砂地を歩いた時と鉄板を歩いた時の違いがちゃんと分かる!

 今年も正月明けから、アメリカのネバダ州ラスベガスで家電ショー“CES”(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)が開幕間近。というわけで現地1月3日には、恒例のメディア向け先行イベント“CES Unveiled”が行われた。

 世界から集まってきた記者でごった返す中でなかなかの注目を集めていたのが、日本から出展していたCerevoの“Taclim”。“世界初の触感センサー搭載VRシューズ&グローブ”という触れ込みの、手足に装着してVR世界に触感を足そうという機器だ。VRアトラクションなどを念頭に入れた開発向けのキットで、2017年秋ごろに10万円から15万円程度の価格での販売を予定しているという。

VR世界の地面の質感の違いを足裏で実感できる不思議なVRシューズ&グローブ“Taclim”を体験【CES 2017】_03
▲左は公式のイメージ画像(プロトタイプの重量だとこれだけ脚を上げるのは結構大変)、中央は体験するフランスの記者、右端はエネルギー弾発射に興奮して謎のポーズを決めるバカこと筆者(こんな場面は出てきません)。

 Taclimには、日本電産セイミツ株式会社との共同開発による“タクタイル・デバイス”がシューズ片足あたり3個、ハンドコントローラーにも左右1個ずつが仕込まれていて、これがゲームの状況に応じて動作することで、ハプティクス(振動などによる触感表現)を行う。また、加速度、角速度、地磁気の9軸センサーが入っているので、ハンドコントローラーやシューズの相対的なおおよその動きを判定可能。
 なお通信形式により2バージョンが存在し、安価なBluetooth 4.1バージョンと、920MHz帯を使用して大規模イベントやアトラクション施設などの電波が混雑している環境でも安定して通信できる“Sub-giga Edition”が販売予定となっている。

 ここで少し注意して欲しいのが、VR用途のシューズ型機器ということで誤解しやすいが、Taclimは“VRの中を自分の足で歩いて移動する”ためのデバイスとは異なる。あくまで足元が砂地なら“シャリシャリ”、水たまりなら“たぷたぷ”、鉄板なら“カンカン”と、さまざまな地面を歩いた時の感触の違いを再現することに特化したデバイスなのだ。

 記者も実際に会場でデモを体験してみたのだが、とりあえず履いてただ足踏みしてみるだけでも、VR世界の中でプレイヤーキャラクターが置かれている地面に応じて、「あ、本当に砂地っぽくなったな」と、ちゃんと足裏から伝わってくる反応が微妙に違ってくるのが面白い。

VR世界の地面の質感の違いを足裏で実感できる不思議なVRシューズ&グローブ“Taclim”を体験【CES 2017】_01

 会場で体験できたデモは、ジェムドロップが1月末にPlayStation VR向けに配信予定の『ヘディング工場』を土台に、Taclim向けに新規開発した『Taclim demonstration with Headbutt Factory』(Taclim発売時に無償提供予定)。足踏みによってVR世界内でさまざまな地面の上を進んでいき、後半では出てくる敵をハンドコントローラーでパンチしたり、足を持ち上げてキックしたり、エネルギーを溜めて両手から弾を放つという内容。もちろんパンチやキック、そしてエネルギー弾を放った際のフィードバックも、振動でそれっぽく感じられる。

 ちなみに現状ではまだプロトタイプということもあって、“シューズが重くてドタドタ歩く感じになる”、“着用に時間がかかる”、“結構ストラップが外れて脱げてしまう”といった課題がある。ここら辺は製品版や、あるいはそれを利用したアトラクションなどが実際に出てきた際のブラッシュアップに期待したい(正式重量は未定)。

VR世界の地面の質感の違いを足裏で実感できる不思議なVRシューズ&グローブ“Taclim”を体験【CES 2017】_02

 Taclimを使った開発は商用ゲームエンジンのUnityのプラグインとして提供され、基本的な触感セットのサンプルなども公開予定。独自の触感データはWAV形式のファイルを取り込むことで作成可能となっている。音声ファイルを利用してハプティクスを作り込んでいくのはOculus Touchなどでも同様なので、VR開発の過程ですでにやったことがある人もいるだろう。

 一方Cerevoでは、それこそOculus Rift+Touchのような組み合わせに「Taclimのシューズ部分だけを組み込みたい」といったニーズが起こり得ることも想定しているそうで、今後どういった対応が可能かも検討するとのこと。
 個人的には、Taclim自体で正確な移動距離を検出するのは難しくとも、周囲を認識してプレイヤーの位置移動を検出する“インサイドアウト方式”など、VRヘッドマウントディスプレイ側の仕組みで移動を検出して“歩き回れる”ようになっていれば、それこそVRアトラクションなどに組み込むことで、より複合的な没入感を提供できるんじゃないだろうかと感じた。