心血を注いで作ったものなんだから、成功させたい。

 構想15年、開発期間9年という歳月に、心血どころか全財産を当たり前のように注ぎ込んで、文字通り一生懸命に作り上げられた『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』。 “ノートに小学生が手描きで自作したRPG”というコンセプトで、インディーゲームの数々の賞を受賞。その後、アニプレックスがパブリッシャーを担当し、Xbox Series X|S、Xbox One、Windowsで先んじて配信されることとなった本作だったが……2022年の8月以降、新たにNintendo Switch、PlayStartion 4、Steamでの配信が決定するやいなや、Nintendo Directでの発表で、大きな話題を呼びました。

 あれ? これってなんだか……と思った方は鋭い! 見渡してみるとインディーゲームの世界で、とてもよく似た経緯でヒットを飛ばした作品がありました。プチデポットのSF人狼的アドベンチャー『グノーシア』もまた、PlayStation Vitaで先んじて配信されたのち、Nintendo Switch版の配信開始とともに、さらに幅広いファンを獲得して話題を独占したタイトル。

 さらに。じつのところ、『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』を手がけたデスクワークスの藤井トム氏と、プチデポットの“めづかれ”こと川勝徹氏には接点があり、かつては名古屋の専門学校で講演企画も行われていたほどの仲でした。なんでも、藤井氏は川勝氏のインディーゲームを的確に認知してもらうために立ち回り、ときに奔走するプロデューサー的な視点と行動を以前から注目し続けてきており、『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』が世に放たれる際には、そのメソッドを勉強して活用したいと考えてきたのだとか。

『RPGタイム!~ライトの伝説~』トレーラー

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 前置きが長くなりました。というわけで、『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』がさらに幅広い展開を見せようとしているいま、そんなおふたりにプロデュースやインディー作品を作って成功させるために必要なことについて、存分に語らっていただきました。

 結論から言うと、この長きに渡った対談は「ものづくり」や、「自分や小規模な力だけど、幅広く多くの人に知ってもらって、楽しんでもらいたい」と何かしら考えたことのある人にとっては、すぐに役に立つ考え方のヒントが詰まった内容になりました。

 「ゲーム制作をしてみたい」なんて方はもちろん、それこそ「自作マンガ」や「自作の音楽」に「自作の小説」、「YouTuberになって動画配信をしたい」人も、「作る毎日」から、「できあがってから発信すること」まで。現場で携わってきたふたりだからこその、上っ面のきれいごとじゃない、リアリティとものづくりの共感があると思われますので、ぜひ使えるところはどんどん持って行っちゃってください。

 お互いが手がけた作品についてのお話から、次第にインディーゲームを取り巻く状況と、愛される作品を伝えていくこと、そしてビジネスについてのお話になっていきます。

グノーシア [Nintendo Direct mini 2020.3.26]

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『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談
『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井トム(ふじい とむ)

デスクワークス代表。クローバースタジオのインターンとして『大神』の開発に関わったのち、オリジナルRPGの企画を経てプレイステーション3『rain』のリードプランナーを担当。盟友、南場ナム氏とデスクワークスを結成し、企画を中心に担当。(文中は藤井)

川勝 徹(かわかつ とおる)

『グノーシア』、『メゾン・ド・魔王』などインディーゲームでヒットを続けているスタジオ、プチデポット代表。同スタジオでは、プロデューサー的な視点からチームのまとめ役と、インディーゲームの魅力を幅広く伝える役を担ってきた。(文中は川勝)

『グノーシア』と『RPGタイム!』の似て非なるところ。

藤井トム氏ご無沙汰してます。対談を受けてくださってよかったです。

川勝 徹氏トム君との対談依頼なら、断れないですよ。

藤井9年かかりましたけど、ようやくリリースできてこうして対談もちゃんとできるようになったので、うれしいです(笑)。今日はインディーゲームの企画からプロデュースまで、川勝さんだからこそ伺いたい話がたくさんありまして。

川勝ふたりではよくインディーゲームのプロデュース論とかを話しましたよね。でも、その後は『RPGタイム!』の開発でずいぶん長い間忙しかったでしょう。

藤井はい。いまはリリースしたんですけど、いろいろとやっていることもあったりしまして……まだ詳細はお伝えできないんですけど、きっと川勝さんも似た感じですよね(笑)。

川勝それはね。あはは、僕も言えないですね(笑)。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

川勝ところで、たしかトム君とはじめてお会いしたのはちょうどBitSummit(京都で開催されている世界規模のインディーゲームの祭典)に、『RPGタイム!』が出展したときでしたよね。彗星の如く現れていきなり賞をかっさらうっていう、とんでもない事件を起こしたときでした。

藤井そんな(笑)。BitSummitには川勝さんもいらっしゃっていたので、ご挨拶させてもらったのが最初でした。あのときは、少しお話をしただけだったんですが、 “インディーゲームを作って遊んでもらうこと”についての示唆にものすごく富んでいたというか、感銘を受けたんですよ。

川勝あの話のあとに続きを話そうということで、名古屋の学校の講演にそのまま連れて来て出演してもらったりもして(笑)。

藤井まさにそこではいろいろと戦略的なお話を伺ったんですけど、その時の川勝さんのお話は、今もたまに頭の中でリフレインしますから。最近では「あのとき川勝さんが言っていたのは、こういうことか!」みたいなことが連発しまして。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

リソースを見据えた作り方が重要。足し算で作る? 掛け算で作る?

