コンテストの目的は、入り口から出口まで我々でサポートしてVRコンテンツを出すこと

 2016年7月9日~10日、京都市勧業館みやこめっせにてインディーゲームの祭典BitSummit 4thが開催。会期中に、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア ソフトウェアビジネス部 次長 制作技術責任者 秋山賢成氏にインタビューする機会を得た。当日行われた秋山氏による講演では、“Made With Unity Contest with PlayStation VR”という、Unityを活用してのVRコンテンツのコンテストが発表されたばかりだが、同コンテンストの話題を中心に、今後のVRの取り組みなどについて聞いた。

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SIEJAのPS VRのキーパーソン、秋山賢成氏に聞く、「VRはクリエイターの“想い”を形にできる」【BitSummit 4th】_03

――今回、“Made With Unity Contest with PlayStation VR”の詳細が発表されましたが、このコンテストに対する思いを改めて、お聞かせください。

SIEJAのPS VRのキーパーソン、秋山賢成氏に聞く、「VRはクリエイターの“想い”を形にできる」【BitSummit 4th】_02

秋山 VRの市場が大人気で、実際インディーゲームのイベントでも楽しいコンテンツがたくさんあるんですね。VRのいいところは“想いを形にできる”というところがあるので、インディーデベロッパーさんにぜひともチャレンジしていただきたいと考えていたのですが、「プレイステーション VRの開発をするにはどうすればいいのか?」や「機材を入手するにはどうすればいいのか?」という点において、わからないかたがたくさんいらっしゃったんです。そこで、こうしたコンテストを通して、そういった皆さんがプレイステーション VRでまずコンテンツを作って、パブリッシングのところをパブリッシャーさんがサポートすることで、入り口から出口までを我々が全員でサポートして、VRコンテンツを出していきたいなと思ったんです。

――今回、あえてSIEさんは自社でパブリッシングという形態を取らないのですね。

秋山 それは、いろんなパブリッシャーさんが皆さんで“サポートしたい”という想いがあったからです。ゲーム業界全体として、“インディーをサポートしたい”という企業さんといっしょに取り組む形です。

――幅広いメーカーさんと協力して、VRを展開していきたいということですね?

秋山 おっしゃるとおりです。

――とくに、今回のコンテンストに協力しているサイゲームスは積極的ということですね?

秋山 我々とお話をしていくなかで、サイゲームスさんが手を挙げてくださって、ご協力いただけることになりました。まずは審査をしていただき、サイゲームスさんが、もしそのコンテンツを出したいとなれば、可能性があるかもしれませんし、ほかのパブリッシャーさんが手を挙げる可能性もあります。

――今回のコンテンストに賛同しているパブリッシャーさんがいるということですか?

秋山 はい。何社かあります。

――このコンテストは、パブリッシャーがVRに関わる絶好のチャンスであるとも言えるかもしれませんね。

秋山 そうですね。そういったチャンスもありますし、我々の想いとしては、「作ってください」だけではなくて、ちゃんとリリースするところまでをインディーゲームパブリッシャーさんと組んで、出すところまでをトータルでサポートしていきたいと思っています。さらに言えば、自分で出したものを世界に出していくのがゴールなのだと認識しています。

――吉田さんが講演で「VRはとりあえず形にしてみないと」と発言されていましたが、Unityさんと組むことで、そういった方向性とも合致しそうですね。

秋山 そうですね。Unityさんは作ったものを絵にして出すというところにとても強いエンジンなので、そういったテクノロジーを活用して、自分たちの表現したい世界をどんどんチューニングしていく。そこを目指していただきたいと思っています。

――ちなみに、“9月中旬”の結果発表というのは、東京ゲームショウ?

秋山 実際には決まっていなくて、いちばんいいところでやろうと思っています。いずれにせよ、いちばん目立つ形でやりたいですね。

――今年“VR元年”と言われていますが、手応えのほどはいかがですか?

秋山 たくさんの方がいろいろな想いがあると思うのですが、いままでゲームがいろいろと進化を遂げていくなかで、“つぎの世代がやってくる”という、その1年目だと思っています。将来振り返ったときに、「あのとき盛り上がったコンテンツがあったよね」というのが“VR元年”ではないかと。

――つまり、コンテンツがあって、初めて“VR元年”だと言える?

秋山 はい。私個人はそう思います。

――秋山さんとしては、いまのコンテンツで“VR元年”を飾るにふさわしいタイトルはなんだと考えていらっしゃいますか?

秋山 そうですね……。当然、際立ったタイトルが出てくるのはわかっているのですが、それがイコール“VR元年”ではないとは思うので……。やっぱりいろいろなコンテンツがあって、「ゲーム業界、これだけいろいろなVRを作ってくるんですよ」というところが、やっぱり“VR元年”だと思っています。

――そういう意味では、E3でもけっこうな数のVRコンテンツが発表されましたね。“元年”ならではの勢いを感じます。

秋山 とはいえ、単発で終わるのではなくて、どんどん形になるものがでてきて、それがゲーム業界のつぎの世代なのかなと思っています。今年、VRの波が来ているので、「出したい」ということで“元年”かなと。

――海外ではVRが熱狂的な人気がありますが、日本のクリエイターさんと接してみての肌感覚はいかがですか?

秋山 めちゃめちゃ盛り上がっていますよ。「やってみたい」、「こういうのを待っていた」という声を非常にたくさんいただいています。VRというのは、難しいところもあるのですが、とにかく形にしていって、自分の描いているイメージを紡ぐことができる。簡単に言うと、“自分が作ったゲームの世界に入れる体験をしたい”という人がたくさんいるんですね。日本のクリエイターさんからもそういう話はたくさんうかがっているので、そういった方には、ぜひ機材などをサポートして、コンテストに応募していただいて、形にして出していきたいなと。

――日本のVRコンテンツでとくに注目しているものはありますか?

秋山 うーん、難しいですね(笑)。たくさんありますから。

――日本のクリエイターさんにとっても、VRはいいチャンスだとは言われていますね。ひとつの優れたアイデアを形にすれば人気を獲得するチャンスが生まれるわけですから。

秋山 そうですね。とくに何でも形にできるというのはすごくいいことです。ゲームだけではなくて、ノンゲームと呼ばれるものにもVRは可能性があると思うんですね。ですので、いろいろなコンテンツが集まってきて、それこそVRの新しい世界が作れるんじゃないかなということで、お話をたくさんいただいています。

――ああ、幅広いジャンルで?

秋山 そうですね。

――可能性はゲームに留まらないということですね。こんな質問を改めてするのも何なのですが、改めて秋山さんの口からお聞きしたいのですが、それだけたくさんのジャンルの方々を惹きつける、VRの魅力って何でしょうね?

秋山 そうですねえ……。これはくり返しになってしまうのですが、すばらしいクリエイターさんが日本にはたくさんいらっしゃって、アジアにもたくさんいらっしゃって、そのクリエイターさんの想いがその世界観を作れるというところが、VRの魅力なのかなと。たとえば、TVでは矩形でしか表現できなかったものが、キャンパスが360度広がって、「自分の作りたい世界を作っていいですよ」ということになるので、“想い”を形にできる。それがVRのいいところなのかなと思っています。

SIEJAのPS VRのキーパーソン、秋山賢成氏に聞く、「VRはクリエイターの“想い”を形にできる」【BitSummit 4th】_01