シリーズファン視点で体感した日本語版『ESO』
壮大なファンタジー世界を思うままに冒険できる、自由度の高いRPG『エルダー・スクロールズ』シリーズの最新作であり、完全オンライン化のMMORPGとなる『エルダー・スクロールズ・オンライン』(以下、『ESO』)。2016年6月23日には待望の完全日本語版が発売、国内サービスが開始される。ここでは、発売に先駆けて6月6日に実施されたメディア向けの先行体験会で、実際に手にとってプレイした所感をリポートしていこう。
<関連記事>
※『エルダー・スクロールズ・オンライン』を完全ローカライズで堪能! 日本語版はアドオンの使用も可能に――メディア体験会リポート(1)
すでに海外展開されていることもあり、熱心なゲーマー諸氏のなかには本作のゲーム内容を熟知している方も多いだろう。一方、筆者のようなシリーズの大ファンではあるものの、これまでは言語の壁から手を出せなかったユーザーも多くいるはずだ。そこで、このリポート記事では日本語版独自のポイントをピックアップしつつ、体験プレイを通して感じた“エルダー・スクロールズらしさ”を、シリーズファンの視点からあらためて紹介させていただきたい。
■より機能的になったキャラメイクに没頭
体験会では各メディアに1台のPCが提供され、自由にプレイを楽しむことができた。今回はキーボードとマウスで操作を行ったが、ゲームパッド操作にも対応しているので、これまでのシリーズをコンシューマー機で遊んできたユーザーも不自由なく楽しめそうだ。
まずはゲーム開始直後の流れを確認すべく、新規キャラクターの作成を選択。本作では“ハイエルフ”、“オーク”、“アルゴニアン”といったシリーズおなじみの種族が9種類から選べるが、選択した種族によって所属する陣営も決定される。『エルダー・スクロールズV:スカイリム』の1000年前が舞台となる本作は、タムリエル大陸における皇帝の座をめぐる争いがくり広げられており、陣営同士は基本的に敵対関係になるとのこと。友人などとパーティープレイを楽しむ予定なら、同じ陣営に属せるように種族を決めたほうがよさそうだ。今回は、“アルドメリ自治領”所属の“ハイエルフ”の女性で作成することに。
種族と陣営、性別、名前を決めた後はクラスを選択する。今回は近接攻撃に特化した戦士タイプの“ドラゴンナイト”をチョイスしたが、ほかにも隠密行動に優れた“ナイトブレイド”や、魔法のエキスパートである“ソーサラー”、回復スキルで仲間を援護する“テンプラー”といったクラスが確認できた。クラス選択はキャラメイク時にしか行えないが、育成次第で同じクラスでも異なる戦術が展開できるようなので、プレイスタイルに応じて気軽に選んでも問題ないだろう。
キャラメイクの最後はお待ちかねの外見の決定だ。外見の設定は体格と顔に分かれており、各部の太さや目の角度などをスライダーで細かく調整できた。変更幅の自由度は『スカイリム』と比べると少し物足りない印象だが、モーフィングで簡易的に外見を調整できる機能や、軽装、重装状態の見た目をプレビューできる機能など、キャラ作成を補助する要素が充実しており、不満に感じることはなかった。体験プレイながら思わず理想のキャラメイクにこだわってしまい、あやうくゲームプレイの時間を逃すところだったが、なんとか作成を完了して『ESO』の世界“タムリエル”へ飛び込む準備が整った。
※記事の最後には、キャラメイク画像を多数掲載しています。
■極限までシンプル化されたUIで没入度アップ
ついに広大なタムリエルへ冒険に出発! と思いきや、キャラクターが降りたったのは仄暗い檻のなか。プレイヤーはスタート時、デイドラの王子である“モラグ・バル”が支配する領域“コールドハーバー”の独房に囚われており、ここから脱出することが最初のクエスト目標かつチュートリアルとなっているようだ。囚人の身分から冒険が始まるのはシリーズの恒例となっているので、ファンなら思わずニヤリとするところだろう。
脱獄の道中ではところどころで戦闘が発生したが、ここで驚かされたのが画面に表示されるUIが極端に少ない点だ。多くのMMORPGはコンテンツの量に応じて必要な情報も増えていくため、表示するUIも多くなりがちである。一方で本作は、通常時に表示されるのはクエスト目標とコンパス、照準をあわせた対象のヘルスのみとなっており、ダメージやスキルの使用などでステータスに変化があったときのみ、対応するUIが一時的に表示されるという形式をとっている。『スカイリム』とほぼ同様の形式ではあるのだが、MMORPGでここまでシンプルさを維持できたのは、没入度を高める点において素晴らしく思えた。また、これらのUIは追加するアドオン(ユーザー制作の拡張機能)次第で常時表示させることも可能なので、好みに応じてカスタマイズできることもうれしい。
