Oculus VRが“Oculus Connect 5”で発表した、新たな一体型VRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Quest”。ハイエンドPCや対応スマートフォンなどが必要なく、単体で使用者本人の移動も検出する高度なVR体験が可能な本機を、会場で早速体験してきた。

※2018年9月28日午前5時50分追記:文中で当初Insomniac Gamesの『Stormland』が対応予定と記載しておりましたが、正しくはEpic Gamesの『Robo Recall』となります。お詫びするとともに訂正致します。

 あらためて簡単におさらいしておくと、Oculus QuestはPC用VRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”と先行する一体型VRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Go”との中間に位置する製品となる。2019年春に399ドル(64ギガバイトモデル)で発売される予定だ。

 技術的にはOculus Goの延長上でモバイル系でありつつ、体験の質ではRiftのように使用者の上下前後左右の移動とハンドコントローラーを検出する“歩けて自分の手を使えるVR”を実現(どちらもGoでは不可能)。

 しかも本体前部のセンサーで検出を行っているため、外部センサーの位置に制限されるRiftよりも広範囲に動け、なおかつGoのようにコードレスであるという特徴を持つ。

一体型の新VRヘッドセット“Oculus Quest”を早速体験! VRサバゲーも可能な、コードレスに歩き回れるVR体験が最高_02
4隅のセンサーで上下前後左右の移動を検出する“Oculus Insight”システム。これによりケーブルや外部センサーなしに単体動作での位置やハンドコントローラーの検出を実現している。

空間認識のリンクにより、VRFPSがリアルを取り込んだVRコスプレサバゲーに変貌!

 その長所を最大限に活かしていたのだが、VRシューティング『Dead and Buried Arena』のデモだ。『Dead and Buried』自体はすでにPC(Rift)版と最適化されたGo版が出ているが、今回のデモでは約24メートル×約18メートルの(現実の)フィールドに3人チームが2組投入され、向かい合って戦うというアトラクション型の対戦に変貌していた(もちろん本作を遊ぶのにそれだけのスペースが必要になるわけではなく、そういう用途も可能であるということを示すためのデモだ)。

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 しかもプレイヤー周囲の認識機能をフル活用し、他プレイヤーがいる場所には西部劇ファンタジー風のアバターがちゃんと表示されており、さらにフィールドに置かれた箱がゲーム中の実際の障害物と連動している。現実空間とVR空間がリンクした中でサバゲーをやっているようなものだ。

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Oculus公式ブログより、プレイヤー表示の概念図。VRの中ではそれぞれが世界観にあったアバターが現実の位置関係を反映して表示されている。

 というわけで銃撃戦の合間に障害物から障害物まで移動してみたりしたのだが、7~8メートルぐらいの距離を普通に移動できちゃうのが驚き。不安ならばボタンを押すだけで“ミックスドリアリティ”モードになり、実際の外界の映像が輪郭線を抽出した線画として表示されるので、多少落ち着きを取り戻せる(それでもコケるのが怖くて恐る恐る歩いている間にやられたりはした)。

 またQuestそのものの機能ではないのだが、プラスαの実験的機能としてセンサーなどを搭載したiPadを持った“カメラマン”が存在しており、外部モニターに試合を中継していた。これが“現実側”の映像ではなく、ちゃんとプレイヤーたちに見えているVR世界の中の映像になっていて、なんというかものすごい。

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左に映っているのがカメラマンで、右が中継映像。

SUPER HOT, SUPER HOT, SUPER HOT!!

 会場ではそのほか、“プレイヤーが動いている間だけ時間が動く”というギミックの、トリッキーなインディーFPS『SUPERHOT』のQuest版もトライした。

 ベースとなっているのはRiftやPlayStation VRなどに対応しているVR版『SUPERHOT VR』で、それをモバイル系プロセッサーを採用しているQuestに移植したものとなっている。

 こちらもコードレスで歩き回れるQuestの特徴を活かした構成になっていて、オープニングでいきなり通路を歩いたり曲がったりさせられる。安全領域を出てリアルな壁などにぶつかりそうな時は“ガーディアン”と呼ばれる青い格子状のガイドが表示されるので、ヘッドセットを脱がなくてもなんとかなる(まぁ記者の部屋で遊ぶことを考えたら、床に物が散乱しているのをどうにかしなければならないが)。

 また、ややローディングに時間がかかったものの、元々ローポリむき出しのスタイリッシュなアートスタイルなこともあって、グラフィックなどに特に違和感はなし。もちろん処理能力的に難しいものもあるだろうが、PC向けVRで出ているソフトのQuest移植の可能性を感じさせるデモだった(実際に『MOSS』やEpic Gamesの『Robo Recall』※などハイエンド寄りのタイトルもQuest対応が予定されている)。

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2丁拳銃でバリバリ撃ってきました。

結構ハードに動いている人もいたテニスゲー

 直接は体験できなかったのだが、興味深いデモとして“Project Tennis Scramble”と呼ばれていたタイトルについても触れておきたい。要は自分の体を使って遊ぶテニスゲームで、勘のいい人は全身を使って結構ハードにプレイしていて楽しそうだった。

 会場では、Questの広くできるプレイスペースをアピールするためにフェイクのテニスコート上で対面式に遊ぶという見せ方をする一方、あえて狭めのスペースになっているブースもあって、VRならではのフレキシビリティが感じられた。

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このお兄さん、思いっきりスイングしていていい感じ。

一体型+歩ける+手を使える+コードレス=超いい

 というわけでデモのインプレッションを紹介してきたが、他に機器のいらない一体型であり、歩けて手を使えるVRをコードレスに楽しめるというのは圧倒的に魅力がある。

 さてQuestの登場により、Oculusの展開する“第1世代”の3機種が揃うことになる。長所短所はそれぞれあり、どれが適しているかは、どんな体験を(あるいは具体的にどんなソフトを)求めるかによって変わってくる。

 PCをアップグレードすれば性能を強化できるRiftは依然としてフラッグシップ機的な位置づけであり、逆にQuestの性能に限界はある。しかしVRにとって大事なのは没入感と求める体験の内容と質であり、『SUPERHOT』のデモのようにグラフィックが最優先のタイトルでなければ対応可能なものもある。

 一方で、値段的にOculus Goのメリットも依然としてあり(2万3800円から)、手軽な入門機が欲しい人、またはGoの体験で十分な人(動画視聴がメインだったり、ライトな体験で良かったり)は無理に高い方を買う必要はない。

 だが「これぐらいの値段なら」と思える人ならOculus Questを強くオススメしたい。それだけ“いい所取り”の製品になっていると感じた。日本円での価格も早く知りたいところだ。