「ゲーム開発者たちをサポートしていきたい」(春田氏)

 2016年11月1日、サイゲームスから驚きのニュースが舞い込んできた。人気RPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)のプロデューサーが、これまでけん引してきた春田康一氏から、開発プロデューサーを務めていた木村唯人氏に交代するというものだ。直後、春田氏のTwitterでも新体制になることが告げられ、『グラブル』ユーザーはもちろん、ゲーム業界でも大きな話題となった。

 そして、11月25日。サイゲームスがゲームデータ分析事業、ゲーム開発サポート事業などを行う新会社LogicLinks(ロジックリンクス)の設立を発表。同会社の代表取締役社長として、春田氏が就任したのだ。春田氏が何を思って『グラブル』から離れ、これから何をしようとしているのか? LogicLinks設立発表直後に行ったインタビューをお届けする。

『グランブルーファンタジー』の春田康一氏がこれから目指すものとは?――新会社設立直後の直撃インタビュー_02

■春田康一
株式会社LogicLinks代表取締役社長。『グランブルーファンタジー』のプロデューサーとして、ゲームの開発だけではなく、さまざまなイベントや驚きの展開を作り、ユーザーを楽しませた。

――まずは、新会社設立おめでとうございます。
春田 ありがとうございます。

――ファンの方も含め、今回の春田さんの新会社設立には驚いた人も多いかと思います。なぜ春田さんが『グラブル』から離れられることとなったのか、まずはその経緯から教えていただけますか?

春田 立ち上げから考えると4年強、プロデューサーとしては2014年の7月から約2年半ほど『グラブル』の運営・開発に携わってきましたが、僕のいちばん大きな役割は、まだ遊んだことのない人たちに『グラブル』を知ってもらうということにあったと思っています。ですが、現在はおかげさまで『グラブル』もそれなりの認知を得ましたので、認知を広めようとするための自分の仕事が、ルーティン業務の感覚に近くなってきてしまったんです。そこでいままでよりもさらにゲーム開発側と緊密に連携し、『グラブル』の内容に合わせたコンテンツをもっと生み出していこうという動きになりまして、本作の内容を深く熟知し、豊富な開発経験を持つ木村(※木村唯人氏。『グラブル』の初代プロデューサーであり、現在は『シャドウバース』なども手掛けている)にプロデューサーを交代するという形になりました。

――『グラブル』の成長にともなって、立ち回りに変化が必要だと捉えたのですね。

春田 2016年になってからは、新規事業などの提案をし、社内でも承認を得て、やろうという話にはなっていたのですが、当時は『グラブル』のプロデューサーとしての業務がかなりありましたので、なかなか進められずにいました。しかし、期末にあたる9月に、これまで保留になっていた案件にもこのタイミングで取り組んでみてはどうか? という話を社内でももらえたことで、そこから、プロデューサーの交代が決まって、11月の発表に向けて準備していたという感じですね。

――『グラブル』は巨大なIPなので、まったく違う事業との両立はかなり難しいでしょうからね。

春田 僕が提案していた事業は、少なくともゲームを開発するものではないので、それが実現可能なのかという不安もありましたし、「両立可能なのか?」という意見は多かったですね。

――今回、会社を設立され、春田さんご自身が代表取締役に就任された新会社“LogicLinks(ロジックリンクス)”ですが、社名の由来を聞かせていただけますか?

春田 これから諸説設けていこうと思っているんですが(笑)。

――(笑)。すでに、いくつか意味があるんですか?

春田 名前の通りと言いますか、論理(Logic)をたくさんの人につなげて(Link)いきたいと思っています。僕が得た論理の部分をほかの会社さんに提供する、論理をつなげるという意味で、LogicLinksがいいんじゃないかと考えました。

――具体的に、どのような業務を行うのですか?

