稲船敬二氏のルーツは永井豪作品にあり!
日本マイクロソフトは2016年9月12日、プレス向けイベント“Xbox Showcase”を開催。総合プレゼンテーションの後に、『ReCore』、『Forza Horizon 3』、『デッドライジング4』の3タイトルについては、個別プレゼンも行われた。その模様をリポートしていく。なお、総合プレゼンテーションの模様については、こちらを参照していただきたい。
ひとつ目のタイトルは『ReCore』。稲船敬二氏が率いるcomceptと、『メトロイドプライム』シリーズなどで知られるArmature Studioがタッグを組んで開発した、アクションアドベンチャーゲームだ。今回は稲船氏へのミニインタビューで、その開発秘話や魅力を語っていただいた。
――早速ですが、本作のキーポイントについて教えてください。
稲船敬二氏(以下、稲船) タイトル通り、“コア”がポイントですね。敵ロボットのコアを抜き取って、味方ロボットのコアを強化したり、先に進めるためにもコアを集めたりします。
本作は、可能な限りシンプルに構成しています。敵も味方もロボットですが、じつはもとをたどれば同じものなんですよ。それが、悪いほうへ変化したら敵になって、いい側に残ったのが味方……という感じなのです。バトルシステムもシンプルで、敵のコアと同じ色で攻撃すると、効果的にダメージを与えられるようになっています。
ただ、チャレンジャブルな部分もあります。たとえば、離れた足場へジャンプしたときにギリギリ届かなくて、でももうちょっとで超えられそうだから、もう一度挑戦! という感じ。敵を強引にやっつけるのではなくて、いろいろ考えたり、タイミングを見計らって突破したりしていくというスタイルのゲームに仕上がっていますね。こういうタイプのゲームが好きなんですよ。
――確かに、二段ジャンプに空中ダッシュを組み合わせないと突破できない場面が序盤からあったりして、けっこう手応えを感じました。このあたりのマップ作成なども、稲船さんが関わっているんですか?
稲船 いえ、その辺はアメリカ側が主体ですね。僕ら側では、「ああしたい」、「こうしたい」という基本的な部分に関わっている感じで、あまり細かいところまでは口出ししていません。
じつは開発序盤、どのような作品にしていくかという話し合いのとき、すごくよくまとまったんですよ。海外といっしょにゲームを作ると、お互いのやりたいことがぶつかって、揉めることがよくあるんです。しかし、Armature Studioのマークというディレクターは、自分たちのやりたいことも主張するのですが、柔軟性がすごくあって、こちらの主張もちゃんと飲み込んでくれるんです。両者のやりたいことを上手にまとめてくれるので、アクションの部分も、「こうしたいね」というポイントは最初から合致していました。
さらに言えば、当初はやりたいことがもっとたくさんあって、超大作ゲームの規模だったんです。でも、それでは時間も予算も足りません。それならば、シンプルにしようと、ギュッと濃縮したのが現在の形なんです。たとえば、味方ロボットのコアは3つ登場するのですが、広げようと思えば、コアを10個に増やせばいいわけです。そうすれば、10通りの個性を出せますよね。主人公のジュールはレベルアップしませんが、レベルアップシステムを入れようと思えば、入れることもできたわけです。ただし、コストも時間もかかるし、そこまで広げてしまうと複雑になってしまう。本作はそういうことがけっこう多くて、逆にシンプルに考えられたことが、功を奏したと思いますね。
――ロボットのカスタマイズもおもしろそうですよね。詳しく教えていただけますか。
稲船 はい。まず味方のコアが3つ登場して、ロボットの形となるフレームは5種類存在します。フレームはパーツを入れ換えるとパワーアップしていきますし、コアを入れ換えることもできます。たとえば、最初から味方になっているマックという犬のロボットがいるのですが、じつはコアの部分がマックなんです。後に、ゴリラのようなダンカンというロボットも登場するのですが、このふたつのコアを入れ換えると、マックはゴリラの形になります。
コアによって性格が異なるので、戦いかたも変化するんですよ。たとえば青色のコアだったら、積極的に突っ込んで戦ってくれるのですが、赤色のコアに変えたら、炎で焼き尽くす攻撃を出すとか。ロボットは2体連れて行けますが、同時に戦えるのは1体だけなので、途中で使うロボットを切り換えながら冒険していく……という感じですね。特定のフレームでなければ先に進めないギミックもありますので、誰を連れて行くか、誰と仲よくするかという要素も、楽しく遊べるかなと思います。バリエーションも豊富なので、けっこう長時間楽しめると思います。
――そういえば、マックが味方である理由も、最初は語られていませんね。
稲船 その理由や、なぜコアが存在するのかといったお話は、ゲームを進めていくと判明していきます。先ほどお話ししたように、ストーリーも構想ではもっと大規模だったんですよ。今回はその一部を抜き出して、ギュッと濃縮して。ロボットとどう戦っていくのか、味方もただの道具ではなくて共闘していく仲間であるとか、そういった部分にフォーカスをあてて、しっかり描きました。本当はロボットとの関係性、感情のやり取りなんかも描きたかったんですけれど、そのあたりを続編などでつなげていければ、自分たちがやりたかったことを、もっと入れられると思いますね。
――続編と言えば、「一般的な続編ではなく、ドラマのシーズン1、シーズン2みたいな位置づけ」と以前おっしゃられていましたね。
稲船 ええ、そのつもりでやっています。今回は広大な構想の一部を作れたかな、と思っています。ただ、“シーズン2”は本作が売れなければ作れませんけどね。
――思えば、本作ではロボットが大きな要素ですし、『ロックマン』もロボットでした。やはりロボットには、特別な思い入れがありますか?
