2021年10月6日、バンダイナムコエンターテインメントより『アイドルマスター SideM』(以下、『SideM』)の新作アイドルプロデュース&リズムゲーム『アイドルマスター SideM GROWING STARS』( 以下、『サイスタ』)がスマートフォン用アプリとして配信開始された。

 『SideM』としては、2017年8月にサービスがスタートした『アイドルマスター SideM LIVE ON ST@GE!』(以下、『エムステ』。2021年8月をもってサービス終了)ぶりとなる、シリーズ3作目のタイトル。新ユニット“C.FIRST(クラスファースト)”が仲間入りした新生315プロダクションで、新たな物語が楽しめるほか、『SideM』の楽曲でリズムゲームを堪能できる。

 今回は配信を記念して、『アイドルマスター』(以下、『アイマス』)シリーズのゲームを統括する三本昌史氏と、本作のプロデューサーを務めた石澤雪枝氏にインタビューを実施。本作の開発経緯や、こだわったポイント、新ユニット“C.FIRST”のコンセプトなどを伺った。

※本記事は週刊ファミ通2021年11月11日号に掲載したインタビューに加筆、修正を行ったものです。
※本インタビューは10月上旬に実施しました。

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三本 昌史(みもと まさし)

『アイドルマスター』シリーズ ゲーム統括
『アイマス』シリーズのゲーム統括を担当。本作ではその立場から、石澤プロデューサーを全面的にサポート。作品のコンセプト作りや制作、宣伝、コラボ、一部広報まで、多岐にわたってサポートを行っている。(文中は三本)

石澤 雪枝(いしざわ ゆきえ)

『アイドルマスター SideM GROWING STARS』プロデューサー
『サイスタ』のプロデューサーに抜擢。プロデューサーとして、作品の立ち上げにいちから携わるのは今回が初めてとのこと。プロデューサーとして関係各所との調整を行っている。(文中は石澤)

『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!

『SideM』をさらに盛り上げるべく新たなプロジェクトが始動!

――本作を開発することになった経緯を教えてください。

三本まず全体のお話をすると、『アイマス』は16年の歴史があります。僕は初期メンバーではないので、先輩から受け継いだバトンを後輩につないで、これからも『アイマス』が続いていくよう長距離走を走っていくようなイメージで各種プロジェクトに関わっています。『SideM』も皆様の応援のおかげで7周年を迎えましたが、ほかのブランドと同様に、後輩にバトンをつなぎながら、プロデューサーの皆さんにこれからもずっと『SideM』という作品を楽しんでいただきたい、という想いから、今日ご紹介する石澤と、新作の制作を決めました。

石澤今回このタイトルの立ち上げから任せていただくことになり、長く愛されている『SideM』に対する責任は重く感じました。すでに7年もの間みなさんに愛されてきたコンテンツですから、いままでの歴史を大切にしながら、今作ならではの新しさやアップデート感をどうやって出すか、という点にはかなり悩みました。最終的には開発チームともじっくり話し合って、いままでの『SideM』を大切にしながら、新しいプロデューサーさんもいっしょに楽しめるようユニットをひと組加えて、新たな315プロダクションの物語を改めてユニット中心に描こうと決めました。

――『サイスタ』はどれくらいの期間で開発されましたか?

石澤コンセプトや企画決めはある程度前から細々と動き出してはいたのですが、開発が本格的にスタートしてから完成まではスムーズに進みました。

三本最初のコンセプトを決めるのに時間がかかったよね。

石澤そうでしたね。何度も作っては捨てて、をくり返してどのようなゲームにするか想像をふくらませました。

――なるほど。やはり作品の肝となるコンセプトを決めるのに時間がかかるんですね。

石澤最初のコンセプトや企画決めには時間がかかりましたが、そのあとは比較的スムーズだったと思います。コンセプト決めで時間がかかったのは、やはり『サイスタ』スタッフの作品に対する強い情熱ゆえですね。とはいえ要所要所時間が掛かってしまうこともあると予想していたので、余裕を持ってスタートしたつもりだったのですが、それでも後半は調整に苦戦することもありました。何かあると、三本にも相談して。

三本僕は、開発の最前線に立つプロデューサーが、意思決定していくべきと考えていますし、「石澤さんが決めていいよ」って言うだけでしたが。

石澤そんなことはないですよ!(笑)。とても頼りになる上司でした。

――(笑)。ジャンルをリズムゲームにした意図は?