春田 社名にもある、ロジックとリンクスのふたつが軸になっています。おもにゲームを開発している方々へのサポートを行っていきます。『グラブル』を開発していたころの僕には、ひとつ夢がありまして。たとえば、現在のゲーム業界は、ファミコンなどのゲームを遊んでいた子どもたちが、自分たちもおもしろいゲームを作りたいと夢を見て、ゲーム業界に入って支えていると思うんです。それは僕も含めてそうだと思います。そして、今度はいまリリースされているゲームを遊んでいる子どもたちが、ファミコンを遊んでいた世代の子どもたちと同じ立場にあると思うんです。その、ゲームを遊んで、ゲーム開発に憧れて、そして業界に入るというサイクルを、ひとつのタイトルを通して作りたかったんです。

――春田さんにとっては、『グラブル』がそれに当たるということですね。

春田 そうですね。でも、それを実践していくうちに、新たな夢ができたんです。埋もれてしまっている素晴らしいゲームを作ってくれるクリエイターはいると思っていますし、また、これから挑戦をしようと思っている人も多くはなくてもいるはずです。そんなクリエイターをサポートしたいんです。いままで僕はゲームを作る側でしたが、今度はそこから一線を退いて、ゲーム開発者たちをサポートしていきたいと。開発が難航している方々に向けて、さまざまなアドバイスをお伝えできるような事業をやっていきたいというのが、今回の新会社設立の根本にありますね。知識を共有することで多くの人たちがゲームを開発し、世に出たゲームをプレイした人がおもしろいと感じれば、そのぶん、これからのゲーム業界に、クリエイターとして参画してくれる人が増えると考えています。

――開発の助言などを行うということは、コンサルティング的なことをやっていくのでしょうか?

春田 コンサルティングに近いとは思いますが、仰々しく、開発方針を決定したりするようなことは考えていません。たとえば、開発中のゲームをプレイしたり、プレイヤーのデータを見させてもらったりして、僕のキャリアの中で培ってきたことと照らし合わせて、その作品の足りない部分や、プレイヤーが不満に思っている部分を指摘して、改善方法を提示すると。ゲーム開発に携わる皆さんが、「誰かのアドバイスがほしい」と思ったときに気軽に呼んでもらえたらいいな、という軽い感じでやっていくつもりです。

――外部の立場であるけども、開発チームの一員として中に入って、ゲームの中身を見たり、数字まわりをチェックしてアドバイスをするようなイメージでしょうか?

春田 はい。ゲーム会社の人たちは、どこもたいへんだと思うんです。とくにノウハウという部分は、経験を積んでいる大きな会社であるほど、外に出せないと思います。もちろん、会社の内情を出したくないという気持ちもわかりますが、僕はもっと外へ出すべきだと考えていますし、その知識を得て業界全体が盛り上がるなら、それでいいと考えています。今回、LogicLinksをサイゲームスから独立する形で立ち上げてさせてもらったのは、サイゲームスとしての立場で業務を行うと、サイゲームス色が強く出てしまうかもしれないという懸念があったのが大きいですね。

――中立的な開発支援が主であると。

春田 ゲーム開発の支援と、内部データの分析が、社名のLogicを表す業務となります。ゲームデータの分析というのは、こちらからデータをお渡しするのではなく、データを分析するのに必要な論理を提供するということです。

――Linksに相当する業務はどういった内容なのですか?

春田 Logicの部分は企業を重視した、いわゆるBtoB(Business to Business)でした。一方で、Linksは、プレイヤーを重視したBtoC(Business to Consumer)です。特定のタイトルをプレイされている方が、もっと楽しめるような環境を整えるお仕事をさせていただきたいと考えています。

――なぜ、そのようなことを考えるようになったのでしょう?

春田 『グラブル』を運営していたころ、改善を求めるプレイヤーからの声に対して、何が最善の解決方法なのかを考える道筋の中で、内部にある考えだけではどうしても議論が足踏みをしてしまうことがありました。そのような事態を解決する事業として、Linksの業務をやらせてもらおうと思っています。Logicで行う企業向けのアドバイスと、Linksで行う環境改善の事業を組み合わせることで、最終的には、開発会社さんが開発しやすい環境が生み出せればいいな、と考えていますね。

――Linksの業務は、ユーザーの満足度を上げるためのものということでしょうか?

春田 いえ、そこはゲーム内容ありきなのでなんとも言えないです。多くのプレイヤーさんがゲームをプレイするうえで不自由だと思っている部分が、僕の中でいくつかありまして、それをゲームとして解決することは不可能ではないですが、ひとりでやると意味がないんです。自分だけで解決してもしかたがない。それをプレイヤーにLogicLinksとして提供していくと。

――内容が気になります(笑)。

春田 そうですよね。ただ、まだ発表できるタイミングではないんです(笑)。時期としては来年春くらいに皆さんにお知らせして、夏くらいにサービスインしようと思ってます。

――春田さんはコンシューマーのゲームも大好きだと聞いていますが、LogicLinksはコンシューマーのメーカーと提携することも視野に入れていますか?