稲船 ありますねぇ~。僕はゲームに憧れてゲームの世界に来たわけではなく、漫画やアニメが好きだったんですよ。子どものころから、ずっとロボットの絵を描いてきました。永井豪さんが大好きなので、『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』が僕のルーツです。
そういう意味では、未来にロボットが出てくるのは当たり前、みたいな意識もあります。人類の未来は、すごく想像を膨らませることができて、描くのにおもしろいと思っているんです。僕自身は、人類の未来は悪い方向に向かっていると思っています。それを人類はどのようにして、いい方向へ導くのか。そのために必要なのが、コンピュータやロボットなど、ある種便利なモノですよね。でも、便利なモノを上手に使える人間と、使えない人間が必ず出てくる。映画の『ターミネーター』じゃないですけれど、その戦いというのを、僕はずっと描き続けてきたんです。本作ももちろんそうですし、『ロックマン』の表現であったり、『ロスト プラネット』も、人類の未来とロボットというテーマでやりました。ただ、テーマは同じですが切り口はまったく違うので、本作に関しては割と全年齢に近い感じでアピールできるところかなあ。
本作はそこにもチャレンジしていて、アメリカではTeen向け(※13歳以上対象)に作っているんですよ。リアルに物事を考えると、Mature(※17歳以上)のほうがやりやすいんですけれど。日本では、CEROは全年齢対象です。
――本作から話は外れますが、今回のイベントでは『デッドライジング 4』も出展されていました。かつてプロデューサーとしてリリースしたタイトルが、4作目までリリースされて、ご感想はいかがですか?
稲船 まだちゃんと見られていないんですけど、やっぱりうれしいですね。『デッドライジング』はマイクロソフトさんとガッチリ組んでやらせてもらったタイトルなので、いまでもきっちり扱ってくれているというのは、すごくうれしいですよ。
――では、最後に読者へメッセージをお願いします。
稲船 『ReCore』がどんなゲームなのかは、なかなか伝わっていないかもしれませんが、日本人が本当に楽しめるゲームに仕上がっているはずです。ぜひ、この世界観に浸りつつ、アクションを堪能してほしいですね。両者が合致して、すごくいい形になったと思います。
マップの広さや多様性は前作の2倍! 『Forza Horizon 3』
続いては、レースゲーム『Forza Horizon 3』のプレゼン。『Forza』シリーズは、本編となるレーシングシミュレーターの『Forza Motorsport』と、スピンオフ的な作品である『Forza Horizon』の、2シリーズが並行して展開されている。『Forza Horizon』は、広大なマップを好きなように走れるという自由度の高さが魅力。また『Forza』シリーズのリアルな挙動を、カジュアルな操作で楽しめるという、本編よりも間口の広い作品である。
そんな『Forza Horizon 3』の魅力を、グローバルプロダクトマネージャーのクリス・ビショップ氏が、デモプレイを通じて伝えてくれた。
本作の収録車種は350台。そのすべてのマシンに敬意を払って平等に扱っているので、全車種が鑑賞モードである“Forza Vista”に対応しているとのこと。また過去作よりもカスタマイズの幅が広がっており、クラクションも変更できるとか。
本作の舞台は、美しい大自然が魅力のオーストラリア。採用した理由はふたつあり、ひとつは景観がとても美しいこと。もうひとつは「地形など、環境の多様性が豊かであること」(ビショップ氏)だそうだ。初代『Forza Horizon』や『Forza Horizon 2』は、美しいゲームではあったが、「環境に制約があったように思う」とビショップ氏。シリーズを重ねてゲームのボリュームが増し、プレイヤーのプレイ時間が増えるにつれて、環境の多様性が豊かなロケーションを選びたかったそうだ。「本作には多種多様な環境が登場します。言うなれば、8つの異なる世界をひとつにまとめたのが今回のマップ。見た目も美しいし、多様性に富んでいます」と語る。
