ターン制ストラテジーの金字塔、一体どんなゲームなのか?

 2016年10月21日(金)、2KならびにFiraxis Gamesより全世界同時発売となるPC用ターン制ストラテジーゲーム『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』。『シヴィライゼーション』シリーズは、1991年に発売されたPC版初代作品から今年で25周年を迎え、シリーズ累計3400万本以上の売り上げを誇る一大人気シリーズであり、その最新作『VI』には全世界から注目が集まっている。

 今回はそんな注目タイトルを、ハンズオン(開発スタッフにその場で解説をしてもらえる実機プレイ)でいち早く体験することができた。
 今回のハンズオンでプレイできたのは150ターンまで、なおかつ英語版ではあったが、それらがまったく気にならないほどに早速のめりこんで楽しめたその内容と、実際に体験できた『VI』からの新要素について紹介していこう。

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』プレイリポート テンポよく、しかし奥深さも健在!_01
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』プレイリポート テンポよく、しかし奥深さも健在!_02

 まずはそもそも、『シヴィライゼーション』シリーズがどんなゲームなのかを簡単に解説しておきたい。
 『シヴィライゼーション』はターン制ストラテジーということで、ゲームの内容はさまざまな個性や特徴を持つ文明のリーダー(エジプト文明のクレオパトラ、イギリス文明のエリザベス女王など)の中からひとりを使用リーダーとして選び、CPUやほかプレイヤーが選んだ別の文明と、自分の文明圏の発展や、兵士ユニットを揃えての軍事力を競い合うゲームとなっている。

 しかし『シヴィライゼーション』は、「ひたすら軍隊を作ってほかの文明を滅ぼせば勝ち」というウォーシミュレーションではなく、ほかの文明との外交や、スパイを送り込んでの諜報活動などが非常に細かにできるようになっている。また戦争で滅ぼしたりせずとも、文化面や科学面などで発展を遂げれば勝者になれたりと、勝ち筋が多様に用意されているため、プレイスタイルの幅が非常に広い。

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▲古代から現代まで文明を推移させていくと、最終的には宇宙開発への着手にすら到達する。単なるウォーゲームにはない、自分の文明を発展させる達成感もまたこのシリーズの魅力だ。

 また、CPUの文明リーダーたちは、“海辺で兵士が強化される”などのそれぞれの特殊能力に加え、“アジェンダ”という“強い軍隊を持っている国が好き”、“自国より多くの偉人が生まれている国が嫌い”などといった、行動指針に関わる設定を持っている。これらを把握し、また隠されたアジェンダを外交や諜報で暴くことで、協力関係を築いたり別の文明への抑え役にしたりと、ほかの文明をうまく制御することも可能だ。
 このアジェンダもあって、対人戦のみならずCPUと競い合うシングルプレイが非常におもしろく、プレイのたびに近隣のリーダーが変わることで、まったく異なるプレイ感覚を楽しむことができる。どんなリーダーたちが登場するのかは別の記事で紹介しているので、興味が湧いたらぜひ確認してみてほしい。

■六角形ヘクスのマスが連なるワールドマップはとてつもなく広大で、プレイするたびにさまざまな文明の都市国家が配置される。他の文明や都市とどう関わるか、選択肢は無限に近い。

■蛮族や他文明に武力で対処したり、交易路を切り開いたりと、采配を考える時間はいくらあっても足りない。全世界で愛され続ける、ストラテジーにおける一つの究極到達点ともいえるシリーズだ。

敷居が高いと思いきや? 驚くほどのテンポの良さ!

