トリコ、再びE3へ!
2016年6月14日〜16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて世界最大のゲーム見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2016が開催。先日の“PlayStation E3 2016 Press Conference”で2016年10月25日発売と発表された、プレイステーション4用ソフト『人喰いの大鷲トリコ』だが、本作の冒頭をプレイする機会をいただいた。そこで、本記事では、『人喰いの大鷲トリコ』のプレイインプレッションをお届けする。
トリコとの出会い、そしてその先へ
主人公は、身体に謎の紋様が浮かぶ少年。今回のプレイでは、その少年が、古城や遺跡のような一角で、光が射しつつも閉ざされた場所にいるところからスタートする。トレーラーなどでもよく映っている、『ICO』の古城と雰囲気が似ている場所だ。少年の操作感覚は、小回りの利く移動や助走をつけてのジャンプは『ICO』に近く、慣性のついたカメラ操作は『ワンダと巨像』に近い。
また、ところどころで年老いた男性のような声が聞こえてくる。その声の主は、主人公の少年が成長した時代の人物のようで、過去を振り返るように場面場面を説明する。その説明は、小説のト書きに近く、主人公の感情やそのシーンの状況説明に留まらず、ときに謎解きのヒントにもなりえる。
少年と同じ空間には、トリコがいた。鎖のついた仮面のようなものを装着しているトリコは目の色が赤く、近づこうとすると、敵意をむき出しにしてうなってくる。付かず離れず観察をすると、身体に杭のような槍が刺さっていることがわかる。傷口から血が垂れており、見るからに痛そうだ。トリコの死角になるように背後からまわり、身体に上って槍を抜こうとして気づく。
呼吸とともに身体が上下し、ときおり、身体をよじったりするトリコに上る動きは、『ワンダと巨像』の巨像に近い。巨像のような変型コリジョン(地形の判定)になっているため、ときにしがみつき、ときに平らな場所を探しながら、少年を移動させる必要がある。当然ながら『ワンダと巨像』の変型コリジョンよりもさらに進化し、トリコの身体に上ったり、しがみついたりしている際には、巨像にはなかった柔らかさが感じられる、生物らしさを感じるものになっていた。
槍を1本抜き、さらに抜こうとするも、トリコに近づきすぎると、ものすごい勢いで吠えられて、離されてしまう。そこで、近くにあった餌の樽をトリコに投げることに。すると、トリコは匂いを嗅いだ後に樽を食べ始めた。
まだまだお腹が空いていたのか、トリコに餌を何度か与えていると、目の色が赤から緑のような色に変わってきた。やはり、目の色は警戒度などを示しているようだ。こうして、トリコの警戒度が薄れた後、もう一本の槍を抜き、鎖で拘束されていた仮面を外すと、トリコは自由の身に。
これでトリコとの心の距離はかなり近づいたのか、少年が「トリコー」と呼びかける(『ICO』のヨルダ、『ワンダと巨像』のアグロのように)と、走って近づいてくれるようになった。その後、崖の切れ目から洞窟や建物の深部に進むことに。少年が届かない場所はトリコを呼び、トリコによじ上ってジャンプするといった協力(?)で道を切り拓いていく。細かな部屋を進んでいく中で、いろいろなパズルがある構造は、『ICO』をよりダイナミックに進化させたイメージ。
少し進むと、突如、真っ白な壁で作られた洞窟に出る。中央に大きな水溜まりがあるこの場所は、とても神聖な印象を受ける。その奥には棺のような形のものがあり、表面には鏡のような円盤がはめられていた。その円盤を外してかざすと、光を反射させることができる。しかし、もちろん効果はそれだけではない。その円盤をトリコの前で使うと、光を当てた場所に、トリコが尻尾の先端から赤白く光る光線を発射したのだ! トリコがいくら謎の生物とはいえ、まさか光線を発射するとは。見た目だけでなく、光線は威力そのものも強く、しっかりと作られた木造の壁などを破壊し、新たな道を開いてくれる。
そして訪れたのが、滝が流れる美しい湖のような場所。崖下に湖が広がっているのだが、少年が先導して水に入っても、トリコは怖がっているのか水に入ってくれない。そして、ここでも役に立つのが餌の樽だった。樽を湖に投げ込み、ぷかぷかと浮かべると、トリコがざぶーんと湖へダイブ! 水へ飛び込む迫力もさることながら、トリコが湖へと入ることによって水かさが一気に増し、届かなかった場所へ上れるようになった。
トリコを使って謎を解くギミックというのは、多くの人が想像していただろう。たとえば、トリコに上って進んだり、トリコに重いものをどかしてもらったりといった活躍は比較的想像しやすいが、水かさを増やすなど、間接的に環境に影響を与えるギミックは想定していなかったので、そのシーンを目の当たりにした瞬間は、驚きを超えてとても感動した。
湖を越え、さらに先へ進むと、細い路地がある場所へ。細い路地の先からは光が射している。少年はトリコに別れを告げ、自分の住んでいた場所へ戻ろうとする。すると、別れを惜しんだのか、トリコは少年では届かないような高所にあった隙間へ入り込み、岩場を壊して少年のもとへと駆け寄って来る。わずかな期間ながら親交を深めた少年とトリコの前には、さらに広い世界が……というところでプレイは終了。
約40分程度のプレイだったが、そのあいだにも『ICO』、『ワンダと巨像』の流れを感じる独特の世界観を味わい、光線の発射や水かさの増加に驚きを感じるなど、いろいろと感情を揺さぶられるプレイとなった。だが、何よりも本作の醍醐味と言えるのは、言うことを聞かず、でも徐々に慣れてくるとかわいさが増してくるトリコとの関係性のおもしろさだろう。最初は警戒して赤い目で威嚇をしていたトリコが、身体に上らせてくれて、後をついてくるようになる。まさにトリコという生物が実在して、徐々に慣れ親しんでいくという、家に来たばかりのペット(と呼ぶには大きすぎるが)との心の距離を近づけていくような感覚はとても新鮮だ。餌の樽を投げる位置が悪ければ、自然と「ごめんごめん」と話しかけたくなり、うまく連携が取れればトリコを撫でたくなる。この先、トリコとの冒険はどうなっていくのだろう。トレーラーでは、まさかの別の大鷲が出現するなど、まだまだ予想がつかない要素が多く用意されていそうな雰囲気。長年待った発売まで、気づけばあと4ヵ月。いろいろと妄想を働かせながら、再びトリコとの旅に出られる日を楽しみに待っていたい。