そんな本作のマップの広さは、なんと前作の2倍。キャンペーンのプレイ時間も、クリアーまで100時間以上はかかるボリュームで、かなり長時間楽しめる作品に仕上がっているそうだ。
また、美しい空を作り出す秘訣も明かしてくれた。本作では、カスタムメイドの12Kカメラを使用して、実際にオーストラリアの空を撮影。その数なんと160万枚以上で、その画像をゲームに取り込んで、空を再現しているのだとか。「ゲーム中でも、本物のオーストラリアの空を楽しめます」とビショップ氏。
新要素であるホライズンブループリントについても説明してくれた。これはイベントをカスタマイズできる新機能。たとえば、“昼にバギーで海岸を走る”というミッションがあった場合、“夜にマッスルカーで走る”というように条件をカスタマイズできるそうだ。ただし、スタート地点とゴール地点は変更できない。よくあるコース作成機能というわけではなさそうだ。
ホライズンブループリントでは、新たなチャレンジを作成することもできる。たとえば崖があって、ここからジャンプして飛距離を競う、というチャレンジをマップ上に作成できる。これはイベント内だけでなく、オープンワールド上に作成することができ、しかもオンラインで公開することも可能だそうだ。オンライン要素としては、ユーザーからの要望が多かったストアフロントが復活。自分のクルマをオークションに出したり、直接売ることができるそうだ。
最後に、読者に向けてのメッセージをビショップ氏からいただいたので、紹介しよう。
「これまでいろいろな国に来ましたが、日本はクルマに関するカルチャーがすばらしいですね! クルマをカスタマイズしている人が多くて、格好いいクルマが多いんですよ。ゲーマーの皆さんも、ゲームの中で実車と同じように、クルマのカスタマイズを楽しんでもらえると思います。また、日本で人気があるドリフトをポイントで競える要素もありますので、ぜひ楽しみに指定ください!」
フランクを出したいから『デッドライジング4』が生まれた!
最後は、ゾンビパラダイスアクション『デッドライジング4』のプレゼン。『デッドライジング』シリーズは、大量のゾンビから生き抜きつつ、事件の謎を追っていくサバイバルアクションゲームだ。今回は、カプコンU.S.A.のジョン・エアハート氏が、実機デモを行いながら本作の魅力を語ってくれた。ここは、インタビュー形式でその模様をお伝えしていこう。
――本作では、初代の主人公であるフランク・ウェストが復活して、舞台も初代と同じウィラメッテの街ですよね。初代のリバイバルが本作のテーマでしょうか。
ジョン・エアハート氏(以下、エアハート) ええ、それもテーマのひとつです。そもそも本作の開発チームは、みんなフランクのことが大好きで、彼をどうしても復活させたいという願いが開発のきっかけなんですよ。では、どこで復活させるのがいいかと考えたとき、かなり早い段階でウィラメッテに決定しました。
本作の時期はクリスマスなんですけれど、クリスマスのショッピングモールって、現実ではカオスすぎて最悪なんですよ! 毎年誰かが死んでしまうレベルです。そんな、人間がゾンビに近い状態というのも、接点があっておもしろいかなあ、と思いました。
それから、フランクのストーリーもおもしろいので注目してください。今回新しいシナリオライターを採用したのですが、フランクが『デッドライジング4』までの16年間、どうしていたのか、そんなストーリーも語られます。
――では、バトルシステムについて教えてください。
エアハート 前作からの大きな違いは、アイテム管理が行いやすくなったことが挙げられます。本作では、近距離武器、遠距離武器、投てき武器の、3つの武器を同時に装備できます。今回はインベントリ画面を開いているときは、時間の流れが超スローになるので、武器の入れ換えもストレスなく行えます。近距離武器を使って、すぐ遠距離武器に切り替えて追撃、なんて戦いかたも簡単にできますよ。
新登場の“EXOスーツ”もメチャクチャ強くて楽しいですね。一発でゾンビを倒せたり、特別なフィニッシングムーブも発動できたりします。しかし、ずっと装備できるとゲーム自体が単調になってしまうので、バッテリーでの時間制限があります。置いている場所や敵の配置を考えて、戦略的に使ってほしいですね。
――EXOスーツは一種類だけなんですか?
