“究極の恐怖”を目指す開発現場を直撃!

 2017年1月26日にカプコンから発売予定のプレイステーション4、Xbox One、PC用サバイバルホラー最新作『バイオハザード7 レジデント イービル』。開発現場を取材した模様をお届け。

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▲開発フロアーの様子。これでもほんの一部!

 メディア向け体験会に参加した我々は、『バイオ7』の開発が行われているという極秘フロアに潜入することができた。非常にレアな機会をムダにしないため、多くの人々が目が回る勢いで作業を続ける姿を尻目に、気になるものを片っ端からチェック! さらに、現場で働く開発スタッフの皆さんに、さまざまな質問をぶつけてみた!

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▲フロアの奥の壁には、『バイオ7』の美術設定や資料と思われるプリントがズラリ! 気になるのは、数々のロケーションやコンテに混じった、白い人物。まだ見ぬ新キャラクターなのだろうか?
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▲モニターには“RE ENGINE”のロゴが。このRE ENGINEのハイパフォーマンスな性能が、『バイオ7』の限りなくリアルで美しい映像表現を可能にしたのだ。
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▲左から、シナリオディレクター・佐藤盛正氏(文中は佐藤)、リードゲームデザイナー・堀内 基氏(文中は堀内)、オーディオディレクター・鉢迫 渉氏(文中は鉢迫)、アートディレクター・津田壽彦氏(文中は津田)、リードレベルデザイナー・宮武弘忠氏(文中は宮武)、リードVRエンジニア・高原和啓氏(文中は高原)、RE ENGINE リードエンジニア・石田智史氏(文中は石田)。

『バイオ』を開発するというプレッシャー

――『バイオ』は世界が注目するビッグタイトルですが、皆さんは開発に当たってプレッシャーを感じたりされましたか?

一同 ……。

――皆さん、すでに慣れてしまったとか(笑)。

宮武 いえ、そういうわけではないです(笑)。個人的な話になりますが、今回初めて『バイオ』シリーズの開発に参加して、津田や鉢迫など、社内で『バイオ』の開発を長くやっているスタッフといっしょに仕事をするという時点で、すでにプレッシャーでした。そして、そういったスタッフが出すクオリティーに負けないものを作らないといけないという部分や、自分の考えた恐怖をチューニングして世界に受け入れられるようにするという部分も、かなりのプレッシャーになりましたね。

佐藤 いま宮武から世界の話が出ましたが、シナリオも恥ずかしい英語は出せないじゃないですか。グラフィックが向上してリアルになった人間がチープなセリフを言うと、すごく浮くんですよね。そういうギャップを絶対に作っていはいけないと思い、欧米の作家さんにも協力してもらってカルチャライズに力を注ぎました。プレッシャーもありましたが、それに負けないような工夫をしましたね。

津田 現在、グラフィック面では海外のタイトルのクオリティーがすごく高くなっています。そこで、もう1回新たなエンジンを作って勝負して勝つ、その1歩目として『バイオ』はすごくプレッシャーを感じていますね。

高原 PS VRでは、今作はおそらく世界で初めて『バイオ』クラスの規模感で、全編がPS VRでプレイできる作品ということで、すごくチャレンジだったんです。それが果たしてウケるのかどうか、楽しみでもあり、不安でもありますね。

作っては消える、寿命1日のサウンド

――開発に当たって、とくに苦労した部分はありますか?

鉢迫 僕は、レベルデザイナーと密接にやりとりをしてサウンドを作る場面が多く、作ってチェックしてまた作り直すという工程を何回も踏みました。そこで、ホラーゲームの恐怖を牽引していく場面、実際に驚かせる場面の制作といっしょに、短い間隔での反復テストをやっていったのですが……。本当に寿命1日のSEや、「もういらないの!?」というものがけっこう出てきて、そういった作業のくり返しはなかなか苦労しましたね。

――ホラーでは音が重要ですからね。ゲームをプレイさせていただいたのですが、セーブができる部屋で流れる安心感のあるメロディーが印象的でした。

鉢迫 息を抜ける空間がないと、つぎに怖い思いができなくなりますからね。ずっと怖いままだと麻痺するし、慣れちゃいますから。恐怖には緩急をつけることが大切です。

苦情が出るほど作り込んだグラフィック

――グラフィックが細かい部分までリアルで驚きました

津田 いままで以上に細かくこだわって作り込みましたね。主観視点になってひとつひとつのものが近くに感じられるので、いままで以上に丁寧に作っています。ものをよりリアルに見せるために、実際に作ったものを写真撮影して、それを3D化するという作業を多く取り入れています。ベイカー家の食事も、近所のお店で肉を買ってきて撮影しましたが、それだけではおいしそうなだけなので『バイオ』らしく臭い立つようなテイストを盛り込んでゲーム中に登場させています。食事の撮影のときではなかったのですが、特殊なオブジェクトの撮影をしてたら周りの部屋から苦情がきましたね、「臭い!」と(笑)。

“家リティー”を感じられる舞台

――主人公が探索する館・ベイカー邸が広すぎず、狭すぎず絶妙に感じました。

宮武 ディレクターの中西が今回作った造語で“家リティー”というものがあるのですが、本作では家のリアリティーを重視しています。アート面のメンバーがアメリカ南部のロケハンから持ち帰ってきた資料を見て、空間としてどうやって家のリアリティーを出すかに、頭を悩ませました。資料をもとに作った間取りは、ユーザーさんに体験してほしいゲーム的なテンポや恐怖を感じさせる空間としては入り組みすぎていて、ほとんどの人が迷ってしまう段階もありましたね(笑)。

――ロケハンされた家をベースに、さまざまなアレンジを加えて現在のベイカー邸ができあがっているんですね。

宮武 そうです。アレンジで気を遣ったのが、リアリティーを重視しすぎると隣接する部屋が増えてドアも多くなってしまい、そのうえ部屋の特徴づけも難しくなって、迷いやすくなってしまう点ですね。なので、部屋をつなぐにしてもドアを外したり、通路を設置して構図を覚えやすくしたりしています。

――家リティーという言葉がありましたが、実際に人が住むことを想定もされたのですか?

