新要素やモード、仕様など、いろいろ直撃

 2K Gamesから10月21日にPC向けに発売予定のストラテジーゲームシリーズ最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』。本作では都市が複数のタイルにまたがって拡大する一方で“地区”を設置できるようになったり、複数のユニットをまとめて機能させられるようになったりと、根本的な所に関わってきそうな変更が行われている。というわけで、開発元Firaxisでシニア・プロデューサーを務めるDennis Shirk氏に話を聞いた。

『シヴィライゼーション VI』シニア・プロデューサーにインタビューで聞く、今度のCivの注目点【E3 2016】_04

新たなユニットシステム

――今回はユニットをいくらかまとめることができますね。シリーズでは『Civilization Revolution』の機能にちょっと似た感じを受けました。
Dennis 根幹は違うんだけども、ある程度は近いところもあるね。今作ではユニットのフォーメーションがあって、これによってふたつできることがある。まずはユニットをリンクすること。開拓者や労働者をエスコートしたい場合、ひとつにまとめられる。
 もうひとつ、より戦略的に統合できるのは、新しい“サポートユニット”という種別のユニットだ。『シヴィライゼーション V』で攻城塔や破城槌は、意図したように活躍することができなかった。だから今回はサポートユニットとして一般の戦闘ユニットとグループにまとめて、周囲にいい効果をもたらす。これで都市を攻める際の“混雑”を緩和できる

 それと、今回はテクノロジーツリーに科学系と文化系がある。文化プレイヤーの防衛手段として、文化のツリーを進めていくとコア・アーミーのシステムをアンロックできる。フォーメーションのメカニズムと似ているけども、2つ・3つの同種のユニットを統合できるというものだ。それ自体は3つあったところでそれほど強力ではなくとも、統合することでパワフルなバージョンになり、それで強固なフォーメーションを組めるというわけだ。

『シヴィライゼーション VI』シニア・プロデューサーにインタビューで聞く、今度のCivの注目点【E3 2016】_02
▲IVからVでは、1マスに置けるユニットの数が変更に。基本1マス1ユニットになって戦術の選びがいが増えたが、今度はユニットを少しまとめるものが出てきた。

テクノロジーツリーと研究ブースト

――テクノロジーツリーについてもう少し詳しく教えて下さい。そういえば、Beyond Earthなどでは網目状のツリーなどもありましたが。
Dennis 火薬や飛行機などは出てくる順番があるべきで、歴史の進化の順番は維持したい。歴史が定まっている話の場合は、網目状はうまくいかない。
 さて、Vとの比較だと、先ほど話したように、文化ツリーと科学ツリーに分けたことが一番大きな違いとなる。Vだと文化プレイの場合、科学プレイヤーの方がテクノロジーが進んでいて、つねに制圧される危険がある。だからふたつに分けたんだ、文化プレイヤーは文化に投資したいだろうから。文化ツリーでもハードコアな技術は持っていて、最大のミリタリーユニットや、飛行機の優位性を活かすことができるだろう。
 一方で社会制度ツリーは、科学よりも文化が伸びるところだ。政治体制やそこに入れるポリシーカードがある。政治体制には4つのカードを入れることができて、ミリタリーカード、エコノミックカード、どこにでも入れられるワイルドカードなどがある。
 科学プレイヤーはより多くの高度なユニットやよりよい政治体制を持っているが、文化プレイヤーはより幅広い政治体制を持っていて、できることが多い。ポリシーで柔軟性を出して、科学プレイヤーに対してより強力に効率よく対処できる。相手の軍備に対してライフルマンで心もとないけど、ライフルマンを2倍の速さで生産できるとかね。

――探索などにより研究にボーナスがかかるというのもプレイの幅を広げそうです。
Dennis マップの重要性を高めたかったんだ。今回は地区も作ったりするから、資源だけを見るのでなく、もっとマップを総合的に見て欲しいんだ。ボーナスには技術ブースト、社会制度ブーストなどがあるんだけども、例えば内陸の都市から始まったのに、容易に航海術を得られるのはおかしい。もっと時間がかかるはずだ。海岸線の都市ならブーストをかけられる。逆に石工に役立つ場所もある。プレイヤーがこの世界でやることのすべてが、技術ツリーあるいは社会制度ツリーでの進行の決め手になってくる。今やったことで、なにかが2倍早くできるかもしれないんだ。

――決め打ちのプレイをすることも多かったと思いますが、今回はそのブーストをうまく使うことで、そのマップならではの戦略にトライできると。
Dennis そう。すばらしい山々があって川もあって植物も豊富だったら、大学にいい。海岸線近くの場合とは違うプレイをしてほしいんだ。ブーストによってプレイヤーにはさまざまな方向を試せるよう刺激したい。

