PC版『Overwatch』の日本一の座をかけた戦いが開幕!

 2017年6月3日、NVIDIAが主催するPC版『Overwatch』の大会“GeForce CUP: Overwatch powered by Level∞”のオフラインファイナルが行われた。その模様をお届けする。

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▲会場は秋葉原UDXシアター。多くの観客の前で熱い戦いをくり広げられた。
▲試合の解説はNonke氏(左)、実況はStanSmith氏(右)が務めた。

 本大会は、5月20日のオンライン予選からスタート。予選を勝ち抜いた上位8チームが、翌日に行われたプレーオフへと進出した。長きに渡る激闘を勝ち抜き、オフラインファイナルへと駒を進めたのが“USG Iridata”(以下、Iridata)と“USG Supreme”(以下、Supreme)の2チーム。両チームとも“Unsold Stuff Gaming”(USG)に所属するプロゲーミングチームだ(※)。

(※USG Supremeは2017年6月1日付で株式会社Libalentに移籍しており、チーム名を“Libalent Supreme”に改めている。決勝戦には予選時点の名前であるUSG Supremeで臨んだ)

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 この2チームは、5月21日のプレーオフでも激突しており、そのときはIridataが圧勝。その勢いのままオフライン決勝もIridataが制すのか、はたまたSupremeが意地を見せるのか。多くのファンの注目を集める1戦となった。

 オフラインファイナルは、BO7方式(4本先取)で執り行われた。対戦マップは両チームが交互に選択するのだが、一度選ばれたマップはもちろん、同じルールも選べないというルールが採用されている。なお、この制限はルールが一巡する第4マップ終了後にリセットされる。

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▲こちらがオフラインファイナルのレギュレーション。
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▲『Overwatch』には4つのゲームルールが存在。マップごとにルールが決まっている。

 第1戦は、Iridataがアサルト/エスコートマップのHOLLYWOODを選択。最初のラウンドでは、攻め側のSupremeが最初の拠点の制圧に成功するも、そこからは防衛側のIridataが粘り強い守りを見せ、第1チェックポイントまでの進行を阻止してIridata優勢という展開に。第2ラウンドで攻守交代してもIridataの勢いは止まらず、圧倒的な力を見せる形で勝利した。

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 第2戦は、SupremeがアサルトマップのVOLSKAYA INDUSTRIESを選択。第1ラウンドは、攻め側のSupremeがスムーズに第1拠点の制圧に成功。そのまま第2拠点に攻め込み、拠点の制圧こそできなかったが、ゲージを97.2%まで進ませることに成功し、大きなアドバンテージを手にした。
 第2ラウンドでは、攻め側となったIridataが第1拠点の制圧に成功するも、第2拠点ではSupremeの固い守りに阻まれ、ゲージをまったく進められずに時間切れ。進行ゲージの差により、第2戦はSupremeが制す形となった。

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 第3戦は、IridataがコントロールマップのLIJIANG TOWERを選択。第1ラウンドから激しく拠点を中心にぶつかり合う展開で、お互いに拠点のゲージを99%まで進めるという白熱の展開を見せる。長い集団戦の末、第1ラウンドはIridataが勝利したが、続く第2ラウンドはSupremeが取り返した。
 その後のラウンドでも一方が拠点を奪ってゲージを進めれば、もう一方が拠点を奪ってゲージを進めるというシーソーゲームのようなゲーム展開になり、2-2というスコアで第5ラウンドに。このラウンドでもお互いに拠点を奪い合う展開になったが、最後はIridataが敵を確実に撃破していき、長い戦いを制した。

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 第4戦は、SupremeがエスコートマップのROUTE 66を選択。第1ラウンドでは、防衛側のIridataが序盤から固い守りを見せて時間を稼ぐも、Supremeもこれにうまく対応してジリジリとペイロードを進め、最終チェックポイントを通過。しかし、制限時間は残り少なく、Iridataが守り切ることに成功。
 攻守が入れ替わった第2ラウンドでは、Supremeが粘り強い守りを見せるも、Iridataが最終チェックポイントまでペイロードを進めることに成功。最後は時間ギリギリの攻防となったが、Iridataの勢いは止まらず、そのまま勝利した。この時点でセットポイントは3対1。先にIridataが優勝に王手をかけた。

