ユービーアイソフトより、2020年11月10日に発売されたプレイステーション4、Xbox One、Xbox Series X、PC用オープンワールドアドベンチャー『アサシン クリード ヴァルハラ』(PS5版は11月12日発売)。

 『アサシン クリード』史上もっとも荒々しく、アクション要素にあふれたシリーズ最新作で、プレイヤーはヴァイキングの戦士である主人公・エイヴォルとなり、仲間を率いてイングランドの地を目指す。

『アサシン クリード ヴァルハラ』開発者・歴史家の発言から、本作のヴァイキング・ファンタジーを知る。主人公エイヴォルの目を通して、彼らの戦い、歴史、信仰を体験
『アサシン クリード ヴァルハラ』開発者・歴史家の発言から、本作のヴァイキング・ファンタジーを知る。主人公エイヴォルの目を通して、彼らの戦い、歴史、信仰を体験

【吹替版】『アサシン クリード ヴァルハラ』ストーリートレーラー

 本作の発売に合わせ、開発者・歴史家が本作を語るオンラインイベントが開催。そこで挙がったおもなトピックと、彼らの発言をピックアップしてお届けする。

■出演者

  • Julien Laferriere(プロデューサー)
  • Darby McDevitt氏(ナラティブディレクター)
  • Philippe Bergeron氏(レベルデザインディレクター)
  • Raphael Lacoste氏(アートディレクター)
  • Thierry Noel氏(歴史家)
  • Lucie Malbos氏(仏ポアティエ大学にて教鞭をとるヴァイキング時代の専門家)
  • Ryan Lavelle氏(英ウィンチェスター大学教授。中世初期の歴史専門家)
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本作におけるヴァイキング・ファンタジーについて

本作のテーマになぜヴァイキングを選んだのか?

Julien ヴァイキングがすばらしい題材だからだ。長いあいだヴァイキングをテーマにしたいと思っていたし、ファンからの要望もあった。『アサシン クリード オリジンズ』の後、材料となるものがたくさんあり、会社の上層部が賛成してくれるかどうかはわからなかったが、リサーチから得たキーとなる4つの瞬間を大きなポスターにしてどんな『アサシン クリード』になるのかを表現し、パリに送ってプレゼンしたところ、1時間ほどで決まり、これがすべてのスタートとなった。

ゲームの規模はどのように決めたのか?

Julien 前2作での経験からすでにいろいろなことがわかっていた。巨大なオープンワールドが好まれており、プレイタイムが伸びていること。プレイヤーは1時間ほどプレイした後には多様性や新鮮さを求めるようになること。ロケーションにもエネミーにも多様性を持たせなくてはいけないし、サプライズも必要だ。そこで早期からリサーチとプロトタイプの制作に着手した。バラエティを増やすために設定やクエストなどを検討し、プレイヤーが長く楽しめるよう心掛けた。

『アサシン クリード』として継承すべきことと、本作独自の部分があると思うが、これまでのシリーズとの違いは?

Darby いちばんの違いはストーリーをどのように語るか。ふつうはクエストに沿ってゲームの核心につながる主要な道があり、ヒーローがいてそのキャラクターの性格に合ったサイドクエストが用意される。ヒーローがいろいろな人を助けたりするのも自然だ。だが、本作ではプレイヤーは他国を侵略する側なので、メインストーリーがあって、ワールドを探索する中でサイドクエストをこなしていく形ではうまくいかないと思った。

 ヴァイキングがエイヴォルの助けを求めるなどの設定はできるが、サクソン人たちや他の英国に住んでいる人たちのことも知りたいはずだ。またアイスランドのヴァイキング・サーガをモデルにしたいとも思った。ヴァイキングのサーガは、いくつかのエピソード的なコンテンツになっている。このふたつを検討して、多くのエピソード的コンテンツを考えた。ひとつのテリトリーに入って3時間ほどのストーリーを経験し、クールで壮大な映画を経験した感覚で定住地に戻る。これは、とても満足感があると思う。

 そしてエピソードを進めていく中でワールドイベントがあり、そこでクレイジーでおもしろいキャラクターと出会い、明るいムードがある。メインのストーリーとはまた違う方向に持っていけるので口直しにもなる。その後はまた、メインに戻る形になるので、それもまた新鮮に感じる。エイヴォルのクエストは定住地、クラン、協定に関したものだが、すべてを発見してほしい。このゲームはサプライズと壮大なストーリーテリングのバランスがうまく取れていると思う。

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男女どちらでもプレイを始められるが、途中で切り替えることもできるというのは最初から計画していた?

