マルチプレイからシングルプレイへつなげていく、かつてないアプローチ
2016年9月15日(木)~9月18日(日)まで、千葉県・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ 2016(15日、16日はビジネスデイ)。会期に合わせて、エレクトロニック・アーツから10月28日発売予定のプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『タイタンフォール2』の開発を手掛けたリスポーン・エンターテインメントから、COO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)のダスティー・ウエルチ氏とアートディレクターのジョエル・エムスリー氏が来日。おふたりにインタビューする機会を得た。ここでは、その模様をお届けしよう。
――2日間に20本もの取材をこなされるのだとか。同じようなことを聞かれて食傷気味なのではありませんか?
ジョエル そんなことはありませんよ(笑)。すべての取材に対して初めてという気持ちで臨んでいます。
――それはすばらしいですね……。きっと取材ごとに聞かれていると想いますが、『タイタンフォール2』の前作と比べての魅力はなんですか?
ジョエル 今回は、まったく違う答えをしましょう(笑)。
――なんと! それくらい『タイタンフォール2』の魅力は尽きないということですね?
ジョエル 作品に深みがあるので、いろいろな答えを出すことができるんです。何はともあれ、前作と本作の違いは、前作がマルチプレイからスタートして、そこに本作でシングルプレイを加えたという点に起因しています。ふつうであれば、シングルプレイが先にきて、あとからマルチプレイを追加するのですが、『タイタンフォール2』は過程がまったく違う。マルチのあとにシングルを追加したからこそ、考えかたとか、問題の解決のしかたに対するアプローチがぜんぜん異なるんです。
――そもそも前作『タイタンフォール』は、あえてシングルプレイを切り捨てて、マルチプレイに特化したわけではなかったのですか?
ジョエル 『タイタンフォール』には、当初シングルプレイのフィーチャーが搭載されていたのですが、最終的にはマルチプレイだけでローンチしました。最初からシングルプレイを入れることは想定していたのです。そのときにはいろいろなことを実験したいと思って、シングルプレイをマルチプレイの中に入れる……といったことも検討していました。それで、いいこともあり、悪いことも起こりという感じで。『タイタンフォール2』の開発に取り組んだときは、最初からシングルプレイをマルチプレイとは別の形で入れたいということを決めていました。マルチプレイのすべてのモードをシングルプレイに入れることがこんなに難易度が高いことだとは、当初予想していなかったんです。とはいえ、結果として『タイタンフォール2』でのシングルプレイはいままで見たこともなかった形になりました。
――たとえば?
ジョエル デザインチームが、ひと口サイズくらいのゲームプレイのブロックを作って、違うタイプのブロックを数100個くらい作ったんですね。
――うーん……。
ジョエル ひとつのゲームプレイというのは、小さいゲームプレイの環境なんですが、まったく違う環境をす数100個作ったんです。
ダスティー ブロックというのは、とある一室の環境だったり、ウォールランを試せるような、ひとつのことを試せるような環境のことですね。ゲームプレイの試験モデルみたいなものでしょうか。それを数100個作りました。それは、ちょっとしたパズルのフィーチャーかもしれないし、探索のやりかただったかもしれません。
ジョエル 数100個以上のブロックを作って、よりよいものを見分けて、そこからゲームを作り始めました。チームは9ヵ月のあいだに、何100も作って、そのコンテンツだけでもいくつかシングルプレイのゲームを作れるのに、それをひとつだけいいものを見つけ出して、ほかを捨ててしまいました。
――残された要素というのは?
ジョエル とても小柄なパイロットがいて、隣には巨人のロボットがいて、彼らは自由にどこでも探索できるというものです。それをどうやってゲームプレイに組み込むかがつぎなる課題でした。たとえば、狭い廊下は、巨大なロボットは通れないわけじゃないですか。ですので、それをどうやって利用して、自由に動けるようにすればいいのかということで、試行錯誤しました。『タイタンフォール』のシングルプレイの中では、とくにチャレンジしなければならなかったことは、タイタンとパイロットで自由に移動できるような環境を構築することでした。
――シングルプレイというと、ストーリー重視といった印象があったのですが、『タイタンフォール2』のシングルプレイは、どちらかというと、ゲームメカニズム重視だったのですか?
ジョエル シングルプレイのチャレンジだったことは、タイタンとパイロットのメカニズムをいかに活かせばいいのか……ということも、もちろん重要だったのですが、そのいちばん深いところにあるのは、BTよジャックのあいだの“絆”のストーリーです。
――つまり、最初にストーリーがあって、それに見合ったゲームメカニズムを構築しようとして、試行錯誤したということですか?