川勝プロモーション的には通じることがあるかもしれないですね。でも、ゲーム部分としては僕らの『グノーシア』とトム君たちの『R P Gタイム!』って、ゲームデザイン上のアプローチがそもそもまったく違うんです。

藤井そうですね。『グノーシア』の場合はコアになるシステムを作ってから、そのシステムをいろいろな角度で見せていく作り方というか……。

川勝『グノーシア』は『人狼』風のゲームをコマンド型にした場合のシステムと演出で、できることをメンバーと考えて抜いて詰め込んだつもりで。あくまでも軸は変えずに限られたシステムの中で魅せ方の演出を変えて遊びを深くしていくやり方ですね。それが限界を超えたところで完成したという感じです。でも『R P Gタイム!』は1シーンごとにゲーム内容自体が違うでしょう?

藤井そうなんですよね。『グノーシア』がコアの遊びの掛け算だとしたら、『R P Gタイム!』は完全に足し算です。

川勝ですよね。だから僕からしたら『R P Gタイム!』って、『グノーシア』みたいな遊びがたくさん並んでいて、それを一つの大きな集合体にしているのだから、恐ろしいなと。まずはそれが印象的です。

藤井新人時代にゲーム制作現場の先輩から教えてもらったことでいまも心に残っている言葉があって、「僕が作るゲームや企画は足し算だ」と言われたことなんです。「プロのゲームクリエイターになったらかけ算の仕様とか仕組みを考えないと駄目だよ」と言われまして。

川勝そうなんですね。

藤井当時の僕は、RPGのアイテムシステム担当を任せられたら「よし! 面白いアイテムをたくさん考えるぞ」と100、200個の自分がおもしろいと思ったアイテムの企画を考えていました。先輩に「こんなにおもしろいアイテムいっぱい考えました、すごいでしょ!」と渡したんですけど、先輩はそれを見た瞬間に「いや、ちょっと……藤井君、これ誰が作るの?」って。

川勝うん。まあ、そうなりますよね。

藤井先輩には「お客さんは100、200個のアイテムを管理するのはいやになるから」と諭されて。

川勝つまり、まずゲーム開発現場で作業できる限界があるし、お客さんも把握できる限界があるんだから、なるべく少ないリソースで最大限遊んでもらうって考えになるということでしょうね。足し算だと足りないからかけ算にしなさいと。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井ええ。僕もそのときは「確かに、なるほどな」と思いました。かけ算のレベルデザイン。たとえば“アイテムの合成システム”みたいなものですよね。個々のアイテムを組み合わせることで大量のバリエーションが出せて、遊びにも戦略にも幅ができるとか。当時の自分はひとつの機能でも回復アイテム1個にしても段階を付けて、薬草からエリクサーから死者蘇生できるものまで同じルールだけのバリエーションが、とにかくたくさんあればいいものだと思っちゃっていたので。

川勝じゃあ、その後はなるべくその掛け算でおもしろさを膨らませるものを目指していたのでしょうか? でも……。

藤井そうなんです。掛け算を目指してみたのですけど、やはり心のどこかに「足し算でやってもおもしろいんじゃないの?」という気持ちが燻っていて。

川勝そうですよね。『R P Gタイム!』って、まさに足し算の怪物みたいだもの。

藤井はい。『グノーシア』のようないわゆる掛け算のゲームを作るのは本当に難しくて。そもそも、掛け算の組み合わせがまず膨大になる。しかも重要なのは「その中でおもしろいシチュエーションを幾つ作れるのか」とか、「ちゃんと体験として違うものが提供できるか」みたいなことのジャッジですよね。それってたぶん相当苦労されたはずだと思うんですけど……。

川勝確かにそこは妥協しなかったです。ずっと試行錯誤し続けたから、すごい時間がかかっちゃった(笑)。

藤井そこは同じかも(笑)。でも掛け算部分の試行錯誤に関しては、僕らはそれが無理だと感じていたので、むしろ大量に描ける鉛筆画でどんどんアイデアを載せていくという足し算の手法でできるだけその数を積み上げていこうと。で、やってみると開発すればするほど遊びは積み上がっていって、気がつけば「塵が積もって山となる」で、足せば足すほどおもしろくなる可能性をちゃんと感じられたんです。とはいえ掛け算の遊びの発明もしないといけないな、とは振り返ってみて強く感じているんですけどね……。

