E3 2018で大々的にお披露目され、ひときわ注目を集めていたのがエレクトロニック・アーツの『Anthem』。そのかっこいいロボット(ジャベリン・エグゾスーツという)が、ゲームファンの心をがっちりとわしづかみにしているのは間違いのないところだが、gamescom 2018の会期中に、同作の開発元であるバイオウェアのゲームディレクター、ジョン・ワーナー氏にインタビューする機会を得た。

 ワーナー氏は、30年前に4年ほど日本に住んでいたことがあるという。軍人として来日し、京都大学で学んだのだとか。その後、(おそらくは再来日して)ディズニー・インタラクティブ・スタジオに入社し、ニンテンドーDS用ソフト『化石超進化 スペクトロブス』などを担当。アメリカ・ユタ州に戻って、ご両親の介護をしたあとで、カナダのバイオウェアに入ったという。バイオウェアでは、『Mass Effect』のマルチプレイヤー担当のシニア・プロデューサーだったという。

 日本語は、「すっかり下手になってしまった」とのことながら、ときどき日本語で話しかけてくれたりと、笑顔が印象的な魅力的な方でした。

『Anthem』は“喪失と克服の物語”、ディレクターのジョン・ワーナー氏に聞く【gamescom 2018】_01

――『Anthem』で、もっとも力を入れているポイントを教えてください。

ジョン 『Anthem』は、フレンズと共有することのできる変動性の高いアクションゲームです。ワールドのほとんどの部分は共有することができます。プレイヤーのホームベースは自分だけのもので、ほとんどのストーリー展開やプレイヤーの活動はそこで行われます。ゲームを早く進めなくてはいけないという周囲からのプレッシャーなしにじっくり時間をかけてプレイできるようになっています。一方で、“Fort Tarsis”の外に出れば、ほかのプレイヤー3人まで、合計4人でいっしょにプレイできるので、ぜひそうしていただきたいと思っています。

――競合する同じ系統のタイトルと比べたときの『Anthem』の魅力は?

ジョン 『Anthem』では、フリーランサーのパイロットとしてプレイすることになり、さまざまなジャベリン・エグゾスーツを着用します。ほかのゲームではクラスを選んでゲームを進めることが多いかと思いますが、クラスを変更したい場合にはキャンペーンを最初からやり直すことになります。しかし『Anthem』では、パイロットはすべてのスーツを着用でき、変更したいときに変えられます。ストーリーをやり直す必要はありません。

――やはりジャベリン・エグゾスーツがキモだということですね。

ジョン スーパーヒーローになった感覚を味わってほしいです。スーツはちゃんと目的があって、たとえば特定の課題に直面したときはもちろん、単に違うスーツを楽しみたいときにも変更できます。
 ゲーム自体はとても間口が広いので、コントローラーを手に取ってすぐに楽しんでもらえます。壮大なるフィクションの世界観を楽しめるのです。
 一方で、スキルベースのチャレンジに挑みたいという熟練プレイヤーには、彼らのレベルに合ったアクティビティを用意しています。つまり、あまり経験のないプレイヤーでもゲームを始めることができ、やがてはより難しいことにチャレンジしてもらえたらいいなと、私は思っています。

『Anthem』は“喪失と克服の物語”、ディレクターのジョン・ワーナー氏に聞く【gamescom 2018】_02

――『Anthem』は細部に至るまでこだわり抜いているとの印象がありますが、中でもとくにこだわった部分は?

ジョン ハイクオリティーな経験を提供するため、すべてに関して細部にこだわっています。たとえばジャベリン・エグゾスーツですが、私たちが作ってきた中でもっとも詳細に作られたモデルになっています。コントローラーの操作性にもこだわりました。この方針は、ワールド全体の構築にも共通して徹底されています。

――ジャベリン・エグゾスーツのデザインの方向性のようなものはあるのですか?

ジョン ひとつの方向というよりは、幅のあるものにしています。誰でもロボットスーツに身を包んでファンタジーの世界へ行き、自分より偉大なものになれるのですから。

――たとえば、サイズひとつとっても試行錯誤があった?

ジョン はい。ガンダムのようなロボットというよりは、“人間”だと感じられるものにしたいと思いました。“スーツを着たパイロット”だと感じてほしかったんです。腕を撃たれれば自分が撃たれたと感じますし、ヘルメットを通してキャラクターの顔が見えます。

――開発チームのメンバーは、ロボットアニメが好きなのですか?

ジョン そうですね。アニメが好きな人はたくさんいます。情熱を持っていますし、『Anthem』の世界観を構築していくのは楽しいです。
 また、アメリカではマーベルユニバースはとても人気があります。私たちは、ああいうタイプのヒーローに惹かれる傾向を持っている。スーツを着るだけで大きくて何か違う存在になれるというのは、とてもパワフルな感覚です。
 一方で、『Anthem』は『スター・ウォーズ』のようなサイエンス・ファンタジーでもあります。『Mass Effect』のようなハードサイエンス・フィクションではありませんが、『ロード・オブ・ザ・リング』のようなファンタジーでもない。フュージョン(融合)という表現が適切だと思いますね。

『Anthem』は“喪失と克服の物語”、ディレクターのジョン・ワーナー氏に聞く【gamescom 2018】_03

――そういえば、E3に合わせて行われたEA Playで披露されたときの反響はいかがでしたか?

ジョン とてもよい反応をもらいました。ワクワクしてくれたようですし、さらに好奇心を持ってもらったようです。プレイヤーの皆さんがゲームに入って走り出して、空中に飛び出し、シームレスに水中に飛び込むところを見て、私もとても嬉しく思いました。プレイしている方の幸せそうな顔を見るのは楽しい。『Anthem』の楽しさを世界中のゲームファンに味わってほしいと改めて思いました。

――EA Playでのフィードバックを受けて変えたところはありますか?

ジョン 操作性は好評でした。キャラクターとストーリーにはこだわりをもっていますが、その内容が充分かどうかを心配する声はありました。もちろん、充分な材料を用意しています。バイオウェアのゲームらしくないので、「本当にバイオウェアのゲームなのですか?」とも聞かれましたね(笑)。

――こだわりのストーリーのテーマをひと言で言うと?

ジョン 喪失と克服です。

――最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

ジョン ぜひ『Anthem』をプレイしてみてください。日本の皆さんにはきっと気に入っていただけると思っていましし、そうなったらとてもうれしいです。

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