じつはストーリーもすごいんです

 2016年6月14日~16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2016”。本イベントに、コーエーテクモゲームスのプレイステーション4用ソフト『仁王』(2016年発売予定)の、新たな試遊バージョンが出展された。

 期間限定で配信されたα体験版を経て、『仁王』はどう変わったのか。ディレクターを務める早矢仕洋介氏と、安田文彦氏にお話をうかがった。なお、インタビューは、安田氏によるプレイを見ながら行ったのだが、会話しながら“戦国死にゲー”をプレイするのは難しかったようで……安田氏は無事に試遊バージョンをクリアーできるのか?

『仁王』難しさはそのままに、理不尽に感じる部分を調整! 早矢仕D&安田Dインタビュー【E3 2016】_01
『仁王』難しさはそのままに、理不尽に感じる部分を調整! 早矢仕D&安田Dインタビュー【E3 2016】_02
左:コーエーテクモゲームス 早矢仕洋介氏(文中は早矢仕)
右:コーエーテクモゲームス 安田文彦氏(文中は安田)

――α体験版から調整したものが、今回のE3の試遊バージョンですか?
早矢仕 そうですね。8月に配信するβ体験版のデモになります。まだ調整途中なのですが、ある程度はフィードバックいただいたものに対応しています。

――α体験版に関し、どういったご意見が多かったのでしょうか。
早矢仕 歯ごたえがあり、達成感があることについては評価していただいたのですが、理不尽に感じる部分がある、必要以上にプレイヤーに強いる部分があるという点については改善のご要望をいただきました。たとえば、武器に耐久度があって、使っていると壊れてしまうとか、迫力重視のカメラワークであるゆえに、敵との距離感がわからなかったというところを対応しています。死んだときの納得感と言いますか、プレイした方が「自分のせいだ」と思えるように、と。決してカンタンにするのではなくて、より達成感を感じてもらうために、理不尽なところを極力対応しようと。
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――耐久度はなくなるんですか?
早矢仕 なくなりますね。

――ええー! それはまた思い切りましたよね。
安田 厳密には、新しい仕様が入ります。このE3版には実装できていないのですが、愛用度という仕様に。日本って、ものに神が宿るという考えがあるじゃないですか。ですので、武器も使っていると、力がより強化されていくというイメージです。

――使い込めば使い込むほど、武器が強くなるのですね。
安田 耐久度がマイナスの縛りだとすると、愛用度はプラスの縛りです。使い込んだものを長く使うか、いま落ちたいい武器を使うのか、を選びながらプレイすることになります。

――それはいいですね! 逆転の発想と言いますか。ところで、このE3バージョンのステージは、見たことがないステージですね。α体験版のときよりも色が鮮やかに見えるステージです。
安田 初公開となるステージです。新しい武器もあるんですよ。二刀っていう。
(ウィリアムが両手に刀を持って攻撃)

――二刀は動きが速いですね!
安田 刀より、何度も攻撃できるのですが、そのぶん一撃は刀より軽いです。

――ちなみに、海外と日本で、寄せられる声に違いはあったのですか?
早矢仕 “非常にいい”か、“いい”かという点では若干差はありましたが、ご意見はほぼほぼいっしょで。その声にとにかく対応していきたいと思っています。カメラや耐久度は、ワールドワイドでご意見をいただいたところですね。あとはプレイヤーのアクション。前は後ろに下がるとき、敵に背中を向けていたのですが、今回は俊敏に後ろに下がるようにしています。横に動くときの速度も、機敏に動けるようにしました。

――全体的にスピードが上がりましたか?
早矢仕 上がっているように感じますよね?
安田 でも、上がってはいないんですよ。後ろに下がったり、横に動いたりという動きが、一連のものになったからでしょうか。

(ここで安田D、攻撃を食らって死にかける)

安田 話しながらプレイしていると、すぐに死んじゃうんですよ(笑)。

――(笑)。
早矢仕 α体験版と銘打っていたので、フィードバックいただいたものには対応しないと、α体験版を出した意味がないと思っているので。可能な限り対応します。

――(プレイを見ながら)あ、温泉がある。しかも服を脱ぎましたね。
安田 あのあいだ、殴られると死んじゃいますね。敵がいないのを確認してお湯に浸からないと。
早矢仕 じゃあ、そろそろボスのところまで行きますか。

――けっこう、ショートカットできる道がありますね。
早矢仕 一本道ではなく、いろいろルートを発見する楽しみは大事にしていますので。

――あ、最初のPVに出ていた女性の妖怪ですね。
早矢仕 飛縁魔(ひのえんま)という妖怪なんです。若い男を誘惑するという言い伝えのある妖怪なので、妖艶な格好をしています。

――こちらの体力を吸って回復しちゃうんですね。
安田 いやらしい敵なんですよ。ああっ、やられた。負けそうです、これ(笑)。

(安田D、心折れそうになりながら飛縁魔を撃破)

