本当にやってみたい”と思う究極のタクティカルシューティングゲーム」を目指して監修に参加し、開発が進められている。
発表会ではそのコンセプトなどをけんき氏が解説。加えて、有名ストリーマー10名による対戦の模様を上映し、本格的なゲームプレイの模様を初公開する運びとなった。
本作最大の特徴は、10万通り以上のパターンが生まれる自動生成マップシステム。そのシステムを導入した意図とは、スキルを駆使してマップを支配していく“学習速度”が重視されるゲーム性とは、どういったものなのか。さまざまな新情報が実際のゲームプレイを例として明らかになった、当発表会の模様をお伝えしていく。
『Project F』が目指す“本当におもしろいFPS”とは
発表会には『Project F』プロデューサーという立場でけんき氏が登壇。まずは本作について、開発を始めた経緯やそのコンセプトについて解説してくれた。
『Project F』は3年前に始動したオリジナルFPS(ファーストパーソンシューティング)制作プロジェクトだ。目指すところは、“セオリーよりもプレイヤーの独自性や創造性が重視されるタイトル”だという。
続いてそのコンセプトがどう表現されているのか、具体的なゲームデザインが解説された。基本的に、本作は5対5のいわゆる“爆破”ルールでの対戦となる。2チームが攻撃側と防御側に別れ、攻撃側は防御側が守る特定のオブジェクトを破壊するために進撃し、防御側はその攻撃から対象オブジェクトを守るという、FPSではおなじみの形式だ。
そのほかに紹介された概要
- 6名(現段階の人数)のキャラをチーム内で重複しないようにピック
- しゃがみ、伏せ、ジャンプといった移動手段を駆使しつつ射撃はサイトを覗き込んで狙いを定める
- ラウンドごとに所持金で武器を購入する
一般的なFPSでは爆破ターゲットとなるオブジェクトが2ヵ所に設定されることが多いが、本作では1ヵ所。この設定には、攻撃側がAかBのどちらかに偏った場合のパワープレイ展開防止の意図があるとのこと。対象を1ヵ所に限定し、なおかつ攻撃側の全員がオブジェクトを破壊する手段を持つことで、防御側が必ずひとりはオブジェクトのそばに残らなくてはならないデザインになっている。
そして、対戦ごとにマップが自動生成されるというシステム。開発期間のほとんどを費やしたという本システムは、ゲームデザインにおいても大きな役割を果たしている。
そもそも従来のFPSでは、マップごとの研究が進み“セオリー”が生まれ、広くプレイヤー間で認知されるのがふつうだった。だが、セオリーを中心としたFPSのありかたには、メリットとデメリットが存在するとけんき氏は考えたという。
見知らぬプレイヤー同士がマッチングしても、セオリーが知れ渡っていれば情報共有と連携が即座に可能となる。その反面、セオリーの固定化によりゲーム展開が毎回似通ったものになり、さらにセオリーが増え続けてその学習時間が優位性につながっていくため、新規プレイヤーの参入ハードルを上げてしまう。
このセオリーの固定化に向き合い、メリットを活かしながらデメリットを解消できるのが、自動マップ生成システムだという。
初見マップでは情報共有や連携がしづらいという点は、カウントダウン表示など多彩な機能を搭載したピン表示やマップに線などを書き込めるマップドロー機能といったコミュニケーション手段でフォローする。
このゲームデザインの結果、『Project F』は従来のような“学習量”ではなく、“学習速度”を競い合うタイトルになっているという。
自動生成されたマップの特徴をいかに早く理解するか。こういう学習速度が重視される側面に、従来のマップ研究のおもしろさがより概念的なものとして落とし込まれるため、FPSプレイヤーがこれまで感じていたFPSの魅力も損なわれることがない。
また、自動生成マップでは特定の場所が攻防いずれかで有利な地形になるなど、理不尽な構造も生まれうる。だが、毎回マップが変わるなら、その理不尽すらもおもしろさとして楽しめる可能性がある。
実際の対戦画面から、その魅力とコンセプトがより見えてきた
続いて、実況役として『レインボーシックスシージ』各大会ではおなじみのともぞう氏が登壇。エキシビションマッチの模様が上映された。
エキシビションマッチに参加したのは、いずれも実力と人気を伴う有名ストリーマー10名。各チームごとにボイスチャットで連携しつつ、それぞれが巧みなプレイで対戦を盛り上げてくれた。
まず防衛側チームが守る対象である“モノリス”をどこに配置するのかボイスチャットで相談。モノリスの設置場所はマッチごとに選択できるため、マッチごとにかなり異なるゲーム展開が見られた。
この1戦では“武器庫”が非常にモノリス防衛をしやすいマップ構造になった。両チームともにこの位置を軸に作戦立案。従来のFPSだとこうした強ポジションには眉をひそめがちだが、自動生成の一期一会を踏まえると、むしろこの強ポジションを活用した作戦の妙が光って見えた。
プレイヤーごとの創意工夫をより実現しやすくしていたのが、キャラクターが持つスキルだ。たとえば“Route”が持つスキル“パージボム”は、マップ上の壁や床を一部消滅させて通行可能にできる。
エキシビション内では、武器庫の直上にあたる2階の廊下にいきなり穴を開け、そこから全員でなだれ込んで防衛側を一気にせん滅するといった使いかたが見られた。
そこからさらに発展し、天井に穴を開けて突入しつつ突入地点に煙幕を張り、突入時の安全を確保するという作戦も。対抗策として“その煙幕内に毒ガスを散布する”というカウンター戦法がすぐに生まれるなど、本作ならではの攻防は見どころがある。
対戦中には、テレポート能力が意外と飛ぶ距離が短く予想外の結果になったり、ナイフによるダメージが思ったより低くて返り討ちにあったりと、試行錯誤しつつ戦術を洗練させていくストリーマーたちの奮闘が数多く見られた。
マップのその場での研究が進むごとに両チームの作戦が幅を広げ、武器庫が強いというセオリーがありながらも、毎回まったく異なるゲーム展開がくり広げられていく。
歴戦のストリーマーならではの巧みな戦術以外にも、苦し紛れに射撃で壁の向こうの敵を撃ってみたら「そこは壁抜きできないんです!」とけんき氏にツッコミを入れられたりといったコミカルな場面でも、各ストリーマーはしっかりと魅せてくれた。自由な発想をボイスチャットで提案しあう対戦模様から、本作を楽しんでいる模様もしっかりと伝わってくる。
気になるリリース時期は? パブリッシャーも募集中
エキシビションマッチの終了後には、けんき氏から本作の今後の展望がゲームディテールを中心に述べられた。
最近のFPSはキャラ特性重視の風潮があるが、それとは異なり、照準能力などのフィジカル面を重視したFPS本来の魅力を追求。海外プレイヤーからのフィードバック体制も構築中とのことだ。
また、気になるリリース時期については、パブリッシャーの有無によっても変わるようだ。開発費用との兼ね合いもあり、パブリッシャーがつかない場合は開発を一段落とし、年内リリースを目標としているという。