宮武 ベイカー家の食事会が開かれるダイニングや、その周辺のキッチン、リビングああたりは、取材やアメリカの建築様式の図面を参考にしました。それでも、ゲーム的に成立させないといけないので、玄関から通じるルートとしては少しおかしいけれど、ゲームをプレイすると気にならない、現実的にもゲーム的にもあまり違和感のない構造にはできていると思います。

――ベイカー邸には広いガレージがあり、体験プレイでも非常に印象的だったのですが、ロケハンされた家にもあったものなのでしょうか?

津田 すべての家にというわけではありませんが、ふつうのガレージ以外にも、天井がものすごく高く、たくさんの工具が置かれた別邸のようなガレージもあって、ゲームでは複数の部分を融合させて作っています。ちなみに、ベイカー邸のガレージにはバイクが吊るされているのですが、あれはどこかの家をモデルにしたとかではなく創作です。吊るしたほうが、ベイカー邸らしい狂った感じが出るかな、と(笑)。

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出し惜しみしない、全編全力のシナリオ

――物語は最初からクライマックス感のある展開で驚きました。シナリオで製作時に意識された部分はありますか?

佐藤 ディレクターの中西のやりかたでもあるのですが、やっぱり、出し惜しみしないということですね。プレイヤーをできるだけ早くゲームの世界に引き込みたくて、今回は主観視点というのもあり、序盤からインパクトのあるシーンを詰め込みました。とくにベイカー家の食事シーンは重要だと考えていたので、没になったバージョンがけっこうありました。製作時は実際にスタッフで食堂のテーブルを囲んで家族を演じながら、どうしたら怖くなるか、つぎに何されたら怖いのか、物を投げたり、イスをひっくり返したりしながら、いまのインパクトのあるシーンを作り上げました。

――確かに、食事シーンはものすごいインパクトでした。

津田 食事シーンは「家族が座っている場所が違う」ということで、作り直しが発生したりしましたね。ジャックをもっと威厳があるように見せたいと(笑)。

佐藤 ジャックは家長ですからね。

プレイヤーとキャラクターの一体化を目指す

――今回、主観視点ということでプレイ中は腕しか見えないので、操作キャラクターがどういう姿なのか気になりますね。

佐藤 主観視点を採用したことで、操作キャラクターのありかたは考え直しました。そして、プレイヤーとキャラクターの一体化というのは我々にとって大事なテーマになりました。たとえば、プレイヤーが動きたくない場面でキャラクターが勝手に動いたりすると、意識が乖離してしまいますよね。キャラクターが勝手に振り返ったりすると、PS VRの対応面でもよくありませんし。そこで、プレイヤーがしたいことをキャラクターがするようにしています。プレイヤーとキャラクターのあいだにズレを生じさせないというのは、今回強く意識した部分です。その結果、従来作のクリスやレオンといった存在と違って、より等身大のキャラクターとして、ホラーをプレイヤーに伝えるいい媒体として主人公が存在させられたと思います。

RE ENGINEで効率と品質がアップ

――開発に“RE ENGINE”を使われているということですが、開発面で従来作とどういった違いがあるのでしょうか?

石田 RE ENGINEは以前使っていた開発エンジンの後継にあたり、とくに開発効率に重点を置いています。ゲーム開発はトライ&エラーの連続なのですが、そのトライ&エラーをできるだけ効率よくできるという部分に力が入れられています。

津田 たとえば、ギミックを仕込んだアイテムはここよりもこっちにあったほうがいいんじゃないか? と思いついたとき、以前なら背景デザイナーに依頼して動かしていたんですけど、いまはエンジン上でレベルデザイナーが直接動かせるようになっています。ほかのスタッフを挟む手間などがなく、動かしたいと思いついた人が動かせるので、効率と品質が上がっています。そこがいちばんのメリットですね。

発売に向けて

――最後に、おひとりずつ発売に向けてのコメントをお願いします。

石田 開発中は慣れで感覚が麻痺してしまって、自分ではゲームがおもしろいかどうかわからなくなるのですが、『バイオ7』は自分でプレイしても、おもしろいという手応えを感じます。

高原 敵がどこにでるか、どこに驚きのポイントがあるのか、すべてわかっていても、いざPS VRで『バイオ7』をプレイすると驚いてしまいます。驚きや恐怖はPS VRではさらに強調して感じられると思うので、実際に体感してみてください。

津田 リアリティーにこだわったグラフィックで作り込まれた、居心地の悪い空間で、たくさん怖い思いをしていただければいいと思います。

佐藤 これまでのタイトルでは考えられなかったキャラクターが大勢出てくるので、ぜひご覧になってください。

鉢迫 ヘッドホンをして外界から遮断された状態でプレイしていただけると、より楽しめると思います。

宮武 今回は『バイオ』シリーズの中でも、とくに恐怖を推している作品です。グローバルタイトルなので世界向けに調整した恐怖ではあるのですが、開発のコアメンバーのほとんどが日本人ということもあり、ベースには日本的な怖さがあると思います。なので、とくに日本のユーザーさんには怖がってもらいやすいタイトルになっていると思います。

堀内 『バイオ7』には、僕たちの考えたすべての恐怖が入っています。ほかにこれほど恐怖を感じるゲームはないと思います。“世界最恐”を目指しますよ!!

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※画面は開発中のものです。