かつてアーケードゲームの開発に携わっていたメンバーが中心となって制作されている、PC用同人シューティングゲーム『Rolling Gunner(ローリングガンナー)』。約3年に及ぶ開発期間の終了を間近に控え、プロジェクトの主要メンバーにゲームの魅力と開発エピソードを伺った。

『Rolling Gunner(ローリングガンナー)』について

 独立制御型兵装 を搭載した戦闘機“RF-42R STORK”を操縦し、人類に反旗を翻したセントラルコンピュータ“BAC”の制御下に置かれた機械兵器の侵攻を食い止める、全6ステージ構成の横スクロールシューティングゲーム。ショットの方向を360度自由に調整できるオプション兵器“ローリングガン'”と、ゲージを溜めることで任意発動できる“パワーアップ”を駆使して、弾幕の海をかきわけていく。ステージクリアー時のリザルトデモや、プレイ中の大がかりなビジュアル演出には、ウェブテクノロジ社開発の2Dアニメーション作成ツール“OPTPiX SpriteStudio”が用いられている。
週刊ファミ通 2018年1/11・18合併号(2017年12月27日発売)の“とっておきインディーコーナー”にて、紹介記事を掲載。

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“Project Rolling Gunner”のメンバー

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小泉大輔氏 (右から3人目)
(文中は小泉)
ディレクション/ゲームデザイン/プログラム
同人ゲームサークル“あるふぁ~秘密基地”所属のプログラマ。ゲーム開発会社でプログラマとして活動後、現在はウェブテクノロジで2Dアニメーション作成用ツール“OPTPiX SpriteStudio”の開発に携わっている。

脳しろっぷ氏 (左からふたり目)
世界設定、グラフィック
数々のゲーム開発会社でグラフィックデザイナーとして活動。現在はウェブテクノロジに在籍。

池田 陽朗氏 (左端)
(文中は池田)
リザルト画面演出
フリーランスのイラストレーター。ゲームアプリのイラストやアニメーション、自主制作アニメなど幅広く活動中。名前の読みは“いけだぴろう”。

sht氏 (右からふたり目)
アドバイザー
アスタブリード』(えーでるわいす)などのシューティングゲームのバランス調整を手がけてきた、テストプレイヤー兼アドバイザー。ゲーム開発会社でプログラマを担当していたことも。

小塩広和(COSIO)氏 (右端)
(文中は小塩)
サウンド
ゲームサウンドクリエイター。ゲームメーカー・タイトーのサウンドチームの一員として『ダライアスバースト』シリーズ、『グルーヴコースター』シリーズなどのBGMを手掛ける。2015年にタイトーを退社し、現在はフリーランスとして活動。

isk8086氏
システムプログラム
小泉氏の友人でサークル“HelloWorldProject”でゲームを開発している。本業はゲーム開発会社所属のプログラマ。所要のため今回の座談会には不参加。

ミドルウェア開発会社からの誘いで制作を決意

──“Project Rolling Gunner”は、『Rolling Gunner』を制作するために作ったチームなのでしょうか。

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小泉大輔氏

小泉 はい。僕が作りたいものを作るため、協力してほしい方々に声をかけて結成しました。できればお金を出して依頼したかったのですが、いかんせん個人制作なので開発費が手元になく、売上をロイヤリティーでシェアする契約(レベニューシェア)でお願いしています。メンバーの皆さんには、自分の時間を開発費として出してもらっている感じですね。

──母体は、小泉さんが“D.K”名義で活動している同人ゲームサークル“あるふぁ~秘密基地”と、isk8086さんの同人ゲームサークル“HelloWorldProject”の共同開発ということでよろしいでしょうか?

