過去最多の応募作品が寄せられた、一大イベントに

 2016年9月15日(木)~9月18日(日)まで、千葉県・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ 2016(15日、16日はビジネスデイ)。今回は、実験的かつ創造的なコンセプトを持ったゲームの発掘・紹介イベント“センス・オブ・ワンダー ナイト(以下、SOWN ) 2016”の、最終選考作品プレゼンテーションおよびアワード授賞式の模様をお届けする。
 今年で9回目の開催となったSOWN。過去にアワード受賞した作品は後に開発者自身によってブラッシュアップされ、さまざまなプラットフォーム用にリリースされるなど(『Torquel』、『Plug & Play』etc.)、ゲーム業界にたいする影響力が年々大きくなっているイベントである。今回も、世界各国から過去最多となる300作品のエントリーが寄せられ、白熱した審査が行われたとのこと。

突飛なゲームの舞台はVR空間から“1次元”にまで拡大!? センス・オブ・ワンダーナイト 2016リポート【TGS 2016】_01
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▲司会進行のゲーム・ITジャーナリスト新清士氏(右)と、イザベルさん(左)。回数を重ねるごとにイベントの規模が大きくなっていることに、感慨深げだった。
▲ここ数年間メンバーが固定されているという、SOWN選考委員の面々。右より北山功氏(神奈川電子技術研究所)、Juan Gril氏(Joju Games)、多田浩二氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント ジャパンアジア)、Ramon Naeval氏(A Crowd of Monsters)、高橋建滋 氏(NPO法人オキュフェス)、雑魚雑魚のメンバー。彼らに加え、新氏と、当日来日できなかったSimon Carless氏(UBM Tech)、Brandon Sheffield氏(Necrosoft Games)によって、最終ノミネート8作品が選ばれた。

最終ノミネート8作品を紹介

■Chambara/team ok(アメリカ合衆国)

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 メリハリの効いたグラフィックが印象的な、対戦型アクションゲーム。北米ではプレイステーション4版がすでにリリースされている。本作最大の特徴は、プレイヤーが、自分自身と同じ色の背景に同化できること。待ち伏せ、奇襲といった“スタイリッシュなかくれんぼ”とても形容すべきプレイを展開できる。プレゼンテーションで、開発者は「攻撃を失敗したときのパニック感も楽しみのひとつです」と語った。

■UnWorded/Bento Studio(フランス)

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 文字(アルファベット)を移動・配置して、場面に合った物体を作り上げていく、異色のパズルゲーム。クリアーすると、事故で入院した作家が回想する、自分の人生の物語が展開する。iOS版は2016年11月16日リリース予定で、PC、Mac、プレイステーション4、プレイステーション Vita版の展開も予定されているとのこと。

【受賞】
BEST ARTS AWARD

■TAINTED/INSTITUTE OF TECHNICAL EDUCATION/NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE(シンガポール)

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東南アジア昔話の幽霊“ポンティアナック”にまつわるストーリーが展開する、一人称視点の3Dアドベンチャーゲーム。従来のゲームでは扱われることがなかった“嗅覚”の情報を、独自開発のモジュールで制御することで、展開するシチュエーションの臨場感を高めるとともに、場面の状況し、ゲーム進行のヒントとしても活用する。現在はシンガポールの大学と共同開発中で、匂いによって生じる疲労にも考慮したゲームデザイン・モジュール調整が、日夜研究されているという。

■Line Wobbler/Robin Baumgarten(イギリス)

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 ロンドン在住のドイツ人が開発した、1次元空間を舞台にしたビデオゲーム。スティック(カスタマイズしたバネ)で緑色のドット(LED発光)を操作し、道中の敵・障害物をかわしつつ、ゴール地点に向かうという内容。LEDランプが並ぶ5メートル長の“実機”をステージ上に上げて実演するなど、さまざまな物理空間に適応可能という、本作の特徴を効果的にアピールした。現在は商品化の予定はなく、将来的にはゲームセンターのアトラクションや、建物大の大きさで作成することも視野に入れているという。

【受賞】
BEST GAME DESIGN GAME AWARD
BEST PRESENTATION AWARD
AUDIENCE AWARD

■OPUS: The Day We Found Earth/SIGONO(台湾)

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 無人の宇宙船内で目覚めたロボットが、みずからの生みの親である人物の意思を継いで、故郷の星・地球を探すという、天体観測体験ゲーム。プレイヤーは、美しく広大な宇宙空間に望遠鏡を向け、座標やフィルター、セクションといった観測要素を手掛かりに、未知の惑星を発見する醍醐味を味わえる。“(サウンドを重視した)感情の表現”をテーマに掲げた本作は、ストーリーを進めることで、宇宙に離散した地球人たちに秘められたエピソードが、エモーショナルに展開する。現在、Steam、iOS、Androidにてリリース中。

■アドバンスド摩訶大将棋/大阪電気通信大学 デジタルゲーム学科 高見研究室(日本)

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平安時代後期の大型将棋を起源とする日本独自の将棋“摩訶大将棋”に、駒操作の支援機能とネットワーク対局機能を加えたボードゲーム。古文書が正しく解読されていなかったことで対局不能とされていた魔訶大将棋のルールを、室町時代の古文書や平安時代の日記、随筆をつぶさに調べて復刻したという。本作は、平安時代のゲームクリエイターの偉業を現代に知らしめるために開発した試作ゲームとのことで、各メーカー、デベロッパーに、本ルールを使用したゲームの開発を推奨した。

■DOBOTONE/Videogamo(アルゼンチン)

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 パーティーの場を盛り上げ、みんなでおもしろがれるゲームとしてデザインされた、オリジナルコンソール。基本的な内容は、最大4人のプレイヤーが、ボタンふたつで操作するミニゲームをつぎつぎとプレイしていく……というものだが、ゲームの種目や進行速度、画面の拡大・縮小などを、“ゲーム・リミックス”の担当者が、コンソール本体部のスイッチ操作でリアルタイムに切り替えられるのが、最大の特徴。リミックス担当者が、クラブDJのようなサービス精神(あるいは気まぐれ)を発揮することで、勝敗を超えた感動体験を共有できる。

【受賞】
BEST EXPERIMENTAL GAME AWARD

■Fantastic Contraption/Northway Games and Radial Games(カナダ)

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 2008年に開発されたFlash用パズルゲームの、VR版。3次元空間内にある物体を自由に掴み、変形させ、結合することができ、プレイヤーの想像力次第では、乗り物や楽器、ゲーム内ゲームなど、あらゆるものを作成できる。各種アクション用のツールバーをネコの3Dモデルとして表現したり、別空間への移動を帽子をかぶるアクションで表現したりと、随所にポップなセンスが光っていた。

【受賞】
BEST TECHNOLOGICAL GAME AWARD

来年の“10周年”がますます楽しみに!

 観客の声援(入場時に渡される、おもちゃのハンマーのシェイク音)の大きさによって決定されるAUDIENCE AWARDを含め、『Line Wobbler』が三冠を受賞して終わった、SOWN2016 。「ゲームを作ろうと思ったきっかけが皆さんいろいろあって、発想の個性が出ていてよかったです」(多田氏)、「作っている人が、リアルタイムにゲームをプレイしている人と同時に遊ぶというコンセプトがつぎつぎに出てくることにびっくりします」(新氏)といった選考委員の感想に象徴されるように、今回も多くの奇想天外な作品が紹介されるイベントとなった。

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▲授賞式で数々のアワードを受け取った、『Line Wobbler』開発者のRobbin氏(右写真・右)。
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