ソニック最新作の完成度をディレクターのプレゼンでチェック!

 2016年に誕生から25周年を迎えた『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』。その新たなシリーズとしてアニメやゲームで展開する『ソニックトゥーン』の最新作『ソニックトゥーン ファイアー&アイス』の発売が、10月27日に迫った。そもそも『ソニックトゥーン』とは、海外で展開中のテレビアニメシリーズ『ソニックトゥーン』(英語タイトル:『Sonic Boom』)の世界観を基盤としていて、開発を担当しているのもアメリカのデベロッパーであるサンザルゲームス(Sanzaru Games, Inc.)。前作となる『ソニックトーン 太古の秘宝』(Wii U)、『ソニックトゥーン アイランドアドベンチャー』(3DS)が2014年12月18日に発売されたばかり。『ソニックトゥーン』は、『ソニック』シリーズの中では新顔のタイトルとなるだけに、ファンからしても「どんなゲームなの?」と思っている人もいることだろう。

 そこでファミ通ドットコムでは、本作でディレクターを担当する中島玄雅氏にコンタクト。実機プレイによるプレゼンテーションをしていただき、『ソニックトゥーン ファイアー&アイス』がどのようなゲームなのかを、2時間かけてじっくりと説明してもらった。その説明を元に本作のポイントをまとめたので、プレゼン後のインタビューとあわせてご一読いただきたい。

発売直前! 『ソニックトゥーン ファイアー&アイス』の魅力をディレクター中島玄雅氏による実機プレゼン&インタビューで知る 「本作はスピード感にこだわった」_01
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▲ストーリーはテレビアニメを知らずとも楽しめる内容。ムービーシーンは前作よりパワーアップし、プリレンダムービーに加えて、実機モデルを使った会話シーンが用意され、アニメ映像を見ているような感覚でキャラクターどうしの掛け合いが楽しめる。もちろんボイスは日本語だ。

探索要素を残しつつソニックらしいスピード感を実現!

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▲実機をプレイしながら本作の魅力を説明してくれたディレクターの中島玄雅氏。

 本作のアクションのキモとなるのが、タイトルにもなっている“ファイアー&アイス”のふたつのスタイルだ。このふたつのスタイルは常時どちらかが発動していて、それを切り替えながらステージにあるギミックを攻略していく。たとえばファイアースタイルならば行く手を遮る氷ブロックを溶かし、アイススタイルならば足元を流れる水を氷に変える、といった具合だ。
 このシステムを中島氏は「前作では探索のためギミックを解除するのに、キャラクターチェンジをくり返したり、各々が持つスキルアクションを使わないと進めなかったりと謎を解きながら進むパズル的要素が非常に強かったんです。そこでテンポよく進みながら“プレイヤーを待たせない”ギミック解除を考えた結果、触れるだけで能力が発動する炎と氷のスタイルというアイデアにたどりつきました」と説明。それだけあって、ふたつのスタイルはL/Rボタン(あるいは下画面タッチ)で瞬時に切り替えられ、状況にあわせて切り替えていければ立ち止まることなく進むことができる。逆に、ギミックへの対応を誤ってしまうとダメージを受けてしまうというワケだ。

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▲ファイアーとアイスのスタイルは1ボタン(タッチ)でいつでも切り替え可能。ファイアーとアイスは常時発動しているので、対応するギミックに触れた瞬間に効果が発動する。

 ゲームスタート時に使えるのはソニックのみ。しかし、ごく序盤にエミー、テイルス、ナックルズ、スティックスが仲間に加わるので、キャラクター集めに無駄骨を折る必要はない。また、新たなキャラクターが使えるようになるたびに、チュートリアルステージが登場し、固有のスキルアクションの使いかたを理解できるようになっている。

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▲上下2画面で展開するボス戦はふたりのキャラクターのスキルを活かしてのタッグ戦。1面のボス(左)は、エミーがハンマーで地面を叩いて足場を出現させるとソニックとタッチ。ソニックは足場を登って頭の弱点に攻撃をする、という流れとなる。

 キャラクターはプレイヤーがいつでも自由に切り替えられるのだが、「基本的にはすべてのステージをソニックでクリアーできるようになっています」(中島氏)というだけあって、メインルートをクリアーするだけならキャラクターチェンジを強制されることはない(後述するサブルートの探索は別)。キャラクターは通常移動の速さこそ全員共通だが、それぞれに固有のスキルアクションやジャンプ中のアクション挙動が異なるため、いろいろなアクションを楽しめそう。とくにスキルアクションについては、“使いわけることでゲームをより楽に進められる”位置づけであるようだ。

