東京2016年9月30日~10月12日、大阪2016年11月11日~11月16日に上演される『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』。カプコンの人気サバイバルホラーゲーム『バイオハザード』が原作となり、“人類を滅亡へと向かわせる「ウイルス=奴ら」との壮絶な戦い”というゲーム原作のモチーフを、ミュージカルとして大胆に作り上げられる。
 本稿は、主演の柚希礼音さん、脚本・演出のG2氏、ロブロ役を演じる平間壮一さん、監修のCAPCOM小林裕幸氏へのインタビューをお届けする。

音楽とゾンビの意外な関係性とは? 『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』インタビュー _02
▲左から、柚希礼音さん(文中は柚希)、G2氏、平間壮一さん(文中は平間)、CAPCOM 小林裕幸氏(文中は小林)。

――今回の制作発表会を拝見させていただいて、「新しい『バイオザード』だな」と強く感じました。この『ミュージカル バイオハザード』が生まれるきっかけや経緯を、まずは小林さんの方から伺えますでしょうか。

小林 柚希さんで『バイオハザード』作品をやりたいということで、企画が始動しました。

――柚希さんを起用するというというのは、最初から決定していたのですね。

小林 そうですね。アニメーション映画やハリウッド映画になり、いろいろ映像化している中で、ミュージカル化はしていないなと思いまして。新しいエンターテインメントができるんじゃないかなと。

――柚希さんが宝塚卒業後の初主演ということ、さらに『バイオハザード』のミュージカル化といろいろな意外性がありびっくりしました。G2さんがホラー作品を演出手掛けるというところもすごく珍しいことだと思いますが、出演のお話をいただいたときは、いかがだったのでしょうか?

音楽とゾンビの意外な関係性とは? 『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』インタビュー _06

柚希 宝塚卒業後に何をしたいのかと話し合っていたところ、“かっこよくてヒーローのようなヒロイン”というキャラクター像が挙がりました。ヒロインは守られることが多いので、女性だけどアグレッシブにいろいろな敵と戦っている女性像を考えていたところ、『バイオハザード』がぴったりだなと。でも、絶対無理だろうなという感じだったのですが、まさかオファーをいただけることになり、本当に幸せです。オリジナルのミュージカル作品ということで、単にゲームや映画のストーリーをなぞるだけではなく、オリジナルのストーリーでミュージカルのよさも出す……“ミュージカルという形でやる意味”をG2さんがものすごく考えてくださっていて、私自身とても楽しみな作品になってます。

――G2さんはいかがでしょうか。

G2 会見でも申し上げたのですが、ホラーに苦手意識があり、いままで触れずに来たものが短時間のうちにどっと入ってきました。でも、「人生の中でそういう経験は本当にあるんだなあ」というのが今回のひとつの大きな経験になりつつありますね。いままで触れてこなかった(ホラー)ものを自分の中に大量摂取したおかげで、自分の中に化学反応を起こせました。その勢いをミュージカル上演までもっていきたいですね。そういう意味では、いままで触れてこなかったホラーをやっていることが自分中でのプラスにはなっているとは思います。

――なるほど。ではG2さんのファンの方でも見たことのない演出が取り入れられているということですね?

G2 そうですね。ミュージカルでは、「ものすごく過酷な状況に対して、ひたむきに頑張る、あきらめない」という人間の側面を描きたいと思っています。そしてもうひとつは、人間は生きているだけですごく大変なことをやっているわけですが、人間は妙に知性ができあがっているので、ほかの動物が戦わなくていいようなものと戦ってると思うんです。だから、そういう生きていることの不思議も含めて、『バイオハザード』という大きな枠をお借りしてやりたいなと思っています。僕の芝居をずっと見てきてくれた方は、今回は毛色が違うなあと感じるかと。でも、映画は全部拝見しましたし関連作品もすべて見たのですが、ゲームだけはまだできていないんですよね(笑)。ゲームファンの方に「これは違うよ!」と言われないよう、いろいろ教えていただきながら頑張りたいと思います。

――平間さんにお聞きしたいのですが、先ほど“強いヒロイン”というお話がありましたけど、その強いヒロインと共演するうえでどのように演じようだとかは、すでに考えていらっしゃるのでしょうか?