小泉 はい。今回のインタビューには参加できなかったのですが、isk8086さんも、『Rolling Gunner』の描写関係のライブラリまわりのプログラムを担当しています。

──個人的な思い出話になりますが、小泉さんと初めてお会いしたのは、3年前に開催された“東京ロケテゲームショウ2014”の取材時で、そのときにはブース出展されていた縦スクロールシューティングゲーム『Galaxy Frontier』をファミ通.comの記事で紹介させていただきました。当時は某ゲームメーカーに在籍し、シューティングゲームの移植開発に携わる傍ら、自分の趣味のゲームを作っていた、というお話に驚かされました。

小泉 会社という形だと作れないタイプのゲームも多々あるので……(笑)。『Galaxy Frontier』は、僕とisk8086さんが中心となって2年くらいかけて作りました。あのゲーム自体、「昔プレイして感動した、熱い演出が入ったゲームを、ゲーム制作の技術を身につけたいまの僕らで作ってみよう」という遊びだったんです。ボリュームは小さいものだったけれど、ある程度チームを組んで開発していける目処が立ちましたね。

──ではつぎは『Rolling Gunner』だと。

小泉 『Galaxy Frontier』の開発が終わったタイミングで、ウェブテクノロジの浅井(維新氏。同社セールス・コミュニケーション部マネージャー)から、同社の2Dアニメーション作成ツール“OPTPiX SpriteStudio”を使ってゲームを作ってみませんか、というご提案がありました。ちょうどインディーゲーム開発者向けの無料ライセンス(OPTPiX SpriteStudio for Indie)が始まったころで、それを利用した事例をほしかったようで。

──絶好のタイミングで、企業からのオファーがきたわけですね!

小泉 あくまでも個人制作の形ですが(笑)。ただ僕としては、これをきっかけにもう少し規模の大きなゲームを作ってみようと自然に思えました。そうこうしているうちに、浅井から「もともとゲーム会社でデザインやっていた人間がウチにいるけど」と言われて紹介されたのが、脳しろっぷさんでした。

脳しろっぷ 以前在籍していたゲーム開発会社が潰れてからウェブテクノロジに移って、“OPTPiX SpriteStudio”のユーザーサポート業務を行っていました。『Rolling Gunner』の制作は会社の業務ではありませんが、またゲームを作りたいなと悶々としていたところにお話をいただいたので、嬉しかったですね。

──小泉さんは現在、ウェブテクノロジで“OPTPiX SpriteStudio”の開発に直接携わっているとのことですが……。

小泉 『Rolling Gunner』の件とは別に、“OPTPiX SpriteStudio”の開発メンバーを探していると誘われていました。直接ゲームを開発する以外にも一歩離れたところからゲームという文化に携わるアプローチもあるのかなと思ってプロジェクトに参加したのですが、結果的に、自分たちのゲームの開発に使うことで見えてくるツールの改善点や欲しい機能を“OPTPiX SpriteStudio”の開発にそのままフィードバックできています。こういうツールって社内だけで作っていると良し悪しがわからなくなってくるものなので、ツール自体の開発にもプラスになっていると思います。

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理想のシューティングゲーム像に対する職人的こだわり

──『Rolling Gunner』がどのように作られていったのか伺います。前作『Galaxy Frontier』が縦スクロールだったのに対し本作は横スクロールですが、ここには何らかの意図が?

小泉 シューティングは縦スクロール、横スクロールそれぞれのおもしろさがあると思いますが、縦の場合、敵が出る位置が上に集中するのが一般的です。横の場合は上下左右のどこからも出せるので、よりギミック感が強くなります。『Rolling Gunner』は企画段階から“オプションを操作して全方向に攻撃可能”という仕様を決めていたので、それを生かす意味でも横スクロールかなと。あとは……16:9画面をフルに使ったゲームデザインをしてみたいという気持ちがありました。

──自機の攻撃のパワーアップ方式が、“効果が永続するアイテム取得型”ではなく、“効果が一時的なゲージ消費型”という点は、『Galaxy Frontier』と共通していますが、ここにもこだわりがあるのでしょうか?

