日本で最高のVRスタートアップ環境

 2016年12月14日、日本で初めてVR(バーチャルリアリティ)に特化したインキュベーション施設“Future Tech Hub”(以下、FTH)がオープンした。本記事では、FTH入居企業代表者によるスペシャルセッションも行われたオープニングセレモニーの模様をリポートする。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_01

 セレモニーでは、まずFTH運営企業であるブレイクポイント代表取締役の若山泰親氏が登壇し、FTHの概要や設立経緯を説明。若山氏は、“海外でも通じるグローバルレベルのベンチャーを作りたい”という思いから、さまざまなベンチャーを支援していたときに、gumi代表取締役社長の國光宏尚氏とTokyo VR Startups取締役の新清士氏と出会ったのだという。そこで「今後、VRが来る!」という話を聞いて調査した結果、“VRに特化したインキュベーション施設を作る意味がある”と感じ、FTHの設立することになったそうだ。

 その後、1年間VRに携わってきて、「すごくたいへんだ」と実感したとのこと。2016年は、“VR元年”と呼ばれているものの、デバイスが出揃っただけで、コンテンツやサービスの市場はまだほとんどないのが現状だという。そんな状況でもアメリカや中国はVRに積極的に取り組んでいるが、日本は遅れている。しかし、それは逆にチャンスだと感じているそうで「いまのような、数年後にはVRが大きな規模になるとみんなが感じているけれど、まだ市場ことを理由に立ちすくんでいる状態というのは、ある意味スタートアップにとっては最高の状況なのかなと思っています。それがVR特化のインキュベーション施設を作ろうと思った大きな理由ひとつです」とFTHに懸ける思いを語った。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_03
日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_02
▲若山泰親氏

 つぎに、FTHを利用するとどのようなメリットがあるのかということについては、VRスタートアップがグローバルレベルで勝つために重要な“世界レベルの情報”、“スタートアップ支援ネットワーク”、“開発環境”の3つが提供されるとのこと。

 世界レベルの情報は、産業や技術の動きの中で投資の動き、個別のスタートアップがどう展開されているのかというような情報のこと。これらをしっかり把握しておかないと取り残されてしまうため、FTHでは、運営パートナーであるgumiを始めとするさまざまな企業や個人から最新の情報が提供されるのだという。

 スタートアップ支援ネットワークについては、「VRに関して動いている投資家や大手企業というのはまだまだ少ないです。そもそも技術者がいないという問題があるのですが、日本にはVRの黎明期からコンテンツを作っているコミュニティがあったり、何度かあったVRブームの中で技術を蓄積している方がいらっしゃったりします。そういう方々と繋ぐことによって、きびしい経営環境に立ち向かっていくVRスタートアップを立ち上げることができると思います」とコメント。

 そして、最後の開発環境は、VRには欠かせない開発スペース、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークのサポートが受けられるとのこと。さらに開発スペースには囲いがなく、となりで何をやっているのか把握できる状態になっているため、利用者同士で情報交換しやすい環境が整っているのだという。

 続いて、運営パートナーのgumiの國光氏とTokyo VR Startupsの新氏、そしてテクニカルパートーナ―企業の代表者が挨拶を行った。以下、挨拶より一部抜粋。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_04
▲國光宏尚氏

gumi
代表取締役社長 國光宏尚氏
 中国で成功した家電メーカー“小米科技(シャオミ)”の社長が“成功した理由はなんですか?”と聞かれ、中国のことわざの“風が吹けばブタでも飛べる”と答えたそうです。それほど、ビジネスを行っていくうえでは、風がどこから吹くのかを感じて、その風の吹く場所にいるということがいちばん重要なのかなと思います。これからはWeb3.0のポストスマホの時代がきているように感じています。その流れでいくと、当然VRから始まって、AR、そしてMRが本格的なつぎの時代を作っていく暴風雨のど真ん中なのかなと。その暴風雨の中で、ブタ同士で飛びあえるようにがんばっていければと思います。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_05
▲新清士氏

Tokyo VR Startups
取締役 新清士氏
 私どものTokyo VR StartupsとFTHというのは、ある意味一体的に活動していくものです。FTHは、VRコンテンツを作っていく人にインキュベーションする仕組みや情報を提供して、環境を整え、それらを共有し、さらに世界に打って出るにはどうすればいいのかということを共同で開発していく場所です。多くの方々にご賛同いただきながら、より広げていきたと思っていますので、これからよろしくお願いします。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_06
▲吉岡元義氏

サードウェーブデジノス
マーケティング本部 本部長 吉岡元義氏
 当社はゲーム用のPCを作っています。VRというのはゲーム業界で非常に注目を浴びているということで、最初の段階から支援をさせていただいておりました。そうしたこと以外に、我々自身もVRパラダイスというVRの体験施設を展開しています。そういった経験からVR開発は、人、モノ、お金という資源がすごく必要になると感じていました。そんな状況で、FTHを作っていただいたということは、資源の難題を抱えていく開発者にとって追い風になっていくと思っています。そういった中で、我々も開発者の方に使っていただくハードウェアの面でサポートさせていただいています。また、VRパラダイスで、テストマーケティングを行うというような連携もできるのではないかと思っています。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_07
▲西川美優氏

