2020年発売予定のバトルロワイヤルアクション『スペルブレイク』。本作の特徴は、プレイヤーが魔法使いとなり、スペル(魔法)を駆使して戦うファンタジックな世界観。詳しくはコチラの過去記事を参照してほしい。

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 現在、『スペルブレイク』はリリースに向けて制作の最終段階。そこで今回は、本作の開発を担当するProletariat社 CEO セス・シヴァック氏と、エグゼクティブプロデューサーのカーデル・カー氏、アートディレクターのデーモン・イアンヌッゼリ氏にインタビューを行なった。

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左からセス・シヴァック氏、カーデル・カー氏、デーモン・イアンヌッゼリ氏。

セス・シヴァック氏(Seth Sivak)

Proletariat社 CEO
『スペルブレイク』の開発総指揮を務める。かつてはゲームエンジニア、デザイナー、プログラマーを行なっていたゲーム開発のスペシャリスト。好きなゲームは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。また、ゲーム以外に料理(グリルとバーベキュー)と長距離マラソンが好き。「今年は4月に予定していたボストンマラソンが中止になって残念だよ!」と語るスポーツマン。

カーデル・カー氏(Cardell Kerr)

Proletariat社 エグゼクティブプロデューサー
これまでに20年以上もゲームを開発している。過去に携わったタイトルは、『Asheron's Call(アシュロンズコール)』シリーズな『Dungeons and Dragons Online』など、有名MMORPGが多数。ゲーム以外の趣味はアニメ鑑賞。特技は真空調理法を駆使した料理と、オリジナルカクテルの考案。休日は自宅でバーテンダーになり、シェイカーを振っている。

デーモン・イアンヌッゼリ氏(Damon Iannuzzelli)

Proletariat社 アートディレクター
CEOのセス・シヴァック氏とは『Indiana Jones Adventure World』の現場で知り合い、カーデル・カー氏とは20年前に『Asheron's Call』の開発で知り合った。関わってきたタイトルは、カー氏と同じく『Asheron’s Call』シリーズなど。好きなゲームは『ロックマン2』や『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』、『パンツァードラグーン』、『ICO』、『ワンダと巨像』、『メタルギアソリッド3』など多数。趣味はハイキングと自転車、ダンスなど、身体を動かすこと。「身体を動かすとゲームのアイデアが浮かぶ」とのこと。

魔法で戦うファンタジックバトロワ『スペルブレイク』誕生秘話

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――開発大詰めのお忙しいところ恐縮です。本日はよろしくお願いします。

セスこちらこそ、今日はわざわざありがとう!

カーデル僕たちのチームは、みんな昔からファミ通が好きで敬意を払っています!

――光栄です! ありがとうございます(笑)。

デーモン冗談じゃなくて本当だよ(笑)。ファミ通からインタビューを受けるのは、僕の子どものころからの夢だったんだ。

――そう言っていただけると嬉しいです! ではさっそく本題ですが、『スペルブレイク』は魔法での戦闘がユニークですね。開発をスタートさせたきっかけをお聞かせください。

カーデルゲームの内容については、プロデューサーの私からお答えします。『スペルブレイク』は我々が以前開発していたふたつのプロトタイプを元に開発しました。ひとつは『League of Legend(LoL)』や『DOTA 2』に似た、上から見下ろした画面のストラテジーゲームでした。そしてもうひとつは、『ダークソウル』に似たサードパーソンアクションゲームです。

――まったく異なる2種類ですね。

カーデルそうです。ですが、これらの2種類のプロトタイプを混ぜてみようというアイデアが生まれ、開発を進めたんです。それが『スペルブレイク』になりました。

――『スペルブレイク』は魔法がテーマのファンタジーな世界観が独特です。このような世界観は開発当初から決まっていたのでしょうか?

