試合結果は刺繍された一枚の布に。

 アート系インディーゲームの祭典“IndieCade”が、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスにあるUSC(南カリフォルニア大学)のキャンパスで開幕した。
 本イベントはこれまでロサンゼルス近郊の町カルバーシティで行われてきたが、今年はゲームデザイン専攻のプログラムが有名で、これまでも多くの在校生・卒業生が出展してきたUSCに会場を移し、規模も拡大。というわけで今年の出展作品から、固定観念にとらわれない自由な発想のゲームたちを紹介していこう。

 さて、今回紹介する『Threadsteading』は、かのディズニーの研究部門であるディズニー・リサーチによるプロジェクト。ゲームの内容を簡単に説明すると“ターンベースの対戦ストラテジーゲーム”なのだが、プレイ方法にひとつ大きな特徴がある。フィールドとなる布にミシンを使って自軍のマークを刺繍し、陣取りをして戦うのだ。

 布には平野・森・町などの六角形マスがプリントされており、それぞれ“コスト”と“得点”が異なる。ゲームは中央の城からスタートし、まずは先行プレイヤーが6方向から進みたい方角を選択。各ターン与えられるコスト(4ポイント)がなくなるまでその方向に自軍の刺繍が刻まれ、例えば平野(1コスト1得点)+森(3コスト1得点)でターンエンド。後攻プレイヤーがそのマスから次に進む方向を選ぶ……といった形に、一筆書き状に進んでいく。ちなみに両者の刺繍が刻まれたマスは0点となる。

改造ミシンでプレイする裁縫系ストラテジーゲーム『Threadsteading』【IndieCade 16】_01
▲刺繍が終わるまで時間がかかるので、次の一手を考えたり、対戦相手と雑談できるのがいい感じ。

 なお出展されていたのはWindowsと連動するミシン(シンガー製)のコマンドを解析して作られた“ポータブル版”で、オリジナルはキルティング用の機械で開発したとか。カタカタ刺繍が終わるのを待ちながら次の一手を考えたり、雑談するのが結構楽しく、プレイ結果が一枚の刺繍された布として残るのもなんだかいい感じ。こんなディスプレイを使わない非商用ゲームと出会えるのもまた、IndieCadeならではの豊かさなのである。