『Duality』は、1枚で何枚ぶんもおいしいアルバム

 『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のバンド&ピアノアレンジアルバム第2弾、『FINAL FANTASY XIV: Duality ~Arrangement Album~』(以下、『Duality』)が2016年12月7日に発売されるにあたり、発売直前の12月4日に、秋葉原UDXシアターにて発売直前視聴会&サイン会が催された。昼の部、夜の部の2回、合わせて約200人のファンが招待され、サウンドディレクターの祖堅正慶氏やゲストふたりが収録曲の紹介や制作話などのトークをくり広げた。ここでは、昼の部の模様をお届けする。

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▲アルバムジャケットに描かれた竜騎士・エスティニアンが映し出されたスクリーン。会場のファンに、アルバムの高品質サウンドを5.1chサラウンドで十二分に味わってもらうため、最前列や左右の両端の席を使用しない配慮がされていたのが印象的だった。
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▲視聴会の後にファンひとりひとりと直接対話をし、“イベント限定配布スリーブケース”にサインを書き入れて握手をする祖堅氏。会場に来ていたローカライズ部のマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏も、いっしょにお見送り。

でっかいスクリーンででっかい音

 アルバムタイトル『Duality』に託された意味は“二極性”。クラシックピアノとロックバンドという対局にあるジャンルが、1枚のBlu-ray Disc Music(以下、BDM)に収録されているところに由来すると説明されたところで、ピアノアレンジされた『雲霧街の夜霧 ~イシュガルド下層:夜~ Night in the Brume』、『英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~ Heroes』が披露された。ゲストとして登場したのはアレンジに携わったスクウェア・エニックス サウンドスタッフの高田有紀子さん。収録時にコンサートホールでドローンを飛ばしてダイナミックな映像を録ろうとしたが、ホールの人に怒られて断念したエピソード、BDMでピアノを演奏するKeikoさんの技術の高さ、そして、目下パッチ3.5の作業の真っ最中で、お互いに忙殺されていることなどが語られた。

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▲祖堅氏と高田さん。イベントは祖堅氏みずからがBDMの機能説明をして視聴を進めるスタイルで行われた。当日の朝に機材トラブルに見舞われ、急遽近所の家電量販店でプレイステーション3を新調したため、「コントローラーがピッカピカ」だと笑う。
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▲ピアノを弾くKeikoさんの目線で、演奏が楽しめるカメラアングルが見どころ。また、収録には全部で18本のマイクが使われており、シーンを3つに切り替えて視聴できるという。祖堅氏のオススメは、コンサートホールの後方から収録した“5.1chサブ1”。

 つぎに、バンドアレンジされた『アンブレーカブル ~博物戦艦 フラクタル・コンティニアム~ Unbreakable』、『魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~ Fiend』を視聴。ゲストは、祖堅氏とともにバンドアレンジに携わった『FFXIV』のロックバンド、The Primalsのバンドマスター&ギタリストGUNN氏だ。「ちゃんと寝てます?」と、パッチ3.5の制作で多忙を極める祖堅氏を気遣うGUNN氏に、祖堅氏は「昨日は遅い時間に家に帰ってから『龍が如く6 命の詩。』の体験版をダウンロードして朝まで遊んだ」と答えるなどして会場の笑いを誘った。なお、視聴中に観られるライブ映像は、2016年9月に都内で行われたシークレットライブのもの。極魔神セフィロトなどと戦うプレイ映像は、ファミ通編集部のスタッフが提供している。これらの詳細については、ページ冒頭から関連記事をお読みください。

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▲祖堅氏とGUNN氏。綿密な譜面が作られたピアノアレンジとは対照的に、バンドアレンジはコード進行とメンバーのフィーリングで成り立っているという。最初は『フラクタル・コンティニアム』がうまく弾けなかったGUNN氏は、レコーディングで何度もリテイクを出すうちに、フッと高田さんが帰っていった姿が目に入り、寂しい気持ちになったと打ち明けていた。
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▲抽選で2名に、『Duality』のサイン入り宣伝ポップが贈られた。「これは宣伝用のものなので、当たった人はちゃんと宣伝をするようにお願いします!」と祖堅氏。