ダスティー 同時進行ですね。全体のコンセプトとしては、BTとジャックの絆があり、それと同時にメカニズムが過程を明確にして、その旅がさらにわかりやすくなりました。
ジョエル 開発をしているときに大きなネックがあって、それをどうやってうまく組み合わせれば達成できるのか、見えなくなってしまったときもありました。とはいえ、私たちはチャレンジが大好きなので、「絶対に諦めないんだ!」という精神で取り組みました。「このアイデアはクールなので、とにかく実現しよう!」ということで、がんばりましたね。
ダスティー 最終的には、とてもユニークで楽しいゲームができあがりました。
――『タイタンフォール2』のシングルプレイは、マルチプレイとはまた違ったゲームプレイになりそうですね。
ジョエル そうです。
――どんな感じになるのでしょうか? さわりだけでも……。
ジョエル (近くのポスターを指差して)、これが7体目のタイタンです。マルチプレイでは6体のタイタンがいますが、このタイタンは特別です。これは、ロックマンやブラスタマスターに似た、とても特殊なタイタンです。シングルプレイの“裏”となるすべての動機は、お互いをリスペクトし合うような、関係性を作らなければいけないんですね。シングルプレイの中でメカニズムがとてもエキゾチックなので、シングルプレイでしかできないことを、いっぱい搭載しています。
――BTはしゃべるんですよね?
ジョエル そうです。
――意志がある?
ジョエル ちょっとだけ。
――つまり、AI的なものを搭載しているということですね?
ジョエル 本当に彼のAIはすぐれていて、あるメカニズムを搭載したのですが、実際にBTと会話を交わすことができます。プレイヤーがBTに対して親近感が湧くようなロボットとして設計しました。
――とはいえ、僕らはBTを操作できるんですよね?
ジョエル そうです。見た目にわかりやすい例でお伝えしますと、BTがひとりで走り回っているときは左利きなんです。それがパイロットが操作しているときは右利きになります。細かいディテールの話ですが。近くにいても遠くにいても、彼が直接語りかけるんですね。ヘルメットを通して。
――左利きにした理由はあるのですか? 設定上の要請とかで。
ジョエル プレイヤーの皆さんが目で見て、操作されていないということがわかるために、左利きにしました。
――なるほど。あと、ストーリーですが、テーマはどのようなものになるのでしょうか? さきほど“絆”とおっしゃっていましたが、もう少し詳しくお教えいただけると。
ジョエル プレイヤーは、プレイヤーのタイタンを奪おうとする悪者から逃げているというのが導入となります。だからこそ、プレイヤーの皆さんが、このタイタンを気に入っていただける状態になることが重要になります。それに対比するように、悪役(ヴィラン)も感情が喚起されるような相手じゃないとダメだと判断しました。
ダスティー ヴィランですが、本作ではボスと戦うシチュエーションが適宜用意されています。ボスは、パワフルなタイタンで、それぞれユニークなアビリティーを持っています。対するに、BT-7274はボスを倒したときに、ボスのスキルを全部吸収して身に付けることができるんですね。
ジョエル ロックマンみたいに(笑)。
――パーツとかも変えられるのですか?
ダスティー ボスからパーツを取ることはできないのですが、ストーリーの中で、彼らのタイタンを倒したあとに、彼らの武器を奪うことはできます。Roninを倒したときには、Roninの剣を奪うことはできます。
――たとえば、どんなスキルを獲得できるのですか?
ダスティー それはまだ言えません。すべてのボスタイタンは、ユニークな能力と武器を持っています。
――ボスは何体くらい?
ジョエル 6体ですね。
――それらの順番に倒して、最後に大ボスと戦う感じですか?
ジョエル 『タイタンフォール2』のストーリーは、そこまで直線的ではありません。いくつかのレベルをクリアーすれば特定のボスが現れるというわけではなくて、ストーリーによって現れる瞬間は変わります。
――最後の大ボスという概念も存在しない?
ジョエル 最終的にはとても大きなことが起こります。
――うーん、謎ですね(笑)。BT-7274のデザインについて聞かせてください。けっこうなこだわりがあると思うのですが……。
ジョエル 幾何学的なフォルムに気をつけました。彼の頭部はヘリコプターのアパッチをモチーフにしています。日本の文化やアニメ、マンガから受けたインスピレーションのバランスを取って、さらには私たちは最新の軍事兵器の知識も持っていますので、それをうまく統合させることに力を入れました。そうして、すぐにみなさんが親近感を抱けるようなロボットができあがったと自負しています。そして、何より前提としていたのは、BTは残りの6体と見分けられるようなデザインでなければいけないという点です。
――『タイタンフォール』が日本の文化にインスパイアを受けているというのは、うれしい限りですが、「この作品にこの部分で刺激を受けた」といった具体例などありましたら。
ジョエル まずは、『アキラ』ですね。ジャックの赤いスーツは、『アキラ』の金田に刺激を受けています。
――ほう!
