2017年9月21日(木)から9月24日(日)まで、千葉の幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2017(21日・22日はビジネスデイ)。東京ゲームショウでの見逃すことのできない役割が、“日本市場への参入を目指す海外スタジオの、自社タイトルのお披露目”にあると言える。実際のところ、ここ数年で東京ゲームショウはすっかり国際色豊かになっており、今年も36の国と地域から海外317社が出展を果たしている。となると、ファミ通.comでも勢い海外スタジオを取材する機会が多くなり……ということで、記者個人の取材も、半分以上が海外スタジオだったのでは……という気もする。

 そんなわけで、ここでは大挙して海外スタジオのクリエイターが訪れた、レイニーフロッグブースの模様をお届けしよう。2013年9月に設立された同社は、海外ゲームの国内パブリッシュなどをおもな業務とする会社。東京ゲームショウへの出展は今年で2回目となり、ブースでは『RUNBOW』や『Mekorama』、『コンバット!サーチ&レスキュー』など8タイトルを出展した。ここでは、その中から海外クリエイターが来日を果たした4タイトルを紹介しよう。

海外スタジオは日本を目指す!? 『forma.8』や『Runbow』など、レイニーフロッグブースに集結したタイトルのクリエイターに聞く【TGS2017】_01

『forma.8』 

開発元:MixedBag Srl(Nintendo Switch/プレイステーション4)

 イタリアのスタジオMixedBag Srlが手掛ける『forma.8』は、宇宙を舞台にしたメトロイドヴァニア風味のアクションゲーム。宇宙船“forma.8”を駆使して、失われたエネルギー源を回収することになる。“forma.8”は攻撃ができないというのが特徴のひとつ。その代わりに、爆弾のアイテムを武器として使用可能で、ボスキャラに爆弾を入れて爆発させる……といったことができる。「本作にはテキストがほとんどありません。プレイヤーはゲームを体験して、自分なりのストーリーを作り上げることになるんです」とCEOのマウロ・ファネリ氏。幻想的なビジュアルが、イマジネーションを引き立てるようだ。

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 「イタリアでこんな風味のタイトルがあるんだ……」と記者は少し意外だったが、ファネリ氏によると本作は「たくさん日本のゲームをプレイして、インスパイアを受けている」とのこと。「どんなゲームですか?」と聞いてみると、「すべての任天堂のゲーム! それにファミコンやドリームキャスト……たくさんコレクションがあるんです!」(ファネリ氏)とのこと。日本ゲームの影響を受けた、イタリア発のゲームといったところだ。

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日本のマンガを意識して、イタリアのクリエイターが作ったというポスター。よくできてます!

 海外ではWii U版が大好評だった本作は、今回満を持してNintendo Switch版とプレイステーション4版が国内向けに配信される。配信日は9月28日で、価格は1000円[税込]だ。

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MixedBag Srl マウロ・ファネリ氏。

『Mekorama』

開発元:Ratalaika Games/ Martin Magni(Nintendo Switch)

 『Mekorama』は、キューブ状の足場を動かしてマップを回転させ、小さなロボットを出口まで導くというパズルアクション。もともとはスウェーデンのスタジオMartin Magniがスマートフォンアプリ向けに開発した同作だが、Nintendo Switch版のリリースに際してはスペインの開発会社Ratalaika Gamesが移植を担当するという。

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 今回の東京ゲームショウでは、この移植を担当したRatalaika Gamesのエイドリアン・ベガ氏が来日したわけだが、レイニーフロッグのトニー・バイアス氏に、移植作業をRatalaika Gamesに依頼した経緯を聞いてみると、「経験豊富で、移植がうまいから」とのこと。とはいえ、聞けばエイドリアン・ベガ氏は24歳(!)とのことで、世界は広い……といったところ。ベガ氏に移植のコツを聞いてみると、「経験はなかったけど、一生懸命仕事したから」とのお答え。ちなみにお好きなゲームはビジュアルノベルで、いまは『Backstage Pass』(海外のSake Visualが制作したアドベンチャー)がお気に入りなのだとか。ビジュアルノベルが好きな理由を聞いてみると、「仕事以外では、ストーリーのあるゲームをリラックスして遊びたい」とのことで、もしかして“趣味はプログラム”みたいな方なのかもしれない……と思いつつ、スターサインよりRatalaika Gamesのオリジナルタイトル『お宝ディフェンダー~ファラオの秘宝~』がニンテンドー3D向けに2016年12月に配信されているので、気になる方はどうぞ。

