サンドボックスゲームが盛んな海外でどのような評価を受けるのか?

 北米および欧州で『DRAGON QUEST BUILDERS』というタイトルで2016年10月発売が決定した、スクウェア・エニックスのプレイステーション4、プレイステーション3、プレイステーション Vita向けソフト『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』。サンドボックスタイプのモノづくり要素と『ドラゴンクエスト』(以下、『DQ』)ならではのRPG要素を組み合わせた“ブロックメイクRPG”として、日本ではスマッシュヒットを記録した本作は、サンドボックスゲームが盛んな海外でどのような評価を受けるのか。E3期間中は取材がぎっしり詰まっていたというプロデューサーの藤本則義氏、アシスタントプロデューサーの白石琢磨氏に話を聞いた!

ブロックメイクRPGは海外でもヒットするか? 『ドラゴンクエストビルダーズ』プロデューサー陣にE3会場で直撃!【E3 2016】_02
▲スクウェア・エニックスの『DQビルダーズ』プロデューサー藤本則義氏(写真左)と、アシスタントプロデューサーの白石琢磨氏(写真右)。

海外のユーザーにも新鮮に映ったブロックメイクRPG

――だいぶ取材を受けていらっしゃるようですが、反応はいかがですか?

藤本 日本で『DQビルダーズ』を立ち上げたときには、「サンドボックスってどんなゲーム?」というところから説明することが多かったのですが、海外はサンドボックスゲームが人気で、しっかりとした土台があります。なので、サンドボックスとRPGが融合したゲームはイメージしやすかったようです。海外メディアの方からは「これは新しいジャンルだ」と、期待されている印象を受けました。

白石 反応はかなりよかったですね。『DQ』シリーズもコンスタントにローカライズ版を出すことに対して、安心感だけではなく期待も持っていただいているのかなと思います。

――ニンテンドー3DS版の『DQVII』が、北米でも発売(北米では『Dragon Quest VII: Fragments of the Forgotten Past』というタイトルで2016年9月に発売)されます。

藤本 (ローカライズの希望は)つねにいただいていて、「できるだけ早いタイミングで出してほしい」と言われているんです。そもそも『DQVII』はあまりにもテキストが多くて、海外版を出す予定はなかったんです。でも、ファンの方々から強い要望をいただいて、発売できるようになりました。『DQビルダーズ』はナンバリングタイトルほどのテキスト量ではないので、あまり間を置かずに出せますね(笑)。

――海外では本作のようなグラフィックのサンドボックスゲームって、あまりないですよね。

藤本 そうなんですよね。そこは、海外のユーザーさんにも新鮮に映っているようで、キレイなオブジェクトでモノづくりをしてみたい、そこに乗っかるストーリーも体験してみたいと思っていただけているようです。

白石 毛色は違えど、やはりサンドボックスは人気のジャンルなので、私たちが頻繁にアピールしているストーリーといったRPG要素もポジティブに捉えられている印象を受けます。

――とはいえ、『DQI』をベースにしたストーリーは海外では知らないプレイヤーも多いのでは?

白石 たしかに知識がない方も多いでしょうし、海外のメディアからも「『DQI』を知らなくても大丈夫なの?」と聞かれました。ただ、あくまで『DQI』は物語の背景です。コアなファンは「あ、これは!?」とニヤリとしながら楽しめるでしょうし、初めてプレイする方でもひとつのお話として完結しているので、「まったく不自由なく楽しめますよ」と、しっかりお伝えしています。

藤本 日本でも、『マインクラフト』はプレイしたことはあるけれど『DQビルダーズ』が初めて遊んだ『DQ』シリーズだというお子さんが多かったんです。彼らは『DQI』のことは全然知りませんが、ストーリーは楽しんでくれました。それと同じ感覚で、海外の人も遊んでくれるのかな、と。

――『DQ』とサンドボックスの親和性はどこにあると感じていますか?