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▲ステージ中は、下画面のキャラクターアイコンをタッチするだけでいつでもチェンジが可能。ステージ中にあるヒントリングに触れることで操作方法がひとつひとつ説明される。
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▲プレイヤーが操作する5人のキャラクターたち。左から、しっぽでの飛行やブラスターガンでの射撃ができるテイルス、地上はもちろん空中ダッシュまでこなすソニック、パンチでの攻撃と地中移動が可能なナックルズ、遠隔操作できるブーメランを操るスティックス、ハンマーで敵や障害物を破壊できるエミーと、独自のスキルアクションを持っている。

 「一回のホーミングアタックでテンポよくつぎの敵を倒せるようにしています」、「なるべくスピード感を殺さないようなステージデザインにしています」と中島氏が力説するだけに、プレイ感覚はかなり小気味よい仕上がりに。たとえばソニックのスキルアクション“エアーダッシュ”は、空中から上下左右方向へと自在に飛び回われるというモノ。これをジャンプやホーミングアタックと組み合わせることで、ほぼ立ち止まることなくゴールまで駆け抜けることができる。それ以外にも、ステージの前後を行き来するのもスプリングに触れるだけでオーケー(前作では下画面操作でのギミックの発動が必要)と、行き足を止めない改良は随所に確認できた。

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▲シリーズ作の中でもトップクラスに自由度の高い動きができるソニック。操作に慣れるほど、スピード感たっぷりの爽快なアクションが楽しめる。

 と、『ソニック』シリーズらしくスピード感が増した本作だが、前作にあった探索の要素がなくなってしまったワケではない。メインルートはこれまで同様、右方向へと進んでいくことでゴールを目指すものだが、それとは別に脇道のような目立たぬ形で“サブルート”が用意されている。サブルートには各キャラクターのスキルアクションで動作するギミックがあって、それを解かねば先に進めない。「ちょっと気になるな、というところで寄り道をしてもらえればなんらかのコレクションアイテムが入手できます」(中島氏)というワケだ。
 なお、サブルートそのものはステージ中のごく短い区間で、アイテム獲得後はメインルートに戻るようになっている。しかも、本作より登場した“ドラゴンリング”を獲得するとゴールまでのルートが示されるので、迷うことはまずないだろう。ちなみに、制限時間内にすべてのドラゴンリングを集めると、ちょっとしたご褒美をもらうことができる。

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▲メインルートと違った方向に進める場所があったら、それがサブルート。その先にはアイテムが隠されている。入り口は思わぬ場所にあるので、それ自体が探索要素ともいえる。
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▲サブルート中にはアイテムを獲得するための“チャレンジゾーン”もアリ。回転床など複数のギミックの組み合わせからなり、通常ステージとくらべて歯ごたえのある味付け。

 これまで紹介してきたメインの遊び以外にも、ミニゲームや対戦ゲームが用意されている。ミニゲームは、テイルスの発明した潜水艦のラジコンを使っての宝探しや、チューブ状コースを左右にレーンチェンジしてのリング集めなどの3種類。「横スクロールアクションとは違った内容なので、ステージの合間などの息抜きとして楽しんでもらいたい」と、中島氏はまとめた。

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▲“シーフォックスの水中探検”(左)、“ホバークラフトの川探検”(中)、“次元の裂け目探索”(右)と3種類のミニゲームが用意されている。

 本編以外で中島氏がイチオシと語るのが、ローカル通信で楽しむ“ボットレース”だ。これは名前のとおり、ソニックたちを模したロボットである“ボットレーサー”を操作して競うタイマンレースゲーム。同じコースを3周し、先にゴールしたプレイヤーが勝利となる。コースにはさまざまなギミックやショートカットが用意され、本編でのテクニックを応用すればするほどタイムを短縮できるというだけに、やり込み要素は高そうだ。

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▲ギミック満載のコースで速さを競うボットレース。ボットレーサーは、見た目だけでなく、パラメーターもそれぞれに違いがあるので、自分好みのボットレーサーで挑むことができる。

 ほかにもギャラリーモードでは、アニメ版の設定画やイメージボードといった画像が閲覧できるようになっており「『ソニックトゥーン』ってこういう作品なんだというのがわかってもらえるように」(中島氏)なっていることも見せてくれた。こうしたユーザーへの丁寧な心遣いも、じつに『ソニック』シリーズらしい部分といえるだろう。