Darby このシステムは『アサシン クリード』では『オデッセイ』から可能になり、評価された。これをさらに押し進めたいと思ったので、男女両方のアイデンティティを持つのはどうか。そして、それがストーリーの一部になっていたら……と考えた。

 シリーズはSFでもあり歴史的なものでもあり、男女を切り替えられるのは、おもしろいやりかただ。同じストーリーをプレイできるが、男女を切り替えながらプレイすると、ゲーム全体の底にあるミステリーに触れることができる。ゲーム全体を理解するために必要なものではないが、スパイスが加わる。

Julien このフィーチャーのおかげで作品の幅が広がった。きちんと伝承に沿うというシリーズの核はしっかりと維持していながら、男女を入れ替えることができるのでカジュアルプレイヤーも楽しめる。

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ヴァイキングの雰囲気をリアルに感じられる世界はどう作ったのか?

Darby まずはおもな資料となるアングロサクソン年代記、アイスランド・サーガからテレビ番組、誰も知らないヴァイキング映画まで調べ上げ、事実とフィクションを整理し、1年後にはここからどんな題材を取り上げるかを掴むことができた。この作業を終えて、ヴァイキングになるとはどういうことかを体験するために旅に出た。

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この旅のハイライトは?

Darby ロングハウスでの経験。ゲストとして加わり、暖かい飲物を飲み、毛布作りなどを経験してその当時にいるような感覚を味わった。

Philippe 外洋での釣りに出たが、とても寒かったのでロングハウスへ戻って、暖かい食べ物や着替えに感謝した。ノルウェーは魔法のような不思議な場所だ。スキーに行った時も同じように感じるが、それを10倍にしたような感じで、超現実的な感覚。

Raphael アイランドはすばらしかったし、フィヨルドへの旅もよかった。こういう自然を人工的に作ろうとすると誇張したものになるが、自然は我々の想像を大きく超えたものを作っていると感じた。すべてに寛容な自然のスケールを感じることができ、その経験を持ち帰ってゲームに活かすことができた。

Thierry 毎日さまざまなアクティビティを経験したが、ひとつひとつに価値を見出した。パンを作り、ロープを編むこともしたが、材料は貴重であり、周囲にあるものすべてを大事にしなくてはいけないことを実感した。

この旅を経験したことで、ゲームのアート・ディレクションやゲームの外観は変わったか?

Raphael 英国とノルウェーに行って、既成概念にとらわれない方法を学んだ。資料の中では彩度の低い風景の中でヴァイキングがユニフォームや皮を身に着けているのをよく目にするが、実際に現地を訪れてみると彼らはじつにカラフルな世界にいて、美しいものを作っていたことがわかった。ここからビジュアル・ディレクションが大きく変わったと思う。木々の彩度の違い、不思議な体験は、チームにとってすばらしいインスピレーションになり、ヴァイキングに対する既成概念から離れることができたと思う。

ヴァイキングの雰囲気を短い言葉で表現すると?

Philippe “コントラスト”。昼間は戦士として戦い、汗まみれになり、汚れて家に帰れば考える時間があり、美しいもの、暖かいものがあり、そして家族や友人がいる。このようなコントラストの連続が、旅の印象として残った。

Julien ヴァイキングは神秘的でなければいけないと思っている。神話とリアリティーの境い目がぼんやりしていて、ノルウェーの雄大な場所から英国のストーンヘンジ、ローマ遺跡の上に作られたロンドンまで、ひとつひとつのモーメントにある神秘主義、超自然的なものは、我々が作りたいヴァイキング像にとって欠かせないものだった。

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ヴァイキング世界の歴史的構築について

ゲームでは再構築された居住地が見られるが、このようなワールドを作るためにどんな資料を使ったのか?

