ソロアーティストデビューを果たす沼倉さんに直撃

 『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』タカオ役や『アイドルマスター』我那覇響役など、さまざまな作品で活躍する声優の沼倉愛美さん。アニメでの演技はもちろん、イベントやライブなどで見せる歌や、ダンスのパフォーマンスも人気で、アニメファン、ゲームファンの多くから注目を集めている声優のひとりだ。

 そんな彼女が、2016年10月より放送開始予定のテレビアニメ『魔法少女育成計画』オープニングテーマ『叫べ』で、ソロアーティストデビューすることを発表。同時に、“アニメロサマーライブ2016 刻-TOKI-”(以下、“アニサマ”)への出演も発表され、大きな話題を呼んだ。このソロアーティスト活動について、また、数日後に控える“アニサマ”出演への意気込みについて、ファミ通.comでインタビューを敢行。デビュー曲『叫べ』の制作秘話はもちろん、どのような想いでソロアーティストデビューを決意したのか、そして今後の展望などについて伺った。

声優・沼倉愛美さんにインタビュー 「自分の可能性に少し向き合ってみようかな、と思えた」_03

■沼倉愛美さん
4月15日生まれ。神奈川県出身。代表作は『アイドルマスター』(我那覇響役)、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』(タカオ役)、『アイカツ!』(藤堂ユリカ役)、『暗殺教室』(中村莉桜役)、『オーバーロード』(ナーベラル・ガンマ役)、『アルスラーン戦記 風塵乱舞』(アルフリード役)など多数。2016年10月より放送開始となる『魔法少女育成計画』では、オープニングテーマを歌うほか、リップル役を演じる。

■『叫べ』Music Clip

さまざまな要因が絡んで実現したアーティストデビュー

――まずはアーティストデビュー、おめでとうございます。
沼倉 ありがとうございます。

――待ってました!
沼倉 すごく個人的な発言になっていませんか?(笑)

――いやいや(笑)。みんなが待っていましたよ!
沼倉 正直、「いまさら?」という声だったり、「やらないものだと思っていました」といった声も聞きますけど。

――確かに、沼倉さんはアーティスト活動にはあまり興味がないのかな、とは思っていました。だからこそ、今回の発表にはビックリしました。
沼倉 私としては“いまだから”という感覚ですね。

――それは機が熟した、という意味でしょうか?
沼倉 いままではそれどころではなかった、と言いますか。そもそも自分にはソロ活動は向いていないと思っていたんです。でも“自分が思っている自分ができること”と、“人から見て私ができること、得意なこと”がちょっと違うんだな、ということがわかってきて。これまでは自分には向いていないと自分の中で決めつけていたんですけれど、まわりの人たちが「大丈夫だ」、「やれる」と言ってくれることを信じてみよう、と。そうやってサポートしてくださる人がいるのだとしたら、挑戦してみる価値はあるのかなと、気持ちが変わっていった感じですね。

――まわりの声に応えるというか。
沼倉 というのとは、また違う気もします。でも、自分の可能性を、向いていないと思って避けようとしていた意識に、少し向き合ってみようかなと思えたんですよね。本当に向いていないのかどうかを確かめたくなった、という感じです。だから、皆さんの言葉を信じようと思ったのも確かなんですけど、人から言われたからやるというよりは、自分で「やろう!」と、きちんと覚悟を決めて決心したものになります。
 
――決意したきっかけはここだった、というようなタイミングはありますか?
沼倉 明らかな事件だとか、出来事があったわけじゃないんです。ただ、そういう気持ちになったのは、去年の夏ごろですかね。別に何もない時期ですよね(笑)。