 視聴会の最後にサプライズとして、シークレット曲の『Oblivion(Never Let it Go Version) 忘却の彼方 Never Let it Go』を本邦初披露。これは、シヴァ討滅戦の曲をアコースティックにアレンジしたものだ。ボーカルは原曲と変わらずローカライズ部の村田あゆみさんだが、激しいロックとは打って変わって、ウィスパーボイスでしっとりとせつなく歌い上げられているのだ。

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▲スクリーンにはイゼルの姿が……。光の戦士なら、誰しもが間違いなく心を揺さぶられる1曲。視聴後、拍手が起きるまでに間が空いたのは、みんなジーンときちゃってたから!

視聴会&サイン会を終えて……

 昼の部を終えた3人に集まっていただき、視聴会の感想や『Duality』のことなどについてうかがった。

――サイン会ではファンの方といろいろな話をしていたようですが、印象に残った話はありましたか?

祖堅 思いのほか、シヴァの曲の評判がよかったようです。じつは、アルバムに入れるかどうか迷っていたので、入れてよかったと思いました。あとは、YouTubeで先行公開したこともあって、『ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~ Locus』の感想もたくさんいただきましたよ。今日いっしょに視聴した中では、『フラクタル・コンティニアム』がよかったというご意見が多かったです。

GUNN うれしいですね。がんばって弾いた甲斐がありました。高田さんには見捨てられましたけど(笑)。

高田 とんでもないです!(笑)

――機工城:アレキサンダー天動編の4層後半で流れる『Rise』も、ぜひバンドアレンジしてほしいとお願いされていましたね。

祖堅 そうなんですよ。GUNNさんに、「こんな曲があるんです」と紹介は済ませてありますし、演奏的にはたぶん問題ないんですが、コージのラップが……。あのラップは、だいぶ加工して成り立っていますので。完成データを聴いたコージに、「これ、誰が歌ってるんですか?」と聞かれるくらいですから(笑)。でも、『Rise』を望むご意見は、ちょっと無視できないレベルでたくさんいただきましたので、コージにがんばってもらうしか……。

高田 すごいプレッシャーじゃないですか!(笑)

祖堅 僕は「Rise Up!」くらいしか言うところないし(笑)。コージがやれるかやれないかで、『Rise』がやれるかやれないかが決まります。

――(笑)。遠からずバンドアレンジ版が聴けることを楽しみにしています。

祖堅 いまユーザーの皆さんが遊んでいるコンテンツの曲をやりたいのはやまやまですが、何しろまずはゲームの音を作って、それが世に出てからアレンジをするという順番がありますので……。ちなみに、『Duality』を作っているときは、パッチ3.4の制作時期だったんですね。ギターのレコーディングをした翌日に女神ソフィア討滅戦の曲を作って、その翌日に『Duality』をミックスをして……と、スキマで進める感じで、時間軸がよくわからなくなるようなスケジュールだったんです。

――いまはパッチ3.5の制作が佳境なんですよね?

祖堅 うーん。パッチ3.5も、パッチ4.0(次期拡張パッケージ『紅蓮のリベレーター』)もあって、ファンフェスもあるというのに……。サウンドチームには、このほかにもいろいろ大きい仕事があるんですよね。

高田 そうですね、いろいろ……。

祖堅 これはいよいよ、時間を止めるギミックをゴブリンに作ってもらわなきゃキビシイですね。

――(笑)。

祖堅 それに、The Primalsの地方巡業を望む声をいただいたりもして。

GUNN きましたか!