春田 視野に入れています。“ゲーム”という分野に重きを置いていますので、アプリメーカーはもちろん、ハードウェアメーカーでも、ファーストパーティーの方々でも、お話があれば喜んで話を伺わせていただきます。

――『グラブル』で培った知識や知見がコンシューマーゲームなどにフィードバックされるというのはおもしろいですね。

春田 僕の持っているノウハウとして、プレイヤーがどういうサイクルでプレイされているのかであったり、どこまで簡単であるべきか、難しくあるべきか、というところの指標があります。コンシューマーのゲームで、もしそのノウハウをインプットしてくださるのであれば、それはそれでよりおもしろいゲームができあがると思いますね。

――メーカーの規模などは関係なくやっていくと。

春田 はい。ただ、勘違いしないでいただきたいのは、データまで落とし込んで提供するわけではないということです。もしお声がけをしたい会社の方がいらっしゃったら注意していただきたいのですが、サイゲームスの具体的なデータなどが手に入るわけではありません(笑)

――有用なアドバイスやヒントなどを提供するということですよね。

春田 サイゲームスで、どういう部分を見て、注力したのかというところは、ロジックの分野になります。

――LogicLinksはまだ始まったばかりであると思いますが、BtoBの部分は、もう動いているのでしょうか?

春田 とくに発表をしているわけではありませんが、以前からお付き合いしている会社も多かったので、個別に連絡をいただいて、業務内容を聞いた先方から、これを見てほしいという話はいくつかすでにいただいています。

――KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)やDAU(Daily Active Users:1日にサービスを利用した人の数)などといったデータがありますが、見かたをひとつ変えることでデータの活用法も変わると思います。

春田 DAUの見かたにおいても、ユーザーのカウント方法は会社ごとに違うんですよね。ログインするだけでいいのか、5分プレイすればいいのか、さらに、それをWAU(Weekly Active Users:1週間にサービスを利用した人の数)で見ていたり、MAU(Monthly Active Users:ひと月にサービスを利用した人の数)で見ている会社もあります。ただ、本当に必要なデータはどれなのかということのほうが重要でして。たとえば、会社によっては、DAUやMAUよりも、WAUに重きを置いたほうがいいんじゃないかという考えも出てきますね。

LogicLinks、春田氏の立ち位置とは?

『グランブルーファンタジー』の春田康一氏がこれから目指すものとは?――新会社設立直後の直撃インタビュー_01

――ファンドのように、お金を企業に投資していくという予定はありますか?

春田 それはないです。投資すると、お互いに責任感が大きくなってしまうので。

――企業を育てたり、提携するわけではないと。

春田 はい。「飯でも食いませんか?」という感じで気軽に連絡してもらえれば(笑)。そこで得た人脈などが、先ほどお伝えしたLinksのサービスにつながっていきます。プレイヤーに提供するサービスの中には、枠組みの中にタイトルを入れさせてもらうというか、参加してもらう必要があるので、パブリッシャー側にご協力をいただけるようなつながりも設けていきたいです。

――いろいろなゲームが、とあるサービスに入ることで、プレイヤーにさまざまなフィードバックやメリットがあったりするのは、とても魅力的だと思います。ただ、それは誰かが先導しないと、なかなかできないですよね。それをLogicLinksで行うと。

春田 そうですね。ただ、誤解されないために申し上げておくと、Linksの事業では、モバゲーさんやグリーさんのようなプラットフォームのサービスを行うわけではありません。もちろん、そういった会社との協力も考えています。

――LogicLinksの代表にはサイゲームスの渡邊社長(※渡邊耕一氏。サイゲームスの代表取締役社長)も入られています。このように手広く事業を展開するとなると、サイゲームスと春田さんの現在の関係も気になります。

春田 ゲーム業界から離れるわけではないのですが、一線を退くので、そこからは情報やノウハウが僕自身に積み上がらなくなります。そこを少しでも補えるように、そして自分も勉強させてもらうために、サイゲームスの皆さんに入ってもらっています。

――それは『グラブル』で得た知識を広めることになると思うのですが、異論は出ませんでしたか?