――じわじわ思っていたものが盛り上がってきたのか、それともあるとき、ふと思ったんですか?
沼倉 ふと、ですね。ふだんの会話の中で「やらないの?」と聞かれることは実際にあって、「そんな話ないよ」というやり取りは時折していました。そういう話をしながら、「たとえばソロデビューの話が本当に来たらどうなんだろう?」と考えたりもするのですが、「いや、向いていないな」とずっと思ってきたんです。それがどうして「向いてないな」から、「向いてないけどやってみようかな」になったのは、明確な理由がちょっとないかもしれなくて……。自分が自分に対して、「やってもいいんじゃないか?」と許せるだけの経験値を積んだからとか、年齢を重ねたからとか、いろいろなことが重なったからなのかなと思います。

――アーティストデビューが発表されてからの、周囲の反響はいかがでしたか?
沼倉 発表と同時にTwitterと、LINEの公式アカウントを用意していただけたので、反響を見ていたのですが、“CDを出します“ということよりも「アニサマに出るの!?」という反響のほうが大きかった気がしますね。「(アニサマで)何を歌うの!?」って。デビューと“アニサマ”への出演が同時に発表されたので、CDを出すことを知らないまま“アニサマ出演”を知った方も多かったようです。でも、プラスの意味での驚きを皆さんにすごく感じてもらえたのかなと思いました。

――Twitterなどの状況を見ていた限りでは、丸1日、沼倉さんの話題で持ち切りでしたよ。
沼倉 すごいですよね。トレンドのワードランキングに入っていたそうで。自分でトレンドに入っていることを見つけたときは、ちょっと震えましたね(笑)

――(笑)。ほかにも身近な人たちの反応はどうでしたか?
沼倉 発表されてから会った人には、会うたびに「やるんだねー」ということを言われましたね。皆さん、本当に情報が早いなーと思いました。

声優・沼倉愛美さんにインタビュー 「自分の可能性に少し向き合ってみようかな、と思えた」_01
声優・沼倉愛美さんにインタビュー 「自分の可能性に少し向き合ってみようかな、と思えた」_02

――1日話題をさらった沼倉さんのアーティストデビューですが、そのデビュー曲について伺えれば。タイトルが『叫べ』という楽曲ですが、どんな楽曲なのでしょうか?
沼倉 テレビアニメ『魔法少女育成計画』(以下、『まほいく』)のオープニング曲として作っていただいた楽曲です。最初からタイアップを前提に作られているので、すごく作品の世界観を表現した曲になっています。見た目のかわいさの裏にある激しさとか、ちょっとした残酷さみたいなものが描かれた曲ですね。アップテンポな楽曲なんですが、ストリングスが入っていて、美しさや悲しさ、寂しさというところも表現していたり。最初に聴いたときに、すごく心を揺さぶられる曲だなと感じたので、どんな歌詞を乗せるか、自分の中でものすごく大きな試練でしたね。曲の完成度がすごく高いです。

――なるほど。かなり作品に寄せた楽曲になっているんですね。
沼倉 そうですね。『まほいく』は絵がかわいいんですけど、ストーリーとのギャップがすごくある作品なんです。そのギャップをガツンと表現していると思います。

――先ほどのお話にもありましたが、ご自身で作詞もされているということですよね。デビュー曲を作詞するというのは、不安はなかったですか?
沼倉 …………不安しかなかったです(笑)

――(笑)。ちなみに、これまで作詞の経験というのは?
沼倉 1曲丸々ひとりで書いたのは、Tridentのソロ曲(※編註:『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』に出演する声優3人で結成されたユニット。沼倉さんが作詞した楽曲は『またあした』)だけですね。しかも、タイアップ楽曲であり、私自身として歌う曲でもあって。そこのバランスの取りかたなんてわからないし、漠然と「こういう風にしたいな」、「でも、こうしなければ」という、なんとなくの想像図はあるんですけど、そこにいく道筋をまったく知らないわけですよ。目的地に行く運転テクニックがないような状態と言いますか。ルートを検索する力も運転する力もない中、「本当にできるのかなぁ」という気持ちはすごく大きかったですね。