HTC NIPPON
ディレクター 西川美優氏
 FTHには、HTC VIVEを2台ご提供させていただいています。HTC VIVEのロゴには意味がありまして、真ん中に空いている穴の中から、VRを使って新しい世界に飛び出そうという思いが込められています。VRというのは、人を幸せにする力があると思います。現在VRは、ゲームコンテンツが注目されていますが、ゲーム以外にも業務を効率化する、創造性を豊かにするなど、夢が広がっていくのではないかと。世界とVRで戦っていくうえで大事なことはスピード感です。中国やアメリカのVR産業に勝つためには、スタートアップなれではのスピード感が勝負になってくると思います。ですので、VRをやりたいと言う方が、いますぐ自分の会社を作って、スタートアップを立ち上げるためにも、FTHのような場所は、どんどん大事になっていくと思います。初期投資は高いですけれど、それを度外視しても、すごく夢のある事業ですし、そこで皆様のキャリアや人生がよい方向に変わっていくポテンシャルがあると私は信じています。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_08
▲畑浩史氏

アマゾンウェブサービスジャパン
事業開発部 マネージャー 畑浩史氏
 これからのVRは、データの配信や共有、オンラインなどのサーバーまわりでクラウドが必要になってくると思います。AIやIoT(Internet of Things)といったところでも、クラウドが必要なコンポネートになることは間違いないので、そういったところで我々もご支援させていただきます。

 その後には、“日本のVRスタートアップが世界で勝つために必要なこと”をテーマにしたスペシャルセッションが実施された。まず、FTH入居企業でありMCJより資金調達を発表した桜花一門の代表取締役 高橋建滋氏が、「企画を話して、10人中10人がよいというものにはろくなものがない。10人中7人が意味がわからないと却下して、残りの3人が絶賛するくらいのものが、世間に出たときに想像以上になって大ヒットする」と有名ゲームクリエイターが語っていたというエピソードを披露。それを実際に実行するためには会社に所属していると、10人中7人を敵に回す必要があるためハードルが高いが、スタートアップでは、絶賛してくれる3人を自分で探せることが、たいへんではあるものの大きな利点でもあると高橋氏は語っていた。

 続いて、配信中のVR脱出ゲーム『エニグマスフィア~透明球の謎』の開発会社よむネコの代表取締役でもある新氏が同作の制作時の思い出を語った。2015年12月にスタートした同プロジェクトだが、VRは状況が刻々と変化するため、技術をキャッチアップしていき、何ができるのかをつねに考える必要があり、苦労の連続だったと振り返る。しかし、そんな苦労の中で、世界中の人と出会い「勝つためには本当に全力でやらないと置いていかれる。それだけ激しい競争の中にいるという」ことを実感できたのは大きな収穫だったという。新氏によると、それを感じることができるかどうかが、スタートアップの結果を大きく左右するとのこと。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_09

 海外でモバイルゲームを展開している、gumiの國光氏は、コンテンツを制作する際に「日本で売れればいいや」ではなく、「海外で勝つんだ!」という気持ちで臨むことが大切だと述べた。また、自分たちが世界のどの位置にいるのかを把握しておくことが重要だとも語っていた。新氏もそのことについて「スタートアップで重要なのは、どれだけ大きなイメージを持つことができるのか。そのゴール(イメージ)を描けらければ絶対にそこには辿り着けないので。そのためには、全世界にある大量の情報を吸収して、自分たちの場所を正確に把握することが大切」と重要性を解説し、FTHでは、それらの情報が集まってくることをアピールした。

 つぎにVRスタートアップを始めるにあたって、押さえておいたほうがよいものを聞かれた高橋氏は、最初に考えた仮説や考察を貫くことも大切だが、方針転換することも重要だと語った。実際に高橋氏が制作中の作品も月1回ぐらいの頻度でゲームの内容が変わっていたそうで、「試行錯誤して、すぐに方針転換できることが少規模組織ならではの特性だと思うので、押さえておいたほうがいいと思います」とアドバイスを送った。また、最後に高橋氏から、FTHのようなシェアオフィスでは、複数の会社が入っているからこそ、技術やノウハウの共有はもちろんだが、へこんだときなどに愚痴を言い合うこともできるという、開発とは少し違った視点からの魅力が語られたところで、オープニングセレモニーは終了となった。

日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_10
日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_11
日本初VR特化インキュベーション施設“Future Tech Hub”オープニングセレモニーリポート――VRスタートアップで世界に勝つための方法とは!?_12
▲オープニングセレモニー終了後には、VR体験会と交流会が開催された。