藤本 ブロックで世界を作ることと『DQ』の組み合わせは、『マインクラフト』を見たときから抜群にいいと思っていました。もともと『DQI』は2Dの方眼紙で作られていたので、モノづくりをしながらのRPGは組み合わもきっとうまくいくだろうという感覚はありました。

白石 実際に日本で発売して、日本のユーザーの皆さんからも自分たちが思っていたとおりの感想をいただいたので、『DQ』とサンドボックス型のゲームを組み合わせるのは正しい選択だったと思っています。「サンドボックスは何をすればいいのかわからない」というユーザーに、丁寧に説明するために『DQ』の要素はつながりやすかったのではないでしょうか。

藤本 説明という意味では、チュートリアルをやらされている感じはなく、ストーリーに沿っていつの間にかスキルを身につけられるのが、『DQビルダーズ』でうまくできたところです。

白石 だいぶうまくなりましたもんね(笑)。

藤本 僕はモノづくりが下手だったのですが、いつの間にか何でも作れるようになりました。「ちょっとセンスあるんじゃないの?」って、勘違いしてしまうほどで(笑)。

――きちんと上達が感じられますよね。

白石 ステージごとに区切られているのもよかった。第2章では、第1章で得た知見を活かして街を作ることができるので、自分がステップアップしていると肌で感じられると思いますから。

――海外版で仕様を変えている部分はありますか?

藤本 特にはありません。ブロックを置く感覚もそのままです。国内で行ったアップデートがすべて反映されているので、直下にブロックを置けるようにもなっています。

――『DQ』は言葉の柔らかさが特徴的ですが、ローカライズするうえで言葉も意識されるものでしょうか?

藤本 そこがもっとも『DQ』のローカライズで難しいところですね。『DQVIII』より前までは直訳していて、堀井さん(堀井雄二氏)の描いた「ただのしかばねのようだ」といったユーモアとか、メラのような日本語の擬音を活かしたネーミングは伝わりにくかったと思います。でも、『DQVIII』以降は、時間をかけてグロッサリー(用語集)を考え直しました。その蓄積を持ったローカライズチームを、リメイク版も含めてずっとシリーズで使っていて、『DQビルダーズ』も担当してもらいました。本作では『DQ』のあたたかみは出せていると思います。

ブロックメイクRPGは海外でもヒットするか? 『ドラゴンクエストビルダーズ』プロデューサー陣にE3会場で直撃!【E3 2016】_01
ブロックメイクRPGは海外でもヒットするか? 『ドラゴンクエストビルダーズ』プロデューサー陣にE3会場で直撃!【E3 2016】_03
▲スクウェア・エニックスブースに出展されていた試遊台には、つねにプレイヤーが。
▲多くのメディアから、高評価を示す各賞のノミネートを受けていた。

今後の『DQビルダーズ』はどうなる?

――国内と海外での評価で違いはありますか?

白石 E3 2016に先駆けて開催された“Judges Day”で初めてプレイした海外メディアの方々も多かったのですが、想像していたよりも高い評価をいただけました。それが、今回のノミネートにつながったと思います。なかには、昨年の東京ゲームショウでプレイして、このE3でもプレイして「だいぶ変わっているね!」と言ってくれた方もいました(笑)。

藤本 日本で、ほかのサンドボックスゲームに馴染めなかった人もRPG感覚で楽しめますと言い続けてきましたが、アメリカでは「ほかのサンドボックスゲームを何度もプレイしている人にこそ、『DQビルダーズ』をプレイしてほしい」という論調が多かったですね。

白石 国内版と唯一違うのが、海外版は最初のチュートリアルを減らしているんです。それでも、おそらくサンドボックスタイプのゲームに慣れているので、さくさくと進んで設計図まで到達されていましたね。

――実際にプレイしたら違うものだと理解されたのでしょう。

藤本 建物を作っただけで終わらず、村人からリアクションがあって、それがストーリーや街の防御に影響したりするところが、ほかのサンドボックスにはないゲーム性ですからね。キレイなグラフィックへの評価もかなり高かったです。

――日本のプレイヤーは実用的な建物を作る方が多い印象ですが、きっと海外ではまったく違う観点でモノづくりをされる方がいると思います。

白石 実際にどのようなモノ作りを見せてくれるのか、楽しみですね。

――E3 2016ではVRが大きな目玉となっていますが、VRへの対応は?

藤本 まったく検討をしないということはありませんが、技術的に乗り越えなくてはいけない壁があるので、すぐに結果を出すのは難しいですね。親和性という意味では、VRのヘッドセットを長時間装着するのはたいへんなので、もしやるのであれば、1回15分で終わるような違うゲーム性のものになると思います。

――気の早い話ですが、次回作はいかがでしょうか……?

白石 『DQVII』のローカライズも難しかったのですが、ファンの方々からの熱い要望があって実現しました。それと同じく、続編についても皆さんからの熱い思いが届いていると……いいなあ(笑)。