小泉 ゲームシステム自体はすごくシンプルにしたいというのが、まずありました。その上で、“自分の気持ちでパワーアップできるもの”が好きなんです。ちょっと表現が難しいですが、パワーアップを使うか・使わないかという選択をプレイの瞬間瞬間にしながら遊ぶ様な感じというか。そんな緊張感を楽しめるゲームにしたいなと思っていました。

──それは、ガチガチなパターンゲームよりは……ということでしょうか?

小泉 たとえば、敵に攻撃されてとっさにパワーアップを使うと、つぎにパワーアップできるタイミングが変わり、以降の展開も変わってきます。その連続の中でプレイヤー自身がゲームのリズムを作っていく、という感じです。言わば一時的なパワーアップはプレイヤーが使える必殺技のようなものですね。必殺技は連続して使えないので、ここぞというところを見極めて使うわけです。そうなると“ボタンを押してドカンとパワーアップする感覚”が大事だと思って、今回は(アーケードスティックでのプレイが可能な)PC用ゲームとして作成している側面もあります。シューティングゲームは操作感が非常に大事というか、「敵を倒すぞ!」という意思をもってボタンを押す行為によって、ゲームにより感情移入していくものだと思っています。

──『Rolling Gunner』では、さらに“リミッター解除”という2段階目のパワーアップ要素が追加されています。

小泉 自分で使いどころを選択するパワーアップにもう1段階、選択を重ねました。ステージごとにだいたい固定されていくパワーアップ発動のポイントを、2段階目にあたるリミッター解除の発動タイミングによって、パワーアップしている期間を前後に微調整できるんです。さらにリミッター解除を行うための“リミットゲージ”は、パワーアップ中の敵の倒しかたによって増加量が変わってきます。プレイ内容やスコアに大きな影響を与えるリミッター解除の存在が、ゲームのやり込み幅につながっています。

──世界観やグラフィックのコンセプトは?

小泉 僕のほうでゲームシステムをすべて固めて、世界観まわりの設定は脳しろっぷさんにすべてお任せしました。ゲームシステムを納得させるための世界観でありキャラクターなので、オプションのデザインに関しても「どの方向に向けてもこれなら撃てるよね」っていうデザインであればご自由に……と。

──それはつまり“丸投げ”ということでしょうか。

小泉 丸投げというか、僕がイメージする各ステージごとの“シューティングゲームとしての構成”のつじつまを合わせてもらったという感じですね。たとえば“地上”に“戦車タイプの敵”を出したいとなったら、それに合う背景を作ってもらう……みたいな。

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脳しろっぷ氏

脳しろっぷ 小泉さんからいただいたベースで無理なくつながる全体的なストーリーを構想しつつ、場面単位の整合性をとるための絵をあてはめていきました。「(顔グラフィックが表示される)キャラクターは登場させたくない」とのことだったので、じゃあ誰と誰が戦う話なのか、ったところから舞台を作っていきましたね。どうせなら小泉さんの前作とくっつけちゃおうと、エンディングに『Galaxy Frontier』との絡みの要素を入れています(笑)。

──丸投げのしがいがありましたね(笑)。

小泉 世界観をある程度作っていただいてからの詳細の詰めは、いっしょにやりましたよ(笑)。

脳しろっぷ グラフィックは、最初にあったキーワードが“近未来”ということで、現代から遠過ぎず近過ぎないデザインを心掛けました。

──敵キャラのデザインから背景まで、すべておひとりで?

脳しろっぷ はい。ゲーム業界入りして初めて開発に携わった『バイオメタル』(※1993年にアテナがリリースしたスーパーファミコン用ソフト)も、ほとんどひとりでビジュアル面を手掛けたので、いつかはまたやりたいなと思っていました(笑)。

──そのような分担作業だと、各敵キャラのデザインと攻撃方法は、どのように作られるのでしょうか?

脳しろっぷ デザインする際には具体的な攻撃方法にはタッチしていません。中間ボスやステージボスなど大型の敵の場合は、“ここから攻撃できますよ”という発射点をとりあえずいっぱい用意しておきました。

──発射点、というのは?