『シヴィライゼーション VI』シニア・プロデューサーにインタビューで聞く、今度のCivの注目点【E3 2016】_03

指導者について

――本作における外交まわりについて説明してください。
Dennis 外交で『シヴィライゼーション V』より良くなっている点は、今回は指導者をもっと歴史的背景に基づいたものにしたかったので、歴史的なアジェンダ(計画)を与えることにした。
 例えばチンギス・カンやモンテスマの隣でプレイしていた場合、彼らはとても攻撃的なゲームをプレイする。それに対して始皇帝は遺産を建てることを好み、もっとも遺産のあるCivという地位を維持するために、ほかのプレイヤーが彼以上のものを作るとそのプレイヤーを嫌うようになる。遺産を入手するために都市を奪い取ろうとするかもしれないから、始皇帝の横でプレイする場合は遺産競争にならないように文化プレイはやらない方がいいかもしれない。外交ゲームをプレイする際はこの点に気をつけるべきだ。
 そしてルーズベルトは大陸に平和をもたらしたいから、トラブルメーカーは嫌う。それが彼の歴史的なアジェンダだから、彼の大陸で誰かが戦争を引き起こしそうになったら、そこに戦いを挑んで停止させるかもしれない。
 そして始皇帝がいて、ルーズベルトがいて、プレイヤーは文化プレイをしたいとする。遺産を建てると始皇帝を刺激するかもしれないが、戦争を仕掛けてきてそれを受けても、自分が戦争を仕掛けたわけではないから、ルーズベルトに対してグッドガイではいられる。このように周囲のAIのCivとうまくやらなくてはいけない。

――となるとガンジーが核兵器に突き進んだりはしなくなる?
Dennis ある程度はそういった要素もある。ユーザーが面白いと思っているものを完全になくすわけではないし、ガンジーは以前とあまり変わっていない。一方で、いま話したのは歴史的アジェンダだが、産業好き、核好きといったランダムなアジェンダもある。出会った時にはわからないから、スパイなどを使って調べる必要がある。一般的には歴史に沿った動きをするけど、忠実になぞろうというわけではないからね。

――ちなみに、日本のリーダーの性格は?
Dennis それについては話せない。日本がゲームに入ることは判明しているが、名前は出していない。近いうちに出せると思う。

――勝利条件については?
Dennis 勝利条件にも新しいものが導入されるが、まだ話せない。開発の中でも最近入ってきたばかりだしね。発売までの間のどこかで発表する。

昼休みにサクッと遊べるようなモードも登場

――協力プレイと短時間で遊べるマルチプレイについて教えてください。
Dennis シヴィライゼーションの伝統的なマルチプレイ対戦は、16時間のモンスターセッションになりうる。それはちょっと無理だなって人もいると思うので、シナリオベースのプレイや、“おつかい”的なシチュエーションベースのプレイを入れた。1時間のランチでもちょこっとやることができるようなね。あるいは1~2時間だけ冷戦期をやって終われるとか。ユーザーが作りだしたものを遊べるのもいいね。

――いろいろ新しい要素が入ると思いますが、αとかβテストをやる予定は? 競争性の高いゲームでは結構珍しいと思うんですが、このシリーズは意外と公開型のテストをせずに、昔ながらにゲームがドンと発売されますよね。
Dennis “フランケンシュタイン”という特別なグループのファンがテストしてくれる。これはとても限られた人たちで、グループに入るにもメンバーの推薦が必要なんだ。ただそれだけに、アイデアを投げて意見を聞くには素晴らしい相談相手だね。それ以上のことは今回もやらないだろう。

『シヴィライゼーション VI』シニア・プロデューサーにインタビューで聞く、今度のCivの注目点【E3 2016】_01

――プレイヤーから見て変わったところは色々ありますが、個人的にはどれを楽しみにしていますか?
Dennis 自分は文化プレイヤーなので、傑作などによって文化勝利をするのが好きなんだ。これは都市が複数のタイルにまたがって拡大するようになり、建築や地区で都市を作りこんでいけるのとも関係していて、劇場や博物館などを揃えて、勝利に近づいていける。
 Vで文化プレイヤーだった場合は、3とか6ぐらいの都市に制限されるから、“Tall”にプレイしていた (集中させるという意味。Wide=多くの都市を発展させる作戦との対比)。しかし今回はその障害となる部分を取り払ったから、科学プレイヤーと同じように広がることができ、文化のビーコンでいられる。ここが一番ワクワクするところだ。
 また細かい部分だけども、QA部門からの要請でちょっとしたUI要素を入れた。マップにピンをつけて、後でどこにいこうとしてたのか思い出せるようにしておくことができる。こういったプランニングの組み込みで、全く違う要素を付け加えられたのは楽しい。

――いろいろできるようにするということは、複雑になりすぎる可能性を秘めることでもありますが、それはどうやって避けますか。
Dennis それは毎回悩むところだ。シド(シリーズを作り上げた開発者のシド・マイヤー)がゲームデザイナーたちにいつも言っているのは、ゲームが複雑になっていいのは、プレイヤーの準備ができている時だけだということ。このポリシーは大事にしていて、プレイヤーが学習しつつ消化していけるように、シンプルな決断から徐々に複雑な決断に移行していくような作りにしている。
 それに加えて今回の新システムの開発にあたっては『シヴィライゼーションV』からのフィードバックも参考にしていて、チュートリアルにとにかく力を入れている。ストラテジーゲームを一度も触ったことがないプレイヤーにも、基本的なメカニックスとプレイの仕方をちゃんと教えられるようにしたい。これは常にバランスの問題だね。崖っぷちまでいくと失敗する。