 このように、戦争だけでは終わらないストラテジーとしての魅力が詰まった『シヴィライゼーション』シリーズだが、ここまで聞いて「すごく難しそう……」と思った人も多いかと思う。
 実際、これまでのシリーズ作品をプレイしてみると、考えるべきことが非常に多く、またじっくりと腰を据えて時間をかけてプレイするタイトルなので、ストラテジーゲーム初心者にはオススメしにくい面も確かにあった。

 だが、最新作『VI』を実際にプレイしてみると、そんな不安は数ターンプレイしてみた時点で吹き飛んだ。
 まずゲーム画面を一目見てもらうと分かる通り、従来のシリーズ作品と比べてグラフィックや色彩が全体的に丸みを帯びたものとなっており、ユニットや建造物の特徴も一目で分かりやすい。
 また、やることが多いゲームではあるが、未行動のユニットや采配を出していない項目などが残っていると、つぎのターンに進むためのボタンがそれらの項目へジャンプするボタンに変化するため、未決定のままターンを送ってしまうことがないのも、恥ずかしながらこうしたゲームでミスを連発しがちな筆者には嬉しい仕様だった。
 このように『VI』では、まず見た目やユーザーインターフェースからして、ストラテジーゲーム初心者でもプレイしやすい状態を生み出している。

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▲グラフィックの美麗さと分かりやすさは見ての通り。またこの画面では、右下のボタンが「!」になっており、まだ命令を出していないユニットがいることを伝えてくれている。

 そして実際にプレイを開始してみてつぎに気付いたのは、ユニットの生産にかかるターン数と、文明内の技術を発展させる項目を選び、規定ターン後にそれが完成するとその先にあるさらなる発展項目が選択できるようになるという“技術ツリー”の規定ターン数、その両方が思った以上に短かった点だ。

 『シヴィライゼーション』シリーズでは、基本的には都市ひとつにつき一枠の生産能力があり、兵士や労働者、さらには貿易商人や攻城兵器まで、あらゆるユニットを生み出すことができる。ただしユニットができるまでには既定のターン数の経過が必要で、ものによっては10ターン以上かかるのもざらなため、どのユニットを生産するかでかなり頭を悩ませる。
 また、技術ツリーでも同じく10ターンどころか20ターン以上かかる項目もあり、ツリーの先にあるお目当ての技術にたどり着くまでに数十ターン我慢して待ち続けることもふつうだった。

 しかし『VI』を実際にプレイしてみると、ユニット生産にかかるターン数はさほど長くなく、またツリーについては鉄工技術や造船技術など技術全般を扱う“技術ツリー”に加え、宗教や政治、経済などの社会的な発展項目が並ぶもうひとつの“社会制度ツリー”が用意されており、このふたつのツリーそれぞれで項目を選び、同時進行で発展を進めることができる。
 このふたつのツリーに分化している点が『VI』では大きな変化をもたらしており、さまざまな発展が矢継ぎ早に開放され、文明内でできることや、生産できるユニットの種類が次々と増えていき、これまでにないテンポのよさで文明を発展させることができた。

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▲青の技術ツリーと紫の社会制度ツリー、両方が同時進行できることで、やれることが次々増えていくのが非常に気持ちいい。項目数も2つのツリーで合わせると前作より50%ほど増えているとのことで、やり込みプレイヤーにも嬉しいところ。

 また、社会制度ツリーの項目の中にある“政府”の項目にもおもしろい新要素が含まれていた。
 これらの項目は“軍事政府”などのような政府の形態を表しており、項目が開放されると、自文明にボーナスを与えるカードスロットが設置される。このカードスロットには“軍事”、“経済”“外交”と、特殊カードやほかのスロット用カードが入れられる“ワイルドカード”の4種類があり、軍事寄りの政府なら軍事スロットが多いが外交スロットがなく、平和主義の政府なら軍事スロットがなく外交スロットが多いなどといった特徴がある。

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▲各政治形態のうち、赤が軍事、黄色が経済、紫が外交、緑がワイルドカードのスロット。同じ軍事用のカードでも「兵士すべてを少し強化」「限定状況で特定の兵士を大幅強化」などさまざまな種類があり、ここでも選択肢が非常に多い。

 文明の発展に合わせ、これらのスロットに入れることができるカードが増えていき、自文明をカードゲーム感覚で簡単にカスタマイズできる。このシステムが非常に分かりやすく、社会制度ツリーをどう進めるかの指針にもなる。
 またこの政府形態を変える機会はかなり多く、頻繁にカスタマイズを入れ替えられるため(所持金を消費すればいつでも変更可能)、ツリーやユニットと同じくテンポの良さの生成と、何もできないターンが続くマンネリ化の防止にひと役買っている。

