例えるなら“エベレスト登山”のようなゲームです
2016年6月14日~16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2016”。その会場内にて、ガンホー・オンライン・エンターテイメントとグラスホッパー・マニファクチュアがタッグを組んで開発中のプレイステーション4専用サバイバル“ド”アクションゲーム『LET IT DIE(レット・イット・ダイ)』のディレクター・新 英幸氏と、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下一喜氏へのインタビューをお届けする。
(聞き手:週刊ファミ通編集長 林 克彦)
――E3 2016では、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのブースで『LET IT DIE(レット・イット・ダイ)』のプレイアブル出展をされていましたね。現在の開発状況をお聞きしたいです。
森下 マスターアップに向けて、最後の追い込みをかけているところです。中身はほぼできあがっているんですよ。
――おふたりは、どのような形で制作に関わられているのでしょう?
森下 自分はおもにエグゼクティブプロデューサーとしてゲームデザインを担当しています。須田さん(グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏。本作のエグゼクティブディレクターを務める)が世界設定やストーリーを中心に手掛けています。このふたりが持ってきたものを、一挙に新さんが受け止めて「つまり、こういうゲームを作りたいんでしょ?」と、うまいことまとめている感じです。
――新さんがいちばんたいへんなポジションですね。
森下 そうなんですよ。まさに“新ゲー”です(笑)。
新 本当にたいへんです(苦笑)。
――これまでは須田さんのわがままを聞く仕事だったのが、本作ではわがままを言う方がふたりになっていますもんね。
新 ふたりとも猛獣なので(笑)。森下さんも、かなり細かいところまで注文を出してくるんです。ゲームをものすごくプレイしますし。
森下 じつは今回出展しているバージョンを、つい先ほどプレイしてきたんですが……。
新 今回の出展でプレイされるお客様は初めての方が多いので、当然操作方法を確認しながらゆっくりプレイしますよね。でも森下さんは全部覚えているから、不気味なくらいスイスイと進んでいくんです。やり込み動画を観ているようでしたね。
森下 そうそう。右スティックでのカメラワークも、無意識のうちに観ている方を意識したような動きになっちゃう。
――(笑)。僕は日本での取材時や、先日のパーティー(2016年6月14日にE3会場のすぐ近くで開催された“LET IT DIE CONCERT”。須田剛一氏や、本作のサウンドを手掛ける山岡 晃氏も参加していた)でもプレイさせていただいていますが、本当に楽しいですね。見た目はいかにもグラスホッパー的なセンス溢れるデザインで、中身もローグ系としてしっかり作り込まれていて、ハックアンドスラッシュ的な要素も楽しめますし。こう言っちゃ失礼ですけど、“思ったより”おもしろいなと。
森下 本当に失礼ですが、うれしいです!(笑)
――プレイするたびに不思議な手応えがありますね。
森下 ただ、プレイアブル版は、本作の世界観やアクションの手触りを知っていただくためのものなので、本編ではもっともっとおもしろくなりますよ。プレイアブル版ではブループリント(設計図)が出てくるのですが、このバージョンではとくに使い道はありません。「本編では、設計図を集めて武器や防具を作る要素が入るんですよ」という意味で入れているんです。あと、装備の耐久度が落ちてきたときに、「ああ、同じ装備を使っているといずれは壊れるのか」とか。
――なるほど。ところで新さんは、『LET IT DIE(レット・イット・ダイ)』のどんな部分に注力していますか?
新 今回はグラスホッパーにとって初めての試みであるF2P(フリー・トゥ・プレイ)かつ新規タイトルなので、延々とプレイしていただくための仕組みをどうするか、須田や森下さんと、とことん話し合ったんですよ。アクションゲームってある程度遊んだら終わりが来てしまうのですが、本作では終わりがいつまでもやって来ない仕組みを、大きなストラクチャーとして入れているんですね。そこがまた、これまでにないおもしろさを生み出しているんです。
――確かに、F2Pでこういうゲームは初めてだと思います。ここまで持ってくるのに苦労なさったのでは?
新 めちゃめちゃ苦労しましたよ。武器のポジションですとか。ふつうのアクションゲームですと、序盤で手に入れた武器は、せいぜい中盤くらいまでしか使えません。本作では主人公とともに武器も成長するため、延々と使い続けられるわけです。
森下 ウチからすると、(F2Pのスタイルは)ふつうなんですけど……。
――ガンホーさんはそのあたり得意分野ですもんね。
森下 とはいえ、武器と装備の組み合わせが6億通り以上になるので、簡単というわけでもないんですよ。
――6億! そんなに!?
森下 F2PタイトルにPvPの要素は重要なポイントですからね。同じ装備をしている人に出会うことは、なかなか少ないかもしれません。お気に入りの装備があっても、使い続けていれば耐久度が落ちて壊れちゃうので、また作ることになりますし。行きは完全武装だったけど、帰りはパンツ一丁になっている、ということもあり得ます。
――装備が揃ってきたときに死ぬとどうなるのですか?
新 自分が死んだ後にその場所へ行くと、死ぬ直前の装備をまとった敵キャラクターが登場します。それが自分のプレイにも出てきますし、他人のプレイにも登場するんですよ。
――他人のところにひょっこり現れるんですか!
新 はい。そこがPvPにつながっているんですよ。さまざまなプレイヤーのデータと戦うことになるわけです。
森下 そのキャラクターを、意図的に送り込むことも可能です。たとえば、新がレベル1のキャラクターでプレイしているところに、レベル50で完全武装した僕の分身を登場させたり(笑)。
――遭遇したら逃げるしかないですね(笑)。
森下 そのため、強敵と出会ったとき、がんばって戦ってもいいし、逃げてもいいような作りにしています。
新 プレイアブル版でも、プレイ中にちょっと変わった敵キャラクターが出てくることがあるのですが、それもほかのプレイヤーが作ったデータなんですよ。
――つまり、がんばってレベル10くらいまでキャラクターを育てて、ようやく中ボスを倒せたと思ったら、その直後にレベル50の敵に追いかけられるということも……? 恐い!
新 うっかり戦うとワンパンで倒されてしまいますからね。
森下 演出として用意された恐さって、最初こそ恐ろしく感じますが、2回目以降はなんともなくなりますよね。そこで、永続的に感じられる恐さとは何だろう? と考えた結果がこのシステムです。このゲームでいちばん恐い存在はプレイヤーなんですよ。
――それこそがPvPというわけですね。