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 第5戦は、Iridataがアサルト/エスコートマップのKING'S ROWを選択。ここでも攻め側のIridataの選手たちが怒涛の活躍を見せ、第1ラウンドを残り2分23秒というタイムでペイロードをゴール地点まで導くことに成功。このままIridataが押し切るかと思われたが、続く第2ラウンドではSupremeが意地を見せ、残り3分25秒というタイムでゴール。一気に形勢を逆転させたSupremeは、そのまま延長戦を勝利して、Iridataの優勝に待ったをかけた。

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 第6戦は、SupremeがアサルトマップのHANAMURAを選択。第1ラウンドは、攻め側のSupremeが制限時間ギリギリながらも攻めきることに成功させる。対するIridataも怒涛の攻めを見せ、残り1分51秒というタイムで第2ラウンドを制してSupremeにプレッシャーをかけた。完全に後がなくなったSupremeは、延長戦で1分51秒間、拠点を防衛しないと敗北してしまうのだが、順調に敵を撃破していったIridataが拠点の制圧に成功し、優勝を決めた。

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 約4時間の激闘の末、オフラインファイナルを制したIridata。試合終了後には、各メンバーがうれしさをにじませていたのが印象的だった。試合後に「本日のMVPは?」という問いに対し、チームリーダーのVader選手は「僕を除けば」と前置きしたうえで、Aktm選手を選出。最終マップとなったHANAMURAで自分のミスでラウンドを落としてしまったが、それを助けられたからというのが理由だとか。

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 優勝したIridataには賞金42万円が、準優勝のSupremeには賞金18万円が贈られ(パネルの金額は表記ミスとのこと)、“GeForce CUP: Overwatch powered by Level∞”が閉幕。会場の熱狂が冷めやまぬままイベントが終了した。

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▲優勝:USG Iridata
▲準優勝:USG Supreme
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優勝したUSG Iridataのメンバーにインタビュー!

 試合終了後、Iridataの選手たちにインタビューを行った。その模様もお届けしよう(文中は敬称略)。

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――Vader選手の選ぶMVPはAktm選手でしたが、ほかの皆さんの選ぶ今日のMVPを聞かせてください。

Novady Aktmが試合中に指示を出して、それに自分とta1yoが合わせていくというのが僕たちの戦いかたなんですけど、今日はその指示の声がすごく聞こえたので、僕もAktmですね。

Aktm 自分はta1yoですね。彼はチームに加入したばかりで、初のオフラインの試合でしたし、緊張する場面もあったと思うんです。でも、彼の担う重要な役割を、普段どおりにこなしてくれたので、自分はta1yoを推します。

clairel 僕はdefuseで! 僕とdefuseはサポートという役割なんですけど、練習ではなかなか息がかみ合わないことも多くて、言い合いになることも多いんですよ。でも今日はお互いにうまく連繋が取れたと思うので。

ta1yo 僕もdefuseですね。普段はdefuseのプレイに対して怒ることが多いんですけど、今日は怒る場面がなくて、本番に強いんだなと思って……(笑)。

defuse 僕がMVPだと思うのはclairelですね。自分はゼニャッタというヒーローをよくプレイしていて、敵に狙われることが多いんですけど、clairelは周りをよく見ていて、助けてくれるのですごく助かっています。アルティメットスキルの状況とかもしっかり報告してくれて、今日はすごくプレイしやすかったです。

――この意見を聞いて、チームリーダーであるVaderさんはどう思われますか?

Vader ツンデレだなって……(笑)。いつも激しく指摘し合っている相手にMVPあげていたりして。

――言い合いとかも多いんですか?

Vader 練習試合では海外のチーム相手になかなか勝てないんですよ。勝てないからこそ僕らの求めているレベルがどんどん高くなっていって、みんな指摘し合ったりっていうことが多いんです。そのときによく話題に挙がるのが、サポートとタンクですね。

Novady みんなメインタンクに厳しいんだよな……(笑)。

――指摘し合って互いに高め合っているというわけですね。プレーオフでもSupremeと対戦を行っていましたが、そのときと今日は印象が違いましたか?

Vader 最初は正直、狙いどおり勝てて、敵のやりたいことも瞬時に把握してうまく対応できたなという印象でした。今日の対戦では、VOLSKAYA INDUSTRIESで僕らの勢いが止まった後に、盛り返す力があるなと。そのあたりの強さがSupremeには見えて、やはり強いなと感じました。

Aktm 『Overwatch』はやはりメンタルが重要ですからね。Supremeは対応力がすごいので、そこが本番ではちょっと怖いと思っていました。

――今回の大会ではUSGが2チーム、オフラインファイナルまで進みました。USGの強さはどこにあるのでしょうか?