 また、テンポに関しては、前作までは“Worker”(労働者)だった畑などの各種施設を作り出すユニットが“Bilder”という名称に変更され、既定の回数建設を行なうと消滅するようになった点も影響していた。
 前作までの“Worker”は施設建造に数ターンをかけていたが、“Bilder”はほとんどの施設を1ターン程度で即座に作ってくれる。ユニット生産にかかるターンが全体的に短縮されたのに合わせて、自分好みの都市国家がより早く、より手軽に作れるようになったと言える。

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▲早い段階で確保したい畑などの資源生産マスを、Builderのおかげであっという間に準備できる。後述する“ディストリクト”と合わせることで、思うがままの都市国家を素早く形成できるのがまた楽しい。

新要素“ディストリクト”も体験! 地形が文明発展の鍵になる?

 こうして序盤からテンポよくゲームを進めつつ、全文明に無差別攻撃をしかけてくる“蛮族”に対処しながらツリー発展とユニットの生産、そして都市周辺の開拓や新たな街の建設を進めていくうちに、いよいよ『VI』の新要素のひとつ“ディストリクト”が建設可能になった。
 “ディストリクト”とは、ユニットなどと同じく各都市の生産枠を使い、規定ターンをかけて建設する、いわばその都市に追加の能力を与えるブースト施設のようなもの。科学の発展にボーナスを与える“Campus”、宗教の発展にボーナスを与える“Holy Site”など、さまざまな種類が存在する。

■都市のそばに娯楽のディストリクト“Street Carnival”を設置。これでこの都市に、強いては文明全体にボーナス効果が発生した。

 このディストリクトは、指定した都市の近隣マスに配置することになるが、この配置するマスが満たしている条件によっては、そのボーナス効果が増加するというのが大きな特徴だ。
 たとえば先ほど触れた科学ディストリクト“Campus”は、山のマスが隣接しているマスに建設することでボーナス効果が増加する。また“Holy Site”は“神聖な象徴”、たとえば流れる川などといった宗教発祥にもかかわるものがあるマスの隣に建設すると、ボーナスが増加する。

 筆者はハンズオンプレイ時、最初はとくにディストリクトを意識せずに都市をつぎつぎと増やしていたが、山すそに作った都市で“Campus”を建設したところ、偶然にも山のマスふたつと隣接したマスがあり、そこに建設することで3倍のボーナス効果を生み出すことに成功した。
 さらに、このとき選択していたリーダー“北条時宗”は、ディストリクトを隣接して建てることでさらにボーナス効果を増加させるという特殊能力を持っており、この“Campus”の効果をさらに増加させることも可能だった。このようにリーダーの特性や、ディストリクトにかかるボーナスを考えると、都市をどこに作るか、そこからどうディストリクトを増やしていくか、じっくり考えるのがまた非常に楽しくなっていった。

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▲都市周辺にディストリクトをどう配置するかで、その都市や文明全体の方向性を自分好みにカスタマイズできる。さらに地形効果の最高効率を求めるもよし、美しい都市国家の景観にこだわるもよし。

 またディストリクトの中には、砂漠にしか建てられないピラミッドなどの制限がきびしいが効果が大きいものや、“Harbor”(港)のように建設すれば前作までは海岸線にしか配置できなかった“Navy”(海軍)が近隣陸地に建設できるようになるなど、特定施設の建設条件に密接に関わるものも存在する。これ単体でも、技術ツリーや社会制度ツリーに匹敵する計画性、発展性を有するコンテンツだ。
 しかもそれを、都市ひとつごとに行なうことができるということで、つぎつぎと都市を作っていく本作では、とことんこだわるとなるとどれだけの選択肢が生まれるのか、想像もつかない。さらにプレイするごとに異なる地形を前にしてこれらを考えられるわけだから、どれだけ奥深く飽きがこない要素かは、もはや言うまでもないだろう。

テンポもボリュームも大幅アップ、もっとプレイしたいと思わせる中毒性は健在!

