22人めのヒーローの発表に、会場は大興奮

 2016年7月21日~7月24日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、San Diego Comic-Con International 2016(通称:コミコン)が開催。

『オーバーウォッチ』にさらに魅力的な新ヒーローのアナが追加 「ユーザーに、キャラクターのハートを感じてもらえるように」【コミコン 2016】_11
▲キム・ファン氏

 今年5月に発売されるや、ワールドワイドで大ヒットを記録している『オーバーウォッチ』。同作をフィーチャーしたパネル“Behind The Scenes of Overwatch's Newest Hero”の会場は、熱心なゲームファンで熱気いっぱい。モデレーターである、ブリザード・エンターテイメントのシニア・マネージャー Esportsのキム・ファン氏の口から「22人めのヒーロー、アナを紹介します!」と告げられるや、会場は大きな歓声に包まれた。『オーバーウォッチ』には、本当に熱心なファンが多い!

 さて、かねてからアナウンスされていた通り、その22人めのヒーローはアナ。オーバーウォッチ創設時からのメンバーだったというベテランのスナイパーだ。

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▲マイケル・シュー氏。

 シニア・ゲームデザイナーのマイケル・シュー氏によると、「アナの背景には多くのストーリーがある」とのこと。もともとエジプトで世界一のスナイパーとして名を馳せていたが、世界的危機に際してオーバーウォッチに参加。重要なメンバーではあるが、リーダーとなる意思はなく、ソルジャーとして活躍していたという。しばらく活動を続けていた彼女だが、最後と思い定めていたミッションで失敗。仲間とは疎遠になり、自分のキャリアについて深く考えることになったという。

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▲アーノルド・ツァン氏。

 アシスタント・アートディレクターのアーノルド・ツァン氏によると、キャラクターデザインに際しては、ふつうはゲームデザインやアート、ストーリーなどからアプローチすることが多いが、アナの場合は、オーバーウォッチの創業メンバーのひとりという見地から出発したという。中近東の中年女性のヒジャーブ(スカーフ)や、中高年の強い女性を参考にしたという。また、ポーズはアビリティと深く関わっているので、その瞬間瞬間の動きを研究したらしい。さらにウィドウメーカーなど、ほかのスナイパーと区別がつくようにしたようだ。

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▲ジェームズ・ウォーフ氏。

 使用武器に関しては、「ライフルに造形の深い人と協力して、FPSでパーツがうまく動いて、操作感覚がしっかりしており、なおかつクールに見えることを目指した」とディレクター、ストーリー&フランチャイズ デベロップメントのジェームズ・ウォーフ氏。アナのアビリティについては、敵を眠らせる矢を放つ“スリープ・ダーツ”や、敵に与えるダメージが増加し、敵から受けるダメージが減少する“ナノ・ブースト”などがあるという。

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 ブリザードには、「ただゲームを作るのではなく、世界観を作ることも目指している」というモットーがあるという。シュー氏はそれに全面的に賛同しつつ、「ゲームには豊かなストーリーテリングとキャラクターが必要です」という。そのために、本作ではキャラクターの“ハート”にフォーカスし、これがすべてのストーリーテリングの原動力になっているという。「プレイヤーに、(キャラクターの)ハートを感じてほしい」とシュー氏。なるほど、たしかにアナというキャラクターを説明するに際しては、大切なものを扱うような、慈しむような姿勢が感じとれる。キャラクターを大切にする姿勢は、本編(ゲーム)以外での展開に如実に現れており、これからはより多くのキャラクターのショートアニメやコミック、グラフィックノベルなどを展開する予定だという。まずは、ニューヨークタイムズで“ベスト作家”に選ばれたミッキー・ニールセン氏が描いたグラフィックノベル『Overwatch: First Strike』が11月にデジタル版が、2017年4月には書籍が出るという。

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▲コミックはすでに6冊まで展開。アナのコミックもリリース予定。
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▲グラフィックノベル『Overwatch: First Strike』は11月にデジタル版が、2017年4月には書籍版がそれぞれ発売。

 セッションの後半3分の1は、Q&Aにあてられた。熱心なファンを持つ『オーバーウォッチ』だけに、気になることを聞くべくファンが殺到したのだが、その中から気になるやりとりをピックアップすると……。

 「キャラクターを作る際に、“このキャラクターはゲーム全体をよくする”というふうに考えるのか?」という質問に対しては、「チームがエキサイトして情熱を持てるものを選びます」とシュー氏。とにもかくにも、ヒーローとしてクールなストーリーやコンセプトがあり、すばらしいゲームプレイができるものだという。今回発表されたアナは、『オーバーウォッチ』のストーリーに深く関わっているので、アプローチしやすいヒーローだったという。一方で、そこまできっちりとせずに採用したキャラクターもあったという。その代表例がウィンストンで、デザインやストーリーをどこまで追求できるかということで詰めていったという。

 「影響を受けたゲームは?」との質問には、ルシオの名前を上げつつ、「ルシオは『ファイナルファンタジー』シリーズへのオマージュがあると思います」とコメント。個々の作品に影響を受けつつ、キャラクター作りをするというアプローチがあることをうかがわせた。

 「詳細なストーリー設定がなされていますが、ほかのメディアでの展開は?」との問いには、「よりよいアイデアがあれば道入していきたいです」とのこと。コミックは、キャラクターをよりよく理解してもらうためにやっているとのことで、今後、ことによったら、さらに幅広いメディアミックス展開が見られるのかも。

 Q&Aで、ひとりの女性から「新ヒーローにアナという成熟した女性を選んでくれてありがとうございます」といったコメントが聞かれたのが印象的だった。その女性は、ゲームには若い女性キャラしかいなくて、少し残念な思いをしていたのだという。たしかに、新しいキャラクターに「狡猾な戦いを得意とする老兵」(公式サイトより)を追加するのは、少し冒険だったといえるかもしれない。それがセッションを聞いたり、映像を見たりしているうちに、「このキャラクター魅力的だな」と思えてくるのだから、これはやはり、キャラクターに“ハート”を吹き込んだ、クリエイター陣のたゆまざる努力の成果と言えるのだろう。新キャラクターひとりをとっても、いかに『オーバーウォッチ』がファンに支持されているか、わかろうというものだ。