Vader 日本には個で強いプレイヤーは数がそれなりに揃っていると思います。でも、『Overwatch』はチーム競技。ほかのFPSなんかだと5対5が主流ですけど、こっちは6対6。よりチームでの連携が重要です。そこに対してどこまで真摯に取り組めるかが重要だと思っています。
 正直に言うと、僕も含めてこの6人で話し合うのはしんどいんですよ。お互いに言いたいことがあるので。でも、それでも言わなきゃこういった舞台にも上がれないですし、海外だとコーチがいるチームが当たり前の世界です。僕たちもコーチはいないぶん、よりきつい作業を6人でやらなくてはいけない。それをこのメンバーになってから長時間取るようになったので、そこの差があるのかなと思います。

――お互い言いたいことを言って意見を交換して、チームをよくしていくというわけですね。ゲーミングハウスでともに生活されているとのことですが、その生活の中でどれくらいの練習をこなしているのでしょうか?

Vader ta1yoが普通科の高校生なので、最速で練習試合ができるのが17時頃なんですよ。早ければ17時から19時まで練習試合を行います。19時から1時間ほど夕飯のインターバルを取りつつ、20時から22時まで、22時から24時まで練習試合を行って、そこから反省会を1時間ほどやるのがチームとしての練習ですね。それ以外にも、17時前に各々がソロでライバルマッチを回したりという感じです。

――チーム練習とミーティングだけで7~8時間ですか。かなりの練習量ですね。

Vader (練習試合の)相手がいなければ早めに終わる日もあるんですけど、相手がいればずっとそんな感じですね。

――では、今日の試合についての質問を。KING'S ROWでは惜しい結果で、今回の対戦のターニングポイントだと感じました。あのときの心境はどうでしたか?

Vader VOLSKAYA INDUSTRIESのときもそうですし、KING'S ROWのときもそうなんですが、僕らのミスが多くて、もったいないシーンが多かったんですよ。でも、それに対してのメンバーの反応が、意外にも落ち込んでいなくて。そこで切り替えて、ふつうにやれば勝てるという気持ちがみんなにあったのがよかったのかなと思いますね。

――あそこでチームの雰囲気が落ちなかった理由やきっかけはあるんでしょうか?

Vader 正直、HANAMURAで負けていたらどうなっていたかわかりません。僕らが先に王手をかけていた状況でもありますし、それこそぶつかり合いでは負けているイメージがなかったので、戦況がまだこちらに傾いていたのが大きな要因かなと思います。

GeForce CUPの今後の展開は!?

 今回の大会を主催したNVIDIAの谷口純也氏にも話を伺うことができた。氏の簡易インタビューで本記事を締めさせていただく。

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▲NVIDIA コンスーマー マーケティングマネージャー・谷口純也氏(文中は谷口)。“noppo”というプレイヤーネームで活躍した、『Counter-Strike』の元トッププレイヤーだ。

――まずは率直に、今回の大会を終えての感想を教えてください。

谷口 現状の『Overwatch』のトップを決めるべく大会にできたんじゃないかなと思っています。私としても楽しめましたし、これからもやっていきたいと素直に思いましたね。

――今後も今回のような取り組みを続けていかれる意思はあるのでしょうか?

谷口 あります。3ヵ月に1回のペースでやっていければなと思っています。『Overwatch』に限らず、さまざまなタイトルでGeForce CUPを開催していければ、と。

――大会の参加資格などはあるんですか?

谷口 ありません。誰でも参加できるというのが、我々のモットーです。

――日本のプロリーグ的なものを欲している方も多いと思うのですが、そういったものについてはどうお考えですか?

谷口 我々もプロリーグができることを望んでいます。プロリーグのような形で継続的にやっていけば、選手も観客もモチベーションも上がり、それに参入したいと思う新しいユーザーも増えるのかなと。そこに至るまでの足掛かりとして、我々が開催するGeForce CUPがあればと思っています。


 PC版『Overwatch』は世界的に大きな盛り上がりを見せているeスポーツタイトルだ。2017年11月には世界大会“Overwatch World Cup”が開催予定で、IridataとSupremeの両チームからも多くのメンバーが日本代表の候補に名を連ねている。

 2017年6月7日21:00からは1次選考会の模様が配信予定。情報は選考委員の江尻勝氏が代表を務めるプロゲーミングチーム・DeToNatorの公式サイトでまとめられている。日本代表の今後の展開に注目しよう。

DeToNator公式サイト Overwatch World Cup日本代表選考情報:チーム分け発表ページ