放送には流れない特別な“オフ会”

 昨年と同様に開催された、コミュニティ座談会。このコミュニティ座談会とは、ふだん『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のコミュニティの盛り上げに尽力している一般のプレイヤーをスクウェア・エニックス本社に招き、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターが交流を行うという趣旨のもの。

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 ちょっと“特別感”が漂うこのイベントだが、海外のゲームイベント“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)”や“gamescom”では、コミュニティマネージャー(ユーザーグループの代表者)がメディアと同等の扱いを受け、インタビューを行うこともある。吉田氏に言わせれば、開発サイドとユーザーコミュニティとの交流は、海外ではごく当たり前のことなのだそうだ。

→2014年にフランスのコミュニティを取材した記事はコチラ

 日本でこうした施策があまり行われてこなかった理由に、プレイヤーとメーカーの対立の構図がある。日本での匿名コミュニティでは、プレイヤーとメーカーは敵対関係というイメージが強く、それを助長させたり、開発批判を扇動するような書き込みが記事としてまとめられたりする。ともすると、メーカーとパイプがあるようなコミュニティはプレイヤーの矛先になり、叩きに遭うリスクも発生する。実際、そうした匿名主体の攻撃が原因で、ゲームから去ってしまったコミュニティを吉田氏は見てきているらしい。

 しかし、この数年で文化の変化を感じているという。日本のコミュニティの進化を見据えた吉田氏の挑戦として、このコミュニティ座談会がある……と少し大げさに書いてみたが、現場は堅苦しい雰囲気などなく、吉田氏も「オフ会のつもりで楽しんでください」とコメントしていた。

『FFXIV』プレイヤーの代表が吉田P/Dと濃密トーク! コミュニティ座談会の模様をリポート_01

 今年参加したのは、昨年よりも少し多い20名。独自の視点で『FFXIV』を切り取り、Twitterやブログで情報を発信している人、はたまたスクリーンショットの加工で腕をふるう人、ゲームとしてピュアに攻略を楽しんでいる人など、それぞれのアプローチはさまざま。いずれも、その情報発信によって大きな影響を及ぼすプレイヤーばかりだ。

 なお、昨年と同様に今回の座談会はプレイヤーが主体であるため、メディアによる記事化は制限されている。吉田氏と交わされた質疑応答は、参加者自身が発信するというルールなので、“14時間生放送 コミュニティ座談会”などの検索ワードでWebを巡ってみるといいだろう。

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▲昨年はファミ通からパイッサのケーキを贈ったが、今年はちぎりパンを差し入れた。
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▲コミュニティチームの“モルボル”こと室内俊夫氏は、パンを写真に収めた後、正面からパクり!
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▲メインシナリオライターの石川夏子さんも座談会の現場に同席。一部の質問にも回答していた。
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▲昨年はひとりずつ自己紹介と質問を行っていたが、今回はあらかじめ質問を紙に書いて“吉田ボックス”に入れておく形式に変わったため、おのおのがゆっくり質問を考えることができた。
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▲参加者から贈られたタオル。成りあがり感がハンパない。

 今年も座談会終了後、有志の方に残っていただき、感想をうかがった。彼らのWebサイトやTwitterアカウントも合わせてチェックしてほしい。

次郎さん次郎@正宗
スクウェア・エニックスって大企業なので、システマティックにモノを作っていると思っていましたが、話をしていて意外と手探りで開発をしていることがわかりました。こうした実状をただ知るのと、実際に見聞きするのとでは意義が違いますよね。そうしたことが感じられたのがよかったです。

みよよさんはばたけ!リムサっ子
座談会の前にコミュニティどうしの自己紹介の時間があったのですが、そのおかげで座談会には集中できました。

もなかさんはばたけ!リムサっ子
今回初めて参加したのですが、スタジオで観覧中も開発の人が積極的にコミュニケーションを取ってくれて、開発側とプレイヤーの距離をなるべく縮めようとしていることを感じました。

みいなさんMoon Gravilty
昨年参加したのですが、まさか今年も呼んでもらえるとは思っていませんでした。今年は前回の経験もあって、とてもリラックスできました。

たけおさんめがねや!
去年は参加者自身の疑問を吉田さんにぶつけた感じだったけど、今回はプレイヤーの代表として、ここに来れなかった人たちの質問を預かって、吉田さんに聞くというスタイルができていた気がします。去年よりもコミュニケーションが取れている感触がありましたね。

あるひゃさんのほほん旅日記
去年の座談会は、いろいろな意味でテストケースだったと思うんです。今回、去年の参加者をある程度残したということで、今後も継続的な活動をしたいんだろうなという意思を感じました。参加者全員を入れ替えてしまうと、コミュニティ側が毎回緊張してしまって、蓄積がなくなってしまいますよね。コミュニティを支援する仕組みというものを続けていきたい、そんな狙いを感じました。

アグリさんアグリ
座談会といっても、一問一答というか、質疑応答に入っていってしまって、オフ会というよりはインタビューになりがちですね。本当はツッコミを入れたり、ひとつの議題をみんなで話し合ったりしたほうがいいと思うのですが、ひとりひとりの時間が限られているだけになかなか難しいと思いました。

もすぅちゃんさんFF14 もすぅちゃん日記☆ミ
この座談会って吉Pを討伐するものだと思っていましたけど、本当の敵はモルボルさんでした(笑)。

エリオさんERIONES(エリオネス)
去年も参加させていただいたのですが、自分たちが運営しているのはデータベースサイトという特性もあって、それまではみずから発信することはなかったんです。でも、座談会に呼ばれてから考えかたが変わって、コミュニティに参加するようになりました。

カフェさんERIONES(エリオネス)
私は“新生”からエリオネスをお手伝いしていて、もう3年が経ちます。今回参加してみて、開発の方から「いつも使ってます」という言葉をもらえたんです。ゲームがあっての僕たちなのに、こうした言葉をもらえるのは身にあまる思いです。

とろんべさんとろさんぽ
去年からの参加になります。ふだんのPLL放送日などは、使命感を持って情報を発信する側に立っていますが、今回ばかりは全国からコミュニティ代表者が集まるということで、オフ会のようでした。今後もこうした座談会が続いてくれるとうれしいですね。

最後に──
 昨年は座談会後も興奮さめやらずといった雰囲気だったが、今回はリラックスして座談会に臨んだ人が多め。自分たちの役割について、それぞれがよく考えている印象だった。これは、明らかにコミュニティの進歩だと思う。ゲームの楽しみかた、注目するポイントは人それぞれ。いろいろな視点から情報を発信し、ひとりでも多くの人にエオルゼアの魅力を伝えていってほしい。そうして座談会に新たな仲間が加わり、そこからコミュニティの輪が広がっていけば、それはそれはすばらしいことだ。