Thierry 年代記、サーガ、考古学資料、そして専門家の意見を参考にした。

Darby 資料がない30年間のギャップもあったが、こういう部分は自分たちで埋めることができるのでやりやすい。

Raphael 歴史の枠組みの中でこうであったかもしれないという可能性を検討することができる。名前と日付しかわからなかったりするが、内容を埋めていくのは楽しい。

ジョン・クロード・ゴーヴァン(歴史家)と仕事をすることで、ゲームにどのような影響があったのか?

Ryan 彼は歴史家であり、優れた水彩画家でもある。『オリジンズ』では、異なる都市や村のロケーションを生き生きと描くために協力してくれた。本作でもいっしょに仕事をすることになり、さまざまな都市や居住地を作る手助けをしてくれた。

彼から得たどんな情報がインスピレーションをかき立ててくれたのか?

Ryan 何もない真っ白なページからスタートして、特定の場所の地形、生物体系から制作していくが、苦労するところもある。デザインするうえでゴーヴァンはいろいろな問題を解決する手助けをしてくれた。多様な文化とそのぶつかり合い、ローマの遺跡、サクソンの建造物など、歴史の層のおもしろさをこのゲームの中で経験できるようにした。

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地図は主要な資料だが、居住地がどうだったかを知るには何を使ったのか?

Raphael 英国にはとても役に立つ文書がある。11世紀の終わり、ノルマン・コンクエストの始まりのころには、すべての村や居住地の広さや家族構成を記載した土地台帳(ドゥームズデイ・ブック)があった。ウェセックス・エリアやヴァイキングの居住地であるデーンローも含まれる。アングロサクソン時代の興味深い資料は、一定の土地について言葉で説明した地図だ。たとえば「ある木から小川まで」というように境界線を説明している。

本作にはすばらしいロケーションがたくさんあり、実際にある場所から刺激を受けているものもある。これらについて話してほしい。

Raphael ノルウェーではタイミングよくオーロラ・ショーを見ることができた。実際のオーロラは想像よりずっと美しかった。ゲーム内のオーロラが正しい色になっていて、記憶に残る大胆なものになるように努力した。ゲームでは毎晩オーロラが見られるようにしている。

フォーレスト・オブ・ディーン、セブン・シスターズなど自然のロケーションはどう選んだのか?

Thierry 人間が作ったものだけでなく、自然の美しさも取り入れたいと思った。英国には神秘的な場所がたくさんある。フォーレスト・オブ・ディーンはこの時代にすでに存在したが、フィールドトリップで実際に訪れた。本当にすばらしく神秘的で、ローマ人も訪れたところだ。英国にはいまも多くのローマ遺跡が残っている。

このようなすばらしいロケーションを訪れたことは、ゲームのストーリーに影響を与えたか?

Darby 英国の歴史は何層にも重なっている。ストーンヘンジを作った人たち、ローマ人の侵略、ローマ人の歴史、アングロサクソン以前のペーガン、キリスト教徒、そのうえにヴァイキングまで、いろいろな層を取り上げたいと思った。ゲームでは異なるテリトリーを使って、彼らのストーリーを語るようにした。

この時代は資料が少なくわからないところも多い。サーガを資料として使ったそうだがどんなものなのか?

Lucie スカンジナビアの歴史上とても重要な資料で、歴史的なものも伝説的なものも含まれている。しかし、いずれも数百年後のキリスト教の世界になってから書かれたもので、ヴァイキング時代とは大きく異なる。歴史的なサーガの中ではハーラル1世などの王やチーフが重要な役割を果たしている。しかし、ハーラル1世が最初に果たしたノルウェーの統一についての情報は少なく、記述にギャップがあるため、あまりよくわからない。

Darby サーガには正確な日にちが記述されていない。おもしろいアドベンチャー・ストーリーはよく出てきて、歴史的正確性がないもののインスピレーションは得られる。ゲームの中では物語をスタートさせるためにハーラル1世の子孫を使った。不明な点が多いので私たちの好きなように作れたが、若く才能ある人物であり、彼の影響で多くの人がノルウェーを離れた。ここからジャーニーが始まる。

 北米のヴィンランドにも行ったので、ヴィンランドのサーガからも情報を得られた。これはふたつのストーリーから成り、ヴァイキングが10年間、北米を訪れたことが記述されている。こうしたストーリーはすべてすぐれたスタート地点となってくれた。サーガはエピソード構成になっており、欧米の映画によく見られる三幕構成とは違い、長文で長期間のストーリーが展開される。家族ができて子供が育っていく記述などにはとくに影響された。とても興味深い文学であり、このような形式の文学はもっと読まれるべきだと思う。

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当時の女性の役割はどうだったのか?