安田 ああ、危なかった。こうやって、強い敵を倒すと、いいものがもらえます。

――お見事でした!
早矢仕 α体験版から、順調に開発も進んでいますので、β体験版は予定通り8月にリリースできると思います。

――ところで、α体験版に対していただいたご意見は、予想していたものだったのですか? それとも予想外のものが多かった?
安田 欧米の皆さんの難易度に対する評価は高かったのですが、アジアの皆様からは「難しすぎる」という声が多かったのは、少し予想外でした。
早矢仕 我々自身、足りない部分もありましたので、真摯に受け止めて対応するつもりです。ただ、カンタンにするのはこのゲームのコンセプトとは違うので、戦国死にゲーというコンセプトの中で、皆さんが理不尽だと感じるところを徹底的に改善しようと。

――敵を弱くしても、意味がないですもんね。
早矢仕 そうなんです。殺陣の緊張感と言いますか、ただ斬りまくればいいというわけではなく、ヒリヒリした感じが大事なところだと思うので、そこは残しています。

――個人的にもα体験版を遊ばせてもらいましたが、最初のうちは賛否がありましたが、最終的には楽しんだという声が多かった気がします。
安田 1日目、2日目は、心配になるくらいで……。とっつきの悪さが問題だったなと思っています。ですが、遊んでもらった人の満足度は高かったので、それは狙い通りでしたね。
早矢仕 楽しんでくださった方が、「カンタンになってしまうのでは?」と心配されるかもしれませんが、そうはなりませんのでご安心ください。

――このE3での、海外のメディアの反応はいかがでしたか?
早矢仕 やり込んでくださる方が多くて、「あそこの仕様はどうするんだ」という細かい質問が多くて。それだけ気にしていただいているんだな、と。
安田 下段の攻撃力が、なんでコンボの2段目だけ少ないんだ、とか。すごいな! と思って。じつは調整ミスだったんですけど、気づく方がいるとは思わなくてびっくりしました。今日、そこが直っているのを見て、「よかった」とおっしゃっていました(笑)。30時間遊んでくださった方もいて。

――それはすごいですね!
早矢仕 まずは死にゲー好きなファンの皆さんに認めていただきたいと思っていたのですが、「このゲームならではのよさがあるね」とおっしゃっていただけたので、それはすごく収穫でした。

――守護霊と、上段・中段・下段の使い分けが、やはり『仁王』の個性ですよね。
早矢仕 そこに武器の種類もありますから、掛け算でいろんなビルドが生まれます。

――二刀以外にも、未発表の武器はある?
安田 あります。めちゃくちゃいっぱいあるというわけではないのですが、まだちょっと(その存在を)隠しています。

――α体験版では、上段・中段・下段は、どれが人気だったのですか?
安田 それがですね、あまり偏りがなく割れました。中段だけの人もいれば、上段だけの人もいて。僕は個人的には中段が好きなのですが。いちばんスタミナ消費が少ないのは下段なので、レスポンスを求める人は下段で戦うようですね。

――ところで、α体験版では、クリアーすると“制覇の証”がもらえましたが、全体の何割の方がもらえたんですか?
早矢仕 あえて内緒にしておこうと思います。でも、けっこう皆さんクリアーしている、とだけお伝えしておきます。
安田 日本が、いちばん「難しい!」というご意見が多かったのですが、いちばんクリアーした人のパーセントが高かったのも日本なんですよ。興味深い結果でしたね。

――つぎに、最新のトレーラーについてうかがいます。ダークファンタジーというと暗いイメージがありますが、随所にコーエーテクモゲームスさんらしい演出が入っていて、いいなと思いました。
早矢仕 戦国時代をテーマにして、コーエーテクモゲームス シブサワ・コウのゲームとして出すわけですから、戦国のifを楽しめるものにしたいと思っています。シブサワ・コウのゲームで歴史を学ぶ人もいますし、ゲームがきっかけで歴史に興味を持つ方もいらっしゃると思います。いままであえてお伝えしていませんでしたが、じつはストーリーも含めて、戦国時代が好きな方に満足していただけるものにしています。トレーラーに出てくる忍者が、服部半蔵だったり。戦国時代の有名人がいっぱいでてきますから。

――8月のβ版では、そのあたりも少し体験できる?
安田 ちょっと迷っていますね。製品版のお楽しみにしておきたいなという気持ちもあって。

――β版でも、皆さんからのご意見は募集するのですか?
早矢仕 β版ですので、α版ほど大きくシステムは変えられないと思いますが、できるものについては対応したいです。

――β版が8月ということは、発売日は……?
早矢仕 2016年は死守しないと。

――『ファイナルファンタジーXV』が9月に出ますし、『人喰いの大鷲トリコ』が10月に出ますし……。
早矢仕 三大先輩が続々卒業ですよね。
安田 卒業が最後になっちゃいそうな気配はありますが、留年はできないと思うので、2016年には出ます!

――まずは、β体験版の配信を楽しみにしてます。
安田 β体験版には、しっかりチュートリアルを入れたんですよ。道場ステージを。クリアーできなかった方も、もう一度チャレンジしていただきたいですね。
早矢仕 チュートリアルはスキップできますので、前回クリアーした方は飛ばしていただければ。
安田 β体験版には、α体験版のステージも収録しますので、α体験版をプレイした方も、プレイしなかった方も、ぜひ遊んでみてください。
早矢仕 体験版などを通じて、少しずつ『仁王』のコミュニティを作っていくことで、長くお待たせしてしまった皆さんへの誠意を示したいと思っています。最終的には、ストーリーなども含めて楽しんでいただけるものになるという手ごたえを感じていますので、楽しみにしていてください。