 こうしてディストリクトをどう配置するか悩みつつ、さらにほかの文明のリーダーたちが外洋に出始めたことでそれらとの外交の機会も増えてきて、さあこれからいよいよ中世・近代文明に向けて発展開始……と思ったあたりで、今回のハンズオンプレイは制限である150ターンを迎え、惜しくも終了となってしまった。
 今回のプレイでは序盤、こちらの偵察に来た蛮族の斥候をうっかり倒しきれずに本拠地(しかもものすごく近くにふたつもあった)に帰還させてしまい、大量の兵士が攻め込んできて対処にターンをかなり使ってしまったこともあって、思ったほど文明を発展できなかったのが悔やまれる。ぜひ読者の皆さんにも“蛮族の斥候は逃がすな”と強く覚えておいてほしい……。とくに『シヴィライゼーション』シリーズで、初心者が最初につまづくのがこの点だったりもするのだ。

 プレイを終えてみると、まず心に浮かんだのは「またプレイしたい!」というリピート願望。やること、考えることが非常に多いゲーム内容ではあるが、ひとつの都市が持つ生産枠がそれぞれひとつずつ、ツリーの進展にもなんだかんだでターン数が必要と、各ターンでやるべきことは意外と少なく、だからこそ「あの辺のターンでこっちにリソースを割いていれば……!」などと、プレイの反省点も非常に分かりやすいため、今度はこうしたいという願望がプレイするたびに増えていくのが『シヴィライゼーション』シリーズの特徴にして魅力なのだ。
 さらに『VI』ではディストリクトによる、地形をも考慮した都市開発がそこに加わり、ますます「ああしてみたい」、「こうしてみたい」という願望が増えていく印象だ。さらにディストリクトだけでなく、特定の地点のマスには元からボーナス効果が付与されている場合もあり、これらの地形による恩恵は本当に頭を悩ませてくれる。

 また、こうした試行錯誤への意欲をさらに掻き立ててくれる要素として、今作では“Eureka”(ひらめき)という、特定の行動をプレイヤーが取ることで以降文明に付与されるボーナス要素が用意されていたのも印象的だった。
 たとえば海沿いの開発を進めていると、海に関する“Eureka”が発生し、それを活用して海での発展を進めればさらに海の“Eureka”が追加で発生していったりと、都市国家の配置やユニット、ツリーの開発だけでなく、プレイスタイル自体でも文明に方向性を与えられるわけだ。このおかげでいろいろなプレイスタイルを試してみたくなるのは当然の理で、つぎのプレイではどんなことをしてみようかと、ワクワクしてくる気持ちが抑えがたい。

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▲ストラテジーながら、戦争は文明の発展を競い合う一面でしかなく、非常に自由かつ選択肢が多いというシリーズの魅力は『VI』でもしっかりと健在だった。

 こうしたくり返しプレイしたくなるゲーム性を、インターフェースやグラフィック、さらにテンポが非常によくなった進行などといったさまざまな進化によって、『VI』ではこれまでのディープなシリーズファンのみならず、シリーズに触れたことがないストラテジー初心者であっても遊びやすく、非常に敷居が低くなっているのも好印象だった。
 こうしたインターフェースの整備に加え、そもそもリアルタイム進行ではなくターン制ストラテジーということで、じっくり時間をかけてプレイできるというのも、初心者にオススメできる点だ。『シヴィライゼーション』シリーズに興味を持ったという方には、入門用としても太鼓判を押したい。

 以上のように、従来のシリーズ作品の魅力をしっかりと引き継ぎつつ、初心者でも遊びやすいほどに分かりやすい整備と、さらに簡略化・明確化しつつもボリュームや戦略性は増すという、さまざまな新要素も盛り込んだ、全世界の期待を裏切らない作品に仕上がっていた『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』。
 10月の発売までまだ時間もあり、続報だけでは待ちきれないという人にはぜひ、豊富なラインアップを誇る『シヴィライゼーション』のシリーズ作品をプレイするなどして、予習しつつお待ちいただければ幸いだ。

 ただしシリーズファンなら周知の通り、「もうちょっとプレイしたいと思っていたらいつの間にか朝になっていた」なんてことも珍しくないシリーズなので、これから初プレイという方は、ハマりすぎにはなにとぞご注意を……。