Lucie スカンジナビアでは家を維持し、鍵を持つ女性の役割は重要でありパワフルだった。女性ヴァイキングの存在が確認できるものは少ないが、スウェーデンのビアーカには勇壮な女性戦士の墓がある。

Darby サーガから多くのヒントをもらった。北欧の神話では他の神話、文化に比べて女性が活躍しており、ヴィンランドのサーガにも登場する。これらのヒントをワクワクする形でゲームに取り入れたかった。

歴史上の偉大な人物が登場するが誰が好きか?

Darby 暗黒時代でよくわからないところも多いが、英国へ渡った人たちの中には興味深い人物がたくさんいる。アングロサクソン年代記やサーガのような資料から情報が得られ、多くの名前を知った。この時代重要な役割を果たしたヴァイキングのグループ、グレート・ヒーザン・アーミーには、骨なしのイーヴァル、ウッボ、ハーフダンなど、ラグナル・ロズブロークという人物の息子を名乗る名高いリーダーがたくさんいた。彼らは父の仇を討つために英国に来た。そして、ハーフダンは後にノーザンブリアの王になった。

 数年後にはもうひとつのグループ、アルフレッド大王と戦ったグスラム率いるグレート・サマー・アーミーが英国に渡った。このほかにもサプライズがあり、サクソン側ではアルフレッドだけでなく当時の王たち全員が登場する。ウェセックスのアルフレッド、マルシアのバーグレットなど、多数のリーダーが登場し、ゲーム内では彼らと接する機会がある。

ラグナル・ロズブロークはどんな人?

Thierry 最も伝説的なヴァイキングのリーダーで、実在したかどうかわからないが、サーガの中で大きな影響を持っている。そのため、多くのリーダーが彼の息子を名乗った。

こうした人物からどのように刺激を受け、どのように使ったのか?

Philippe とてもカラフルで独自のパーソナリティと目的を持ったキャラクターたちだ。彼らの間にはさまざまなな闘争と混乱があり、ゲームのそれぞれのパートでキャラクターを取り上げ、深く掘り下げていった。イーヴァル、ウッボも登場するが、彼らは当時のヴァイキングのロックスターのような存在だった。こうした偉大な人物と歩みをともにしていくと、アルフレッド王のように政治的なストーリーにも出会う。メロドラマのような裏切りやファミリー闘争が描かれる。人物を選ぶのは簡単だったが、それを展開してプレイヤーに目的や役割を提供した。

アルフレッド王はどんな人だったのか?

Darby ウェセックスの王で、彼について書かれたものは多く、アングロサクソン年代記を書かせた人物だ。22歳という若さで王になり、持病で身体が不自由だったがそれを克服し、ヴァイキングと真っ向から対決した。彼らを敬い、条約を結ぶもつねに裏切られることに気づき、それからは手強い敵となった。

 英国をひとつの王国と考えた初めての王で、国全体をよくしようと努めた。キリスト教信者になるのならヴァイキングにいてもらってもいいと考えていた。ゲームの中でもそれとなくヴァイキングをキリスト教に改宗させようとする。そこからドラマや緊張感が生まれる。

イーヴァルはどんな人なのか?

Philippe 彼はゲームに登場する歴史上の人物のひとりで、骨なしイーヴァルというニックネームがある。ラグナルの息子、ウッボの兄弟として登場する。このふたりは異なるヴァイキング・カルチャーを代表している。イーヴァルは伝統的なヴァイキングで戦いでの栄光を求め、剣で斬られて死にたいと思っている。一方のウッボは外交、新しいやりかた、統一、平和的な将来を求めている。プレイヤーはエイヴォルとして、このふたりの闘争を見ていくことになる。これによってヴァイキング哲学の二面性を表現することができた。

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北欧神話と北欧社会、イングランドとノルウェーにおける中世の信仰について

実際にその時代を生きた人たちは何を信じて何を考えていたのかを知るには、どんな資料を使ったのか?

