ゲームに捧げた青春はムダにはならない。

 世の中には、限りある青春時代を全力でゲームに捧げる学生ゲーマーが存在する。「とにかくゲームがおもしろいから」、「友達に誘われたから」などなど、理由は人それぞれだが、共通して“ゲームを心から楽しんでいる”ことが彼らの原動力であり、強さであり、魅力。

 一方で、そんなゲームに捧げた青春は、社会に出るときに過去の話になってしまう悲しい一面がある。なぜなら、いまの日本においては“特技・趣味:ゲーム”は履歴書で役に立つことが極々稀だから。ゲームという“娯楽”は、どうしても、勉強や就職という“現実”という名の壁を超えるには重い荷物になってしまうのだ。

 しかしながら、世の中には、そんな彼らを理解し、能力を活かそうとする大人や企業も存在し、ふたつが出会うことで大きな可能性が生まれる。

 そんな可能性を、今回取材した“ESP SUMMIT 2016”で感じることができたので、伝えていきたいと思う。

ゲームに捧げた青春は社会に通用する力になる!“ESP SUMMIT 2016”で見た学生ゲーマーが持つ可能性。_01

ESP SUMMIT 2016ダイジェストムービー

社会に通用する力を見た“ESP”のプレゼンテーション

 レポートをお届けする“ESP SUMMIT 2016”とは、2016年12月10~11日に行われた全国の学生e-Sportsサークルの代表である“ESP”が一同に会するオフラインイベント。

 “ESP”とは、『League of Legends』(以下、LoL)を通した学生活動を支援するGameBankとライアットゲームズの共同施策“e-Sports×U”の審査を経て認定を受け、全国各地でeスポーツ普及活動を行っている学生(e-Sports Student Partner)たちのこと。

 簡単に言えば、『LoL』が好きでサークル活動を行っている学生ゲーマーのみなさんが“ESP”。それを支援しているのが-Sports×U”だ。

 今回のイベントは、そんな“ESP”の活動にGameBank&ライアットゲームズが感謝を込め、サークル活動をより改善するためのレクチャーを行ったり、他校との交流深める場として開催したもの。

 北は北海道、南は福岡県の合計27大学・高専から代表の学生が参加し、ミニゲームや“2016 IWC All-Star EVENT”のオンタイムビューイング、懇親会などで交流を深めた。

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 その中でも目玉だったのが“ライアットゲームズの社員になったつもりで、社長にプレゼンテーションを行う”グループワーク。

 参加者が5、6人ずつ5グループに別れ「来年12月のAll-Star(※1)をどこの国で行うか、明日10時に本社と会議を行う。ぜひ日本開催を実現したいので、企画をまとめ、プレゼンテーションをしてほしい」というお題をこなしていった。

(※1:All-Star=『LoL』プロ選手が一堂に会する大会)

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▲テーマの設定、会場の設定、イベント内容やプレゼン方法は自由。

 正直、社会人の我々でさえ、突然「明日までに企画をまとめて」と言われたら困りもの。

 しかし、発表ではどのグループも、それぞれが考えたテーマにそって

・なぜこのテーマにしたのか
・ターゲットにする人たちとその理由
・過去のAll-Starから集客を予想し、会場を選定
・どういったプロモーションで盛り上げるのか

 などなど、とても現実味ある内容を具体的に、そして説得力のあるデータを提示。オーダーを見事にこなしつつ、納期に合わせて資料を完成させ、説得力あるプレゼンを行ったことに驚かされた。

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▲1日目の後半に設けられた作業時間だけでなく、自分たち自ら夜通しで作業と議論をくり返し、翌日に用意された15分のプレゼンに挑んだ学生たち。辛い反面“好きなこと”をやっている彼らは、みんなが笑顔。
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▲個人的にツボだったのが“和”をテーマにしたグループのプロモーション案。「和をイメージしたサモナーズリフト」としてサンプルのコラージュ画像まで用意してあり、そのユーモラスなアイディアを実際の画面で見たいと思った。

 そんな発表の中、審査員から最高評価を与えられたのが関西大学、近畿大学、成城大学、高崎商科大学、中央大学、福岡工業大学による混成グループ。

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 このグループは、メンバーの中にプレゼン相手であるブランドンとマーク(Riot Games創業者)を演じる人員を用意。発表者が「こんなプランがあるんだ」、「日本のここがすごいと思うのだが、どうだろう?」といった感じで“それっぽく”し、他グループと差別化を図った。

 もちろん演技なので、ブランドンとマークはほぼ「最高にクールだ!」しか言わず、いちいち「絶対そんな反応しないだろ(笑)」とツッコミを入れたくなるのだが、“プレゼン方法は自由”というルールを守っているし、コントのようにおもしろいので話を聞き入ってしまう。

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 さらに、内容は非常にまじめで、日本のサブカルチャーに着目した施策の数々や、それを行うだけの理由や裏付けするデータもしっかり用意。プレゼン後の質疑応答にも説得力のある言葉で対応していて、審査員からも「企業でも通用するプレゼンだった」と大絶賛される結果となった。

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 さて、そんなユーモラスで社会人顔負けのプレゼンを見せてくれた“ESP”のメンバーたち。

 彼らは“e-Sports×U”の発足から約10ヵ月という期間サポートを受け、いまではGameBankとライアットゲームズの社員から「企業でも通用するプレゼンだった」と言わしめるまでの能力と機会を手に入れた。

 そして、そのキッカケは“ゲームを心から楽しんだ”ことにほかならない。

 たくさんの学生ゲーマーが過去の思い出とした、ゲームに捧げた青春。そんな青春は、全力で支援してくれる人や場所と環境さえあれば、将来への力に変えることができるのではないだろうか?
 ESP SUMMIT 2016”で学生たちが行ったプレゼンは、その可能性を現実のものとしたような、すばらしい内容だった。彼らが秘める可能性をムダにしないためにも、私たちはその背中を「トンッ」と押せる大人になりたいものだ。

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▲プレゼン後の打ち上げでは、自分たちのグループはもちろん、他グループの参加者やスタッフたちも一緒になって笑顔で語らっていた。