フジテレビほかにて放送中のテレビアニメ『イングレス』。本作は、『ポケモン GO』でおなじみのナイアンティックが開発・運営に携わる位置情報ゲーム『Ingress』を原作としたアニメ作品。

 アニメは、触れた物の記憶を読むという特殊能力を持った主人公・翠川誠、記憶を失った女性・サラ、ふたりを追う謎の男・ジャックの3人を中心とした人物たちが大事件に巻き込まれていく様子が描かれている。

 また、本作では、ゲームとアニメの連動や、アニメの放送開始に合わせて動画配信サービス“Netflix(ネットフリックス)”にて全話一斉配信するなど、新しい試みが多数行われている。

 そんな本作に出演する、中島ヨシキさん(翠川誠役)、上田麗奈さん(サラ・コッポラ役)、喜山茂雄さん(ジャック・ノーマン役)、緒方恵美さん(ADA役)のインタビューをお届け。

「『イングレス』は、いままでの常識を打ち破る作品」――テレビアニメ『イングレス』中島ヨシキさん、上田麗奈さん、喜山茂雄さん、緒方恵美さんにインタビュー_03
写真左から、上田麗奈さん、中島ヨシキさん、喜山茂雄さん、緒方恵美さん
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翠川誠(声:中島ヨシキさん)
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サラ・コッポラ(声:上田麗奈さん)
ジャック・ノーマン(声:喜山茂雄さん)

――まず、ゲームとアニメが連動するというコンセプトを聞いたときの印象を教えてください。

喜山僕は、ゲームとアニメの連動ということだったので「アニメのキャラクターたちがゲームに登場するのかな?」くらいに考えていたのですが、いざゲームを遊んでみたらどこにも登場する余地がなくて(笑)。

中島キャラクターたちが会話をするようなゲームではないですからね(笑)。僕たちは、声優としてアニメに声を入れるという大前提があるので、そこまでその部分は意識していなかったです。ただ、ゲームはもちろん遊びましたし、現場でも本作に登場する固有名詞のイントネーションを、ゲームの音声を聞いて確認しながら収録をしました。

緒方正直にお話すると、最初はどのように連動するのかまで詳しいお話を聞いていなかったので、イメージが湧かなかったです。ただ、新しいことに挑戦する作品だなという印象はありました。それこそ、まさにいま、先行上映会にお越しくださった皆さんが、音声AR体験型ゲームをプレイされていると思いますが(※インタビューは、10月13日に東京・TOHOシネマズ六本木にて開催された先行上映会後に実施しました)、ここにもゲームと連動する仕組みが取り入れられているらしくて。

 このゲームは、専用端末に表示される情報を頼りに、六本木ヒルズ内に隠された300個のデバイスを見つけて無効化するというものなのですが、端末にはデバイスのおおよその位置しか表示されないんです。でも、今回の音声AR体験型ゲーム開始前に『Ingress』で特殊なポータルが300個出現していて、それを世界中のエージェント(※『Ingress』のプレイヤーのこと)が協力して、ハッキングしてパスワードの入力を成功させると、ひとつのポータルにつき、デバイスが隠されている位置を撮影した写真が1枚公開される仕組みになっていたらしいです。

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上田それはすごい!

緒方このような感じで、ゲームの世界と現実の世界がリンクする仕組みは、新しい試みですよね。

中島VRではなく、ARだったのもいいですね。実際に自分たちが生活している世界が、『Ingress』を通すと別の世界に見えるということがコンセプトにあると思うので、仮想現実(VR)ではなく、拡張現実(AR)のほうが作品に合っているような気がします。

上田作品のテーマも、“外に出て行こう”というものなので、アニメを観てくださった人たちが、『Ingress』をキッカケに外に出てもらえるとうれしいですね。

――緒方さんはゲームから引き続いての出演ということで、アニメ化を聞いたときの心境はいかがでしたか?

緒方「どうやってやるの?」と(笑)。ふつうは、ゲーム原作のアニメというと、ゲーム中の膨大なストーリーの一部を切り取って描くことが多いですが、『イングレス』はそうではないということだったので。しかも、最初にお話を聞いたときに、主人公がエンライテンドだということだったので、ADAとしては、レジスタンスが潰されちゃうんじゃないかと心配になりました(笑)。世界的な割合だとレジスタンスが多いみたいなのですが、日本ではアノマリー(※『Ingress』の公式イベント)で、ずっとエンライテンドが勝っているんですよね。でも、アニメでは、エンライテンド陣営の誠と、レジスタンス陣営のジャックのどちらもカッコよく描かれていたので安心しました。

喜山じつは、いちばん最初の収録のときに、緒方さんから「レジスタンスが増えるかどうかはキミ次第だよ」というプレッシャー……いや、激励の言葉をいただきました(笑)。

一同 (笑)。

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――キャラクターの話題が出たところで、皆さんが演じられているキャラクターがどのような人物なのか教えていただけますか?