――詞を書き上げてみて、満足度はどうでしたか?
沼倉 完成してしまったら、「この曲はこういう曲なんだな」と自分の中では納まったので、よかったなと思いました。ただ、書いているあいだはやっぱり「これでいいのかな……」という気持ちがずっとありましたね。自分の中で作品とつながる部分が何かないかと探して探して……。“叫べ”という言葉が出てきたときには、ちょっとホッとしました。「ここは“叫べ”という言葉がいい」というのが、いちばんストンときた瞬間でしたね。

――歌詞を作詞されたときは、頭から順番に考えていかれたんですか?
沼倉 そうですね。今回は頭から考えました。そしたらですね、Aメロ、Bメロで全部出しきっちゃった感じになりまして(笑)。サビがいつまで経っても出てこなくて、すごく参りましたね。そこで知り合いの作詞をされている方に連絡を取って、「どういうやりかたをしていますか?」と聞いてみたりもして。物語を作って、頭から順に作るという人もいるし、ひとつ「ここだ!」というところをハメて、そこから肉付けしていくという人もいて、本当にさまざまでしたね。今回は、サビがいちばん難しかったですね、やっぱり。

――ご自身で作詞をされているからこそ、歌うときに気持ちが込めやすいとか、アクセントをつけやすいというのはありますか?
沼倉 「サビのノリがいちばん大事だ」とプロデューサーも言っていて、その“ノリ”というものが最初はわからなかったんです。私としては言いたいことを書いてるつもりでも、いざメロディーに乗せて歌ってみると、ちょっと勢いが足りないとか、間延びしてしまう、みたいなところがあって。サビに関しては何度かリテイクがかかって、もうちょっと文字数を増やしたほうがスピード感が出るんじゃないかとか、いろいろと調整をしました。

――なるほど。かなり苦労をされたということですね。
沼倉 そうですね……。初めて作詞をしたときにも思ったのですが、「もうやりたくないな」って(笑)。書いているときはそう思いながらやっていましたね。いまは本当に、「できてよかったな」と思います。

――タイトルはすぐに決まったんですか?
沼倉 最初は英語タイトルで、“Shout”だったんです。歌詞自体も、強めの言葉をあえて選んでいるので、タイトルまで強くしても大丈夫なのかな? という気持ちがあって。でも、「『叫べ』でいっちゃおう」という話をして。

――なるほど。また、沼倉さんはダンスなどのパフォーマンスも魅力のひとつだと思うのですが、今回の楽曲でもそういったものは見られるのでしょうか?
沼倉 今回、振付ダンスは一切ありません。自分でも何も考えていないです。だから、ある意味逃げ場がないんです(笑)。皆さんが抱いているイメージ通り、自分としても得意分野ではあるのかなという意識はありますが、そこで魅せるのではなく、本当に歌で魅せなくてはいけない、というところは挑戦かもしれないですね

――では、“アニサマ”で歌うときは、思うがままに歌うという感じですか。
沼倉 そうですね。「ここはこう」みたいなものもありませんし、ダンスのレッスンもないですから。ただリハーサルをやってみて、「あ、間が持たない!」と思ったら、ちょっと自分で考えるかもしれません(笑)。そこはぜひ、実際にご覧になって確かめてもらえればと思います。振りがあったら「あ、考えたんだな」って(笑)

――“アニサマ”のステージがさらに楽しみになりました(笑)。
沼倉 『叫べ』は、振付けらしい振付けが似合わないというか、そういう感じの曲じゃないんですよね。
宣伝すー 実際に1番だけ聴いてみてもらいましょうか。

――ぜひ、お願いします!

