サブタイトル“ヘクセイタスの閃”に込められた思いも!

 セガゲームスより配信中のスマートフォン向けRPG『チェインクロニクル』のアニメがテレビ放送されるのに先駆け、全国の劇場にて2016年12月3日より、全3章の物語が3ヵ月連続で上映される。本記事では、アニメ『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』の監督を務める工藤昌史氏、副監督の花井宏和氏、CG監督の篠原章郎氏(グラフィニカ)、テレコム・アニメーションフィルム代表取締役社長の浄園祐氏に、本日発表された新キャラクター“アラム”登場の意図や、サブタイトル“ヘクセイタスの閃”に込められた思いなどを伺ったインタビューの模様をお届けする。

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『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』制作スタッフインタビュー! 新キャラクター“アラム”登場の意図とは!? _01
▲写真左から、篠原章郎氏、花井宏和氏、工藤昌史氏、浄園祐氏。

――本作品に関わることを知ったときの率直な感想をお聞かせいただけますか?

工藤 お話をいただいたときには、ゲームの存在は知っていたのですが、まだプレイしたことがなかったので、ゲームを始めました。その後、少し時間があり、けっこうやり込んでいるうちに、これまでのソーシャルゲームのイメージとは違うことに気が付きました。『チェンクロ』は、1本通ったストーリーがありながら、それぞれのキャラクターの物語もしっかりと描かれていて、すごくおもしろいなと。ただ、これだけ完成された作品をどうやってアニメ化するのがベストなのか、すごく悩みましたね。

――ゲームをやり込まれたということですが、いまのランクはどのくらいでしょうか?

工藤 ストーリーはすべて終わらせましたが、ランクはそこまで高くなくて、112です。

――ということは、『チェインクロニクル3』の配信を楽しみに待っているという感じですね。

工藤 そうですね。いちファンとしてすごく楽しみにしています。

花井 僕はお話をいただいたときは、『ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション』で副監督をやっていました。さっそく話が少し脱線してしまうのですが、じつは監督の工藤とは専門学校時代からの友だちなんです。そこで、少しだけお手伝いする予定で本作にも関わる予定だったのですが、気付いたら副監督を務めさせていただくことになっていました。

――おふたりがいっしょに仕事をするのは、今回が初めてなのでしょうか?

工藤 久しぶりだよね?

花井 15年振りぐらいですね。ただ、今回のようにお互いが監督業的な立ち位置になってからは、初めてです。

――やはり、感慨深いものがありますか?

花井 専門学校時代に、工藤がキャラクターデザインで、僕が演出を担当して卒業制作をいっしょに作りました。そのときに「このまま業界に出てからも、いっしょに仕事をできるといいね」という話をしていましたが、まさか実現するとは思っていなかったので、すごく不思議な感覚です。

工藤 そういったこともあり、久しぶりに会ったのですが、すぐ昔の感覚に戻れました。

花井 距離感はあのときのまま変わらなかったよね?

工藤 すごく話しやすかったです。仕事の面でも1を言うだけで10理解してくるような感じで、とてもスムーズにいきました。

――なるほど。では、篠原さんと浄園さんはいかがでしたか?

篠原 自分はゲームを遊んでいなかったのですが、まわりの人がすごくプレイしていて“人気のある作品なんだな”という認識でした。そこから自分もプレイしてみると、キャラクターにすごく個性があって驚きました。それをCGで表現しなくてはいけないので、初のCG監督ということもあり、不安もあったのですが、すごくワクワクもしました。

浄園 グループの中でも大きな作品なので、“何としても成功させなければいけない”とすごいプレッシャーでした。僕がアニメのお話を聞いたときには、『チェインクロニクル3』を制作することが決定していて、ボリュームもすごいことになりそうだと感じました。そこで、僕がプロデューサー時代からすっといっしょに仕事をしてきた、グラフィニカさんに声を掛けさせていただくことになったんです。

――まさに“絆(チェイン)”から生まれた作品ということなんですね。

浄園 その通りです。監督と副監督、テレコム・アニメーションフィルムとグラフィニカ、どちらも固い絆で結ばれています。

――すばらしいですね! 続いて、作品の内容について伺っていきたいと思います。サブタイトルの“ヘクセイタスの閃”に込められた想いを教えてください。

工藤 アニメーションで何を語るべきかと考えていたときに、やはり絆の物語や、仲間は外せないところだと思ったんです。しかし、『チェンクロ』では、たくさんのキャラクターが登場して、それぞれにしっかりしたストーリーがあり、そのすべてをアニメで描くのは難しいということで、いくつかに絞りました。そうしているうちに、仲間の中での個人の立ち位置はどういうものなんだろうと考えるようになって、そのときに“ヘクセイタス”という言葉が思い浮かびました。

――なるほど。多数ある物語からアニメにする物語を選んだということですが、本作ではどのような物語が描かれるのでしょうか?