カーデル『スペルブレイク』で目指す目標のひとつが、「こんなゲームがあったら遊びたい!」と思えることでした。我々のチームは全員、バトルロワイヤルタイトルが大好きなんです(笑)。もちろん、既存のバトロワもおもしろいですが、「さらにエキサイティングな対戦要素を取り入れられないか?」とアイデアを練りました。そして、「もしも自分が魔法使いやスーパーヒーローになったら楽しいだろう」という思いから、このプロジェクトが始まりました。いまチームのみんなは、楽しみながら開発をしています。

――お話にもあったようにバトロワは人気のジャンルですが、他社のゲームと競合すると考えませんでしたか?

カーデル『スペルブレイク』の開発をスタートさせたときの目標は、“簡単に遊べるけど勝ったときによい高揚感を得られる”ということと、“最強の対戦ゲームを作る”ということでした。このふたつの目標を考えたうえで最適だったのが“バトロワ”だったのです。ですので、既存のバトロワゲームのことはあまり考えていませんでした。

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――『スペルブレイク』は最大何人で戦えますか?

カーデル現時点では42人がロビーに揃った時点でマッチングが完了することになっています。『スペルブレイク』の戦闘はとても激しいので、それくらいの人数がバランス的にちょうどいいですね。サービス開始後は、いろいろなモードを追加して行く予定もあります。楽しみにしてほしいです!

――『スペルブレイク』の一番のウリは、ずばりどこですか?

カーデルバトルロワイヤルなので、他作品と比較されるのは仕方がないことだと思いますが、みなさんが『スペルブレイク』を見たとき、「ほかのバトロワとちょっと違うな」と思ってもらえるのではないでしょうか? グラフィックと演出が独特なので、スクリーンショットを一枚見ただけで気づくと思います。

――確かにアニメルックなグラフィックは目を引きますね。

カーデルそして、実際にプレイしてみると、“動き”のユニークさに気づくと思います。バトルメイジ(魔法使い)になったプレイヤーは、宙に浮いて飛んだり、テレポートしたりできます。多数の魔法を放って戦う壮絶なバトルは、特別な臨場感を得られるはずです。

――『スペルブレイク』を開発するときに、参考にした作品はありますか?

カーデルアメリカのテレビアニメ『アバター 伝説の少年アン(Avatar: the Last Airbender)』に影響を受けました。キャラクターと、その背景のストーリーがとてもよく演出されていたと思います。

――『スペルブレイク』の武器(ガントレット)は、ほかのバトロワよりも種類が少ないのに、組み合わせ次第で戦略性が高くなるゲームだと感じました。このアイデアはどこから着想したのですか?

カーデル先ほど申し上げた通り、『スペルブレイク』はすべてのプレイヤーに簡単にプレイしてほしかったのです。ですが、遊び込めば深みがあるように設計しました。“簡単だけど難しい”という相反するゴールを目指すために、我々は真剣に考えています。その答えが“ガントレット”でした。

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――左右の手に装着したガントレットで、さまざまな効果が得られるのがおもしろいと思いました。

カーデルありがとう! 炎と竜巻を組み合わせたり、氷と火を組み合わせたり、エレメントの相互作用はとても直感的でシンプルだと感じてもらえるはずです。数多くの武器を理解する必要がありませんからね。

――ガントレットによる攻撃だけでなく、アクションを組み合わせると激しい空中戦も楽しめました。まるでアメコミのヒーローのように動けるのですが、みなさんはスーパーヒーローがお好きなのですか?

カーデル大好きです。僕はコミックを読んで育ちましたからね(笑)。スーパーヒーローはいつでも正義であり、かっこいい存在です。

――具体的に好きなヒーローは?

カーデルデアデビル』が大好きです。苦労して生きているなか、いつも正しいことをしようとする姿がいいですね! そして『グリーンランタン』も僕の好きなスーパーヒーローです。子どものころに悪夢を見たとき、よくお母さんが「あなたはスーパーヒーローだと思いなさい」って言っていました。そんなときは決まって『グリーンランタン』になった自分を妄想したよ。僕の心の中にはいつも彼がいる気がします(笑)。

アニメルックなグラフィックは日本のゲームやアニメを参考に

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――アニメ調のグラフィックがユニークですが、このようなビジュアルは初めから決定していたのでしょうか?