Darby 神話的な文書の古エッダと、スノッリのエッダがあり、ここからは神話の世界の神、オーディン、トール、フレイヤについて学んだ。これらの文書はかんたんに読めるものではないが、彼らはゲームの中の神話世界のインスピレーションになった。

Lucie エッダは13世紀のキリスト教時代に書かれたもので、歴史家にとってもヴァイキングのことを知るには使いにくい資料だ。9~10世紀のペーガンの時代についても書かれているが、大きなギャップがあり、考えかたも偏っている。

Darby ヴァイキング自身が書いたものは、岩や木の幹に刻まれた物など10ページくらいしかないため、長いストーリーについてはキリスト教時代に書かれたものに頼るしかない。

Raphael エッダには奉納用の容器やオブジェなど、神聖な場所に置かれたものについての記述があり、ヴァイキング時代の宗教体系の一部がわかる。また、ヴァイキングは特定の場所に意味を見出していた。スカンジナビアでは水源や聖なる茂み、樹木が信仰の対象となった。

このゲームの神話的な設定について教えて欲しい。

Philippe ヴァイキングは9つの世界があると信じていた。地球はミッドガルドと呼ばれる。プレイヤーは神々が住むアースガルズと、巨人の世界であるヨトゥンヘルムを訪れる。

Lucie 世界を支えるワールドツリー(ユグドラシル)という大きな木があり、このまわりに9つの世界が存在している。

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どのようにリアリスティックにするのか?

Darby ゲームのセクションによって異なるものを取り入れた。古エッダのある部分については、オーディンの冒険の集大成をミス(神話)・ワールドと呼ぶ部分に入れた。エイヴォルはアースガルズで、ジャイアント・ウルフ、フェンリルの牙にかからないようにしながら叡智を求め続けるオーディンの一生の一部分を経験することができる。

 こうしたストーリーから刺激をもらい、楽しめる形にした。またオーディン自身が書いたとされるハーヴァマールという詩は、いい生活を送るための知恵が含まれており、ワールドのあちこちに取り込んだ。ゲーム内のヴァイキングやノース人たちはこの古の知恵を子孫に伝えており、古い資料は生き生きとしたキャラクターの言葉に置き換えている。

ヴァイキングたちは未来をどのように見ていた?

Lucie 専門家である予言者がいて、とくに危機が迫った際には人々を助けた。また、神々も未来を知りたがっていた。オーディンも予言者に会い、世界の終末の日、ラグナロクを告げられる。

Ryan 象徴的な意味を持つルーン文字を書いて未来を占っており、これが将来のビジョンを与えてくれるものだった。過去について書かれたものだが同時に未来についても書かれており、世界の始まりと結末は最初から決められているという考えに則っている。

ゲーム中にそういう予言者はいるのか?

Darby ヴァルカという予言者が登場する。彼女を通じてエイヴォルは予言的ビジョンに遭遇するようになる。巫女の予言(ヴォルスパー)という資料は世界がどのように終わるかを予言するもので、ここからインスピレーションをもらった。ゲームはヴォルスパーのあるバージョンから始まる。ゲームを通して予言者はたびたび登場し、神話ワールドのアースガルズにアクセスできる。エイヴォルの運命を動かしているもの、最後にはどうなるのかを理解できる精神世界だ。サーガにも魔法のように感じられたものがあり、このゲームに取り入れたいと思った。

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プレイステーション5版が11月12日に発売!

 このようなヴァイキングの歴史や戦い、生活や文化まで網羅した『アサシン クリード ヴァルハラ』。彼らを戦いへと突き動かしていたのは何か、エイヴォルはどんな結末をたどるのか、興味を持った方はぜひプレイしてみてほしい。下記の記事では、11月12日に発売されるプレイステーション5版をいち早くプレイし、その模様をリポートしているので、こちらも参考に。

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