工藤 ヘクセイタスは、あるものをほかのものと区別して“このもの”たらしめている性質のことを意味します。それを大まかに言ってしまうと個性と言ってしまっていいと思います。その個性を持ったキャラクターたちが仲間として存在する義勇軍に身を置くということはどういうことなのかとか、ユーリたちが戦う黒の軍勢とは何なのかということを描いています。黒の軍勢には黒の兵士という敵がいる のですが、このキャラクターには個性がありません。その対比などにも注目していただければと思います。

――物語的なところでいえば、アラムという新キャラクターが登場するのが大きなポイントだと思いますが、アラムはどのようなキャラクターなのでしょうか?

工藤 ゲームでは主人公と呼ばれていたユーリと対をなす、ダブル主人公のような立ち位置のキャラクターです。ユーリよりも少年で思慮深くなく、少年マンガの主人公のようなイメージをしていただければわかりやすいかなと思います。

――アラムを登場させることは最初から決まっていたのでしょうか?

工藤 作品の方向性を考えていたときに、だんだんと決まっていったという感じです。いまの形になるまでにいろいろアイデアが出ましたね。

――『チェインクロニクル』3周年 絆の大感謝祭でPVが公開されましたが、そのときのファンの皆さんの反応はいかがでしたか?

工藤 すごく愛されている作品だなぁと思いましたね。

花井 私と工藤が現場に立ち会っていたのですが、後ろに女の子たちがいて、キャラクターが画面に登場するたびにすごい声援でした。やはり好きなキャラクターがアニメーションで動くということは、すごく期待されていることなのだと感じました。

工藤 それぞれにお気に入りのキャラクターがいて、そのキャラクターが出た瞬間に「キャーーー!」と黄色い歓声が上がっていましたね。

――浄園さんはステージに登壇されていましたが、ファンの皆さんの反応を目の前で見ていかがでしたか?

浄園 皆さん、目がキラキラしていましたね。歓迎してくださっている感じがすごく伝わってきました。

――PVの公開と同じタイミングでキャスト情報も公開されました。ゲームとアニメでは一部キャストが異なりますが、その理由を教えていただけますか?

工藤 個人的にはゲームをやり込んだこともあり、ゲームのキャストさんの声が刷り込まれていたので、本当はそのままいけたらいいのかなと思いましたが、そうすると石田(彰)さんがとにかくたいへんなことになるので(笑)。

――(笑)。約50キャラクターも演じられていますからね。

工藤 そうなんです。それは現実的ではないだろうということで、すごく迷いましたが、今回発表させていただいた形にすることになりました。

――なるほど。では、皆さんのお気に入りキャラクターを教えてください。

工藤 自分でキャラクターデザインをやっているということもあり、どのキャラクターも思い入れがあって決められないですね(笑)。

花井 じゃあ、デザインする上で苦労したキャラクターや思い出に残っているキャラクターは?

工藤 現在のストーリーになりかけていたときに、もう少しインパクトがほしいということで、シュザの立ち位置を考え直していました。ちょうどそのタイミングにゲームで、シュザがプレイアブルキャラクターとして登場して、物語がいままで以上に深く描かれていたので、アニメでもより掘り下げることができました。そういう意味では、シュザに思い入れがありますね。

花井 僕はリリスです。ゲームでは、真っ先にリリスを4凸(※4回限界突破をすること)しましたから。かわいいは正義です!

工藤 4凸するのはたいへんだよね?

花井 がんばって4凸しました。

――そこはキャラクター愛ですね(笑)。

花井 あっ、言っておきますけどロリコンではないですよ(笑)。

篠原 自分はエイレヌスですね。この作品が始まって最初に3Dで作ったのがエイレヌスでした。エイレヌスのモデラーは女の子なのですが、胸やおしりをかなりこだわって作ってくれています。

花井 地味なモーションでも揺れているよね(笑)。エイレヌスだけモーションが細かくて「揺れてるなー」とハッキリわかるぐらいです。

篠原 そうなんです。最初は監督からNGを出ていたのですが、最近は何も言われなくなりました。

花井 さりげなく入ってきているから、それぐらいならいいのかなと思って。

工藤 NGを出したのは、作る手間がたいへんだったからなのですが、その手間を割いてまで作ってくれているなら入れてもいいかなと。

篠原 モデラーとアニメーターのこだわりが詰まっています。そう考えるとやっぱりエイレヌスがお気に入りですね。

浄園 僕はヴェルナーです。悪い奴ではないんですけれども、ぱっと見は悪そうで。役者さんの演技もすごく合っていますし、魅力的だと思います。僕は端にいるけれど、かっこいいみたいなキャラクターが好きなんです。