脳しろっぷ 敵本体のどの部分から弾を撃つか、という位置のことです。“OPTPiX SpriteStudio”で作成したキャラクターデータでは、発射点をパーツ内の相対的な位置として記憶させられるので、絵に動きを後づけしても、発射点がちゃんと追従してくれるんです。

小泉 これをプログラムでやろうとすると、細かい動きのあるアニメーションの1フレームごとに発射点の座標を指定する必要があるので、ツールを使うことでその手間がなくなるのは、プログラマにとっても大きなメリットですね。

脳しろっぷ すべての発射点が実際に使われるかどうかはともかく、デザイナー側の提案として自由に使ってください、という形で小泉さんに渡しました。

小泉 発射点のバリエーションは「上下方向に広めに」とだけ注文を出して、実際に作成された敵のデザインから発想して攻撃法を作っていきます。世界観ができあがると、その世界観にふさわしい敵ができる。あとはその敵にふさわしい攻撃を作ればいい……という順番です。

──敵の攻撃バリエーションということでひとつ思い出したのですが、『Rolling Gunner』って、レーザー系の攻撃がほとんどないですよね。ぶっちゃけ、最終ステージ(ステージ6)でやっと出てくるというこの“もったいぶり”は、何か狙いあってのことなのでしょうか?

小泉 レーザーですよね……本当は使いたくなかったんですよ。

──どうしてですか!?

小泉 今回はシンプルに“敵の配置だけでおもしろいゲーム”にしたいという思いがありました。それなら敵の攻撃だって、加速したり軌道が変わったりしない等速弾だけで十分だし、自分が愛したものをいざ自分の手で作るとなったら、“具が入っていない麺とスープだけでおいしく食べられるラーメン”を作るつもりでないといけないだろうと。

──なんという職人気質な……。

小泉 使いたくなかったんですけど、脳しろっぷさんの強い希望で(笑)。

──(笑)。

脳しろっぷ 「もうちょっと攻撃にバリエーション入れようぜ!」と。レーザーを出すと、絵がきれいなんですよ。

小泉 『Rolling Gunner』のベース部分には“1ステージごとに新ギミックを入れていく”というのコンセプトがあるんです。ステージ1だと敵は左右からしか出ないのですが、ステージ2では地上敵が出現、ステージ3から上方から敵が出現……といった具合に。それに則って、最終ステージで初めて出てくるギミックがレーザー攻撃、というのであれば、まあいいのかなと。

──仕上げの段階で、脳しろっぷさんがレーザーをトッピングとしてまんまと添えた、ということですね。

脳しろっぷ 自分はギミック好きなので、ほかにもいろいろ突っ込んだんですけど、頑として採用してくれませんでした(笑)。でも、ステージ5に関しては、「盛り上がるステージが欲しい」とこちらからお願いして、急きょ作ってもらいました。

──えっ、デザイナー主導でステージが追加されたってことですか?

小泉 最初は全5ステージ構成だったのですが、ステージ4とステージ5(※当初の最終ステージ)をつなぐ演出を補完するためのステージがほしいと提案されました。ステージ4の最後で宇宙空間に逃げていく敵を追うシーケンスをドラマチックに見せたい……という希望を受けまして。宇宙空間は地上敵が置けないので作りづらいのですが、新ステージ用の気合の入った背景アニメーションを魅せられてしまったので、その熱い想いに応えて作るしかないと腹を括りました。

脳しろっぷ グラフィックに関してはデザイナー側で作れてしまうので、やりたいことをガンガン入れていけるんです。「作っちゃいました」という形でこちら側の要望を出せるのは大きいですね。その結果、BGMもリザルト演出もひとつずつ増えたわけですが(笑)。

──そうしたフレキシブルさは“OPTPiX SpriteStudio”を導入したゲーム開発ならでは、という感じですね。

小泉 プログラマは、できたものを表示するだけでいいんです。アニメーション演出の修正でプログラマの手が入らないということは、満足いくまで作ってもらえる……デザイナーが暴走しやすくなるんです(笑)。

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