祖堅 ファンフェスの抽選は外れたし、シークレットライブも外れたし、視聴会に来られたのはよかったけど、生演奏じゃなかったから……。「ライブを望む人はたくさんいるはずですよ」と。おっしゃる通りです。なんとかできるといいですけどね、いまのところはノープランですが。

GUNN 常々、実現したいとは話してるんですよね。できるといいね(と、スタッフの方に視線を送る)。

スタッフ ……やる方向でと思っていますが、調整を……。

――GUNNさんは、このようなトークイベントは初めてですよね?

GUNN そうですね。意外とひとりで来られている方が多いみたいでしたね。だから、会場が目に見えてワイワイとはしてはいませんでしたが、ずっと様子をうかがっていたら、みんなずっとここに居たいんだろうなと思いました。もうちょっと聴かせてよ、と。

祖堅 「大きな音で聴けてよかった」とか、「5.1chサラウンドは初めて体験したけど、よかったです」という方も多くて。この催しを開いたことで、このBDMが持つポテンシャルがある程度伝わったようでうれしかったです。僕もついついMP3で聴いちゃいがちですけど、ディスクから直接大きな音で聴いたりすると、印象がすごく変わるので。ここのシアターのような環境はそうそうないですけど、1回くらいはスピーカーから聴いてもらえるとうれしいですね。

GUNN 当たり前ですけど、僕にとっても貴重な機会でした。大きなスクリーンで視聴できて気持ちよかったです。

高田 このアルバムは、音だけじゃなくて、映像もすごくキレイなんですよね。『FFXIV』の世界観が、この画質で楽しめるということで感動できると思うんです。

祖堅 スクリーンもでかければ、音もでかいということで、説得力があったと思います。

――では最後に、ファンの皆さんにひと言ずつお願いします。

祖堅 BDMとしては6枚目で、完成度が高い作品になっていると思います。本当にたくさんの方に聴いてもらいたいということと、聴くだけじゃなくて観ても楽しめますし、MP3も入って、メイキング映像も2本入っています。Twitterも見られるし、全曲コメントも入っていますし……。もういろいろ入れてがんばってるから、聴いてくれぃ! という感じですね(笑)。僕はパッチ3.5の作業があるので、ひっそりと発売日を迎えるわけですが、皆さんはどうか手に取って、大いに楽しんでいただければと思います。

高田 『Duality』のピアノアレンジは、カメラの視点がけっこう凝っています。本当にいろいろな角度から撮っているんですが、それをひとつにつなぐことで、映像としての躍動感が前作よりもさらに上がったと思っています。曲についても、いろいろなジャンルの曲をまんべんなく取り入れていますので、そのあたりも楽しんでいただけたらいいなと思います。

GUNN まだまだアレンジされていない曲はたくさんありますが、いまできうることは全部やっていますので。視聴する環境は皆さんそれぞれ違うと思いますが、それぞれで楽しんでいただいて。できれば僕らも、生でそれを見せられるように……いろいろアレしますので(笑)。あと、The Primalsのライブ映像では、僕のギターにカメラがついてます。あれ、すげー重たかったから、その感じも観ていただければと(笑)。

祖堅 ギターの先にカメラマンが乗っかっているんですよね!

GUNN そうそうそう、でっけーな! って(笑)。……というのは冗談で、GoProという小型カメラをつけたんですけれども。これは当日、説明もなくスタッフがつけ始めてですね……。

祖堅 例の、ドローンを飛ばしたスタッフです(笑)。

GUNN さきほど高田さんもおっしゃっていましたが、いろいろなカメラアングルがあるので、そういうところも楽しんでいただければと思います。

 サウンド、ビジュアルともにさらに高いクオリティーを目指し、新たな挑戦もされた新作アレンジアルバム『Duality』。祖堅氏、GUNN氏に加え、ピアニストのKeiko氏に制作意図や収録エピソードをお聞きしたインタビューは、週刊ファミ通12月22日号の『FFXIV』エオルゼア倶楽部にて掲載されます。また、本誌では収まりきらなかった話を加えたインタビュー完全版が後日ファミ通.comにて公開予定ですので、ぜひそちらもお読みください。