 Nintendo Switch版『Mekorama』の配信日は未定だ。

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Ratalaika Gamesのエイドリアン・ベガ氏。

『ピクセル ラインDX』

開発元:Score Studios(Nintendo Switch)

 同じ色の数字を、その数字と同じマスの数だけつないでいくというパズルゲーム。たとえば、“6”と表示されたマスは6個つながないといけないというわけ。すべての数字をつなげると、隠れていた絵が明らかになる。8月24日に配信されたばかりの同作は、シンプルながらも奥深いゲームシステムで高い評価を獲得しているのだが、記者がどうしても気になってしまったのは、開発を担当したScore Studios。16年前に来日したジェームス・ケイ氏が2009年に設立した同社は、『人喰いの大鷲トリコ』でエンジンとツールセットを製作したというほどの実力集団。かつて、スタッフはすべて海外から来たクリエイターで構成されていると聞いたことがあったので、「まるで傭兵部隊だなあ」と興味深く思ったことがあるのだが、よくよく聞いてみると、いまのスタッフはひとり(つまりCEOのジェームス・ケイ氏のみ)だという。プロジェクトに応じて、スタッフが参加したり解散したりしているそうで、まさに傭兵流と言えるのであろうか。

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 この『ピクセル ラインDX』は、もともとスマートフォン版がリリースされていて、今回Nintendo Switch向けに移植されたもの。同作の魅力をジェームス・ケイ氏に聞いてみると、「罰がないところです。間違っても何度でもやり直せるし、時間制限もありません」とのこと。“ストーリーモード”と“パズルモード”を合わせて、300個以上のパズルが収録されている本作だが、今後も定期的に更新を無料で行うとのことで、まさに取材した前日(9月21日)に新しいパズルパック“ホラー”が配信済み(もちろん無料)。「ひとりで作れるのかしら……」と若干余計なお世話で心配になって聞いてみると、「ヘルプでスタッフが入っています」(ケイ氏)とのこと。なかなかに興味深いスタジオであります。

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Score Studios ジェームス・ケイ氏。

『Runbow』

13AM Games(Nintendo Switch/プレイステーション4)

 2年前にWii U版がリリースされて好評を博した『Runbow』は、背景がどんどん変わっていって、足場が背景と同じ色になると足場と背景が同化して“足場がなくなってしまう=落ちる”という、ざっくりというとそんなゲーム性をもったタイトル。2018年初頭に、Nintendo Switch版とプレイステーション4版のリリースが予定されている。

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 同作最大の魅力は、最大9人までのマルチプレイが可能なこと。まさにわいわいと楽しめるというわけだ。とはいえ、来日した13AM Games CEO&クリエイティブディレクター、アレックス・ラシュディ氏は、「本作は9人プレイで有名になりましたが、ひとりでも遊べます。シングルプレイも遊び応えがありますよ」という。

 オリジナル版を手掛けたのは13AM Gamesだが、移植作業はスペインのスタジオに頼んでいるとのこと。「とくにユーザーさんからは“Nintendo Switch版を出さないのか?”という問い合せが多かったので、リリースが決まって興奮しています」とアレックス・ラシュディ氏。

 ちなみに、『Runbow』の移植をほかのスタジオに任せたという13AM Gamesでは、ただいま新しいタイトルを作っているという。その概要を聞いてみると、「言えません」とにこやかに当然過ぎるお返事。とはいえ、「トップシークレットだけど、オリジナルIPをNintendo Switch向けに作っています。開発はとても順調だよ」と答えてくれた。

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13AM Gamesのアレックス・ラシュディ氏。