川勝いやいやいや! 『R P Gタイム!』は突き抜けてるから。もうすごいというか、おかしいレベルですよ。できないですもん。こんなふうにひとつひとつがおもしろいギミックを仕込み続けるとか。こんなの、どういうルールで作っていったのかさえわからん(笑)。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井本当にシンプルに「ノートに隙間が空いていたら、埋める」というたったひとつのルールを設けて、それを実直に続けただけでした。隙間がすべて埋まったら「これで終わりだ」って見えるので。

川勝ひたすらコツコツ埋めていったんだ。すごい(笑)。でも隙間を埋めておもしろくなるのって、きっとノートというフォーマットだからこそ成立するやり方だと思うから、この足し算を続ける作り方はそう真似できないですよ。普通のゲームなら、たぶんそれこそ「隙間を埋めすぎないようにバランスとかを考えなさい」というふうになるんじゃないですかね。

藤井そうですよね。僕らの場合はだんだんこだわりが強くなっちゃって「メッセージのテキストを3回ほど流す間にも、何かおもしろいことや動きが起きないとダメ」などを追加していきました。そのようにどんどんアイデアを足していったんですけど、アイデアを入れる場所がなくなれば、それはついにこのゲームの完成と言えることになるので、モチベーションは高いままだったんですよ。

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9年間の開発期間と周回プレイ6000回。クレイジー度が重要

川勝でも、それで9年かかってますよね?(笑)。果てしない。

藤井そうなんですよね。お待たせし続けちゃうことになってしまったんですが(苦笑)。でも、僕からしたらやっぱり『グノーシア』みたいな掛け算による膨大な組み合わせがあるゲーム開発の終わりっていうのは、途方もなく見えます。テストプレイとか想像もしたくないというか、どうやって完成させたんだろうと。

川勝テストプレイは議論パートとイベント条件の絡み、ゲームバランスのチェックが膨大で、6000回は周回プレイしました。当時は開発者全員でのテストプレイ6000回なんて当たり前と思ってたんですけど……リリースしたら、どうも当たり前じゃなかったらしいっていう……ずっとガラパゴスの如き引きこもった開発環境にいたので、配信後に世間の意見が聞こえてきたことでまるで都会に出てきてカルチャーショックを受けたみたいでした(笑)。ちょっとインディーとメジャー開発での文化の違いみたいなのが垣間見えるようで、おもしろかったですね。

藤井なるほど。

川勝だけど、『R P Gタイム!』も9年間もずっと鉛筆画のパラパラマンガを何千枚も描くとかそれだけでもうはっきりキャッチーで、もはや作品のひとつのチャームポイントですよね。しかもキャッチーかつ伝わりやすいメッセージだし。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井開発現場からお客さんたちの目に届く場所へと作品を出したときに「ちゃんと目立って、知ってもらえるのか」、「自分たちの作品と似たようなコンセプトのゲームが先に出ちゃったりしないか」という不安はずっとありました。

川勝わかります。

藤井そんな不安を抱きながら開発を続けるわけですけど、そうした中で思うのは、「やっぱり何かちょっとおかしいことをしないと、目立つタイトルになれない」ということなんですよね。僕らの場合は本当に必死にやっていただけで、結果的に作ってきたものの集積が「どうもまだ誰もあまりやってこなかったこと」になっていたので、よかったんだなって。

川勝はい。誰もあまりやってこなかったことを、狙ったわけでもなく。当たり前だと思って。まさに狂気です(笑)。

藤井そうかもしれないですね(笑)。

川勝恐らくトム君たちや、僕らプチデポットがやっていることって、一般的な商業開発のプロダクトスタイルとは真逆なんですよ、たぶん。でも一度やってみたかった、こういうやり方。

藤井たしかに。いまは僕だけが話しているんですが、デスクワークスのもうひとり、南場(ナム氏:トム氏と二人三脚で『R P Gタイム!』を作り上げた)とふたりで作り続けたわけですし。そんなの、ふつう商業開発ではありえないですよね……。

川勝そうですよ。いまは自分だけがフロントに立ってますけど、プチデポットのいっしょに作った仲間もきっと同じで。もうはっきりいって、ちょっとクレイジーなわけですよ。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

狂気を孕む。そのリスクを自覚できるかが重要。

藤井よく狂気って言われるんですが、自分としては自覚がないようなあるような……。

川勝たぶんそのクレイジーさの正体って、きっと何か一つ捨ててることなんじゃないかって感じるんですよね。

藤井ああ……。

川勝うちらの場合はね、生活に必要なお金を「ギリギリでいいから」って捨てている(笑)。開発時間を確保するために、大きく拘束されるものを捨てたわけです。だから、一般的な商業の視点からすると「捨てたものの代わりに得るものはこれだ」っていう価値観がそもそも違っているんだと思うんです。でもインディーでやっていくと決めた瞬間から「その違いに賭けていく」っていう覚悟? のような感覚は、すごく大事だろうなと思っていましたね。チーム全員が、きっと。

