2022月9月15日~18日に開催中の“東京ゲームショウ2022”。その中でアニプレックスは、スマートフォン向けRPG『World II World(ワールド・ツー・ワールド)』(iOS/Android)を発表した。本作の開発は、『RPGタイム!~ライトの伝説~』(以下、『RPGタイム!』)で知られるデスクワークスも携わっている。

 そんな『ワールド・ツー・ワールド』のディレクターを務めるのが、『RPGタイム!』でもディレクターを担当した藤井トム氏だ。いったいどんな新作RPGになるのか、『ワールド・ツー・ワールド』に関する詳しい情報をインタビューにてお聞きした。

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藤井トム 氏(ふじい)

デスクワークス代表。盟友、南場ナム氏とデスクワークスを結成し、企画を中心に担当。(文中は藤井)。

今度の挑戦は2画面同時進行RPG!

――制作に9年かかった『RPGタイム!』が発売されて間もない中で、今回『ワールド・ツー・ワールド』が発表されて、とても驚きました。藤井さんと言えば、『RPGタイム!』を手掛けたことで知られていると思います。『ワールド・ツー・ワールド』がRPGなのは、RPGにこだわりがあるからなのでしょうか。

藤井単純にRPGが好きなことや、開発経験があるというのは、RPGを選んだ理由のひとつになるかもしれません。ただ、大きなところで言うと、本作は2画面でプレイするゲームだからRPGにした、というのが理由です。

――2画面、ですか?

藤井ええ。スマホを縦画面で持って、上を操作すると上の世界のキャラクターが動きますし、下画面ならば下のキャラクターが動きます。また、同時に操作することなども可能です。本作のジャンル名を“ニコイチRPG”にしている理由は、そこにあります。

――ニンテンドーDSなどの2画面ゲームハードもありますが、1画面で2画面を同時操作するというのはなかなか無いように思います。

藤井しかも、2画面で同じタイプのRPGが進行します。画面を分割しようというゲームアイデアはけっこう出るものなのですが、それを実現したタイトルはあまりないんじゃないでしょうか。まずは2画面で遊ぶことが前提にあって、いちばん活かせるのがRPGだと考えました。

――なぜ2画面のゲームを作りたいと思っていたんですか?

藤井『RPGタイム!』は約9年掛けて制作しました。そのあいだにも、新しいゲームのアイデアは考えていたんですね。その中で、2013年ごろにスマホの画面がどんどん大きくなっているのに、縦に長いゲーム画面を持て余しているタイトルが多かったと個人的に感じていました。縦長画面を何かに活かせないかと考えていたときに「縦持ちで2分割したゲームはおもしろそうだ。2倍おもしろくなるかも」と思い始めたんです。

――それが今回の『ワールド・ツー・ワールド』につながっていくんですね。

藤井はい、長年温めていたアイデアです。今回アニプレックスさんから新作ゲームを作りませんかとお誘いをいただき、ならば2画面のゲームだろうと『ワールド・ツー・ワールド』の開発が始まりまして。ほかにも候補はありましたし、2013年ごろに出したアイデアなので、すでに同じようなタイトルが発売されていたり、時代遅れになっている懸念点もありました。ですが、2画面というのはなかなかなく、さらにスマホ自体がより大画面化しているので、これは逆にいまに向いているなと思ったのです。

――2画面というのは、世界観設定などにも絡んでいるのでしょうか。

藤井本作は世界がふたつに分断され、滅びに向かっている世界です。分断された世界は争いや離反などが起きて、いずれ滅んでしまいます。プレイヤーはそれを食い止めるべく、ふたつに分かれた世界をひとつに導いていきます。そんなお話が上画面の世界、下画面の世界で同時展開されます。

 たとえば上の世界に住む機械の人たちがいて、下の世界は一般的な人間の世界です。機械と人間という別々の種族であり、住む世界も大きく違います。ですがふたつの世界に危機が迫っているので、プレイヤーの操作で力を合わせるようにしてあげよう、という感じです。