(楽曲試聴中)

――なるほど(笑)。
沼倉 これで踊ったら本当に死んじゃいますよ(笑)。レコーディングでも、3~4時間ずーっと、文字通り叫んでいるので、歌うという感覚じゃないんです。これで踊ったら、人間じゃなくなっちゃいます(笑)。

――(笑)。沼倉さんはアップテンポの曲でもすごく映えるイメージがありますが、ここまで強い感じというのはあまりなかったので、かなり振り切っている印象がありますね。
沼倉 私としては、曲は強いんですけど、歌っている私や歌詞は“弱い人の歌”にしようと思ったんです。『まほいく』には魔法少女たちがいっぱい出てきて、みんな魔法で戦っていて物理的に強いのですが、人として強い人がひとりもいなくて。そういう部分を曲で表現しようと思いました。歌っている私は、がんばって強がっているからこそ、ずっと叫んでいるという。

――なるほど。“力強い”というのとは違う激しさを感じたのですが、そういう表現から来る違いだったんですね。弱者の叫びであったり、悲痛な叫びであると。
沼倉 そうですね。本当に強かったら叫んだり、武装したりする必要がないじゃないですか。16人みんなの弱さが曲の中で混ざり合っている感じにしたくて、Aメロなどでは意識して矛盾した言葉を使っています。“愛という暗闇”とか。

――『叫べ』はPVもあるとのことで、どんな内容になっているのでしょう?
沼倉 この物量を1日で撮り切ったのはすごいな、というくらい、いろいろな場面やシチュエーションで撮らせていただきました。衣装が2パターンありまして、白い私と黒い私がせめぎ合うという内容になっています。“強さ”と“弱さ”や“表”と“裏”といった二面性を表現していて。しかも、それを絵としてすごくキレイに撮影してもらったので、映像美としても楽しめるものになっていると思います

――撮影時の雰囲気はいかがでしたか?
沼倉 すごく楽しかったですね。朝早くに集合して、クルマでみんなで移動して、プロデューサーが遅刻して(笑)。いろいろなことがありながら、終わった後はスタイリストさんやメイクさん、プロデューサーや監督とプチ打ち上げみたいなこともしました。あの日のビールはすごく美味しかったなー、みたいな(笑)。そういうひとつひとつの小さな思い出を積み重ねて、ソロ活動を行っていけるんだなということを、初めて実感したのが、そのときかもしれないですね。みんなで作っているんだということを、すごく実感した映像です。PV付きのCDも発売されますので、フルバージョンをぜひ観ていただきたいですね。

――ちなみに、これはどこかの屋内ですか?
沼倉 幕張のビル内です。高くて吹き抜けになっていて。いままでもPVを撮影したことはありましたが、振付があるようなものばかりだったので、どちらかというとイメージ映像みたいな面が強かったんですよね。でも、今回は自分がライブ感のある映像にしたいとすごく思ったんです。声は出していないのですが、撮影しているあいだはずっと叫んでいる感じだったので、翌日は首がめっちゃ筋肉痛になって、それもいい思い出になりました(笑)。

――また、カップリング曲についても伺えれば。
沼倉 カップリングは2曲あります。1枚目のCDに入れるものですから、やはりいろいろと違った面を表現できたらいいなと思っていて。『叫べ』が強さと激しさと、ちょっとダークな部分が強い曲なので、やさしさとか、穏やかさ、明るさみたいなものが入ってる曲がいいというお話をさせていただきました。ひとつはスローでやさしい曲になっています。もう1曲は、現時点で制作がそれほど進んでいないのですが、イメージとしてはノリのいい明るい曲を目指して作っています。

――制作の中でご自身の意見もけっこう出されている感じなんですね。
沼倉 そうですね。『叫べ』はタイアップ曲ということもあったので、曲のイメージに関してはほぼお任せしていたのですが、「カップリングは自由に作ろう」と言ってもらえたこともあり、いろいろと意見を出しました。明るいほうの曲は、1度デモのようなものが来たんですけど、「もうちょっとこうしたい」という自分のイメージをお伝えして、作り直していただいたり。当然、すべての意見が通るわけではないですけど、いろいろと相談させてもらっています。