藤井たしかにふつうだったら僕らみたいに、会社を辞めてまで何年もこもってゲーム開発なんて、やらないとは思います(笑)。

川勝だからおそらくは「何かの理由のせいにして作られたゲーム」って、お客さんに見透かされるんじゃないかとも思うんです。おすすめはしませんが、人生を懸けて極限まで集中しないとできないことって絶対あって。『R P Gタイム!』もそうだけど、『Cuphead』とか『十三機兵防衛圏』もクレイジーなまでの作り込みを感じる。

藤井たしかに。やっぱり退路を断ってリスクを追えば追うほど……想いがどうしても籠っていくので。ちょっと古い考えかもしれないんですけど。でも退路を断つことは決してオススメはできないので、一般的な狂気とかクレイジーな世界に少しだけ足を突っ込みつつも、ギリギリのところで一般的な人としても重心を残すというか。

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川勝個人的な意見ですが、インディーゲームのファンの人たちって、驚きや新しい楽しさを自分で見つけたい、気付きたい人が多い気がしていて。そういうゲームって常識的なところからは生まれにくいかもしれません。お客さんにとって予想の範疇に収まるものは求めていないというか。ですのでそういう意味ではインディーゲーム界隈って、すごくクリエイターにも優しいお客さんが多い印象ですし。新しいものを開拓するのがデベロッパーで、それをゲームファンの人たちが応援してくれて、「いっしょに拡張している」という感覚がすごく強い。

藤井開拓感、たしかに! 開拓って大抵は平和にはできないような(笑)。もちろん進んだ先に何もない可能性もある……みたいなところも開拓感はありますし。

川勝インディーゲームに限らず、リスクの高いことをするっていうのは、はっきり言って制約が多いですよ。ゲームデザイン上でも作るリソース部隊もそんなに大きな人数が確保できない。となると、当然コンセプト重視のゲームになっていかざるを得ないと。

藤井大作はなかなか作れないので、逆に何かの要素を尖らせるしかないってことなんですよね。

川勝ひとりとか数人規模だと出せるクオリティは見えてきたりしますでしょ。なので、作ろうとするもののどこの部分を削って、どこに集中するか。結果的に発売時には、その部分が一番伝わりやすくなるっていうのはあると思います。じゃないと、そもそも完成しないです。

藤井まさにそういう考え方には川勝さんならではのプロデューサー力が入ってたって風に思っていて。

川勝なるほど。プロデュース力ではなくて、プロデューサー力(笑)。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井専門学校でゲーム作りを勉強していたんですが、ほとんどの人は学校で覚えた技術をちゃんと100%出そうとか、クオリティの高い作品を作ろうとか……もしくは何か好きなゲームのようなものを作ろうというパターンになっていて。

川勝はい。

藤井それって結局のところ、自分の持てるリソースを考えずに作ったりしてしまう原因なんですよね。まず必要なのは「自分が何ができて」、「どれぐらいのリスクを背負えて」、それを「どれくらいまで作品に込められるか」で。そして「その先に何があるのか」みたいなところまでをちゃんと考えるっていうのが“プロデューサー力”なんじゃないかって。これらを考えられれば、すごい幸せな開発が待っているだろうなと思うんです。あ、もちろん辛い日々の中に、ですけど。

川勝何にしても辛いですよね(笑)。わたしの印象ではインディーって開発チーム自体少ない人数ですから、みんなそれぞれ肩書はありますけれども、兼務がめちゃくちゃ多いんですよ。だからデザイナーがひとりしかいないからこそ、そのままアートディレクターにもなるし、小さなキャラクターデザインも全部担当することになるんですよね。プログラマーだってシナリオを兼務すればとか、それぞれがある意味ディレクターってのはポジションの中で代表をやっている。そういう意味では「どれくらいまで作品に込められるか」という点で担当している範囲が広い分、開発思想がゲームに色濃く反映されますし、ゲーム全体の統一感が強くでやすい。そこが少人数の一番の強みだと思ってるので、磨きまくる。

藤井「デスクワークスにはまだふたりしかいないから、そのプロデュース的な視点が持てないよ」というのはちょっと甘えだなと思えてきていて。むしろインディー界隈ではひとりですべてを担っている人もいるのだから、自分も頑張ってみようと思い直しました……。

川勝リスクを負うこととは別の話で、「自分に何ができるか」って部分だと、トム君たちはたしかプランナーだけのチームだったんですよね。

藤井僕たちはプランナーだけのチームだったので「そんなに難しいことはできない」と分かっていたんです。だからいまのようなちょっと独特のスタイルになったというか。お金や人がたくさんいれば、AAAタイトルのようなすごいビジュアルで3Dの作品も作れたかもしれないんですが、それは他の大きなメーカーがやっているので、いいかなって。