プレゼンを終えた中島玄雅氏へインタビュー

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中島玄雅(なかじま・はるまさ)氏
学生時代から『ソニック』シリーズに惚れ込み、ついには2006年セガに入社。『ソニックと秘密のリング』、『ソニックと暗黒の騎士』などのプランナーを経て、一番のお気に入りだという『ソニックカラーズ』ではリードプランナーを担当。以降も『ソニックロストワールド』でシナリオを担当するなど、まさにソニック一筋なクリエイター歴。

――『ソニック』シリーズのプロデューサー・飯塚 隆氏がアメリカに活動拠点を移してから初めてのソニックとなります。

中島 ゲームの開発を担当したのは、前作に引き続いてサンザルゲームスです。まずはSOA(Sega of America, Inc.)や、サンザルゲームスのほうで前作の反応をリサーチして、続編をどうしていくのかを揉んでいきました。そして、『ソニック』らしいステージとなるようなバランス調整や、スピード感をいかに落とさず進行させるかというレベルデザインのチューニングは、国内の我々がさせてもらっています。レベルデザインのチューニングはかなりの頻度で行っていて、ときにはピンポイントで「この部分をこう直してくれ」というような、具体的なチューニング指示を出しました。

――監修も兼ねたディレクションなのですね。

中島 そうですね。とくに、プレイしたときに難しいと感じる部分の難易度調整は、僕が英語を話せたら現地で直接話したほうが効率がよかったんじゃないかというレベルで(笑)。前作では、“アクションステージの中でいかに探索をさせるか”という新しい提案だったのですが、そこに注力し過ぎたために『ソニック』シリーズらしいスピード感を削ぐことになってしまいました。ただ、『ソニックトゥーン』に関しては“『ソニック』シリーズの登竜門”的な役割もあって、これを経た上で本家のスピード感溢れる『ソニック』に触れてほしいという意図があったんです。

――そもそもファイアーとアイス、2種類のスタイルを切り替えながら進むというアイデアはどのように生まれたのでしょう。

中島 前作の反応をSOAとサンザルゲームスで揉んでいくうちに、大事なポイントは“ソニックらしいスピード感”であることが分かってきました。ギミックを解除する度に、プレイのテンポが悪くなってしまっていたんですね。そこで、いかにスピードを落とさずギミックを攻略できるようにするか悩みに悩んだ結果、接触するだけでギミックを突破するという基本のアイデアが出てきました。そこからソニックらしさを詰めていき、炎と氷のスタイルを瞬時にチェンジするといういまの形に落ち着きました。

――基本のアイデアが固まったあとは、どのように制作を進めていったのでしょうか。

中島 基本的には我々とSOA、サンザルゲームスで情報を共有し、適宜チューニング指示を出していったという感じです。大事にしたのは従来のソニックが持つスピード感、とくに今作では空中アクションのテンポのよさにこだわりました。具体的には“ホーミングアタックで敵を倒す→エアーダッシュで進む→エナートリガーでのワイヤーアクション→…”といった具合に、アクションが途切れないようにすることです。それと、理不尽なトラップ配置などによるミスで、ストレスを感じさせないようにすることですね。

――爽快感のあるステージクリアと探索とのバランスにも苦慮されたのでは。

中島 前作はルートの先に進むためにキャラクターチェンジが必須だったりと、探索があってのアクションでした。しかし本作では探索の要素を全部サブルートに回して、メインルートはあくまで“スピード感重視のソニック”を楽しんでもらうとことをコンセプトとしています。完全に住み分けた形ですね。

――キャラクターの違いは探索やボス戦で活きるという感じですね。そのキャラクターですが、そこにも調整が?

中島 基本的には前作のスキルアクションを踏襲しつつも、スピード感が増すように調整しています。とくにソニックはそうなんですが、エアーダッシュが一瞬も止まることなくシュパシュパッ!と気持ちよくくり出せるようになっています。

――ちなみに、飯塚さんがアメリカに移られてからの状況はいかがですか?

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中島 週一でテレビ電話を使ってのミーティングがあり、緊急案件は随時やり取りをしています。インターネット時代なのでいつでも連絡は取れてしまうので、太平洋を挟んだ遠くに行ったという気はしないです(笑)。

――では最後に、発売に向けてユーザーへのメッセージをお願いします。

中島 今作はアクションゲームに不慣れな方から、『ソニック』シリーズを好きでやり込んでくださっている上級者までが満足してもらえるよう、チューニングにこだわりました。スピード感を大事にしながら、それが爽快感につながるテンポのいい横スクロールアクションゲームとなっています。「アクションゲームってやっぱりいいな!」と思える作品なので、本作を十分に楽しんでもらった上で、ほかの『ソニック』シリーズにも興味を持ってもらえたらうれしいです。