――そのへんはやはり、ご自身のアーティスト活動だからこそ、自分のやりたいことも言っていこうと。
沼倉 それはありますね。やっぱりひとつぐらいは、私の趣味ど真ん中な曲を作りたいなという気持ちがすごくあったので、いつも自分が聴いている曲や、このアーティストさんが好きということをプロデューサーにまとめて送ったりしました。1度、スタッフさんたちとカラオケに行ったことがあって、そのときに、ぜんぜんそういうつもりではなかったんですけど、私がふだん歌っている曲を歌っていたら、「この雰囲気いいね」という話になって、そのイメージを取り入れてもらったりということもあって。だから、“素の私”と皆さんのイメージされている“表の私”みたいなものが、わりとはっきり見て取れる1枚になったらいいな、と思います。

――それは楽しみですね。
宣伝すー ちなみにスローテンポの曲はこれです。

(楽曲試聴中)

――ぜんぜん違いますね(笑)。
沼倉 ギャップが(笑)。『叫べ』はすごくゾワゾワするんで、もう少し心穏やかに聴ける曲にしたくて。カップリングの歌詞は私が書いているわけではないのですが、すごく共感しやすい歌詞になっています。

――これだけギャップのある2曲に加えて、もう1曲入るとなると、3曲まとめて聴くのが楽しみになりますね。
沼倉 いろいろ感情に揺さぶりをかけてくるので、「うわっ」となるかもしれないですけど(笑)。

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“アニサマ”への意気込みと今後の展望

――『叫べ』がオープニングとなっている、『まほいく』についても伺えれば。
沼倉 魔法少女に選ばれた女の子たちが16人登場します。魔法少女というと、「人を助けたい」という人が目指すもののように思いますが、この作品に関してはそうではなくて。スマホのゲームをきっかけに魔法少女に選ばれるので、ただゲームを楽しんでいただけの人など、いろいろな事情のキャラクターがいるんです。見た目はすごくかわいいのですが、その裏ではある思惑が動いていたり、どんどん魔法少女というキレイな存在から、人間的な醜い部分が見えたりする作品です。ギャップがすごくある作品なので、見逃してはいけないというか、目を離したら何が起こるかわからないような魅力的な作品だと思います。私はリップルというキャラクターを演じているのですが、彼女は見た目は忍者の姿をしていて、とてもキレイな女の子です。でも、ちょっとスレていて、不良というよりもヤンキーに近い精神の持ち主で(笑)。世の中や人に対して不信感や怒りを抱いているような人です。彼女は舌打ちをすごくするんですよ。1話の中で何回も舌打ちをするので、舌打ちで感情を表現しなきゃいけなかったりするんですけど、それがたいへんで。セリフより舌打ちのほうが多いような回があったらどうしようと、いまから不安です(笑)。ただ、物語が進むにつれて、彼女の中に何か変化が起きていくと思うので、その変化を丁寧に演じていけたらいいなと思っています。

――舌打ちで感情の表現って、うれしい舌打ちとかもあるのでしょうか……?
沼倉 うれしい舌打ちですか(笑)。彼女はもう、すべてが気に入らないみたいな感じなんですよ。だから、話しかけられれば、「めんどくせーな」の「チッ」、出会っただけでも「チッ」、「おはよう」と言われても「チッ」という感じで。

――ツンデレのような、恥ずかしい舌打ちみたいなものもありそうですね。
沼倉 一応、ツンデレと呼ばれることもあるんですが、それも気に入らないので「チッ」って(笑)。すべてが気に入らないみたいです。アフレコのときには「殺すつもりで舌打ちしてください」と言われました

――なるほど(笑)。この『まほいく』の主題歌『叫べ』を引っ提げて、“アニサマ”へ出演されるわけですが、いまのお気持ちは?
沼倉 このうえないチャンスだと思います。アーティスト活動の発表と同時に“アニサマ”への出演も発表していただいて、「こんなお膳立てがあるだろうか」という状況ですので、それなりのものを見せなければ、というプレッシャーもあります。また、『叫べ』をフルで聴いたことがある人がひとりもいないという状況で、自分がどれだけできるか、というのはすごく心配ですね