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欠乏も割と重要。インディー開発者にはお金はないほうがいい

川勝そうですね。個人的な見解としてコンセプト重視の場合、それに見合う以上のお金はなくてもよいと思ってます。本当に必要な要素だけをしっかり吟味して、集中させるという意味で。知恵を絞らないといけない環境に追い込むというか(笑)。もっと言うと、お金の力だけでは作れないゲームを目指したい。

藤井あはは。でも僕らも本当に開発中はお金がなくなってしまって出稼ぎに行く、みたいなことをしていました。

川勝それって食費がピンチになるってことでしょう。もはや人生どころか命削る勢いじゃないですか。無理はいけませんが、ある意味で研ぎ澄まされたアイデアを絞り出すための背水の陣的な環境も必要かもしれませんね。

藤井アイデアって選択肢がたくさんある状況で出てくると、あれもこれも付けたくなってしまいがちですからね。

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川勝ブレるんですよ、元の軸が。インディーゲームがワンアイデア的に尖った作品が多くなるのって、それが制約の中から生まれるからで。個人的にはお金の匂いをお客さんに感じさせすぎないほうがいいじゃないかと。さきほどから、プロデューサー的な視点という話が出ているけれど、「トレンドの要素を入れたら」、「人気キャストを起用すれば」といった価値を最大化するのがプロデューサー的な印象ではあると思います。ですがインディーの場合は、ぜんぜん違う気がしていて。むしろインディーファンのお客さんたちは、そうしたものが一瞬でも目に入ったら引いてしまうんじゃないかとさえ感じることがあります。プチデポットの場合はどういった経緯で、どの文脈から今回のゲームを作ることになったのか、そこに共感してもらえるのか、もし自分が一人のユーザーだったら何を聞きたいかを意識してお伝えするようにしています。そもそもがニッチなゲームなので。それも全ては制約から生まれるアウトプットの仕方ですね。

藤井そうなんですよ。制約と言えば、デスクワークスは自分と南場のふたりでのプランナー体制だからこその鉛筆絵ではあるのですが、南場さんはひたすら絵を描いて毎日しっかり上げてくるんですよね。それを何枚も受け取っていると「南場さんはこんなに制約があるなかでも、成果物をどんどんきちんとあげている。僕も何か積み上げるものを作らなくては」という、もはや使命感のような一念でがむしゃらに動いたりするなんてこともありました。

川勝それって「作業に応じて対価が支払われるから、仕事をします」という関係性を超えてる気がします。お金より心の対価というか。わたしたちプチデポットも作り手たちの結び付きとかが、お金ではないすごくデリケートな関係性の中でできてるので。

藤井ああ、そうですね。

川勝だから人一倍気を遣うし、すべてに一生懸命に当たらないとプロダクトは完成できないと思ってますね。

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インディーゲームは逆境がデフォルトだけど、それが重要。

川勝ところで、なんですけど。基本的にインディーゲームって、そもそもデフォルトで常に状況はよくないですよね?

藤井それは……そうですね(笑)。

“おふたり” わははは(笑)。

藤井 自分たちが主導でできる反面、リソースが少なくできることが限られすぎて、いつも逆境というか。

川勝 うん。周囲からは「自分たちで好きなものを作れる」素敵なところだ、とか。いろいろなことはいい感じに語られますけれども、現実に考えると思い通りにいかないことが多いわけで。環境も世間もそうですし。

藤井 知名度もそうですよね……。それにお客さんを待たせてしまうってこともある(笑)。って、笑いごとではないんですけど。

川勝 『グノーシア』もけっこうお待たせしてしまいましたから。わかりますよ。でもそういう制約だらけの中で、どうやってお客のコミュニケーションを取るか、とか。ずっと期待し続けてもらえるのかってことも含めて……デフォルトで考えて続けている状態を保ち続けるのが大事なんですよね。

藤井 本当にそうですよね……自分でも、インディーゲームを宣伝してちゃんと売っていくことを考えたときに、インターネットやインディーゲームの宣伝について書かれた本から情報を集めたのですが、そこには「こうしたらいいよ」というぼんやりとした手法はあるものの、結局はただ実践してもあまりうまくいかず。なので常に綱渡り感は感じていますね(笑)。

川勝 本当に発売するの? とかの危機感も含めてね(笑)。それ以前に、この内容でできるのとか、スケジュールなんてあるのかないのか。でもそれも込みでお客さんが楽しんでくれるようなものが……多分、インディーゲームと言われているかもしれませんね。

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アブナイけど、チャンス。そこでの飛躍こそが重要で、インディーにしかできないこと。

川勝そうしたものもエンターテイメントの一部としてゲームの中だけじゃなくて、外の部分も含めて危なっかしくてヒヤヒヤするものさえも全部込みで見てくれるかなって思ってますね(笑)。

