『ザ・タワー』続編のプロトタイプなどを用いて、おもしろさをレクチャー

 2016年7月9日~10日、京都市勧業館みやこめっせにてインディーゲームの祭典BitSummit 4thが開催。初日には、『シーマン』『ザ・タワー』などの作者である斎藤由多加氏が“ゲームをおもしろくするにはどうしたらいいか”というテーマで講演を行なった。

『シーマン』の齋藤由多加氏が語る、ゲームをおもしろくする方法【BitSummit 4th】_01
▲齋藤由多加氏。

 齋藤氏にとって、ポーカーはつまらないが、賭けポーカーはおもしろいゲームだという。お金を賭けることにより、ビビッて降りるプレイヤーがいたりして、役なしの“ブタ”でも勝機があるからなのだそうだ。性格が出る遊びである点や、心理を読みあって上達していく点をおもしろいと感じるのだとか。性格が投影されることや、上達できることは、おもしろいゲーム作りに必須の要素だというのが、齋藤氏の考えだ。

 ここで齋藤氏が紹介したのは、代表取締役を務めるOPeNBooKでリリースした『EarthBook』というiPad用アプリ。地球儀上に表示される歴史地図、とでも言ったらいいだろうか。日本史と世界史を別々に学んだ齋藤氏が渡米した際、南北戦争中に日本で何が起きていたかがわからずに恥をかいた経験が、開発のきっかけのひとつであるとのこと。たとえば、日本やイギリスの領土の変遷や、アメリカが大きくなっていった過程などを、時間の推移とともに見ることができる仕組みだ。あくまでも地図でありゲームではないが、ゲームクリエイターが作ったことによって、触って楽しめるおもしろさが生まれている。

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 また、新たに作っているという地図も紹介。作っているのはブラジルに住んでいたスタッフで、日本に来るとき、地図を見ながら、なぜニューヨークを経由するのか不思議に思っていたらしい。ところが、地図を地球儀上に丸めると、ブラジルと日本を結ぶ線上にニューヨークが位置していることに気付いたのだそうだ。このように、なにかを教えてくれるというのも、ゲームをおもしろくする要素のひとつと齋藤氏は考える。

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 さて、続いてモニターに映し出されたのは、『ザ・タワー』の続編のプロトタイプの映像。「8ビットの時代よりチープ」という、たいへんシンプルなビジュアルだ。しかし、高度なグラフィックにするのではなく、チープなままで、ちょっとリアルにする方法があるという。そこで、各フロアにひとりひとり違う動きをする人間をたくさん表示すると……確かにちょっとリアルに感じられる。

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 映像などでリアリティを追求しても、ゲームはおもしろくならないという齋藤氏。つまらないゲームをおもしろくするのにいろいろ足しすぎると、ユーザーが参加する余地がどんどんなくなっていき、ムービーになってしまうというのだ。ゲームクリエイターは、その点に気を付けなければならないと、齋藤氏は語った。

 最後に、オーディエンスから質問が。「新しいものを考えるときのコツみたいなものはありますか?」という質問に対し、齋藤氏は「あり得ない題材を組み合わせてみる。魔法の剣とドラゴンを組み合わせても、おもしろいものは出てこない」と返答。また、「『シーマン』を作ったときには何を考えていたんですか?」との質問には、「初心貫徹。ゲームクリエイターは、最初に作ろうと思ったときの思い入れが、プログラマーが意見したりグラフィッカーが辞めたりしていくうちに、だんだんわからなくなっていってしまう。最初にやりたかったことを忘れないようにすること」と、ゲームクリエイターに対するアドバイスを交えながら答えていた。