両タイトルで楽しめることの違いを解説

 2016年10月13日発売予定の、プレイステーション4専用VRシステム“プレイステーション VR(以下、PS VR)”。今年、SEGA feat. HATSUNE MIKU Projectから、このPS VR対応のゲームが2作登場する。

 ひとつは、2016年8月25日発売予定の『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- X HD』。同作においては、ソフト発売後に提供予定のアップデートを適用することで、“ライブエディットモード”で作成したエディットデータのライブ鑑賞を、PS VRを用いて行えるようになる。

 もうひとつは、PS VR発売と同時(つまり10月13日)にダウンロード販売される『初音ミク VRフューチャーライブ』。こちらはPS VR専用のコンテンツで、VRならではのライブを楽しむことができる。

 本記事では、ライターのウワーマンによる、両タイトルのプレイインプレッションをお届け。それぞれのタイトルで、PS VRでどんなことが楽しめるのかを紹介しよう。まずは『初音ミク VRフューチャーライブ』のインプレッションから!

『初音ミク VRフューチャーライブ』この一体感はまさに本物

 まずは、『初音ミク VRフューチャーライブ』(以下、『VRフューチャーライブ』)のインプレッションからお届けしよう。本作についてはすでにプレイリポートが上がっているので、そちらを読んだことがあればササッと下へスクロールしてもかまわないと思われる。ただ、書き手は異なるため、読めば少しくらいは新たな発見があるかもしれない、と未練がましく言っておく。

 さて。今回のメディア用体験会でプレイすることができたのは、先日行われたスペシャル体験会と同じ試遊版。楽曲も同様に『Weekender Girl』(アーティスト:kz(livetune)×八王子P)となっていた。とは言え筆者的にはプレイステーション VRも本作も初体験なので、大好きなこの歌とダンスが見られて、むしろラッキーというところだ。

 ゲームを始める前までは、周囲に大勢のメディアの方もいるし、ちょっと、いやかなり照れくさい感じだったのだが、PS VRとヘッドホンを装着した途端に、そこはライブ会場へと変貌。気づいたら異世界召喚ではないけれど、いつの間にか自分がライブ会場に立っていたではないか!? まあ、いつの間にかっていう部分は、PS VRもヘッドホンもセガゲームスの人に装着してもらったせいかもしれない。

 さて、本作では↑↓←→ボタンでライブを見る際の視点を任意に変更可能。△ボタンで上方と地上の切り替えを行うことができた。ミクさんの目の前の視点では、「案外小さいんだな(身長が)」と彼女のスケール感を改めて認識できて地味に感動してしまった。上方からの視点は、ヘタをしたら足がすくむんじゃないかと思えるほど。珍しい視点からの眺めもよかったが、途中でミクさんがステージ演出で高い位置に移動してきたため、フォローするには必要不可欠なものであった。

『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- X HD』と『初音ミク VRフューチャーライブ』を、PS VR発売に先駆けてプレイ! それぞれの違いとは_01
▲セガゲームスの大坪鉄弥ディレクターによるプレイの様子。この画面から予想できるくらい、目の前にミクさんがいる! ……と想像してみてほしい。
『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- X HD』と『初音ミク VRフューチャーライブ』を、PS VR発売に先駆けてプレイ! それぞれの違いとは_02
▲上方席でミクさんを見ている様子。なお、上方席の手すり・足場のグラフィックは、表示オン/オフが可能。浮遊感を楽しみたい人はオフにしてみるといいだろう。足場がないと恐怖を感じる人は、オンにして楽しもう。

 ミクさんが現実にそこにいるかのように感じ、錯覚したのは、右へ左へとカメラを動かしまくって遊んでいたときだ。ミクさんを見失ってキョロキョロしてしまった際、彼女が後方でしっかりとパフォーマンスをしていて、「おお、そこにいたか!」と思った瞬間、唐突にゲームであることやVRであることを忘れて、彼女の存在をリアルに錯覚してしまった。なぜなら、取材対象を見失ってヤバイと不安になり、見つけてホッとするという記者ならではの気分を味わってしまったから。これにはひとり唖然としてしまった。ゲームとリアルを混同するというのは、まさにこのことか。

 そういえば、ミクさんが小さく見えるかなり後ろからの視点もあり、「こんな視点、必要なの?」と考えてしまった。もしかすると、いい席が取れなかった気分を味わうためかなとも思っていたら、セガゲームスの人が「開発チームはいつもここから見ています」とひと言。ああ、開発者ロールプレイで、後方からステージを眺めるのも悪くないと思い直した。もちろん、視点の位置によって聴こえる音響も変化するので、そういった意味では会場のあらゆる場所でライブ体験できるというのはすばらしいことである。

 会場からの視点で思い出したが、本作には自分と同じようにライブを見ている観客が大勢いる。彼らの存在が、臨場感をいやが上にも盛り上げているのは間違いない。サイリウム(コントローラ/プレイステーション Move)を振れという指示を筆者は途中から見ていなかった(ほかのことに夢中で目に入らなかった説)ので、観客の見よう見真似で振っていたのだが、サイリウムを振るたびに会場との一体感が増して、どんどんライブにのめり込んでいく自分に驚いた。

 正直に言うと、最初は「振るだけなの?」とも思っていた。プレイしていない多くの人もそう思っている可能性もある。しかし、実際にいっしょに振るだけで、周囲の観客に合わせて動かしているだけで、だんだん会場と一体になっていく気分になるのだから不思議なもの。気づくと一心不乱にサイリウムを振っている自分がいて、ちょっと思い出し笑いをしてしまった。昔、ファミ通の元同僚たちとシナジーというヘヴィメタルバンドのライブにいったのだが、あまり好きではなかったので周りに合わせてジャンプしていただけだった。しかし、気づくと汗だくになりながら拳を振り上げて汗を流していたことを思い出してしまったからだ。実際に体を動かして遊ぶのと想像するのでは、こうも違うのかと改めて思った次第。

 なお、うまく会場を盛り上げることができればモジュールチェンジなどもあるようだったが、自分のプレイでは無念なことに発生せず。恐らく“パンジー”に着替えると思うので、つぎの機会があれば間近で見てみたいものである。

 たった1曲、1回遊んだだけでVRのおもしろさや可能性をこんなにも感じられるとは、自分でも大いにビックリ。だが、困ったことにこれをどう伝えればいいのか皆目見当が付かない。よく映画とかでも、「これは映画館で見ないと楽しさがわからない」とか言うけれど、本作もまったく同様のパターン。PS VR自体に触れるのも初体験だったせいか、VRに必要以上に感化されている可能性もあるけれど、ぜひともどこかで1度『VRフューチャーライブ』を遊んでみてほしい。そうおすすめしたくなるくらいの体験は、確実にできたと断言できる。