藤井我々も発売については、きっとアブないって思われていたと思います(笑)。時を経過するほど心配する人たちは増えていくし、プロジェクト的には期待に比例してダメになっていくリスクも高まっていくという。完成するかしないかが一番難しくて。『R P Gタイム!』も最後は本当にアブなかったので、なんとかまずは完成できてよかったです。ほんとうに(笑)。

川勝でもほら逆境ってチャンスだったりするっていいますけど。インディーは常に逆境なので常にチャンスなんですよ。いわゆるメジャーなゲームとはまた違う文化や文脈があるから、普通の商業だったらあり得ないようなロードマップ……自体がむしろ存在しないか、もはやロードじゃなくて空飛んじゃうみたいな予測不能なやつ(笑)。それこそ『R P Gタイム!』なんていきなりマイクロソフトさんの巨大な発表会でドーンと発表されたりするし、パブリッシャーはアニプレックスさんがついてくれたりして。

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藤井戦略も何もない中に拾ってもらった感じなので、本当にありがたいですよ。

川勝多くのインディー開発者は驚いたんじゃないかなって思いますよ。ここまでいけるのって。『DAWNWELL』のもっぴん君なんて、Netflixでゲームを出しましたからね。「え!?」って思いませんでした?

藤井まさしく、もっぴんさんがNetflixのアプリという道を切り開いたことは衝撃でしたよ。僕らが「よし、作品を出そう!」と思い立った時にはすでにBitSummitが広く知られた存在だったし、東京ゲームショウでもスポンサーがついて出展させてもらえるかもしれない、みたいな仕組みがあったりして。すでにインディーの領域が偉大なる先達によって開拓されていたんです。

川勝メジャーなゲーム会社でも、なかなか聞かない話が出てきちゃうインディーって、そういうクリエイターの人たちが「どこまで行ってしまうんだろう」みたいな予想を超えた展開とが大いにあり得るんですよね。予定調和じゃないところの楽しさっていうがあって。というかトムくんたちの『R P Gタイム!』にも、まさにそれを見せつけられましたから。

藤井僕たちはすごく恵まれたなという風に思っていて。長期間開発をし続けてはいましたが、リリース自体は1作目なので、インディーというと後発で。すでに開拓されたところに乗っからせてもらったという印象なんです。だから今後はさらにつぎの人たちが通りやすいように、自分たちも道を切り拓いてみたいものだなと。もちろん、川勝さんもいくつも道を拓かれていると思うんですけど。

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かつての『グノーシア』といまの『R P Gタイム!』。状況の見極めが重要

川勝そういえば最初の方でゲームデザインとしては『グノーシア』と『R P Gタイム!』は大きく異なるという話をしましたけど、プロモーションの観点からするといまのトム君たちの状況って、国内だと僕らの『グノーシア』がたどった道と、少し似ている気がしてまして。

藤井そうなんですよね。

川勝一度リリースしたあとで、新たにNintendo Switchでの配信決定を発表したときの反響、すごかったんですよね。噂は聞いていて賞をたくさんもらってるゲームだけどまだ遊ぶ機会がないという人たちは、一回焦らされてる状況ですよね。で、ついにNintendo Switchに来るわけじゃないですか夏に。結果的にはPS Vitaで最初にリリースしたのちに、Nintendo Switch版を展開した『グノーシア』のときの流れのもっと大規模な形になっているみたいだから。

藤井おかげさまでNintendo Switch版の発表のニュースは、反響をいただけました。でもこれって流されていたら結果的に偶然そうなっただけで。そういった流れを自分でコントロールできればよいのですが……予測がつかないものでした。ただその波に流されながら、かつて名古屋で川勝さんから聞いていたお話を思い出して「まだまだ泳いでみよう」、みたいな(笑)。

川勝そうそうそう(笑)。

藤井『グノーシア』の前例があるおかげで僕らも期待しながら、まだプレイされていないお客さんたちに遊んでもらえるんじゃないかと見据えて行動できている部分もあると思います。ですので、これまた本当にありがたい、先人の道を歩ませてもらっているので、いまはすべてのインディゲーム開発者さんに感謝しかないです。

川勝ちょっと、めちゃくちゃ優等生じゃないですか、トム君。もっと深い闇を見せてください(笑)。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

『グノーシア』のシンプルな戦術。

藤井深い闇ではないものの、対談としてはインディーゲームを本気でプロモーションしていくということについてのさらに深めの話に突入してしまうかもしれないんですが(笑)。いま一度『グノーシア』のプロモーション戦略について伺っておきたいんです。

川勝 はいはい。

藤井川勝さんとお話した時は『グノーシア』がリリースされたばかりでしたが、『グノーシア』の最初のリリースはPlayStation Vitaでリリース当時のPlayStation Vitaはハードも円熟期に入っていた頃だったんですよね。当時、川勝さんにハード選びの理由を訊いたら、プロデューサー的な視点で「こうやって→こうして→こうすると→こうなって。多分、そのあとでこれをすると→こうなる、と思って」と、きっちり計算された戦略を説明してくださって(笑)。