デーモンいえ、違います。開発当初はキャラクターも武器も背景も、リアルな見た目のゲームでした。さらに、武器は剣やクロスボウでした。でも、開発から約6ヵ月経ったころ、スタッフからまったく異なるプロトタイプを見せられました。それは“魔法”で戦う、とてもおもしろいプロトタイプでした。それを見たとき、僕は「リアルな見た目は違うな……」と思ったんです。そこで僕たちは、アニメスタイルのセルシェード風のグラフィックに舵を切ることを決定しました。

――思い切った決断ですね!

デーモンセルシェードのアイデアはコンセプトアーティストから出てきたものです。エフェクトも日本のアニメのような印象を取り入れたいと言っていました。これらのグラフィックは、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『ギルティギア』といった作品に大きな影響を受けています。『スペルブレイク』のセルシェードへの取り組みはとても柔軟で、素早く多くのレンダーに対応できるのが特徴です。ただアニメ風の絵作りができるだけでなく、従来の物理法則に基づいた絵作り(Physical Based Rendering:フィジカルベースドレンダリング)にも組み合わせられます。

――アニメ調とリアルグラフィックを共存している?

デーモン現状はそうです。開発当初はフルスクリーンのエフェクトを使っていましたけどね。フルスクリーンでアニメ調のエフェクトを使ってしまうと、純粋にアクションを楽しみたいプレイヤーにとって、少々遊びにくくなるんです。ですので、アニメとリアルを共存させました。ですが、需要があるならば、いつの日か全画面アニメ調で遊べるモードも用意するかもしれません。

――いま『ゼルダの伝説』や『ギルティギア』といったゲームが出てきましたが、ほかにも参考にした映像作品はありますか? たとえばアニメとか。

デーモンあります! 僕は日本のアニメが大好きで、とくに80~90年代の作品が大好きです。僕だけでなく、チームにも日本アニメが大好きなスタッフが大勢います。えーっと、個人的に好きな作品は……たくさんあるけど、時間いただけますか?

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――もちろん! ゆっくり考えてください。

デーモンやはり爆発エフェクトで外せないのは、『アキラ』と『スチームボーイ』、『攻殻機動隊』ですね。そして、世界観が好きなのは宮崎駿氏の作品です。『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』、『もののけ姫』の世界で遊べるゲームがあったら楽しいだろうなと、ずっと思っていました。日本のアニメは僕にとても大きなインスピレーションを与えてくれました。すべてのフレームが適切に構成されていて、アニメーターの視覚的意図で満たされているんです。『スペルブレイク』で目標にしている要素のひとつです。

――アニメの演出をゲームに取り入れるのは苦労しそうです。

デーモン僕たちは新しい視覚効果(VFX)技術を開発し、『スペルブレイク』に取り入れたいと制作中です。たとえばポリゴンメッシュにセルシェーダーを適用させるだけでなく、メッシュを押したり伸ばしたり有機的に変形させています。これはアニメの基本原則“スクワッシュ&ストレッチ”です。

――『スペルブレイク』はスキンやエモートが用意されています。今後、どのようなタイプのスキンやエモートが追加される予定ですか?

デーモンプレイヤーごとの個性を発揮できるような、個性的なスキンを準備したいと考えています。後は季節ごとの衣装とかも作りたいですね。ただ、注意したいのは『スペルブレイク』と物語やビジュアルと関連性が出ることを忘れないようにすること。ファンタジーな世界観を大切にしたいです。

正式サービスはこうなる! CEO シヴァック氏が語る『スペルブレイク』の今後

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――2020年内に正式リリースと伺っていますが、現在、開発はどのくらい進んでいますか?