――なるほど。操作自体はタップして進むようですが、具体的にはどんなイメージなのでしょうか。

藤井ゲーム自体は会話パートがあって、ステージは横スクロールで進んでいき、敵とエンカウントしたらコマンドバトルと、シンプルです。ただ、それが上下で同時展開されます。どちらかの物語が、別画面の物語の先へ進むカギとなっている場合があるため、同時に読み進めてもいいですし、片方が終わってから進めるのもプレイヤーの自由です。

 ほかにも片方がバトル中に、片方のシナリオを読み進めるなんてプレイスタイルもいいでしょう。バトルが2倍起きるので報酬も2倍ですし、物語がふたつ展開されるのが、本作のおもしろいところだと思います。

――なんだか、かなり大変そうなゲームに見えてきます(笑)。

藤井“2倍おもしろくする!”をスローガンにしているのですが、プレイヤーが2倍大変になってしまうと本末転倒です。そこはかなり気にしながら制作しています。たとえば、上画面を進めていて下画面が放置していたら、下の画面を操作しないと「時間的にもったいない」という感覚になってしまいます。そのため、放置したぶんだけ経験値などが得られたりと、休んでいる画面もムダにならないようにしています。ちなみに、音楽は2画面同時に流れるのではなく、タップした画面の音楽が流れます。

――ああ、2画面ならではのBGMがミックスするような演出などもありそうですね。2画面の世界の物語を進めていき、最終的にはどうなるのでしょうか? 合流したりしてボスと戦ったり?

藤井その通りです。ふたつの別れているところが、ひとつになるというのはとてもカタルシスを感じる要素ですよね。もちろん1回会って終わりではないですし、必ずひとつになるというわけでもありません。いろいろな展開がありますので、ご期待ください。

――バトルもやはり、2画面でも展開されるんですよね。

藤井片方でバトルしながら、もう片方でバトルもできます。いわゆる“ながらプレイ”をする暇がないような操作も可能かと思います。オートバトルもありますし、バトル自体はシンプルですが、2画面連動要素があったりします。

 とはいえ、急いで遊ぶ必要もありません。本作はフレンドやギルドなど、ソーシャル要素がないシングルプレイ専用RPGです。もちろんSNSなどでの交流はあるかもしれませんが、ひとりでじっくりと遊んでみてほしいです。

――ストーリー、バトル以外の遊びの要素はあるのでしょうか?

藤井いわゆるミニゲームのような、『RPGタイム!』のイベント的なインタラクトできる要素もあります。たとえば「左手で△、右手で□を描いてください」といった片方だけを行うならとても簡単だけど、同時に行うと途端に難しくなるような、2画面だからこその遊びが味わえます。

――今回ブースに展示されているパネルを見ただけでもSF、王道ファンタジー、現代、時代劇、西部劇、スチームパンク的な世界が見えるのですが……。

藤井2画面で対立する構造を考えたときに、世界観が重要だと思いました。ですから、ロボと人間の対立のほか、時代劇と西部劇で“刀と銃どちらが強いのか”を争う世界にしています。また、異世界と現代で、現代の主人公が異世界に転移する、いわゆる“異世界モノ”がありつつ、異世界の主人公が現代の日本に行くという、ふたつの視点の異世界モノが展開されたりします。

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ブースにはおそらく各世界の主要人物たちのパネルが並んでいた

――展示の装飾などにジッパーが付いていたりしますが、何か深い意味があるのでしょうか?

