「VRのもっと大きな可能性につなげていくために今年がある」

 今年後半、プレイステーション4(以下、PS4)には、『ファイナルファンタジー 』、『ペルソナ5』、『人喰いの大鷲トリコ』、『グランツーリスモSPORT』など、日本ユーザーの多くが待望するビッグタイトルが多数登場。さらに、2016年10月13日には、いま話題のバーチャルリアリティシステム“プレイステーション VR”(以下、PS VR)も発売される。
 これから年末商戦へ向け、例年以上に大きな意味を持つPS4の展開について、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアの盛田 厚プレジデントに展望を訊いた。(聞き手:本誌編集長 林克彦)

SIEJA盛田厚プレジデントにPS VRと下半期の展望、そしてハイエンドPS4について直撃_02

PS VR予約の盛り上がりは想定以上。現在、予約再開へ向け準備中

――PS VRの最初の予約はほぼ完売と大好評でした。まずは、それについての感想・手応えをお聞かせください。

盛田 予約開始当日は、早朝から列に並んでまで「欲しい」と思った方がたくさんいてくださったことについては素直にうれしいですね。我々が想定した以上の盛り上がりでした。ですが、予約できなかった方々についてはご迷惑をお掛けして、本当に申し訳なかったと思っています。

――予約再開に向け準備が整い次第アナウンスがあるということですが、発売までに予約できるチャンスはまだある、と。

盛田 はい。いままさに予約再開の準備をしているところです。

――今年に入り、日本でもVRへの注目度が一気に高まったと感じます。その理由は何だとお感じですか?

盛田 VRという単語自体は昨年から多くのメディアで出ていましたので、まず言葉が先行して広がっていった印象です。今年に入って海外も含め、イベントや施設などで、実際にVRを体験いただける機会が増えました。その評判が広まり、PS VRに関しても具体的なタ
イトルが多数発表され、盛り上がってきたのかなと感じています。

――たしかにE3 2016で『バイオハザード7』を始め、具体性をともなう形でコンテンツの露出が増えた、というのも大きな理由のひとつかもしれません。盛田さんご自身のVRに対する期待度をうかがえますか?

盛田 私は、以前からゲームのつぎの大きな転換点は、ゲームの中に入る体験が実現するときだと考えていました。それが実現できるVRは、ゲームにとってとても重要なテクノロジーだと思っていて、それはいまも変わっていません。加えて、さまざまなVRコンテンツを体験していくにつれ、ゲームではないコンテンツも十分楽しめる。可能性は無限だと感じるようになりました。ただし、一過性のブームで終わってしまうと、その可能性も尻すぼみになってしまいます。我々はもちろんですが、業界全体で育てていかないといけません。今年はVR、そしてVRコンテンツの可能性を将来につなげていく年だと思っていますので、PS VRに関しては、ビジネス的な戦略はもちろんありますが、責任ある立場として、VRを根付かせるために注力していきます。

――そういった理由もあって、まずはしっかりとしたプレイ環境が整えられるソニーストアや家電量販店などでのPS VRの試遊会・予約受付ということになったんですね?

盛田 はい。体験会にはSIEJAの社員も付き添い、サポートしています。まずは体験したうえで買っていただきたい。買っていただいた方に満足していただき、それをまわりの方々に広めていただきたい。最初にそうした流れを生み出せるかが重要だと思っていますし、我々がやらなければいけないことです。これはかなり責任が重いことだと思っています。

――PS VRのソフトは、通常のソフトと同様に、パッケージ版とダウンロード版の両方が発売されるのでしょうか。また、価格帯はどれくらいを想定しているのでしょうか。

盛田 そこはいま検討しているところです。コンテンツ次第というところもありますが、ユーザーの皆さんに納得いただける形でお届けしたい。それを探りながら決めていきたいですね。

大作ソフトが次々発売され、PS VRも登場する今年の後半戦

――先日開催されたE3 2016の感想もお伺いできますか?