石澤前作の『エムステ』にもリズムゲームの要素は入っていましたが、多くのプロデューサーから、『SideM』で本格的なリズムゲームをプレイしたいという声をいただいていました。こうしたリクエストもあって、新作はリズムゲームにしよう、となりました。

――プロデューサーたちの意見が反映されたんですね。本作を制作するうえで、とくにこだわったポイントや注目してほしいところを教えてください。

三本本作の制作を進めるにあたって、改めて『SideM』のよさを言語化するところから始めました。そして作品のよさを、奇をてらった変化球ではなく、直球でプロデューサーの皆さんの期待に応える製品をお届けする方針で制作を進めました。

石澤今日は開発チームを代表してお伝えするのですが、今作でとくに注目してほしいところは、やはりビジュアルとストーリーです。まずビジュアルですが、今作では2D表現にこだわっていて、たとえばストーリーパートでは3Dでは表現しづらい細かな感情が伝わる表情や動きを作り込んでいます。全体的にアイドルたちが実在すると感じられることを大切にしながら、一瞬一瞬が心に残るシーンを作ることが目標です。アイドルフォトでは臨場感のある構図と印象的なライティングの再現にもこだわっています。

――なるほど。

石澤つぎにストーリーについてですが、『SideM』の明るくて前向きな世界観を引き続き大切にしながら、ユニットひと組ひと組、アイドルひとりひとりをさらに丁寧に描いていこうとしています。新ユニットの“C.FIRST”が加わることで、また少し違った315プロダクションの物語が紡がれていきますので、皆様に注目してもらえるとうれしいですね。

『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!
『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!

さまざまな苦難を乗り越えて新ユニット“C.FIRST”が誕生!

――C.FIRSTの話題が出たので、この新ユニットを追加した経緯をお聞きしたいです。

三本『サイスタ』は、これまで支えてくれたプロデューサーの皆様に対して、恩返し的な位置づけの作品であると同時に、新しいプロデューサーが『SideM』に初めて触れる作品でもあります。そこで両者をつなぐと言いますか、同じ視点で作品に触れてもらう役割を、C.FIRSTに託しました。

石澤三本がお伝えした通り、『SideM』は今年で7周年を迎えています。本作からプレイする新人プロデューサーさんと、同じ歩幅で歩いていける新アイドルがいたほうがいいよねと考えて追加しています。

――本作と新人プロデューサーをつなぐ架け橋として、とても重要な役割を担っているのですね。C.FIRSTのコンセプトは?

石澤C.FIRSTは生徒会長アイドルとしてデビューしていますが、最初は騎士をモチーフにしてはどうか、という話が上がっていました。新ユニットは、アイドルがプロデューサーの存在を強く意識して「まかせろ」、「ついてこい」と、引っ張ってくれる子たちにしたいと考え、騎士のモチーフを閃きました。ですが、騎士だとファンタジー感が少し強く、王子様がモチーフのBeit(バイト)に衣装が似てしまうのではないかという懸念があって……。それに力強く護ってくれるイメージも、FRAME(フレーム)とかぶってしまうのではないかと感じました。

――個性豊かなアイドルが大勢所属している、『SideM』ならではの悩みがあったと……。

石澤それに大人の男性が多いのも、315プロダクションの特徴です。新アイドルの魅力点を“大人の頼もしさ”においても、これもほかのアイドルに埋もれてしまう……という悩みもありました。そこでユニットの年齢をハイティーンに設定し、“力強く、護ってくれる、頼もしい存在。だけど、子供。”というアンバランスさのあるユニットにしようと考えました。このイメージにピッタリと合ったのが、生徒会長のモチーフだったんです。

――ただ、3人とも元生徒会長という設定は驚きました。学校が違うのも珍しいなって。

石澤3人のパワーバランスを等しくしたかったのでこうなっています。スタッフ一同真剣に検討した結果、満場一致で3人とも生徒会長にしようと決めたのですが……。多くのプロデューサーが、3人とも生徒会長という設定にビックリしたようですね。反響を受けてなるほど、と思いました(苦笑)。

――個性的なアイドルが登場する『SideM』らしくて、とてもいいと思います! 元生徒会長という経歴から、衣装には学生服のようなデザインを取り入れているのですか?

石澤学生服と気づいていただけてうれしいです(笑)。C.FIRSTの衣装はバンカラ風と言いますか、学生服を意識していて、そこに騎士のようなキリっとした強さも感じられるようにしました。ただ、衣装が完成するまではけっこう時間がかかりました。先ほどお話しした通り、関係者たちは全員、『SideM』への愛が強いですから、衝突することもありました(苦笑)。意見をまとめるのはたいへんでしたが、その分よいものができたので、結果としてはよかったと思います。たいへんでしたが、関係者の皆さまには本当に感謝しています。

『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!
天峰秀
『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!
花園百々人
『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!
眉見鋭心

――ステキな衣装ですね。C.FIRSTのメンバーである、天峰秀、花園百々人、眉見鋭心の3人の特徴も教えてください。

石澤センターの天峰秀くんは、何でも器用にこなすクールな男の子です。さまざまなことを万能にこなし、自信に満ち溢れていて強気な発言が目立つ一方、ストーリーを読み進めるうちにある種、年相応の迷いを見せることもあります。また、花園百々人くんは、小悪魔な男の子を目指して開発がスタートしました。にこやかでまわりの人から愛されているのですが、じつは自分の本心を覆い隠してしまい、いろいろと抱え込んでしまうところもあります。最後の眉見鋭心くんは、大物俳優を両親に持つ芸能エリート家庭の出身です。非常に頼もしくてカリスマ性もあるので、周囲からは芸能界でのさらなる活躍を期待されていますが、彼は芸能人になることに葛藤があります。

――3人ともいろいろな理由を抱えているのですね。ちなみに、新ユニットの中で、初期設定から大きく変わったアイドルは?