エアハート ベースは一種類だけですけど、じつは武器を組み合わせてカスタマイズできるんです。言うなれば、コンボ武器ならぬ“コンボ自分”ですね。たとえば、冷たいデザートのスラッシーを作る機械をスーツに取り付けると、氷を出すEXOスーツになるんです。武器の組み合わせで、いろいろな攻撃を楽しめるんですよ。また、通常では重くて持てないミニガンのような武器も、スーツを着ているときなら使えるといった長所もあります。
――フランクさんと言えば、カメラシステムも気になりますね。
エアハート ええ、初代のように撮影してボーナスポイントをゲットできます。また。ナイトビジョンやスペクトラムアナライザーといったエフェクトもたくさん用意されています。スペクトラムアナライザーは、通常では見えない血しぶきのあとなどを見つけられるエフェクトで、これを活用した謎解きもあります。たとえば、カギがかかったロッカーを見つけたとします。周囲をスペクトラムアナライザーで見ると血痕があって、その先をたどっていくと、カギを持った死体を発見できる、といった感じですね。
フランクは写真を撮影してミッションをクリアーしていくのですが、たとえばフィルターを使ってノートパッドを接写で撮影し、何を書いたか見抜く、といった謎解きもあります。
――ミニマップに青い円が表示されていますね。これはなんですか?
エアハート これはランダムエンカウンターという新イベントですね。その名の通りランダムで発生するもので、生存者がゾンビに囲まれていたり、軍隊や強いゾンビがいたりと、内容はさまざまです。ランダムで発生するため、たとえばどこかへ探索に行って、帰り道にこのイベントが発生してしまいヤバイ状況に……なんてこともあって、遊びの幅がかなり広がっていると思いますよ。
それからコンボ車両もあります。たとえば、キロワットというコンボ車両は、ゴーカートに電池をたくさん付けて、周囲を電撃で攻撃します。前作よりも、よりクレイジーでファンタスティックな車両になっています。
『デッドライジング』といえば、コスチュームも外せませんよね! 今回はクリスマスの時期なので、“サンクスギビング(感謝祭)”のターキーやら、ホリデーシーズンをイメージした衣装がたくさんあります。そうそう、自撮りもできるんですよ(笑)。頭、上半身、靴をバラバラに装備して、ヘンなコーディネートを楽しめるのも、シリーズの特徴ですね、シナリオはシリアスだけれど、プレイヤー次第で、バカバカしい要素を自分で入れられます。
――新要素が盛りだくさんですね。エアハートさんがオススメする見どころはありますか?
エアハート カプコントリビュートコスチュームですね! これまでのシリーズにも入っていて、たとえば初代では『ロックマン』や『トロンにコブン』、『2』では『魔界村』のアーサーの衣装なんかが登場しました。今回、どんなキャラクターのコスチュームが登場するかはまだナイショですけれど、ぜひ発見してほしいですね。個人的に、すごく大好きなキャラクターなんですよ!
カメラを使って隠し場所を見つけるのも楽しいですし、ゾンビ以上にヤバイ人間である“サイコパス”も、今回は“マニアック”として登場します。彼らに出会って倒すのも楽しいですね。
――それでは好きな武器はどれですか?
エアハート “Blambow”という武器が大好きですね! クロスボウと花火で作れるコンボ武器なのですが、ゾンビの大軍にこれを撃ち込んで、進んでいく道を自分で作れるという感じが気に入っています。それから、傘とレーザーで作れる、アンブレラガンもバカバカしくて楽しいですね。
――『デッドライジング』が大好き、ということがひしひしと伝わってきます。これまでのシリーズ作の中でいちばん好きなのはどれですか?
エアハート 『デッドライジング2』ですね! 西洋と東洋、カプコンジャパンとカプコンバンクーバーがいっしょにゲームを作れるか、というチャレンジを行った作品で、自分にとってはキャリア的なチャレンジでもあったんですよ。稲船(敬二)さんとバンクーバーの大きなチームでいっしょにゲームを作るのはたいへんでしたが、とても思い出深い作品です。ゲームとしては……、難しいけれど、たぶん初代『デッドライジング』ですね。当時は『バイオハザード』シリーズが10年以上続いているという状況で登場した新規のゾンビIPで、ゾンビの原点に戻ったかなあ、という感じです。
――では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
エアハート 『デッドライジング』ももう10周年です。ぜひ、フランクのつぎのチャプターを遊んでいただいて、感想をお聞かせください!
今回紹介した3タイトルの中では、発売がちょっと先の『デッドライジング4』。本日(2016年9月13日)、『デッドライジング』、『デッドライジング2』、『デッドライジング2 オフ・ザ・レコード』の3作が、プレイステーション4、Xbox One、PCにて発売されるので、これらを遊びつつ、新たなフランクさんの活躍を待とう。