川勝あのとき、そんなに話しましたっけ? 話したか(笑)。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井ものすごく細部にわたって計画をお話されてました(笑)。確かに説明を聞くと「なるほどな」と思えるんですけど、じつは心のどこかで「現実はそううまくはいかないんじゃないかな」って思っていた部分は少しありまして。

川勝それはそうですよね。

藤井けれど実際に『グノーシア』は、Nintendo Switchで配信されて、その時聞いたお話以上の勢いで広まっていきましたから……! それを見たときは思わず川勝さんのお話を書き留めたはずのメモを読みかえそうと、机をひっくり返して探したくらいで。そういった経緯もあって、いまの自分たちの状況が『グノーシア』と似ているのであらためてこの機会に伺っておきたくて。

川勝そうですね。さんざんトム君には講釈を垂れてしまったかもしれないんですが、じつのところ、そこまで計算……はしているけれど、その計算がうまくいくかどうかなんて、やっぱりわかりゃしないしコントロールできない。同じですって(笑)。

藤井いやあ、やはりそういうものですかね(笑)。でも実際に『グノーシア』の広まり方と、評価のされ方には印象深いものがありましたけど……。

川勝そういう意味において振り返るなら『グノーシア』の真の戦略というか、プロモーションしていく際のコアの部分には、決してブレなかったものはひとつあったかもしれないですね。それが戦略の基礎というか芯になっていたからこそ、想定通りに広まってもらえたのかもしれません。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

藤井(メモ帳を探しながら)それはまたしてもメモさせてください。

川勝(笑)。というのも『グノーシア』の場合はお客さんを信じていっしょに盛り上がっていけるんじゃないかって、ずっと考えていたんですよ。そもそもPlayStation Vitaで発表した瞬間から、僕らはずっとVitaのお客さんに楽しんでもらうって決めていましたし。そもそもの想定ユーザー層も、そういう方々に親和性が高く刺さるつもりで作っていたので。

藤井そうだったんですか。

川勝そうです。なので計画はいろいろと話したけれど、本当にたまたま開発が長引いてタイミングが遅れてしまっただけで(笑)。でも、最後までお客さんと約束したVita版の発売は守りたかったっていうのもあったし、まずはそのコアになる方々に“完全にいいもの”を届けたかったっていうのがいちばんにあります。

藤井それが根本にあるから、戦略は後からいくらでもくっつけられると。ああ……なるほどなあ。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

川勝そうです。もともと『グノーシア』の企画はPS Vitaだけで完結するつもりで立ち上がったものだったので。それまで何年もイベントに出展し続けて、応援してくれるお客さんがたくさん期待してくれるようになったんですね。そしてその応援も逆境になればなるほど、さらに高まっていったんです。リリース後はゲームハードに関する市況に関しても、新しいハードが登場して、そのお客さんからの移植要望が尋常じゃなかった……。そうした応援が高まっていくのを感じていたから「これはもうVitaだけでプロジェクトを完了するわけにはいかない」って心底思えたというか。

藤井名古屋でがっつりとインディーゲームのプロモーションについてお話を伺ったタイミングは、まさにそういう変化の時期だったんですね……。

川勝そうなんですよ。これまで名もなき『グノーシア』をVitaファンと共に積み上げてきた価値と想いをつぎに繋げたかった。そのタイミングではいろいろ作戦は考えていたのだけれど、まず大事なのはVitaと同様にちゃんと届けるべきお客さんにしっかり届ける。どんなコミュニティへアプローチするにしても、それぞれの要素を探りながら作品の魅力を話して、地道に伝えていく。これがすごく大事だなって思います。そもそもたくさんの人に遊んでもらおうっていうのは最初から思っていなくて、ものすごく一部の人にぶっ刺さるように作ろうって当初からメンバーと話していたんで。だからその人が本当にいいなと思ったら、人に言いたくなるくらい強烈な作り込みとコンセプトが必要だったわけです。中途半端は絶対ダメ。あとは「共感とクチコミ」を信じるっていう。無名であることを最大の武器にして、色眼鏡なしに強い開発思想と文脈で、ゲームそのものをストレートに伝えきる。

藤井インディーゲームについて調べると「開発にかけるのと同じぐらいに、良いプロモーションだとお客さんに思ってもらうための努力をしないといけないよ」っていう風に言われていたので、いままさに目から鱗が落ちてます。

川勝その代わり、例えば10000人のうちで100人をターゲットとしたら、狙った100人全員には必ず気に入ってもらう。……いや違うな、熱狂させるっていう。ただこれだけなんですよ。深くて、ものすごく狭い。それでも、じつはたくさんの人にちゃんと伝わるんだっていうのがわかったのはすごくよかったですし、幸運でした。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