石澤花園百々人くんですね。小悪魔ということで、最初はプロデューサーへの好意を前面に押し出したアイドルにしようと考えていましたが、彼の設定やストーリーを掘り下げていくうちに、心に抱えているものが大きくなったと言いますか……。詳しくお話するとネタバレになってしまうので、気になる方は実際にストーリーを読んでみてください(笑)。

――わかりました(笑)。リズムゲーム部分に対するこだわりを教えてください。

石澤本作はリズムゲームということで、いかに気持ちよく遊んでもらうかにも注力しました。担当者のこだわりや遊び心も発揮してもらっています。譜面では、リズムアイコンを叩いているときに歌っているような感覚でプレイできるような、メロディーラインにリズムアイコンを配置しています。

――お話をお聞きして、すべての要素にこだわって開発されたことがよくわかりました。

三本私たちも自信を持って制作を終えられた手応えを感じていましたが、プロデューサーの反応を見るまではドキドキしました(苦笑)。いまのところ好意的な意見を多く見かけて安心しています。

石澤今作は開発のさまざまなタイミングでユーザーインタビューを行い、またいままでいろいろなタイミングでいただいていたご意見を参考にしながら制作やプロモーションの方針を決めていきました。スタッフのこだわりや努力ももちろんありますが、このようにポジティブなご意見をたくさんいただけるタイトルになったのは、皆様のおかげです。

――好評と言えば、315プロダクション お仕事コラボキャンペーンも意外なコラボ先が多くて、プロデューサーの皆さんが喜んでいると思います。ファミ通の表紙を、お仕事として、天道輝、天ヶ瀬冬馬、天峰秀の3人が飾ってくれる施策も行いましたが、キャンペーン全体の手応えはいかがですか?

石澤反応は非常によかったと感じております。もともと、315プロダクションのアイドルを通して世の中に元気を届けたいという気持ちから企画を立ち上げましたが、正直、最初は応募があるのか不安でした。ですが、会社を上げて全力でアピールを行ったことで、50社以上からお問い合わせをいただき、本当にありがたく感じています。ご提案いただいた中には、アイドルたちの前職や経歴を活かしたアイデアもあったので、実現できてうれしかったですね。今後もどんどん発表していきますので、ぜひご期待ください!

『サイスタ』開発者インタビュー。『SideM』の新作にかける熱い想いを『アイマス』シリーズのゲームを統括する三本昌史氏とプロデューサーの石澤雪枝氏に直撃!

――コラボの詳細も気になりますが、『サイスタ』のアップデートの予定など、ゲーム内の今後の展開も気になります。こちらお話しいただけることはありますか?

三本じつは、『サイスタ』では、そう遠くないうちに、アイドルたちをもっと魅力的に表現するアップデートも計画しておりますので、そちらの反応も非常に楽しみです。

――おぉ! 可能でしたら、計画についてもう少し具体的に教えてください……!(※本インタビューは10月上旬に実施しました)

石澤そうですね……。もう少しだけお話すると、2D表現に力を入れた3Dのライブを実装する予定です(※11月10日にゲーム内に実装された“3Dライブ”のこと)。

三本手前味噌ですが、現段階で『サイスタ』は100点の作品だと思っています。この点数を120点、130点に高めるアップデートが、このセルルックの3Dライブになります。まずはサイスタのストーリーやライブでアイドルへの理解を深めてもらい、3Dライブで彼らの魅力を掘り下げる、というのは最初から決めていました。僕たちとしては、ゲームで学んだ知識で3Dライブを観るとエモい。3Dライブでアイドルたちの新たな表情を観てもらい、もう一度ゲームに戻るとさらにエモい。そんなサイクルで、『サイスタ』をより深く楽しんで欲しいと考えています。ただ、3Dライブを作るには時間が掛かるので、最初のうちは不定期での実装になると思います。

「アイドルマスター SideM GROWING STARS」3Dライブ C.FIRST「We’re the one」

――『SideM』の今後の展開から、ますます目が離せませんね。

石澤今後も引き続き皆様の意見を取り入れながら、アップデートを続けていきたいと考えています。私たちといっしょに、『SideM』をますます盛り上げていきましょう!

三本これからもプロデューサーの期待に応えられるように、開発スタッフ全員で力を合わせてがんばっていきますので、応援をよろしくお願いいたします。

週刊ファミ通2021年11月11日号(10月28日発売)では『サイスタ』配信記念特集を掲載

 10月28日に発売した週刊ファミ通2021年11月11日号にて、本インタビューを含む特集企画を掲載。『サイスタ』に登場する全ユニット&アイドルの紹介や表紙を飾った天ヶ瀬冬馬、天道輝、天峰秀へのインタビューなどを24ページにわたる特集となっている。

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