――作品の見所や注目ポイントを教えてください。

工藤 とにかくたくさんのキャラクターを出したのですが、絞らざるを得なかったということがありました。ただ、出ているキャラクターに関しては、それぞれのエピソードもありますし、十分楽しんでいただけるんじゃないかと思います。ですので、ゲームでお気に入りだったキャラクターが出た方は楽しんでいただいて、出なかったという方も、「このキャラクターもいいな」とアニメを見て新たな発見をしていただけるとうれしいです。

花井 僕は、必殺技など、ゲーム上の表現方法をどのようにして、アニメで表現しているかというところを見てほしいですね。ゲームではさまざまな問題から制限されてしまっている技の動きを監督やスタッフと「おそらくこういう感じではないか」と話し合いながら、ゲームをプレイしているときに皆さんが想像していたものが、アニメーションで表現できるように制作していますので、注目していただければと思います。

工藤 そういう意味でいうと、ゲームでビジュアルやテキストにすらなっていないところをいろいろ考えました。たとえば、「聖王国と砂漠の湖都のあいだの道はどうなっているのだろう?」とか、「国境付近は文化が混じるはず」ということを考えたりもしました。

――そういったところもしっかり描かれるのは、うれしいですね。

花井 あと、すごく小さなところですが「ズェア!」のタイミングは注目してください(笑)。

一同 (笑)。

篠原 やはり3Dの見所は、バトルやアクションですね。ぱっと見「作画なのかな?」というところも意外と3Dだったりするので、細かいところまで見ていただけるとうれしいです。

浄園 大河ドラマでいう大河のようにすごく重たいものがあって、ドッシリ味わってもらえるボリュームです。アニメが持てるさまざまな技術の最大値に挑戦していて、僕たちにとってもすごくいい経験ですし、お客さんが見て、新しい表現になっていると感じてもらえる作品になっていると思います。

――最後に作品の公開を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

花井 劇場に足を運んでくださる方というのは、それだけ『チェンクロ』のことを愛している方が多いと思います。そういう方々には、それぞれの中で『チェンクロ』の世界ができていると思いますが、そのイメージしている世界にどうしたら近づけるかということつねに意識して一生懸命制作していますので、楽しみにしていてください。

篠原 『チェンクロ』が好きな方というのは、ストーリーはもちろんですが、各キャラクターに対する愛が半端ではないことを感じています。その思いを極力壊さないようにしつつ+αの要素を入れていますので、楽しんでいただけると幸いです。

浄園 スマートフォン用RPGという原作があって、キャラクターや世界観もしっかり構築されていますが、アニメとしてはオリジナル作品になります。オリジナルものを作るというのは、すごくたいへんで、1年という時間を費やしてもらっているスタッフもいます。単純に流れていく作業とは違い、本当に全員がクリエイター人生を懸けて制作しています。ファンの方がたくさんいる作品なので、いろいろな切り口や捉えかたがあり、万人を満足させられるかはわかりませんが、工藤監督のファンという一面とアニメ監督として思いを込めた作品をぜひ楽しんでいただきたいと思います。

工藤 本当に皆さんのおっしゃる通りで、僕から付け足す情報としては、劇場だけお楽しみもありますので、そこも含めて楽しんでください。

■作品情報
【イントロダクション】
伝説は、終わらない―。2013年7月26日にスマホRPG『チェインクロニクル』のサービスがスタートした。総ダウンロード数500万を超える大人気RPGとして3年経った今なお伝説のRPGとして君臨し続けている。そして2016年、『BLEACH』の工藤昌史×『ルパン三世』のテレコム・アニメーションフィルム×『楽園追放』のグラフィニカによりアニメシリーズ化が決定。“キズナの物語”の第2幕が始まる―。

【ストーリー】
舞台は、最果ての大陸“ユグド”。住人達は自分たちの住むその大陸が、世界の広さのすべてだと思っていた。大陸はいくつかの領地に分かれ、それぞれの地に王が存在していた。各勢力によって、小規模戦闘が起きる事はあっても 諸王たちの円卓会議により選ばれた“盟王”によって、バランスが保たれていた。暗黒の魔物“黒の軍勢”が現れるまでは―。

【上映スケジュール】
第1章:2016年12月3日(土)~
第2章:2017年1月14日(土)~
第3章:2017年2月11日(土)~
※2週間限定上映

【スタッフ】
原作:セガ
監督・キャラクターデザイン:工藤昌史
副監督:花井宏和
シリーズ構成:待田堂子
美術監督:陳場大輔
色彩設計:大塚眞純
撮影監督:荻原猛夫
CG監督:篠原章郎
編集:齋藤朱里
音響監督:はたしょう二
音楽:甲田雅人
音楽制作:フライングドッグ
音響制作:サウンドチーム・ドンファン
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム×グラフィニカ
配給:ショウゲート
宣伝パジー・エンタテインメント/スロウカーブ
パブリシティ:ブラウニー