中島誠は根暗で、どちらかと言うと家にいるのが好きというか。彼の場合は性格や生い立ち、過去のトラウマがそうさせている部分もあるんですけどね。アニメでは、そんな彼がどのように成長していくのかという王道ストーリーが描かれていくのですが、たとえそうだとしても「階段をすっ飛ばし過ぎていないか?」と思ってしまうほど、急成長していきます。毎回見せ場があって、1話ではうまくしゃべれなかったり、自分の意見を言う前に人に言われたりしていますが、それが嘘のようにどんどんカッコよくなっていくところが、彼の主人公としての見どころだと思います。

上田サラは、ひと言で表現するなら、“正義感”という言葉がピッタリなキャラクターです。誠、サラ、ジャックの3人ともが主人公だとしたら、誠は日常を切り取ったアニメの成長していく主人公。ジャックはどんなミッションでもすんなりクリアーしていく誰もが憧れる海外映画の主人公。サラは少年マンガの熱血主人公みたいな感じだなと思いました。それぐらいサラは、熱量と正義感が溢れているキャラクターなのですが、無鉄砲なところがあったりして……。でも、頭がよくて正義感に溢れているのに、ちょっと抜けているというような二面性が人間らしくて魅力的だと思います! あと、衣装がコロコロ変わったりもするので、女性らしい見た目のかわいらしい部分にも、注目していてください。

中島じつはメインで着ているスーツはいちばん布面積が多い衣装なんですよ。けっこう、肌を出す衣装やシャワーシーンもあります。

上田そうなんです!

緒方サラには、清涼剤としてがんばってもらわないと(笑)。

中島登場人物には、むさい人たちが多いので、そういう成分をサラが一手に担っています(笑)。

喜山この流れで話し辛いですがジャックは男くさいキャラクターです(笑)。ひと言で表現すると“義に熱い人”だと思います。1話でも描かれていましたが、守りたい人がいて、その人の想いを引き継ぐような人なので。そして物語が進むにつれて、最初はジャマな存在であった誠に助けられたり、そんな誠とサラの関係を親目線で温かく見守ったり。演じれば演じるほど、親近感が湧いていきました。

――緒方さんは……。

緒方キャラクターというか、AIです。

一同 (笑)。

――では、皆さんが気になるキャラクターを教えてください。

中島やっぱり長い間、いっしょにいたジャックですね。ジャックとは、友人とも、相棒とも違う不思議な関係性なんですよね。最初は、わけのわからない、筋肉ダルマだと思っていたんですけど(笑)

喜山最初はマシンのような感じだったからね(笑)。

中島本当に感情がないような雰囲気で、収録のときにも「もっと静かに」というディレクションがあったくらいだったので。

喜山走っているときですら「はぁはぁ」言わないし。

中島そんなジャックが、誠やサラ、そして途中から登場するハンク・ジョンソンたちと出会っていく中で、どんどん人間味が溢れてくるのは、すごく印象に残っています。

――そんなジャックを演じた喜山さんはいかがですか?

喜山物語のいちばん最初に袂を分かつことになった、クリストファー・ブラントの存在は大きかったですね。彼の意思を引き継いで旅を続けていく中で、まさかあんなことになるとはつゆ知らず……。物語が進むに連れて、自分の意思で動いているのか、操られているのかさえわからなくなってくるんですよ。だから、目の前に出てくる答えに向かって一生懸命に生きるしかできないんですけど、それさえも手の平の上で転がされているような感じがして……。でも、ジャックがそうなったすべての発端はクリストファーなので、「ブラント、よくもやってくれたな」という気持ちです(笑)。

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クリストファー・ブラント(声:新垣樽助さん)

――緒方さんはいかがでしょうか?

緒方AI目線なので、とくに誰がということは……(笑)。

一同 (笑)。

上田私は劉天華ですね。サラと劉は、出会っていた時期が違ったとしても、それぞれの道を歩んでいたかもしれないですが、本当は分かり合える部分があると思うんです。それが私の中でずっと引っ掛かっていて。あと、劉役の鳥海(浩輔)さんとは収録をごいっしょできなくて、劉がどんな風になっているのかわからないので、個人的にも楽しみにしています。

中島上田は収録中、ずっと劉のルックスが好きだと言っていたんですよ。

上田そうなんです!

緒方ということは、監督のような見た目の人がいいと?

一同 (笑)

上田櫻木(優平)監督が劉にすごく似ているんですよ。でも、確かにあの見た目だから、許せるみたいなところがあるぐらいに好きな見た目ですね(笑)。

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劉天華(声:鳥海浩輔さん)

――先行上映会の舞台挨拶でも、収録現場で櫻木監督と劉が似ていることが話題になったという話をされていましたね。そのほかに、収録で思い出に残っている出来事はありますか?

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中島直接、収録とは関係ないですが、『イングレス』は1日に2話分収録していたんです。それで、1話目と2話目の間のお昼休憩には、だいたい上田さんたちとご飯に行っていたんですけど、土用の丑の日が近かったときに鰻を奢らされました(笑)。

上田そうなんです。毎回、ご飯に連れて行ってもらって、しかも「ここは(払わなくて)いいから」といつもご馳走してくださって。

緒方さすが先輩!