――確かに、そうですよね。
沼倉 まだ人前で1度も歌ったことのない歌ですが、やはり見てもらうからにはちょっとでも「おっ」と思ってもらいたくて、いま自分に何ができるのかをすごく考えています。でも、何度か“アニサマ”には出演させていただいていまして、ものすごく楽しいお祭りだと思っていますので、それを皆さんと共有できたら、とんでもない人生の自慢になるというか(笑)。

――自慢ですか(笑)。
沼倉 私、人生の中で、人に自慢できることがいくつかあるんです。まず、家にレコード大賞の記念の盾があること。護衛艦の艦長になれたこと。このふたつが私の人生の自慢なんですけど、初めて私の名前だけで人前で歌うという偉業を達成したのが“アニサマ”なんだ、と言えたら最高の自慢だと思うので、不安に負けずにがんばろうと思います。

――沼倉さんとしてはいろいろなステージを踏まれているので、場数的にはぜんぜんありますよね。それでも、ひとりでいきなりアニサマというのは、やはり不安がありますか?
沼倉 いままでは作品名を背負っていて、私個人というより、皆さんは作品を見にきていただいていたと思うんです。私個人を楽しみに見に来て「よかった」と思っていただくのは、すごく難しいことだと思うんですね。だから、挑んでいくしかないなって感じですかね。

――“アニサマ”に向けて、何か準備していることはありますか?
沼倉 あのですね、自分で書いておいて何なんですが、歌詞がちょっと覚えにくくて(笑)。気持ちが入り込みすぎちゃうと歌詞がパーっと飛んでっいっちゃうなと、すごく思うんです。ですから、そうなっても自然に出てくるぐらいしっかり染み込ませていきたいですね。なにせ人前で初めて歌う曲なんで。これまでは回を追うごとに染み込んでいくということが多かったので、「1発目でどれだけいけるかな?」というのが、大きな課題ですね。

――ちなみに、アーティストデビューとともにTwitterとLINE公式アカウントも始まりましたが、実際にやってみての感想は?
沼倉 これまでにも期間限定でTwitterをやったことがあったのですが、続けなかったのはそのときも自分が「向いてないな」と思ったからなんですよ。今回は公式という形で作っていただいているのですが、わりと自由にツイートさせてもらっています。始めたばかりというのもありますが、「向いてるな」という感覚があるかと言われれば、正直まだないですね(笑)。でも、LINE公式アカウントのほうは、声優のお友だちも登録してくれたそうで、その子が言っていたのは「いい意味で、すごく暇つぶしになる」と(笑)。そういう使いかたをしてもらえるなら本望だなと思いますね。

――LINE公式アカウントは、こちらの入れたコメントに対して、いろいろな反応が返ってくるので、本当に楽しいですよ。
沼倉 けっこういろいろなワードを入れていますからね。私が夜な夜な更新しているので、楽しんでもらえているなら、がんばれます!

――(笑)。沼倉さん自身が、自分の公式アカウントに話しかけたりといったことはされるんですか?
沼倉 システムがよくわかっていなかったときに、確認のためにすることはありましたね。時間帯によって、こういうことを言う、といったことも決められるんですけど、設定を間違えてしまうと何をしてもそれしか出なくなっちゃったりするので、最初は確かめながら慎重にやっていました。

――時間帯によって変わるコメントもあるんですね。ということは、みんながまだ見つけてないようなコメントも?
沼倉 皆さん、すごく熱心に探してくださるというか、すぐに見つけてくださっておもしろがってもらっているので、けっこう見つけられているんじゃないかと思います。私のほうでは、“このワードを何人の人が打った”という数字だけは見られるんですよ。それを見て「みんな、このワードが好きなんだな」と注目してみたりしていますね。いずれにしても、LINEのほうは私がブログも含めて自分で管理しているので、完全に私の気まぐれなんですよ。だから、「このワードがあるはず!」と思って入れてもなかったりといったことがぜんぜんあると思うので、ご了承いただければ(笑)。

