『ゼルダの伝説』シリーズのファンのあいだでは、新作が出ると必ずと言っていいほど時系列が話題になる。

 ファミコンのディスクシステムで発売された初代『ゼルダの伝説』と、シリーズ第2作の『リンクの冒険』、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』とそのエンディング後を描いた『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』(正確な時系列は後述)、そして、『ゼルダの伝説 風のタクト』から時代が続く『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』、『ゼルダの伝説 大地の汽笛』など、いくつかの作品は時系列を明確にして描いているものの、それ以外の『ゼルダ』シリーズ作品は時系列が明かされないままということが多い。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の時系列は、すべての歴史の未来か、どこにも属さない未来の話か。任天堂がハイラルの歴史を公開_01
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の時系列は、すべての歴史の未来か、どこにも属さない未来の話か。任天堂がハイラルの歴史を公開_02
『ゼルダの伝説』
『リンクの冒険』
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『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』
『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』
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『ゼルダの伝説 風のタクト』
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『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』
『ゼルダの伝説 大地の汽笛』

 だが、マスターソードの誕生を描く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』の発売時に、ファンのあいだで大きな話題を呼んだ書籍が登場した。それが、『ゼルダの伝説』シリーズ25周年で発売された書籍“ハイラル・ヒストリア ゼルダの伝説 大全”(小学館刊)だ。

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『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』

 この書籍の中で、初めてハイラル(『ゼルダの伝説』シリーズの舞台となる世界)の歴史、系譜が明確に明かされる。しかも、その内容が衝撃的だった。

 『ゼルダの伝説』シリーズは、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』から、“勇者が敗北した未来”(『神々のトライフォース』や初代『ゼルダの伝説』の時代につながる)、“勇者が勝利した後、リンクが戻った子ども時代の未来”(『ムジュラの仮面』につながる)、“勇者が勝利した後、リンクが元の時代に去った大人時代の未来”(『風のタクト』につながる)の3つに分かれるという。

 この分岐だけでなく、勇者が勝利した大人時代の未来で、ハイラルが海に沈んでしまっていたり(『風のタクト』の時代)と、その展開もなかなか衝撃で、かくいう筆者も目を丸くしながら読んだことを覚えている。

 結果的に、系譜が明らかになったことで議論がなくなった……ということはなく、むしろファンの時系列の話題はさらに熱を帯びることに。その後も『ゼルダの伝説』シリーズの新作が発売されるたびに、ファンは「この作品は時系列のどこに入るものなんだ?」と議論を重ねていたのだった。

 そして、2017年3月3日に発売された『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。最大の敵であったガノンは“厄災ガノン”という概念のような存在になり、リンクは100年の眠りから目覚めるなど、時代が大きく進んだ演出が多かったこともあいまって、プレイヤーの多くが、「『スカイウォードソード』が始祖の物語なら、『ブレス オブ ザ ワイルド』は時系列の最後に位置する物語なのだろう」と察することになった。

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『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

 だが、ただ“最後”では納得しないのが、これまでの衝撃の時系列を乗り越えてきた『ゼルダの伝説』シリーズファン。“いったいどこの時系列の最後なんだ!?”と考えることになる。

 そんな疑問に対し、『ゼルダの伝説』シリーズのプロデューサーである青沼英二氏、『ブレス オブ ザ ワイルド』などのディレクターを務める藤林秀麿氏は、ファミ通のインタビューで下記のように答えている。

――ハイラルの歴史において、今回のお話はどこに位置付けられるのですか? 過去のどの作品よりも後のお話なのかな、とは思うのですが……。

青沼 それはもちろん最後ですよ。でもまあ、わかります、どのラインに続く最後なのか、という話ですよね?(笑)。

藤林 それは……ご想像にお任せ、じゃないですか?

青沼 ハイラルの歴史というのは、時間とともに変化するんです。つぎの作品を作っていて、何かをやろうとしたときに、「ああ、こっちのほうが都合がいいな」と思ったらガチっとハマったりですとか、逆にヤバいと思ってハメ直したりですとか。じつはいままでにも、一度決まった歴史が、微妙に変わったことは何度かありますから(笑)。

藤林 最近社内で流行している言葉は、“新解釈”です(笑)。厳密に言うと、変わったわけではなくて、新しい資料や新事実が見つかったということなんです。

青沼 歴史の教科書も、細かい部分がどんどん変わっていますよね。だから今回、新たな古文書を見つけたような状況なんですよ(笑)。

――なるほど、『ブレス オブ ザ ワイルド』という古文書をどう解釈すべきかは、まだ学説が定まっていないわけですね(笑)。

藤林 ですので、今後の研究にも目が離せませんよ! ご期待ください(笑)。

 このインタビューが載ってから1年と4ヵ月。突然、任天堂は“ゼルダの伝説ポータル”で、ハイラルの歴史を記した“HISTORY”ページを公開した。

 当然ながら、気になるのは『ブレス オブ ザ ワイルド』がどの時系列の“最後”になるのか。それとも、またさらなる新解釈が明かされるのか。筆者は、好奇心と答えが出てしまうことへのちょっとした切なさを感じながらページをチェック。そこには、下記の写真のような位置に属する『ブレス オブ ザ ワイルド』があった。

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『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の時系列は、すべての歴史の未来か、どこにも属さない未来の話か。任天堂がハイラルの歴史を公開_12
“ゼルダの伝説ポータル”より

 ん????? こ、この罫線は? 確かに、時系列の“最後”に位置していることは間違いない。だが、この罫線で区切られた後に位置するのは、“すべての時代の最後”ということなのか、それとも“どこにも属さない未来”なのか。はたまた、こういった解釈とは異なるものなのか……。

 『ゼルダの伝説』シリーズの時系列は、“ゼルダの伝説ポータル”という“新解釈”を経て、再び新たな謎を生み出していくのであった。