おまけ “つぎ”のこと

藤井 僕は今日良いネタというか勉強の案をいただいたので、まずそれを早く覚えて実践したい気持ちでいっぱいです(笑)。最後にどうしても気になっているのが、やっぱりプチデポットさんの“つぎ”なんですよね。『メゾン・ド・魔王』も『グノーシア』も続編という選択肢もあるじゃないですか。プチデポットさん作品って『メゾン・ド・魔王』から『グノーシア』っていうこの振れ幅もすごい。これも、川勝さんの戦略の一つでもあると思うんですけど……。開発会社の続編に関しては、プロデューサー的な手腕っていうのが発揮されるところだと思っていて。とはいえ、ここについて話し始めると終わらない対談になるので、今回は無理なんですけど(笑)。

川勝 そうですね。やっぱりたくさんのものを連続で作ることができる生産体制がないので、ひとつ作ったコンテンツをたくさん長く愛されるようにっていうのはいつも気にしてます。具体的には「ゲームが消費されかけたとしてもゲームが自らコンテンツを自動的に生み出す」という仕組み作りですかね。ゲームもリリースされたあとで、一通りプレイして消費されて終わりになるものじゃなくて。ネタバレされようが何されようが、どんどん勝手にプレイヤーが楽しみを生み出し続けるようなものを。『メゾン・ド・魔王』、『グノーシア』はガラリと違うゲームでもあるけれど、消費されにくいコンテンツになっているといいなと。うーん……これまでの2作もメンバーとの総意で決めてきたので、この流れでつぎもまったく違うオリジナルゲームを作りたいですね。デスクワークスさんこそ“つぎ”の展開はどうなんですか?

藤井 ありがとうございます。いまは何も言えないんですけど、いい意味で期待を裏切りたい気持ちです。

川勝 リリースしたばかりなのにやっぱり何かしていそうな。でもその前に、いまは本当に『RPGタイム!』がすごい広がり方をするんじゃないかなと思っていて。ちょっとだけライバル心が芽生えそう。

藤井川勝 (爆笑)

川勝 だから半分応援していて、もう半分はちょっと悔しいって思ってます(笑)。

藤井 えーっ! 『グノーシア』を横目で見ていて、本当に羨ましいと思っていたので、今日川勝さんに悔しいとか言っていただけたら、今日の日記に書いておくほどの光栄ですよ。9年かかりましたけど、ちゃんとリリースできて本当によかったです(笑)。

『RPGタイム!』藤井トム×『グノーシア』川勝徹。9年開発にテストプレイ6000周回、インディー開発者はお金がないほうがいい。作ったものを広めるにはこうしたらよかったのか対談

商品概要と特典情報

タイトル

RPGタイム!~ライトの伝説~
(英題:RPG Time: The Legend of Wright)

ジャンル

手作りノートアドベンチャー

対応プラットフォーム
Nintendo Switch・PlayStation 4・Steam・Xbox Series X|S・Xbox One・Windows

プレイ人数
1人

発売日

2022年8月18日 … Nintendo Switch・PlayStation 4 ※ダウンロード版
2022年9月15日 … Steam
2022年10月13日 … Nintendo Switch ※パッケージ通常版・完全生産限定版
発売中 … Xbox Series X|S・Xbox One・Windows

価格

3,650円(税込) … PlayStation 4・Steam・Nintendo Switch ※Nintendo Switchはダウンロード版
4,950円(税込) … Nintendo Switch パッケージ通常版
6,430円(税込) … Nintendo Switchパッケージ完全生産限定版

完全生産限定版 同梱内容

・ゲーム本編パッケージソフト
・特製化粧箱
・特製ノート
・特製下敷き

CERO
12才以上対象

開発:株式会社デスクワークス
発売:株式会社アニプレックス

Twitter @RPGTimeJP

パッケージ版 店舗別特典を紹介

ANIPLEX+
描き下ろしイラストアクリルチャーム
※完全生産限定版・通常版対象

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Amazon(【Amazon.co.jp限定】商品のみ対象)
スマホ壁紙
※完全生産限定版のみ対象

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エビテン[ebten]
アクリルキーホルダー(勇者ライトドットビーズ)

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ゲームショップ1983
オリジナル定規(勇者ライト&レイ姫)

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Joshin
オリジナル消しゴム(ロゴ絵柄ケース)

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あみあみ
アクリルキーホルダー(貼り絵レイ姫)

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ビックカメラグループ
描き下ろしイラストA4サイズクリアファイル
※完全生産限定版・通常版対象

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ヤマダ電機
ケンタくんプロフィールカード

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WonderGOO
缶バッジ2種セット(ターンコイン:HERO & ENEMY)

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楽天ブックス(特典付きカートのみ対象)
マグネットシート2種セット(ロゴ&ステータスドットビーズ)

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イオン
「勇者ライトドットビーズ」ラバーストラップ

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※特典内容は予告無く変更になる場合があります。特典はなくなり次第終了となります。特典内容などに関する詳細については、各店舗にお問い合わせ下さい。