――個人的には先日あった、台湾のお土産話がどんどんLINEで送られてくるのが、すごく楽しかったですね。
沼倉 せっかくリアルタイムで皆さんに送ることができるので、試しにやってみました。ほかにも、タイムラインなどもあるので、どうしようかなって迷っちゃうんですよね。それこそブログと、LINEと、Twitterと、どこで発信しようかな、と。始めてすぐの1週間は本当に忙しくて(笑)。どんな情報をどこで発信するのか、自分の中でルールを決めるのに時間がかかりました。現在もまだ定まってないところもありますが、いろいろなことを試していきたいと思っています。

――楽しみにしています! 沼倉さん的にアーティスト活動の中で、今後こういうことをしてみたいということはありますか?
沼倉 ライブはもちろんやってみたいですよね。ただ、こればかりは、たくさんの人が関わって進んでいくものなので、実際にどうなるかはわからないですけど。でも、もしソロライブをやれるのだったら、こういう演出を付けたいな、みたいなことは考えています。

――ほほう。差し支えなければ教えていただければ。
沼倉 渡辺直美さんみたいなことがしたいんですよ。渡辺直美さんって、よくカバーをされていますよね。歌ではなくて、踊りをカバーするというのをやってみたくて。あらかじめ歌を自分で録るのか、原曲を流させていただけるのか、自分が歌いながらなのかはわかりませんが、踊りというのは自分の中の武器のひとつではあると思っていますので、それを使って何かできたらいいなと思っています。

――踊りのカバーというのは、おもしろい試みですね。
沼倉 でも渡辺直美さんのようなものをやろうとすると、音源がレディ・ガガとかになってしまうので、スタッフさんたちがザワついてしまいそうですよね(笑)。

――(笑)。ちなみに『叫べ』では、リリースイベントなどは行われるのですか?
宣伝すー じつは、フリー観覧のイベントを東名阪でやろうかなと思っていまして。
沼倉 東名阪というのは、いま聞きました(笑)。

――えぇ!? いま質問しておいてよかったですね(笑)。では最後に、読者の皆さんにひと言メッセージをお願いします。
沼倉 初めてのことばかりで、自分の力だけでは作れないものや、手の届かないものってたくさんあると思うんですけれども、楽曲にしても映像にしても、すごく優秀なスタッフさんたちに恵まれていて、クオリティーがすごく高いものになっていると思います。実際に皆さんにお会いして、歌を届けられるようにがんばっていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

声優・沼倉愛美さんにインタビュー 「自分の可能性に少し向き合ってみようかな、と思えた」_04
声優・沼倉愛美さんにインタビュー 「自分の可能性に少し向き合ってみようかな、と思えた」_05
声優・沼倉愛美さんにインタビュー 「自分の可能性に少し向き合ってみようかな、と思えた」_09

■デビューシングル『叫べ』
発売日:11月2日発売予定
価格:【初回限定盤】1800円[税抜]/【通常盤】1300円[税抜]
※初回限定盤には『叫べ』Music Clipとメイキングを収録したDVD付き
発売元/販売元:フライングドッグ/JVCケンウッドビクターエンタテインメント
収録曲:01.叫べ/02.言の葉/03.タイトル未定(他各曲のInstrumental収録)

■リリース記念フリーイベント開催決定!
・2016年11月6日(日)14時 東京:東京ドームシティ ラクーアガーデンステージ
・2016年11月12日(土)13時 愛知:名古屋近鉄パッセ 屋上イベントスペース
・2016年11月13日(日)13時 大阪:あべのキューズモール 3Fスカイコート
【内容】ミニライブ&握手会