藤井2画面を分ける境界線がジッパーになっていて、そこを開けると世界と世界をつなぐ境界の世界につながっているんです。

――なるほど……。『RPGタイム!』の印象が強いので、パッと見の印象では「今回のRPGはデスクワークスらしくないなあ」と思っていましたが、実際の中身はアイデアが詰め込まれたふつうではないRPGで驚きました。

藤井正直、『RPGタイム!』よりも、さらにチャレンジしているかと思います! 世界観ひとつ作るのも大変なのに、それがほかの世界と対立していて。しかも6つの世界があるので「もっと少なくしておけばよかった……」と思ったりもしていて(苦笑)。ですが、どうしてもやりたいストーリーがどんどん出てきてしまったんです。『RPGタイム!』を作っている最中に、いろいろな作品に出会いました。それを吸収して、うまく自分たちの物語として描きたいと思い、欲張って6つの世界を作ったのです。

――『RPGタイム!』と同じく、やはりアイデアでとにかく楽しませたいゲームになっているわけですね。

藤井ゲームとしての全体クオリティーというのは、どうしても大手のゲームメーカーさんには劣ってしまいます。ですが、アイデアならおもしろさを伝えられます。いままで誰も体験したことがないようなRPG体験、物語を表現できないかをつねに考えています。

――わかりました。スマホ向けRPG業界は正直群雄割拠の世界で、短期間でのサービス終了も珍しくないですよね。そんな中で、『ワールド・ツー・ワールド』は、どこが武器になると考えていますか?

藤井最近は新規タイトルかつオリジナルタイトルって、なかなかリリースされないと思っています。プレイヤーに求められているのかは別ですが、「スマホで新しいRPG体験がしたい!」と待っているプレイヤーは少なくないと思いますし、僕も遊びたいと思っています。本作は家庭用タイトルに寄った、シングルRPGです。これまでRPGを遊んできた方々や、自分に合ったRPGがない、という人にまず遊んでいただきたいです。究極を言ってしまうと「おもしろければ遊んでもらえるはず!」と思っているので、そこをまずは詰めていきたいです。

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2画面で同時進行するゲーム画面
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会話も同時展開
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ときには1画面に合流することもあるようだ

二兎を追って、二兎得られるRPGに!

――本作はアニプレックスとデスクワークスの共同開発、ということでいいんでしょうか。

藤井アニプレックスさんは『RPGタイム!』と同様に、パブリッシング(販売)を担当します。デスクワークスは、企画・シナリオを中心に担当しています。我々は正直、グラフィックとプログラムはあまり得意ではありません(苦笑)。ですので、今回は札幌にあるG-STYLEさんが開発協力、デザイン面は東京にあるHERMIT WORKSさんが担当しています。デスクワークスは大阪の会社ですので、全国各地に散らばっての完全リモートの開発スタイルになっています。

――本作は基本無料タイトルですか?

藤井はい、そうです。

――では、課金要素はどこになりますか?

藤井いわゆるキャラクターガチャになります。ちなみにキャラクターはシナリオ進行でも手に入ります。

――なるほど。サービス開始後は、アップデートで続々と物語が公開されていくようなイメージでしょうか。

藤井そうです。最初にある程度の話数は公開されまして、その後は週刊連載のイメージで、1週間おきに最新話が公開される予定です。そこで新たに登場したキャラクターがピックアップガチャになったり……という感じです。

――現状わかるのは6つの世界ですが、もし今後続いていったら世界が増えるようなことも?

藤井世界観が増えれば増えるほど、たくさんの物語が描けるので、チャレンジはしてみたいとは思います。ですがやはり、ひとつの世界を作るだけでもこれだけ大変だというのがわかったので、いまは6つの世界をより盛り上げることに集中したいですね。今後さらにサービスが続けば、検討したいです。ちなみにアイデアはまだまだあります(笑)。

――サービス開始時期はいつごろになるのでしょうか?

藤井 9月17日の配信番組をご覧いただければ、なんとなく掴めるかもしれません。ひとつ言えるのは、『RPGタイム!』のように約9年かかるみたいなことはないです(笑)。

――わかりました(笑)。では最後に、本作に期待を寄せる読者の皆さんにメッセージをお願いします。

藤井新しいRPG体験を、アニプレックスさんと開発チームで、現在鋭意制作中です。一粒で二度おいしい、一石二鳥で、WIN-WINな、みんなニコニコできる、一挙両得のタイトルになっています!! ぜひ応援をよろしくお願いいたします!!

※配信番組の詳細はこちら

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各世界のイメージとキャラクターたちがズラリ