春田 出ませんでしたね。むしろ、それで業界が大きくなれば、サイゲームスもいっしょになって大きくなれると思いますから。ゲーム業界が縮小しているなと思ったら、もう遅いと思うんです。ここから縮小していくのではないかというところで対策を打っておかないと。なぜ縮小したのか、何が問題なのかを、事態が進行してから考えても手遅れですから。

――サイゲームスのグループの中で、サイゲームスさんとの関係は保ち続けつつ、トップランナーとして、新しい事業を切り拓いていくと。

春田 今年はサービスが終了してしまったスマホのタイトルが非常に多かったと思います。それには何かしらの理由があると思いますし、そこに僕がとやかく言う気はまったくないのですが、そうならないための方法というのもきっとあったのではないかと思っています。僕がサイゲームスに入社する前に在籍していた会社で、他社から運営移管したタイトルがあったのですが、収支としては完全な赤字で、これを移管してどうするんだ、という声も上がっていました。ただ、僕自身がそのタイトルを担当したいという思いもあり、また、プレイヤーの皆さんの気持ちも温かかったので、このまま終わらせたくはないと思い、担当をさせてもらったんです。結果的には、赤字だった収支もそれなりに回復したんですが、その後、僕が転職してからわりと早い段階でサービスが終わってしまったんです。僕が最後までサービスを提供できればよかったのですが、会社というか、自分自身の人生を考えたときに、転職という選択肢を選んだんですよね。自分が離れてももう大丈夫だというところまで調整を重ねて離れたのですが、その後、会社の判断でサービス終了ということになって。いま思うと、そのときに社外からアドバイスをできる立場の事業があれば、そういう結果にもならなかったのではないか、と感じるんです。そのためのLogicLinksでもあると思っています。

――春田さんから見て、まだ続けられるだろうと思ったタイトルはありましたか?

春田 ありましたね。サービスの点だけで考えれば、継続する方法は模索できることも多い。同じゲームメーカーでも、会社によって予算の都合などでかけられる広告費に違いがあったりするので、他事業と組みたいと思ったときなどは、そこでも僕の得たノウハウを活かせればいいなと思っています

――予算の中でやりくりするのはたいへんですよね。

春田 ゲーム開発では、ライセンスを持つ人に特許使用料を支払わなくてはいけなくて、その割合が大きいほど、開発側のリスクが高まり、収益を上げにくくなってしまうんです。今回立ち上げた会社は、開発が挑戦をしにくくなってしまうような状況をできるだけ緩和するという役目も担うつもりです

――環境を整えるということは、人材育成のような一面もあると思います。

春田 物を作るのが人であって、物が人を生み出すことはありません。人がいてこその物であり、出来上がった作品を潰せば、クリエイターも、プレイヤーもいっしょに消えてしまう。作品の発信元であるクリエイターが、きちんとした状況、環境、知識でゲームを作り、さらに、そこに集まるプレイヤーや、内容を拡充していくクリエイターがより成長したり、楽しめたりするような循環、環境を作りたいです。

――昨今のコンシューマーもそうですが、とくにアプリは、クオリティーとサービスが密接に連携しないとうまくいきません。春田さんの事業では両方を見るのでしょうか?

春田 どちらかと言えば、おもにサービスだと思います。作りたいものには、クリエイターの思いが込められているので、そこに僕が何かを言うつもりは、まったくありません。『グラブル』も同じような形で作らせていただいていました。もちろん、当時は僕が作りたいことを相談させてもらうこともありましたが、基本的には現場が望むものを最優先する形でしたね。ただ、コンテンツを作ったはいいけど、運営がうまくいかないというのは往々にしてあるので、なぜうまくいかないのか? よりうまくいくためにどうすればいいのか? ということに関してアドバイスしていきたいなと。

――ゲームの企画の立ち上げくらいからいっしょにやるのでしょうか?

春田 どこからでも大丈夫ですね。「いま作っているゲームがあって、もう一味ほしい」とか、「本当にうまくいくのかと不安に思っていて、誰かの意見が訊きたい、けど社外に見せるのも難しい」と思ったときに呼んでいただければ。もちろん、機密情報は厳守しますし、そこで見聞きしたことはその場限りにさせていただきますけど、やった感想を言わせてもらったり、どうプロモーションをするかなどの相談はできると思います。

――スマホのアプリの市場も成熟してきていて、市場の競争が激化する、いわゆるレッドオーシャン化していると言う人もいますが、アプリの市場を春田さんはどのように見られていますか?