また、コンパクトにまとまった戦闘システムについても言及しておきたい。戦闘中の基本行動は攻撃と強攻撃、防御と回避、バッシュとスキル使用の6つに大別され、相手の行動に応じて使い分けていくことで有利に戦闘を進めることができる。どれも直感的に発動できるので、チュートリアルクエストの段階から非常に楽しく、かつエキサイティングな戦闘を終始楽しむことができた。とくに、隙は大きいが大ダメージを与えられる強攻撃や、相手の行動を妨害できるバッシュの使いどころは、プレイヤーの腕が問われる本作ならではのユニークなポイントだろう。操作のレスポンスもかなり素早く、個人的には従来のシリーズよりアクション性の高いものとして感じられた。
戦闘システムに続いて驚かされたのが、シリーズではおなじみの“探索要素”が本作にもしっかり用意されている点だ。脱獄の道中には壺や麻袋といったオブジェクトが点在しており、それぞれを調べることで多彩なアイテムを収集できるのだ。この宝探しのような感覚が味わえる探索は、筆者がシリーズを愛する一因にもなっており、体験会ではクエスト進行そっちのけで周辺調査に没頭してしまう場面もあった。UI表示と並んで、本作が“エルダー・スクロールズ”であることがひしひしと感じられるポイントである。
■バリエーション豊かなスキルで自分だけのキャラクターを育成
序盤のチュートリアルクエストでは、レベルアップを介したキャラクターの成長要素についても体験できた。経験値が溜まってレベルアップする度に、基本ステータスであるヘルス、マジカ、スタミナのいずれかひとつを伸ばせるほか、スキルの習得に必要なスキルポイントが得られる。習得可能なスキルは選択した種族、クラスによって異なるほか、装備やクラフトなどに関連するカテゴリがバリエーション豊かに用意されており、育成に幅がきかせられる仕様となっていた。戦闘中にマジカやスタミナを消費して発動できるアクティブスキルも無数にあり、最初は習得したものをすべて使いこなすのは難しそうな印象を受けたほどだ。しかし、戦闘中に使用できる基本のアクティブスキルは最大5個までなので、実際に遊んでみるとスキルによる煩わしさはまったくなく、むしろ戦う相手やコンテンツに応じて使用スキルを切りかえる戦略が吟味できそうな期待感の上回る結果となった。
■歯ごたえ抜群のダンジョンでパーティプレイを堪能
チュートリアルクエストを完遂し、ひと通りのシステムを把握したところで、今度は最高レベルであるレベル50のキャラクターに切りかえてパーティを編成。マルチプレイ用のダンジョンに突入して協力プレイに挑戦することに。チュートリアルでの戦闘がソロでもスムーズに進められたこともあり、「限界までスキルを覚えれば楽勝だろう」と油断したまま突入した結果、ダンジョン入口で遭遇した敵の群れに一瞬で全滅させられる事態に! 今回挑戦したものが格段に高難度だとのことだが、基本的にダンジョンは適正人数のパーティがしっかりと役割分担をこなして連携をとる必要がありそうだ。ちなみに、ダンジョン以外の戦闘に関しては「ソロでも十分だが、パーティで戦えば進めやすい」程度の難度になっているとのことなので、気分やブレイスタイルによって進めるコンテンツを切りかえるのもおもしろそうだ。
何度か再突入するも、ろくにダメージを与えられない苦戦が続き、あきらめめかけていた筆者のパーティだったが、ここで敵の群れの側面に流れる小川を発見。試しにそちらへ進路を変更してみると、敵集団をやりすごして先へ進むことができた(最終的には進行先で新たな敵と出会い、返り討ちにされてしまったのだが)。こうしたひらめきが冒険に役立つというのは、シリーズのファンとしてはかなりうれしいポイントである。
■シリーズファンの心をわしづかみにする“らしさ”を実感
こうして体験会のプログラムは終了したが、プレイを通してシリーズファンである筆者が痛感したのは、本作が従来の枠を越えたMMORPGというジャンルでありながら、どこまでも“エルダー・スクロールズ”らしさを貫いていたことである。世界観や設定はもちろん、細かなシステムやUIにいたるまでシリーズを踏襲したデザインは、まるでオフラインの新作や『スカイリム』のDLCを遊んでいるような錯覚にもとらわれる。その一方で、ダンジョンを筆頭にしたマルチプレイ要素もしっかりと存在感を示しており、短時間のプレイながらオンラインならではの楽しさも味わえることができた(マルチプレイの究極とも言える攻城戦(PvP)も、かなりの歯ごたえがあるとのこと!)。海外での人気も納得の上質なタイトルとして評価できるだろう。そんな世界をあますところなく堪能できる日本語版をプレイし、いちユーザーとしてサービス開始が待ち遠しくなった。
最後に、本作のキャラメイキングの雰囲気を感じてもらうために、キャラ作成中の画像を多数掲載する。どんなキャラクターになって、タムリエルへ旅立つか――これらの画像を参考にし、期待を胸にサービス開始を待ってほしい。
●種族のバリエーション
●髪型のバリエーション
●各パーツのカスタマイズで、じつにさまざまなキャラが作成可能