平間 いまはまだ分からないですが、稽古期間も十分あるので、ゆっくり柚希さんが作り上げる“リサ”という人物を見て、その中で自分が好きだと思える部分がどこなのか考えていこうかなと思っています。

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――小林さんから先ほど伺ったのですが、平間さんはすごく『バイオハザード』がお好きなんですよね?

平間 はい! いまもプレイしています。弾切れしない弾倉を使ったりとか……

柚希 裏技ですか?

G2 何かを取るんですか?

平間 『バイオハザード 6』では、弾切れしないスキル(弾数無限スキル)を付けて、結構やり込んでいましたね。

柚希 すごーい!

――ではミュージカル出演陣の中でも、ゲームを熟知した役者になりますね。

平間 はい、頑張って戦いたいと思います!

――ご自身がすごくやり込んでいるゲームの世界に、自分が出演するお気持ちはいかがでしょうか。

平間 すごくうれしいですね。なんだか、自分のアニメを作ってもらったみたいな感覚です。

――逆に平間さんや柚希さんにインスパイアされて、ゲームに登場することだって考えられますね。

柚希 それもうれしいですね。今回、『バイオハザード』でミュージカルをすると発表したら、『バイオハザード』ファンの方が沢山話しかけてきてくださって。ゲームファンの方って、自分が思っていたよりも沢山周りにいるんだなと実感しました。

――では3月の発表時には、かなり大きなリアクションがあったのですか?

柚希 そうですね。「絶対ゲームをプレイしないと、作品の世界観がわからない」と沢山言われ、ゲームも少しだけプレイしました。「絶対できない!」と内心思いながらも、やっぱり実際にプレイすることによっていろいろなことが分ってきましたね。いまはまだ勉強中です。

――ミュージカルということで、当然歌とダンスも入ってきますが、『バイオハザード』でどういったものが表現されていくのか、ファンとしてはとても気になる所です。ぜひお話ししていただける範囲でかまいませんのでどういったものになっていくのか教えていただけますでしょうか?

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G2 いまの質問は、自分自身にした質問でもあります。僕自身も、「『バイオハザード』でミュージカル、というお題を頂戴したけど、一体どーすんだよ」って(笑)。

一同 (笑)。

G2 本当にそういう初期の段階からのスタートでして……(笑)。そこでいろいろと考えたり調べていたら、有名なゾンビサバイバルマニュアルを書いた人曰く、“ゾンビは音に敏感”だということを知りました。音に敏感だということは、音楽も関係があるんじゃないかと。そのことを知れたときはすごくうれしかったですね。ですので本作では、音楽と人間との関係、音楽とゾンビとの関係というひとつの関係性を作ることによって構築されていきます。

――テーマは“歌”でしが、これはどう物語と絡んでくるのでしょうか?

柚希 ただ単に、ミュージカルだから歌を歌うのではなく、“ゾンビに対して歌う意味がある”ということを、G2さんは作ってくださっています。歌は心の叫びや表現の一種なので、自然に歌いたくなるように作っていくのが、自分の仕事だと思っています。

――いまのお話を聞いただけで、すごく気になってきました。ウイルスを“奴ら”と表現をしているところも、そういった演出部分に関わってくる要素なのでしょうか?

G2 それについては、あるひとつの映画にインスパイアされています。その映画では、ゾンビのことをゾンビと言わないようにしているんです。ウイルスなのか呪術なのか分らないが、人間が死なないようになってしまっている状態だということをみんなは知ってる。それを“ゾンビ”という言いかたにしてしまうことでつまらなさが出てしまうので、あえて言葉にしないミステリアスな感覚ですね……。幸いなことに、『バイオハザード』と銘打たせていただいている段階で、奴らはゾンビだと分っているじゃないですか。だから、あえてもう言わなくて大丈夫かなと。演出側が“奴ら”と言ってハッキリさせないほうが、恐怖感が増す。そして“得体の知れない何かである”と思わせる。そういう狙いもあります。

――演じる側としては難しいですよね?