ジョエル 『アキラ』に出てきたレーザーガンに似たような武器が、『タイタンフォール2』でも出てきます。ほかにもあまりにもあり過ぎて。明確に言葉に表すことができないのですが、日本のアニメやマンガは何かが違う、という感覚は世界中の人たちは持っていると思います。
ダスティー 『攻殻機動隊』や『アップルシード』など、士郎正宗からも刺激を受けていますね。あとは、『機動戦士ガンダム』! さらには『超時空要塞マクロス』も。『MEMORIES』もいいですね。
――おお!
ジョエル 一方で、ジェームズ・キャメロン監督の影響も色濃く受けています。『ターミネーター』や『エイリアン2』など……。そういった意味では、さまざまなコンテンツに影響を受けて、『タイタンフォール2』はできています。
――ちなみに、BTって何の略なのですか?
ダスティー ごめんなさい、言えません。
――それは、ゲーム中に明かされるのですか?
ダスティー ユーザーの方たちに意味合いを見つけてほしいので、あえていまは明かさないことにしているんです。
――ということは、意味はちゃんとあるということですね?
ジョエル あります。ただ、私たちとしては、ユーザーの皆さんからどのような意味を持っているか、意見をうかがいたいんです。もちろん、正解はあります。個人的な意味合いも含めて。
――『タイタンフォール2』のマルチプレイは、シングルプレイとはまったく別のものになるのですか?
ジョエル はい。明確にふたつに分かれています。マルチプレイのパートも、前作に比べてドラマティックに進化していますよ。
ダスティー 『タイタンフォール』がリリースされたあとは、ファンの皆さんからのフィードバックをたくさんいただいたのですが、開発陣のほうでも、“いろいろと追加したい”という気持ちが強く湧き上がってきました。本作のマルチプレイでは、6体のタイタンが搭載されており、詳細にカスタマイズすることが可能になっています。パイロットや武器もカスタマイズできます。3つの要素がとてもおもしろい形で進化していきます。いちばん大きな違いは、いまだから言えることかもしれないのですが、『タイタンフォール』では、レベル1から10まであったとしたら、最初からレベル11でやらないと、ゲームができなかったということです。ちょっとクレイジーでした。ですので、『タイタンフォール2』ではバランスを取っており、よりスムーズなプロセスで進化できるようになっています。それが大きな違いですね。
――BTやボスも、ゆくゆくはマルチプレイで使用できるようになるのですか?
ダスティー 残念ながらできません。彼(BT)は非常にユニークな存在です。ターミネーターに似たようなロボットなので。マルチプレイのゲームプレイが崩壊してしまうような能力を持ったロボットです。
――改めての質問となってしまいますが、『タイタンフォール』ブランドは、新規IPにしてFPSとして大きな存在感を獲得し得たかと思うのですが、なぜここまで『タイタンフォール』はファンの支持を受けたと思いますか?
ダスティー まずはマルチプレイの視点からお答えしましょう。『タイタンフォール』はマルチプレイの仕方を革命的に変えたんですね。とてもスピーディーで、流動的で、どこでも移動できるメカニズムが搭載されています。コンバットでは垂直移動が可能です。最近、このスタイルに刺激を受けたゲームも出てきているように思います。そして、シングルプレイはとても特別なものです。すべてのレベルのゲームプレイがまったく違ってきます。パイロットからタイタンバトルまで。そして最終的にはタイタンとパイロットは手を組むことで、誰も止められないような強いコンビになるんです。
――もしかして、ストーリーでは、最初はジャックとBTは反発しあっていて、ストーリーが進むにしたがって絆が生まれるという展開になるのですか?
ジョエル それは違います(笑)。
――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
ジョエル 日本のゲームファンに『タイタンフォール2』をお届けできることをとてもワクワクしています。日本のファンの皆さんにプレイしていただくことを楽しみにしていますし、私たちは日本のゲームファンの求める基準がいちばん高いと感じています。そんな日本のファンの皆さんの希望を叶えられれば、それがベストです。
ダスティー 私たちスタジオのスタッフはみんなゲーマーです。テレビゲームの歴史が始まったここ日本の地で、『タイタンフォール2』を提供できるのは光栄です。