春田 1年ほど前に上位20ほどのタイトルが固まっていたときがありましたが、2016年に入ってからは『ポケモンGO』などの新タイトルもランクインしている状況になっていて、アプリ市場としてはまだまだ活性化の余地があると思います。ただ、プレイヤー側が疲れてきているというか、やり込みたい、軽く遊びたいという人がわかりやすく分かれてきたなと。そのふたつの層の人たちがどういう人なのかを、注視しています。どういう生活サイクルの変化があったのかも気になるところで、『グラブル』がサービスインから2年半、『モンスターストライク』が3年くらい、『パズル&ドラゴンズ』が5年くらいですかね。ゲーム業界は5年サイクルと言われているように、5年という年月が非常に重要で、そのあいだに、プレイヤーに何かしらの変化が生じているということなんです。中学生なら、5年経てば専門学生や大学生、社会人になっていますから。

――社会人かそうでないかで、確かに時間とお金の使いかたは変わります。

春田 「アプリの市場はレッドオーシャンだ」、「これから盛り上がる業界だ」、「ある程度成熟している」などと言われ、それにともない、何年も前からプレイされている人の環境も変わってきています。それに対し、どのようなアプローチ、どのようなタイトル作りが正解なのか、というのは僕が非常に気にしている点です。うまく適応できたタイトルは売れて盛り上がるけれども、できなかったタイトルは、おもしろくても埋もれてしまっている気がします。運営側がプレイヤーの盛り上がりを見たときに、このタイトルはうまくいっているのか、このまま続けていいのかという判断に迷ったり、どこに力を入れればいいのか迷うときがあると思います。僕も『グラブル』を運営していて、そこで散々悩んできましたし、同時にひとつの成功と呼べる体験も経験しました。また、サイゲームスとしてサービス終了せざるを得なかったタイトルなども見てきていますので、そういった知識は提供できるかなと思っています。

――『グラブル』の企画立ち上げから振り返って、この4年半はいかがでしたか?

春田 とにかく多忙でしたね。

――(笑)。

春田 でも本当に、いろいろな経験ができたなと思っています。そのなかでも格別だったのは、2015年の東京ゲームショウと、2016年のオーケストラです。東京ゲームショウに出展するというのは、個人的にはひとつの目標だったんです。ですから、そのような晴れ舞台で『グラブル』を紹介したり、タイトルをより盛り上げるようなイベントを企画できたというのは、本当にいい体験だったなと。僕が見せたいと思ったものは、すべて出し切れたかなと思っています。今年はVRなどが出てきて、ショーの見せかたも劇的に変わってくると思いますが、そこも含めて今後のゲーム業界が楽しみです。

――実際、グランサイファーの姿には圧倒されました。

春田 ありがとうございます(笑)。オーケストラに関しては、ゲームというものが、ゲーム単体だけではないということをちゃんと示せた企画だったと思ってます。サイゲームスの強みであるビジュアルもすごいのですが、植松(伸夫)さんや成田(勤)さんが作曲してくださる音楽を、ゲームファンの皆さんに、耳でお伝えすることができるコンテンツを実現できたのは感無量でしたね。

――あの一体感はとてもよかったです。

春田 2016年12月24日と25日に仙台、2017年1月6日と7日に札幌公演が行われます。道半ばで卒業する形になってしまいましたので、仙台と札幌の方には申しわけないと思ってます。しかし、僕がいるいないに関わらず、ゲームの音楽のよさは変わりませんし、植松さん、成田さんもいらっしゃいますので、その贅沢な時間を楽しんでもらえたらなと。

――しっかり『グラブル』の宣伝までしていただいたところで、そろそろお時間なんですが、本格的に新しい業務が始まる前に春田さんにもっとお話を聞きたいですね。

春田 取材の申し込みをいただければ喜んで対応します。

――それにしても、本当に新しいフィールドでのチャレンジですよね。

春田 サイゲームスでは『グラブル』のプロデューサーとしての立場や業務を優先してきたので。こうして独立して、サイゲームスとは異なる会社で、新たな挑戦に羽ばたこうかなと思っています。