セス順調に開発が進んでいて、リリース間近といったところです。PCだけでなく、プレイステーション4とNintendo Switch、Xbox Oneでもクロスプレイができるように開発中です。

――クロスプレイは嬉しいです!

セスクロスプレイだけでなく、複数のゲーム機を持っていれば、もちろんクロスセーブもできます。βテストでは実装していなかった、いくつかの新機能も追加されます。全体的な改善と最適化も行なっていますので、より遊びやすい『スペルブレイク』を披露できそうです。

――βテストではプレイヤーからどのような反応を得られましたか?

セスビックリするくらい好意的な反応を得られました。とくに褒めていただいたのは、独特な戦闘体験と育成要素でした。また、βテストに参加してくださったみなさんからは、マップの細部やドロップアイテムなど、たくさんの感想をいただけました。本当に感謝しています。

――βテストと正式リリース版で、ゲーム内容が大きく変わる部分はありますか?

セス新しいマップ領域が追加されます。後はパーティーを組んだときの新機能や、クロスプラットフォーム対応などが大きな変更点でしょうか。

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――セスさんは以前、「ギルドシステムに興味がある」と発言されていましたが、『スペルブレイク』では実装予定でしょうか?

セス個人的には“ギルド”のようなソーシャル機能は採用していきたいと考えています。特定のクエストのような短期間のチームワークだけでなく、みんなでギルドを育てていくような長期間なチームワークを発揮できるシステムを作りたいと検討中です。私たちの開発チームはMMORPG分野での豊富な経験があります。『スペルブレイク』は過去の経験を活かした開発に取り組んでいきます。

――『スペルブレイク』はどのような人に遊んでいほしいですか?

セスゲームが好きなすべての人に遊んでほしいです! というのは答えになっていないので(笑)。βテストの結果を踏まえて申しますと、とくに5つのタイプのゲームファンから関心が寄せられていました。
まずひとつめは、『フォートナイト』や『Apex Legends』などのバトロワが好きなプレイヤーです。生き残りを賭けて戦うゲームが好きな人は、きっと『スペルブレイク』を気に入ってくれるでしょう。

 そしてふたつめは、『オーバーウォッチ』や『Warframe』、『Destiny 2』などが好きな人たちです。アビリティーを使って撃ち合うゲームは、『スペルブレイク』とも共通な部分が多々あります。

 3つめは『LoL』や『DOTA 2』などのMOBAプレイヤーです。彼らが関心を寄せてくれたのは、マップになじみがあるところのようです。そのほかにも、MOBAプレイヤーはスキルのクールタイムの管理が得意です。その技術は『スペルブレイク』でも活かされるはずです。

 4つめと5つめは、『TERA』や『ギルドウォーズ2』などのMMOと、対戦格闘ゲームファンが多かったです。彼らはPvPが好きなところが似ています。とくに対戦格闘ゲームファンの意見で興味深かったのは、『スペルブレイク』の戦闘は「格闘ゲームでいい試合を行なったときを思い出させる」というフィードバックでした。

――最後に『スペルブレイク』を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

セス『スペルブレイク』はアニメと日本のRPGの影響を強く受けて開発しています。我々も日本のプレイヤーが多くプレイしてくださることを期待しています。日本のゲームファンは、プレイステーション4とNintendo Switchで遊ぶ方が多いと聞いています。クロスプレイ対応なので、ぜひ参加してほしいです。正式サービスまであと少しです。つぎはゲームの中でお会いしましょう!

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 『スペルブレイク』では、日本語公式Twitterも展開中。英語公式Twitterの翻訳や、最新情報をつぶやき中だ。また、日本語版公式YouTubeチャンネルも開設。ローカライズしたムービーもどんどん公開していくとのこと。

『スペルブレイク』日本語公式Twitter
『スペルブレイク』日本語公式You Tubeチャンネル