柚希 でも、“奴ら”という呼びかたのほうがいいですよね。

G2 危機感が表現しやすいですよね。“ゾンビ”って普段は言わないじゃないですか。危機感が“奴ら”のほうが伝わりやすいですよね。

――なるほど。では、演じるうえでのお話をちょっとお伺いでしたいのですが、役柄を演じるうえでぜひここに注目してほしいポイントはありますでしょうか。

平間 僕は、体の使いかたや動きが重要なポイントになると思います。戦い慣れていて、ゾンビがいるなかで食糧調達に行ったりしていますからね。ちゃんと生きて帰ってきているので、やっぱりそれなりに動けて戦えているであろうと。僕も普段ダンスをしていたりするので、そういう体を動かすところは頑張っていきたいです。

G2 あとはまあ、見事な片思いは見どころだよね?

平間 ミュージカルでは、リサに片思いばっかりしています。

G2 見事な片思いを見せてくれます(笑)。

――女性キャラクターは柚希さんが演じるリサだけになるのでしょうか?

G2 街にはほかの女性キャラクターはいますが、ストーリーの主要なキャラクターでは、女性は“リサ”だけになります。

柚希 “リサ”は記憶を無くしているけど、なぜか俊敏に身体を動かせたりできますし、自分の過去をもう一度思い出そうとしたりしながらゾンビと戦い、仲間との絆を深めていきます。すごく派手な戦闘イメージのある『バイオハザード』でも、そういった繊細な心情も演じていきたいですね。

――衣装や、銃の扱いはいかがでしょうか?

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柚希 私はワンピースとかは絶対に着れないので(笑)。銃はハンドガンなどは持ったこともありますが、サブマシンガンなどは持ったことがないので、これでどうやって戦ったりするのか、いまからとっても楽しみです。すごくかっこいいですよね。

G2 かっこよさもあるんですけど、やっぱり女性らしさっていうのも衣装にちゃんと表現されていて、そういうところも含めて素敵な衣装になっていると思います。

柚希 宝塚を卒業して、「髪は伸ばすのですか?」、「スカートは履くんですか?」とたくさん聞かれてきました。宝塚卒業後、アメリカに3ヵ月間行ったとき現地の方に、「どう見ても女性だからそんなに急に見た目を変えなくても大丈夫だよ」と言われて、宝塚の世界だけでみると男性のようだけど、本物の男性から見ると女性に見えるんだと腑に落ちました。本来の自分の中から出てくる“女性らしさ”が出てきたら嬉しいですね。

――では、最後に『ミュージカル バイオハザード』を楽しみにしている方に、それぞれメッセージをお願いします。

小林 『バイオハザード』を知っている人も知らない人も楽しめるミュージカルになると思います。僕としては、ぜひ最低2回は見ていただきたいです。1回だと多分物足りないので、いまのうちからチケットを2枚押さえていたほうががいいと、アドバイスをしておきます。楽しいミュージカルになっているので、皆さんぜひよろしくお願いいたします。

G2 ミュージカル化を敬遠なさるお客さんもいらっしゃると思いますけど、ストーリーがおもしろいというのはゲームで既に実現していることだと思います。とにかく「おもしろいものが見れる」、という感覚で気軽に来ていただけると。ぜひお楽しみいただきたいと思います。

平間 生でこそ感じられるものがあるんだと、台本を見終わった後に新ためて感じました。ゲームや映画だとやっぱり「ゾンビはいないだろうな」という気持ちが僕はどこかにあったのですが、実際に生で目の前の人たちが戦っているのを見たときに、「自分の知り合いが大変な病気になってしまった」、「自分が手を加えて殺さなきゃいけないときにどうするんだろう」とか、いろいろミュージカルで感じられる部分があるはずです。お客様にも、そういった気持や想像が豊かになっていただけたらなと思います。

柚希 発表時に「ゾンビが苦手だから見に行けない」、「ゾンビが恐いから見るのをためらう」という声をいただきました。でもG2さんは「ゾンビが出て恐ろしいものだけにしたくない、愛や勇気、最終的には人間はすごい」というものを感じていただけるというようなミュージカルを作ってくれています。ゲームと映画で演出されているあのドキドキ感も失われず、そして舞台との一体感を感じてもらえたらと思います。自分自身も新しい挑戦を沢山しながら成長できたらと思いますので、ぜひ見にいらしてください。

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