誌面の都合で掲載できなかった部分も全部載せます!

 2016年2月に創立10周年を迎えたプラチナゲームズ。4月からは経営陣を刷新し、同社の代表取締役社長には、プラチナゲームズ創立時から経営のキーマンとして手腕をふるっていた佐藤賢一氏が就任。週刊ファミ通2016年9月22日号(2016年9月8日発売)では、そんな佐藤社長のインタビューを掲載した。今回は、誌面のスペースの都合で掲載できなかった部分も含めた、佐藤社長インタビューの完全版を公開する。

プラチナゲームズ・佐藤賢一社長インタビューの完全版を掲載!_04
プラチナゲームズ株式会社
代表取締役社長
佐藤賢一氏(文中は佐藤)

プラチナゲームズ創立時から経営のキーマンとして会社を支え続けてきたが、2016年4月からは同社の代表取締役社長に就任。

社員全員が会社のビジョンを共通目標として持つことが大切

--社長に就任されたのが今年の4月となりますが、改めてプラチナゲームズの社長に就任された経緯をお聞かせください。

佐藤 弊社は今年の2月に10周年を迎えたわけですが、これまでの10年を振り返ってみると、10年間で10タイトル(海外のみ発売のタイトルを含む)をリリースしてきました。

--10年で10タイトルは、多いですよね。

佐藤 多いほうだと思います。それもあって、ユーザーの方やメーカーの方にもプラチナゲームズという名前は認知されたのかなとは思います。ただ、もともとプラチナゲームズを立ち上げたときに、“ユーザー満足度世界一のゲームスタジオになろう”というビジョンを掲げていましたので、それを達成できたかというと、まだまだ足りていないなと。10年前に50数名で立ち上げて、いまは社員も200人近くまで増えましたけど、社員たちが、つねに設立時に掲げたビジョンに向かってゲーム作りができていたかというと、正直そこまではできていなかったと思っています。

--そこまで余裕がなかったのでしょうか。

佐藤 目の前の仕事だけに没頭することが多くなってしまったというのはありますね。10年という節目は迎えられましたけど、この先10年、20年と会社を存続させることを考えると、いままでと同じスタイルで続けていたら、先行きがないと思っています。10年という節目で、会社の体制も含めて大きく変更して、新しいプラチナゲームズとしてやっていくんだという覚悟を持って、経営陣も刷新しました。

--具体的には、会社の体制をどのように変更されたのでしょうか?

佐藤 会社のビジョンを達成するために足りないことは何かと考えたときに、共通目標を全員で持つということができていなかったと。山登りでたとえると、まずは、みんなでどの山に登るかを決めますよね。そして、頂上にたどり着くことが最終目標になります。

ーーなるほど。ゲーム作りでいうと、それがゲームの完成を意味するわけですね。

佐藤 僕は、頂上にたどり着いたときに、そこでどんな景色をいっしょに見るのかというのを考えることが大事だと思うんです。山登りでは、天候が不順になったり、雪崩などで予定していたルートが通れないなんてこともありますよね。そういうときでも、「頂上であの景色をいっしょに見よう」と最初に決めておけば、当初の予定と多少違っても、バラバラにならずに、みんなそれに向けて進んでいけます。会社の経営も同じで、“ユーザー満足度世界一のゲームスタジオになる”というひとつの目標があれば、たとえ困難なことがあってもブレずに進むことができると思っています。ただ、全員がその気持ちを持っていないと、途中で困難なことがあったときに、みんながバラバラになってしまい、はぐれてしまう人が出てきたりしてしまう。これまでの10年を振り返ってみると、個々のゲームに関しては、みんないいものを作り上げてくれたと思います。ただ、会社のビジョンに向かってつねに動けていたかというと、その意識が少し弱かったんじゃないかと思うんですよね。

--作品はキチンと仕上げていたけれど、目標に対する意識が足りなかったと。

佐藤 そうです。なので、みんなで共通目標を持つことを大事にしようと思っています。

--ほかに、社長に就任されてから取り組まれていることはございますか?

佐藤 自分たちの作っているゲームだけではなく、会社全体の動きに興味を持ってもらうということを大事にしていこうと思っています。そのために、月に1回、スタッフ全員を集めて、各プロジェクトの進捗状況や会社の取り組みなどを共有する会議を設けています。これまでも、年に1回、期の最初に報告会を開催してはいましたが、それを毎月行うようにしました。しかも、映像やスライドも必ず用意して、スタッフ全員が会社の現状をつねに把握できるようにしています。これまでは、自分たちが関わっているプロジェクトのことは把握できても、会社の状況やほかのプロジェクトがどうなっているのかというのは、なかなか見えていなかったんですよね。

--とくに忙しいと、そうなりがちですよね。

佐藤 しかも、当然ながら会社というのは、ゲームを作ること以外にも、いろいろな動きがあります。でも、そこに関わっている一部の人だけが知っている状況だったんですよ。そういったことも含めて、全部をスタッフに公開して、会社に興味を持ってもらうということを今後も継続していきたいです。あと、開発に関しては、稲葉(プロデューサーの稲葉敦志氏)を責任者として意思決定のスピードアップを図るなど、より効率化していますが、もうひとつ大きく体制を変更した点があります。6月からは裁量労働制に移行し、その上で土日祝日と22時以降の深夜勤務を原則禁止にしました。

--えっ、それはかなり思い切りましたね!

佐藤 とくに日曜は、セキュリティーカードをかざしても会社の中に入れないようにしたので、ナイショで働くこともできません(笑)。これまでの10年間、がむしゃらに働いてきましたが、それだと疲弊してしまいますからね。働くことはもちろん大事ですけど、自分の時間も大切で、それもあっての人生じゃないですか。ここは思い切らないと、いつまで経ってもこれまでと何も変わらないので、中途半端なことはせずにスパッと。こうなると当然、使える時間がこれまでよりも限られてきますから、いままでとは違うスタイルでゲームを作らないといけなくなってくると思うんですよ。そんななかで各々が創意工夫しながら、かつ心身ともに健康的に働ける環境を作っていけたらいいと思っています。

--プラチナゲームズをよりよく変えたいという、佐藤社長の気持ちが伝わってきますね。

佐藤 僕は、行動してから考えるタイプなので、いいと思ったことはすぐに直感的に実行していますね。当然失敗することもあるだろうし、読み違いもあるかもしれないけれど、とりあえずやってみて、うまくいかなかったらまた考えればいいやと。失敗から学ぶこともありますので、失敗を恐れずにいいと思ったことをどんどん取り入れていくことが大事だと思っています。

--まだ体制を変更してから日も浅いですし、効果が見えてくるには時間が必要ですからね。

佐藤 といっても、あまり悠長には考えていません。とにかくこれまでと同じだと会社は存続できないと思っていますので、できるだけ早く成果を出したいと思います。