元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長であり、編集部時代から現在に至るまでゲームプレイ日記やエッセイを執筆している大塚角満によるプレイ日記。Nintendo Switch、PC用ソフト『モンスターハンターライズ:サンブレイク』のプレイ日記。その第23回をお届けします。
◆ぴょーーー!!
その日は、週に一度の角満事務所の出社日であった。
コロナ禍以来、2年以上もリモートワークが続いているので家賃がもったいないんだけど、大量の荷物の置き場所になっているのと、たまにスタッフが集まっての会議やら、外の人を招いての打ち合わせをするのに持って来いの立地と広さなので、簡単に解約できないでいる。
そして、何より……!!
「おい!! 今日のメインの目的、何かわかっているやろな!?」
事務所に集合するなり同僚のたっちーが、鼻の穴を膨らませながら詰め寄ってきた。いつになく気合のこもった表情には、譲れない決意のようなものがにじみ出ていたように思う。
「え、えーっと、新規の案件の整理と、あと、記事のレイアウトもやらなきゃだっけ……??」
マジメに考えた回答に、たっちーは「ふんッ!」と鼻息を引っ掛けた。そして、戸惑う俺にこう言ったのである。
「なぁにがシンキアンケンとレイアウトや!! 違うやろ!! 今日集まった唯一の目的は……“わしのクエストを進める”やろが!! わしも早く、ゼル・メナをやりたいねんッ!!!」
だから……それは“メル・ゼナ”だって言ってるだろ!!! いい加減、良三さんに怒られるぞ!!!((゚Д゚;))
たっちーのモンハン記憶喪失はさておき、事務所をキープしておく大きな目的のひとつが、こうやって面と向かってゲームの協力プレイで遊べる環境を大事にしておきたいからだった。密になることを避けねばいけない昨今、昔のようにカフェや居酒屋で集まって協力プレイを……ということもなかなかできないので、ローカルプレイで遊ぶにはそれなりの場所が必要になる。そういう意味では自分たちの事務所は何の遠慮もいらない最高の“狩り場”なので、集まるたびに時間を取って協力プレイに勤しむことにしているのである。
「オンラインでも問題なく遊べるけど、やっぱり顔を突き合わせて狩ったほうが盛り上げるよなー!!」
たっちーがいっちょ前のことを言いながらクエストを貼り付けた。
見るとそれはマスターランクのティガレックス討伐で、場所は城塞高地となっている。
「こいつを狩ったら、いよいよメル・ルナが出るんじゃないかと思うねん」
しかつめらしい顔でたっちーが言う。
「メル・ゼナとルナガロンが混ざってるで」
エセ関西弁で突っ込みつつも、俺たちは元気に「一狩り行こうぜ!!」と声を合わせて城塞高地に向かったのだった。
そして始まったティガレックス討伐!
マスターランクなので当然危険なんだけど、ティガに関してはたっちーも何百匹と狩ってきているので、なんら問題はない。
……はずだったんだけど((゚Д゚;))
先に狩り場に着いた俺がオトモガルクとともにティガレックスの相手をしていると、向かいの席でNintendo Switchをガチャガチャといわせていたたっちーが突然、ハウリングを起こしたメガホンを思わせる素っ頓狂な声を発したではないか!