上田だから、心の中ではちゃんと考えて選ばなきゃと思っていたんですけど……。

喜山それなのに鰻を(笑)。

上田ちょうど、土用の丑の日が近かったときに、たまたま鰻屋さんが目に入っちゃって(笑)。

喜山言ってみるもんだね。

上田記念に写真も撮りましたよ! 本当にご馳走様でした。

――そのほかには何かありますか?

喜山なんと言っても、収録に来られなかったキャストの代役の方にも、完璧な演技が求められていたのが印象的でした。というのも、本来は代役の人が完璧な演技をしてしまうと本当のキャストの演技に影響してしまうので、本気で演じてはいけないんですよ。でも今回は、代役の人にも完璧を求めるようなディレクションがあったので「これは珍しい現場だな」と。代役を務める役者さんもそこまで構えていなかったので、みんな面を食らっていましたね(笑)。

――そんなに珍しいことなんですか?

緒方そうですね。ふつうは代役の部分までキッチリ録るということはあまりないです。でも、『イングレス』の場合は、日本だけでなく海外と同時配信ということもあったので、海外のキャストが吹き替えを行うために、全キャラクターの声がしっかり入った状態の映像を用意する必要があったんです。

――なるほど。そういう理由だったんですね。

緒方そのほかにも、ヒューロン部隊はマスクを付けているので、キャストもマスクをしながら収録していたら、現場の半分以上の人がマスク姿という異様な光景がおもしろかったです(笑)。

上田音のこだわりはすごくて、SE(効果音)を声で録ったりしましたね。

中島音効さんの「SEを人の声でやりたい」というリクエストで、役者のみんなが、とくに意味のあるわけでない単語をひたすら読み続けるということをしました。囁いたり、叫んだりもして、いったいどこで使われているのか気になります。

緒方あと、個人的には“ADAの部屋”という変な宣伝番組をやれたのが、すごく印象に残っています。あんな番組は、いままで一度もやったことがなかったので(笑)。

中島僕も初めてでした(笑)。まさか、そういうことを『イングレス』でやるとは思いませんでしたよね。

緒方しかも、キズナアイちゃんとまでコラボすることになろうとは、まったく予想もしていませんでした。そういう意味では、本編がフルCGだったり、数十ヶ国語にも翻訳して世界で配信したり、アニメとゲームが連動したり、前代未聞なことばかりのアニメだなと。でも、「これからのアニメはこういう風になっていくのかな?」という感じもします。

中島テレビでの放送もありますが、Netflixではすでに全話が先行して一斉配信されてたり。アニメは毎週同じ時間にテレビの前で観るものだという常識すらも変えていくのかなと。

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

緒方先ほどお話したように、こういうことは滅多にないと思えるほど、初めての挑戦が詰まっている作品なので、まずは触れてみていただきたいというのが本音です。実験的な作品なので、「ここはこうしたほうがいい」というように気になる部分もあるかもしれませんが、そういうことが繋がっていけば、新しい作品の形のひとつになると思うので、ファンの方はもちろんですが、クリエイターの方々にも注目していただきたいです。

喜山アニメには、“ポータル”というようなゲームの専門用語が登場したり、ゲーム中のSEがそのまま使われていたりするので、ゲームを遊んでいただくとより一層楽しめると思います。最初はいちアニメファンで構わないですが、そこからゲームにも触れていただいて『イングレス』の世界にどっぷり浸かってもらえたら、携わった者として冥利に尽きます。僕も遊んでいこうと思いますので、いっしょに楽しみましょう。

上田1話から4話までの完成版を事前にいただいていたのですが、続きが気になり過ぎて、一気に観てしまいました。私は、海外ドラマとかをイッキ観するのが好きで、『イングレス』もイッキ観したい作品だと感じたので、Netflixでの全話一斉配信という試みはすごく魅力的だと思います。テレビの放送を見て、続きが気になった方は、ぜひこの機会にNetflixに契約してイッキ観してみてください。そして、最後まで観終えたら、また1話から観たいと思えるほど、情報量が多い作品なので、何度も何度も観返していただけるとうれしいです。

中島いま、『イングレス』がやっていることは、すごく特殊なことなのかもしれないですが、ひょっとしたら数年後には、これが業界のスタンダードになっているかもしれないという可能性をすごく感じています。おそらく、いまと5年前のアニメとではいろいろなものが変化していて、その変わるキッカケになるかもしれない『イングレス』のような、いままでの常識を打ち破ろうとしている作品を怖がらないでほしいと思います。むしろ、「新しいものが見られる!」という期待をしていただきたいです。そして、数年後、本当に『イングレス』のようなスタイルの作品が業界のスタンダードになっているのであれば、この作品がアニメ史に残す功績というものがあったのかなという気がしますし、そういう作品に携われたことを誇りに思います。アニメというものが、もっと進化して、クローバルになっていく作品だと思うので、応援よろしくお願いします。

作品情報

INGRESS THE ANIMATION
フジテレビ 新TVアニメ枠「+Ultra」(プラスウルトラ)第一弾
2018年10月17日よりフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24:55から放送
NETFLIXにて10月18日(木)より日本先行全話一斉配信 
ほか各局にて放送 関西テレビ/東海テレビ/テレビ西日本/北海道文化放送/BSフジ

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