私は銀河であり、かつて雑草でもあった。

 ショートフィルムを出発点に、「her/世界でひとつの彼女」(スパイク・ジョーンズ監督/2013年)に出てきた近未来のゲームシーンの設計や、自分だけの山を眺めるスマートフォンアプリ『Mountain』など、ゲーム寄りのインタラクティブな作品も手掛けてきた気鋭のクリエイター、デビッド・オライリー。現在ロサンゼルスのUSC(南カリフォルニア大学)キャンパスで開催中のインディーゲームイベント“IndieCade”で、同氏の最新作『Everything』を遊んだ。

 『Everything』は、その名の通り、雑草に始まり、石、木、ペーパークリップ、コケ、ピザ、ハチ、熊、島、雲、オーロラ、地球、太陽、銀河、はたまたDNAと、ミクロからマクロまであらゆるものになれるというゲーム。なにを言ってるのかわからないと思うが、本当にそういう内容なので信用して欲しい。

このおかしな世界は愛で満ちている。DNAのミクロから銀河サイズのマクロまでなんにでもなれる『Everything』を遊んだ【IndieCade 16】_02
序盤はマジで草。同類と合体して草生えまくりである。

 デモは自分が雑草という状態から始まり、周囲を徘徊していくと(草なのだがツツーッと地面をスライドして移動できる)、たまに話せる岩や木に遭遇。彼ら(?)のちょっと哲学的な会話に耳を傾けたりしていると、次第に同類と合体してグループ化する能力や、より大きなものや、より小さなものへの乗り移る能力を獲得する。そうやっていろんなものになりながら、万物の話を聞きつつ、世界を探索していくのだ。

このおかしな世界は愛で満ちている。DNAのミクロから銀河サイズのマクロまでなんにでもなれる『Everything』を遊んだ【IndieCade 16】_01
▲縦回転するロバだかなんだかに話しかけられる草。ちなみに移動モーションが全部ゲームがバグったかのような適当な動きになってるのが、独特な浮遊感を生み出している。

 ゲーム的なゴールや攻略めいたことはあまりなく(新たなカテゴリーのものに「なる」とそのジャンルがアンロックされるといったぐらい)、『Mountain』同様に文字ではほとんど説明しにくいインタラクティブアート的な内容。考えるな、感じるんだ。
 明確なメッセージはとくに示されないのだが、極小から極大まで途方もなくサイズを変えながら放浪し、さまざまな「もの」たちから“存在”や“関係”にまつわる話を聞いていると、なぜだか感動してしまうのは、さすが奇才デビッド・オライリーと言うべきか。

このおかしな世界は愛で満ちている。DNAのミクロから銀河サイズのマクロまでなんにでもなれる『Everything』を遊んだ【IndieCade 16】_03
▲銀河として銀河に話しかけられる。俺はキミでありキミは俺であり、よくわかんないけど宇宙すごい。

 なおパブリッシャーはDouble Fine Productionsが担当し、公式サイトによるとプレイステーション4をメインプラットフォームに、PCやMacでもリリース予定。こういう表現が苦手な人にはまったくおすすめしないが、ピンと来た人はリリース時にチェックしてみてはいかがだろうか。