「ぴょーーーーーーーーッ!!!」
ビックリして思わず砲撃ボタンを押してしまい、ガンランスがボカンと1発暴発する。「うわぁ!! なんだなんだ!!!」。
あまりにも唐突な大声は、かつての編集担当・江野本ぎずものそれを思わせるものがあった。なんで俺のまわりの女性ハンターは、「ちょえええええ!!」とか「うぎゃあああああ!!!」とか、トノサマガエルを踏んづけたときのような声を発するのだろうか……。
「うっせえな!!w なんだよ!! ていうか、狩り場にも来ないで、何やってんだ!!!」
さすがに苦言を呈する俺。さっきから俺がひとりでティガレックス相手に立ち回っているというのに、たっちーは一向に現場に来ようとしないのだ。
するとたっちーは、「い、いや!!! ちゃうねん!!!」と戸惑いながら吠えたあと、つぎのようなよくわからない言い訳をしたのである。
「な、なんか、たまにあるんやけどさ! ぴょーーーーーッ!! ってわしの身体が飛ばされて、ヘンな場所に連れていかれることがあるねん!! なんやねんコレは!! わしはいま、どこにいるんや!!?」
何を言っているのか、さっぱりわからない。
「??? 何の話してんの??w いま俺たちは、ティガレックスを狩っているんだぜ??」
呆れて言う俺に、たっちーはさらにナゾの言い訳を被せてきた。
「そんなことわかっとるわ! でも、ヘンな場所に連れてこられてるねん! あれはトラップや!! 強いほうのハンターを異世界に飛ばして狩りから遠ざける、巧妙な罠に違いないで!!」
誰が強いほうのハンターやねん! だったら飛ばされるのは、俺のほうだろ!!
なんて言い争っているあいだにもティガレックス狩りは続き、
気付けば、
「あw みんないたwww やっと合流できたお^^;」
狩りが始まって10分が経過したころ、ようやくたっちーが現場に到着(苦笑)。
「遅れは取り戻す!!! うぉぉぉおおおおお!!!」
その後はふつうの狩猟シーンが展開し、
ティガレックスを捕獲してクエスト終了となった。たっちーの言う、“ハンターを連れ去るトラップ”の謎はそのままに……。
エルガドに戻ってきた後、たっちーがつぎの狩りの準備をしているあいだに、
「ちと俺、その謎を見に城塞高地に行ってくるわ」
と言って、ひとりで問題の現場に行ってみることにした。
たっちーがギャーギャーと喚き散らしていたのは……確か、エリア5のあたりだったかな。
駆け付けると……w
あ……w “勾玉草”が生えてるww
この勾玉草で大翔蟲を使うと、確かに「ぴょーーー!」もしくは「ぴゅーーー!!」と、遠くに飛ばされる。実際にここでも、
「ぴょーーーーーー……!」
俺は、大空を翔ることができた。大翔蟲だけに。
「し、しかし……!」
この勾玉草と大翔蟲の仕掛けは、『モンハンライズ』の時代から存在したものだ。つまり1年以上前から、ハンターにはおなじみのシステムになっているのである。当然、たっちーも『モンハンライズ』でさんざん遊んでいるので、これのことも知っているはずなんだけど……?
「な、なあなあ。さっき言ってた人を連れ去るシステムって、青い草みたいなヤツを触って、空に飛ばされるヤツのこと……?」
おずおずとたっちーに確認すると、彼女は「ぱぁぁぁぁ……!」と顔を輝かせた。
「せや!!! それのことや!!! わし、そこらにある植物とか虫にはすべて触る方針なので、その危険な草にもたまに触ってしまうねん!! そして、異世界に飛ばされるという……((゚Д゚;)) これ、『サンブレイク』になって導入された新たなギミックやろ! 危ないから、むやみに触らないほうがいいで!!!」
まるで、この世の真理を発見したかのような口ぶりで言うたっちーだったが……それ、1年以上も前からアチコチにありましたからぁぁあああ!!! なんでいまになって初体験してんだよぉぉぉおお!!!www
「あ、あうあうあう……!!」
俺が驚きのあまり言葉を失くしていると、件のたっちーは、
「あの浮遊感がヤバいねん……((゚Д゚;)) ああコワイ……((゚Д゚;)) 『サンブレイク』は、ナゾがいっぱいや……」
そう言って、静かに震えていたのだった(苦笑)。
続く。
大塚角満(おおつか かどまん)
元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。2017年に独立。編集部時代から現在に至るまでゲームエッセイを精力的に執筆し、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』、『折れてたまるか!』など、多数の著作がある。