盛田 E3全体としては、たくさんのソフトが揃ってきたという実感があり、それらソフトとVRのふたつの軸で盛り上がったと思います。ですが今回、E3への出展を取り止めたソフトウェアメーカー様もいらっしゃったということもあり、転換期にきているのかな、とも感じました。ゲーム業界にとって、どういう形で情報を出していくのかはとても重要で、そのポイントのひとつはE3です。そのE3がどうなっていくのか、我々としても気になるところです。

――今年のソフトでいうと、『ペルソナ5』、『ファイナルファンタジー 』など大作が控え、E3では『人喰いの大鷲トリコ』の発売日も発表されました。9月には東京ゲームショウ、そしてその前には恒例のカンファレンスも実施されると思っているのですが、今年後半の展望をお聞かせください。

盛田 皆さんが期待する大型タイトルが発売されるタイミングですし、今年は思いっきり走っていこうと思っていましたので、いまも走っているつもりなのですが(笑)、これから年末に向けて、それらのタイトルをどうアピールし、プロモーションしていくかが大切です。プランは考えていますので、それに従って順次実行していきます。

――プレイステーション4本体も普及、飛躍の時期になりそうですね。

盛田 はい、そう思っています。本体に関しては、昨年の年末商戦から手応えは感じています。例年、実売の動きは時期によって上下はあるのですが、今年は安定しており、我々が想定していたより若干いい状態で推移しています。しかも今後、大型タイトルが続々とリリースされますので、今年は大きな流れが作れる、作らないとダメだと感じています。それぐらいタイトルと環境は整ってきたと感じています。

――そんな機が熟した時期にPS VRも発売されますが、販売戦略的には大作タイトル群とPS VRをどうアピールされる予定なのですか? ソフトとPS VRを分けたピーアールを展開するのでしょうか。

盛田 そこは難しいところなのですが、“プレイステーション”は、まずはゲームを楽しんでいただくという側面がありますので、そこはしっかりアピールしていきたい。一方で、ゲームにとどまらずノンゲームのコンテンツも含めたエンターテインメントが楽しめる側面も、プレイステーションが最終的に目指すところだとも思っています。PS VRはまさにその中間、あいだを結ぶものだと考えています。PS VRはゲームをより楽しくしてくれることに加えて、ノンゲームコンテンツも楽しめ、より幅広いエンターテインメントが提供できると考えていますので、両方をうまく訴求していきたいですね。

ハイエンドPS4はPS4の選択肢のひとつ

――最後にうかがいたいのはアンドリュー・ハウス社長 兼 グローバルCEOが存在を認めたハイエンドPS4についてです。

盛田 これまでプレイステーションを含めて、家庭用ゲーム機のライフサイクルがあり、そのサイクルに従って家庭用ゲーム業界は動いてきました。さきほどノンゲームの話をしましたが、現在はエンターテインメントという業界自体のボーダーもだんだんなくなり、我々の業界だけを考えていればいいという時代で可能性につなげていくために今年がある」はなくなりました。また、PCやスマートフォンなどが、短いサイクルで頻繁にアップグレードされるなか、通常5~6年のライフサイクルを経てもたらされるさまざまな付加価値をハイエンドPS4でお届けしたいと考えています。ただ、あくまでもPS4というプラットフォームの中のハイエンドモデルという位置付けで、PS4であることには変わりません。

――ハイエンドモデルはコア層向けだと思いますが、現在、PS4自体はそれ以外の層にも
広がりつつあると感じます。

盛田 タイトルのバリエーションも増えてきて、日本向けのタイトルが発表、発売されていくなかで、以前、家庭用ゲーム機で遊んでいた方々、また、PS3を遊んでいる方々がPS4に移行してくださっているという手応えは感じています。PS VRも発売されますし、そろそろ購入しようか、と思っていただけるとありがたいです。

――それを後押しするのは価格面も大きな要素です。そろそろ値下げを期待している人も多いと思います。明言はできないと思いますが(笑)、そのあたりいかがですか?

盛田 この場では何もお伝えできません(笑)。ただ、我々の戦略はいつもソフトとともにあります。大型タイトルが発売されるタイミングで、バンドル版や、それに合わせたオリジナルモデルなどを展開してきました。そうした販売戦略は正しいと思っていますので、今後もそのスタンスを変えるつもりはありません。